今回は、投資初心者の多くが悩むポイント「金融商品の選び方」について解説します。
株式や債券などの金融商品のうち、マネーセンスカレッジの投資戦略「全世界投資」の購入対象となるのは「投資信託(ファンド)」のみです。
購入するのは投資信託のみですが、数ある投資信託の商品の良し悪しを判断するのは難しいですよね。各商品のどのような点に注意して選べばいいのかわからないでしょう。
今回紹介する4つの基準は、実際にマネーセンスカレッジが商品選定を行う際に詳しく調べる項目です。
投資信託の選び方がわからない方は、記事を参考にすると金融商品を選定できるようになります。
投資信託(ファンド)とは
金融商品の選び方を紹介する前に、そもそも投資信託とは何か確認しておきましょう。
投資信託(ファンド)とは、たくさんの投資家からお金を集めて大きな資金を作り、ファンドの方針に基づいて専門家が投資対象とする株式や債券、ETFなどの銘柄を選び運用を行う金融商品です。

個人投資家のできない大きな規模で分散投資をしたり、世界中の金融商品を購入したりできます。
複数の銘柄を購入して運用するため、個別株式と比べて安定的な運用が期待できるのも特徴です。
運用はプロが行うため、銘柄選びの複雑な知識も必要ありません。投資家が得る利益は、投資金額に応じて運用益から配分されます。
また、投資信託は100円や1,000円程度の少額で購入できるのも魅力のひとつです。大勢の投資家からお金を集めるため、1人1人の投資額が少なくても運用ができます。
投資信託の3つの種類
投資信託には、大きく分けて以下の3つの種類があります。
- インデックスファンド
- アクティブファンド
- バランス型ファンド
どの種類のファンドを購入したらいいか悩む方は非常に多いので、それぞれの違いをしっかりと理解して、あなたの投資戦略に合う種類の商品を選びましょう。
インデックスファンド:インデックスに連動した値動きを目指す
インデックスファンドは、ある特定のインデックス(指標)に連動する値動きを目指す投資信託です。別名で「パッシブファンド」とも呼ばれます。
インデックス(指標)とは、市場の値動きをあらわす数字。有名なインデックスには「日経平均株価」や「TOPIX」「ダウ平均株価」などがあります。
また、ある投資信託が指標としているインデックスをその投資信託の「ベンチマーク」と呼びます。たとえば『Aのインデックスファンドは「日経平均株価」をベンチマークとしている』と表現されるので覚えておくのがおすすめです。
アクティブファンド:インデックスを超える値動きを目指す
アクティブファンドは、ある特定のインデックスを超える値動きを目指す投資信託です。
運用の専門家(ファンドマネージャー)が、独自の銘柄選定や積極的な銘柄入れ替え、資産配分の変更を行うことでベンチマークを超えられるように運用を行います。
数は少ないですが、ベンチマークを設定していないアクティブファンドも存在しています。
アクティブファンドは、インデックスファンドと比べて大きなリターンを期待できるのが特徴です。
しかし、マネーセンスカレッジではアクティブファンドの購入はおすすめしていません。
銘柄分析や企業訪問などを行った手数料分も投資家側が負担するため、運用コストが増えます。さらに価格変動リスクが高いため、相場の下落の影響を受けやすいです。
アクティブファンドは投資初心者には扱いが難しく、安定した資産運用には向かない商品になります。
詳しい内容は「初心者にアクティブファンドをおすすめしない理由」の記事で解説しています。投資商品の比較を行う際に、参考になる記事なのでぜひチェックしてください。
バランス型ファンド:さまざまな資産をまとめた投資信託
バランス型ファンドは「株式だけ」や「債券だけ」などひとつの資産に絞らず、さまざまな資産や市場にまんべんなく投資を行う投資信託です。
たとえば、海外株式と海外債券の2つの資産で構成されていたり、国内と海外の株式・債券の4つの資産で構成されていたりします。
値動きの違う商品を複数組み合わせることで資産分散ができ、1つのファンドで価格変動リスクを抑えた運用ができる商品もあります。
ただ、アクティブファンドと同様にバランス型ファンドもおすすめしていません。
バランス型ファンドには、以下の3つのデメリットがあるためです。
