相続人のいない遺産が増加中、おひとり様が知っておきたい資産の渡し方
相続人のいない遺産が増えているというニュースが話題になっています。相続人がいない場合、遺産は最終的にどうなってしまうのか、今回はこの問題を取り上げていきます。
法律的な制度の話や、それに対する対策についても触れていきますが、まず押さえておきたいのは、相続人がいない場合、最終的には遺産が国に帰属することが法律で決まっているという点です。
相続人がいないと国庫に入る(0:54)
相続人がいない場合、遺産は国に召し上げられる形になります。2023年には、法定相続人がいないために亡くなった方の遺産が最終的に国に入った金額が、初めて1000億円を突破しました。さらに2024年度には1292億円にまで膨らんでおり、これはわずか10年間で3倍という驚くべきペースでの増加です。せっかく築いた財産が誰の手にも渡らず国庫に入ってしまうというのは、なんとももったいない話です。
配偶者や子どものいない単身高齢者が増加(1:41)
こうした背景には、配偶者や子どもがいない単身の高齢者が増えているという現実があります。2023年時点で65歳以上で亡くなった方のうち、未婚で子どもや配偶者がいなかった人は10万人を超えており、これは10年前の1.7倍にあたります。特に男性はその傾向が顕著で、10年前と比べて2.2倍にまで増加しています。
相続放棄の増加(2:06)
もう一つ見逃せないのが、相続放棄の増加です。相続人自身はいるものの、財産を受け継ぐことが負担になり、放棄を選ぶケースが増えています。財産と一緒に負債も引き継ぐことになるため、負債の方が多ければ相続放棄をしてまとめて手放すという選択も珍しくありません。この場合、財産は債権者側に渡ることになり、国庫には入りません。相続放棄の受理件数自体も年々増加傾向にあります。
象徴的な例として、中山美穂さんのケースが挙げられます。著作権など相応の財産があったにもかかわらず、相続人が海外にいたことなどから、結果的に受け継がれなかったという出来事がありました。また、不動産はあっても現金がなく、相続税を払えないために相続放棄をしてしまうケースもあるようです。
世間がこの問題についてどう考えているのか?(3:14)

出典:2023年ベンチャーサポートグループ「おひとりさま相続に関する調査」
この問題について世間がどう感じているのか、1007人を対象にしたお一人様相続に関する調査結果が参考になります。相続人がいない場合、財産が最終的に国庫に帰属することを知っているかという質問には、70%が「はい」と回答しています。

出典:2023年ベンチャーサポートグループ「おひとりさま相続に関する調査」
一方で、誰に相続してもらう予定かという質問には、64%が「決まっていない」と答えており、制度そのものは知っていても、具体的な対策には至っていない人が多いことがうかがえます。

出典:2023年ベンチャーサポートグループ「おひとりさま相続に関する調査」
お一人様相続について考えたことがあるかには48.2%が「はい」と答えた一方、実際に調べたことがあるかについては91%が「いいえ」と回答しており、問題として認識はしていても、行動には移せていない実態が浮かび上がります。