- 投資先を把握しなくなる
- 信託報酬手数料が高い
- リバランスによるパフォーマンスの低下
3つのデメリットを考えると、バランス型ファンドは投資初心者が安易に購入すべきではない金融商品です。
バランス型ファンドの3つのデメリットについて、以下の記事で解説しています。バランス型ファンドの購入を考えていた方におすすめの記事なのでぜひ読んでみてください。
・ターゲットイヤー型ファンド
広い意味でバランス型ファンドに分類される商品として「ターゲットイヤー型ファンド」があります。
ターゲットイヤー型ファンドとは、ターゲットとなる年を指定して最初は積極的な投資を行い、指定した年が近づくにしたがって徐々に安定的な運用を行うよう自動的にアセットバランスを変更していくファンドです。
バランス型ファンドと同様に、ターゲットイヤー型ファンドもおすすめしていません。上述したバランス型ファンドをおすすめしていない理由がすべて当てはまるためです。
それに加えて、ほとんどの商品はターゲットイヤーが10年ごとに設定されているため、必ずしも自分に合う商品があるとは限りません。
また、リスクを下げて安定的に運用したい場合は、アセットバランスを変更する前に「まず投資をしないで現金化しておく」という選択を取るべきです。資産の半分を現金化しておけば、全額を投資するときと比べて簡単にリスクを半分にできます。
ターゲットイヤー型ファンドの存在理由の一つに「年齢が若ければリスクを取るべきで、高齢になるほどリスクを少なくするべきだ」という投資理論が根底にあります。
よく論じられる考え方ですが、リスクを取れる取れないは個人の性格や事情によるところが大きいと考えます。
老若男女問わず、投資のリスクを抑えて安定的にしなければならないときは、支出に充てるタイミングが近づいてきて大きく目減りさせたくないときでしょう。
近い将来に支出するお金が資産の大部分であるならば、投資に回さずに安全資産にしておかないと、いざ使うときに目減りしてしまったら実現できなくなってしまいます。
一方、近い将来に支出するお金はすでに預金などで用意してあるならば、投資に回している資金は積極的に運用したいと考えるでしょう。
このように支出に充てる時期によってリスクが変わるのであって、年齢でリスク度合いが決まるものではありません。そのため、個人の支出タイミングや性格、事情に応じて資産の中身を調整をすることが重要で、必ずしも自分のタイミングに合っていない投資商品にすべてを任せる必要はないのです。
さらにいえば、支出に充てるタイミングはファイナンシャルプランで考えることであり、投資戦略や投資商品で考えるものではありません。
全世界投資でインデックスファンドだけを購入する理由
3種類の投資信託の中で、全世界投資の購入対象として推奨しているのは「インデックスファンド」のみです。
つまり、全世界投資では日本株式や海外債券などの各アセットごとに適したインデックスファンドを1つずつ購入し、全世界にまんべんなく投資を行います。
では、なぜインデックスファンドだけを購入するのでしょうか。この項目で、インデックスファンドを投資初心者におすすめする理由を簡単に説明します。
運用にかかる手数料が安い
インデックスファンドは、アクティブファンドやバランス型ファンドと比べて運用にかかるコストが安いです。
運用コストとは、投資信託を保有している限り払い続ける各種費用を指します。
たとえば、代表的なコストに信託報酬手数料があります。信託報酬手数料は、投資信託を運用するために運用会社へ支払うお金です。
インデックスファンドの信託報酬手数料は、基本的に0.5%~1%前後に設定されています。
一方で多くのアクティブファンドの信託報酬手数料は1%を超えます。ほかにも信託財産留保額や取引手数料など、投資信託を購入するとさまざまな運用コストがかかるため、負担額が多いほど投資家にとっては損失です。
利益を最大化するために、マイナスとなる運用コストはできるだけ抑えたいですよね。そのため、数十年投資を続けることを前提におくと、手数料が安いインデックスファンドがおすすめです。
最低購入金額が低い
2つめの理由は、インデックスファンドの最低購入金額が低いことです。
最低購入金額とは、投資信託を購入することができるもっとも低い金額になります。100円から、1000円からなど、利用する証券会社やファンドの種類によって金額は異なります。
最低購入金額が大切な理由は、マネーセンスカレッジの投資戦略「全世界投資」が関係します。
全世界投資では、複数の資産に投資する「アセットアロケーション」と、一定期間ごとに一定金額を投資し続ける「ドルコスト平均法」と呼ばれる戦略が重要です。
たとえば、アセットアロケーションでは大きく分けて10種類ほどの資産に投資をします。そのため、最低購入金額が高いと1度に用意する金額が高くなってしまいます。
ドルコスト平均法は、一定期間ごとに金融商品を購入する投資戦略で、全世界投資では毎月を推奨しています。そのため、毎月投資資金を準備しておかなければなりません。
しかし、最低購入金額が高いと複数の資産へ投資できるだけの金額を毎月継続して確保するのが難しくなる可能性があります。
このように、全世界投資を実施するうえで最低購入金額が低いことは非常に大切なため、インデックスファンドの購入をおすすめしています。
投資対象が大きい
ファンドの値動きを特定の指標と連動させるためには、ベンチマークの指標を構成する銘柄を同じ比率ですべて購入する必要があります。
たとえば、TOPIXに連動するインデックスファンドがあったとします。
TOPIXを構成する銘柄は、東証1部上場企業の全銘柄です。したがって、TOPIXに連動させたいファンドは、東証1部上場企業のすべての銘柄を同じ比率で購入したらいいということです。
TOPIXや日経平均、S&P500などの指標はその市場全体の値動きを表します。
つまり、特定の指標と連動するインデックスファンドを購入するだけで、その指標となっている市場へ投資している状態になります。
TOPIXに連動するインデックスファンドを1つ購入するだけで、東証1部上場企業の全銘柄へ投資している状態になるということです。
このように、インデックスファンドは投資対象が大きくなりやすく安全な運用を目指せる金融商品になります。
インデックスファンドを選ぶ4つの基準
ここまで、インデックスファンドの仕組みや種類を解説しました。
では、実際に投資信託を購入する際にポイントとなる、以下の4つの選定基準を紹介します。
- 単一資産型のファンドかどうか
- 実質信託報酬手数料の低さ
- 純資産総額の大きさ
- インデックス(指標)との連動性
明確に基準を設けられると、商品を購入する際に迷わず自分に合うファンドを選べるようになります。
1.単一資産型のファンドかどうか
1つめの基準は、ファンドの構成が単一資産型かどうかです。単一資産型とは「日本株式のみ」や「海外株式先進国のみ」などのひとつのアセットで構成されているファンドです。
アセットとは「資産」という意味で、アセットアロケーション運用で使われる用語になります。資産は以下のように大きく分けることができます。
- 国内株式
- 国内債券
- 外国株式(先進国・新興国・全世界)
- 外国債券(先進国・新興国)
- 不動産(REIT)(国内・先進国)
- コモディティ(商品・金)
投資信託を購入する際は、単一資産型ファンドを複数購入して自分自身でアセットアロケーションを行いましょう。
単一資産型ファンドと反対に、複数のアセットで構成されるファンドは「バランス型ファンド」や「国際分散投資ファンド」などです。
バランス型ファンドは単一型ファンドの組み合わせなので、単一型ファンドの手数料に加えて、組み合わせるための手数料もかかることから、比較的手数料が高い傾向があります。
また、運用していると投資先を把握しなくなるデメリットもあります。
投資先を把握しなくなった場合、価格が大きく下がったときの対処方法がわからなくなります。その結果、下落の影響を受けやすく運用に失敗する場合があるのです。
運用期間が経過して指定したバランスが崩れたときに元に戻す「リバランス」を自動で行ってくれるという点をメリットに挙げられることもありますが、通常年1回が推奨されるところ毎月実施するファンドも多く、返ってパフォーマンスを下げることもあります。
さらに、バランス型に含まれている特定のアセットだけ購入しないという選択はすることができません。
たとえば「日本債券の金利が上昇して国債価格が下がるので国内債券だけ運用を止める」といったことや「米ドル高によって新興国の通貨危機が起こったので新興国株式や債券の運用を止める」ということはできません。
もしそうしたい場合は、バランス型ファンドをすべて売却してから、残したいアセットを単一型ファンドで購入していかなければなりません。
このようにバランス型ファンドにはデメリットが多いため、自分でアセットバランスを決めてきちんと管理しながら運用できるように単一型ファンドを選びましょう。
2.実質信託報酬手数料の低さ
信託報酬手数料には、名目信託報酬手数料と実質信託報酬手数料の2つがあります。
- 名目信託報酬手数料:運用にかかる予定の手数料
- 実質信託報酬手数料:実際に投資家が負担する手数料
2つのうち、投資信託を購入する際は「実質信託報酬手数料」の低さを確認しましょう。
実際に運用を行ってみると、予想より経費が多くかかっていたり、損失が出ていたりとさまざまな費用がかかります。
名目信託報酬手数料にはこのような費用は含まれていません。そのため、実際に投資家が負担する割合がどれくらいか示す「実質信託報酬手数料」を基準に選ぶのがおすすめです。
実質信託報酬手数料は、各ファンドの運用報告書で調べられます。名目信託報酬手数料が安いからと安易に飛びつくのではなく、ファンドの実質信託報酬手数料の低さを確認してください。
実質信託報酬手数料をチェックするポイントは『投資信託で迷ったら初心者は「実質信託報酬手数料」をチェックしよう』の記事で解説しています。詳しい内容を知りたい方はぜひご参照ください。
3.純資産総額の大きさ
3つめの基準は、純資産総額の規模が大きいかどうかです。
純資産総額とは、マザーファンドの中の金額を指し、純資産総額が小さいと運用が十分にできずに失敗する可能性があります。
基本的に、インデックスファンドの多くは「ファミリーファンド方式」と呼ばれる運用方法を採用しています。
ファミリーファンド方式とは、複数のファンドの資金をまとめ「マザーファンド」と呼ばれる投資信託に投資。そこから株式や債券、REITなどへ資金を割り振っていく運用方式です。
投資家からの投資資金が少ないファンドでも、ファミリーファンド方式を用いることで多くのアセットや銘柄へ分散投資が可能となります。

ファミリーファンド方式では、個人投資家が購入するファンドは「ベビーファンド」と呼ばれ、ベビーファンドに集まった資金が「マザーファンド」に投資されます。
つまり、実質的な運用を行うマザーファンドの資産総額が少ない場合、適切な資産配分ができず運用が不十分になる可能性があるのです。
そのため、マザーファンドの純資産総額がどれくらいの大きさなのかチェックしておきましょう。
マザーファンドの純資産総額は、運用報告書(全体版)から調べられます。ファンドを比較して迷った際は、純資産総額が大きい方を選びましょう。
4.インデックス(指標)との連動性
4つめの基準は、インデックスとの連動性(トラッキングエラー)が少ないかどうかです。
前述したように、インデックスファンドはベンチマークとなる指標の構成銘柄を同じ比率で購入します。
しかし、同じ構成だとしても投資資金が足りなかったり、逆に投資資金が多かったりするとまったく同じ動きにはなりません。ベンチマークと同じ銘柄を同じ比率で運用しても、指標との値動きにはズレが生じるのです。
この値動きのズレを「トラッキングエラー」といいます。
各運用会社はさまざまな工夫を行い、トラッキングエラーを減らす努力をして、なおかつ運用にかかるコストも抑えなければなりません。
つまり、トラッキングエラーの数値が高いファンドは、ズレを減らすための工夫が足りない商品の可能性があります。そのため、投資信託を選ぶ際はトラッキングエラーの少ない商品を購入しましょう。
トラッキングエラーを調べるには、ファンドの基準価額とベンチマークのチャートのズレをひとつずつ確認するしかありません。最低でも過去3年分ほどのチャートを確認できれば、トラッキングエラーが平均どれくらいか確認できます。
投資信託選びは明確な基準を持つことが大切
投資初心者の方が、いきなり自分自身に合う商品を選ぶのは非常に難しいです。
人気の高い商品や注目されている商品だからといって、必ず利益をあげるわけではありません。自分自身で判断できる知識や技術を身につけて、自分に合う投資信託を選べるようになっていきましょう。