出典:2023年ベンチャーサポートグループ「おひとりさま相続に関する調査」
相続先をすでに決めていた人にその理由を聞いたところ、「自分が亡くなった後に周囲に迷惑をかけたくないから」が36%で最も多く、次いで「相続させたい相手がいるから」が28.1%となっています。特別寄与制度や成年後見制度といった制度について検討したことがあるかという質問には、90%が「いいえ」と答えており、制度の存在は知っていても手続きが面倒に感じられて動けていない人が多いようです。
おひとり様の「資産の渡し方」(5:29)
自分自身がいずれお一人様になることを想定した場合、相続財産の渡し方は大きく分けて4つあります。一つは遺言書によって、法定相続人ではない人にも財産を残す方法です。もう一つは遺贈寄付で、亡くなるまでは自分で使い、残った分を団体などに役立ててもらう方法です。三つ目はおひとり様信託と呼ばれるサービスで、信託銀行などに財産の管理や事後の処理を託す方法になります。そして四つ目が生前贈与で、生きているうちに親族などへ財産を渡す方法です。
いずれも生きている間に動けば間に合うものばかりで、組み合わせて活用することも可能です。自分の意思に合ったものを選んでおくことが大切です。何もしないまま放置してしまうと、結局は国に召し上げられてしまうことになるため、寄付でも、誰かに残すという意思表示でも構わないので、きちんと書類の形にしておき、法的な実行力を持たせておくことが重要な考え方だと言えます。
遺言書(7:53)
遺言書は、長年お世話になった友人など、法律用語でいう特別縁故者に対しても特定の財産を渡すことができる制度です。書き方にはいくつか種類がありますが、自筆証書遺言であっても法務局に預けることができるようになったほか、以前は財産目録をすべて自書しなければならなかったものが、現在はパソコンで作成することも認められるようになるなど、制度自体が使いやすい方向に変わってきています。
中でも最も確実なのは公正証書遺言です。費用はかかるものの、不備が起きにくく、作成時に必ず専門家の目を通るという安心感があります。ただし重要なのは、遺言書を作成しても、それを実際に執行してくれる人をあらかじめ指定しておく必要があるという点です。親族がいない場合には、弁護士など法律の専門家に執行を依頼しておくことも必要になります。いずれにしても、認知症などで意思表示が難しくなる前、自分の意思がはっきりしているうちに準備しておくことが欠かせません。
遺贈寄付(9:18)
遺贈寄付は、母校やNPO団体、自治体などに財産を寄付する方法です。2025年の調査では、この遺贈寄付という制度についての認知度は63.8%にまで上がっています。またお一人様のうち約4割が、この遺贈寄付に関心を持っているというアンケート結果も出ています。財産が残っても受け取る相手がいないのであれば、社会の役に立ててほしいという考え方は、たとえわずかな金額であっても受け取る側にとってはありがたいものになります。
国に渡ってしまえば有効に使われるとは限りませんが、自分自身が生きているうちから関心や縁のある分野を見つけ、そこに残していくという行為は、立派な選択肢の一つだと言えます。
おひとりさま信託(10:32)
おひとりさま信託は、各銀行が提供しているサービスです。三井住友信託銀行などが実際にこの名称でサービスを展開しており、銀行のような専門機関に対して、葬儀や遺品整理、死後の事務手続き、さらには財産の分配までを委託することができます。周囲に迷惑をかけたくない、死後の手続きもきちんと整えておきたいという思いや不安を解消できる点が特徴です。
三菱UFJ信託銀行など、他の金融機関でも同様のサービスが提供されているケースがあります。デメリットとしては費用がかかってしまう点が挙げられますが、手続きをまるごと任せられるという点は大きなメリットであり、検討に値する選択肢だと言えます。
生前贈与(11:26)
生前贈与は、死後を待たずに、生きている間に財産を有効活用してもらう方法です。ただし贈与を進めすぎると、自分の手元の資金が枯渇し、長生きした場合に生活資金が不足してしまうリスクもあるため、ある程度の資金は手元に残しておく必要があります。そのため、まとまった財産があり、生きている間には使い切れないという場合に選択肢となる方法だと言えます。2024年の相続税改正によって7年加算ルールが導入されたため、早めに計画を立てておくことが有利になります。
生きている間にお金を残しておかなければならないという制約はあるものの、贈与先は相続人や親族に限らず、寄付という形も選べるため、できる範囲で事前に取り組んでおくのも一つの方法です。
まとめ(12:32)
お一人様にとっての相続は、最後は一人で迎えることになるかもしれませんが、金融資産を自分の意思で価値ある無形資産へと変換できるチャンスでもあります。誰に渡すか、何に役立ててもらうかを自分自身で決めることができるため、自分の人生に意味のあるものを残していけるという側面もあります。生前の意思はきちんと表示しておかなければ、周囲には伝わりません。何も残しておかなければ、結局は国に帰属することになってしまいます。
法律上は、金額が大きい場合には特別縁故者を探す手続きが行われることもありますが、あらかじめ意思を残しておけば、その通りに実行してもらうことができます。制度によっては費用がかかるものや、手続きに手間がかかるもの、事前の打ち合わせが必要なものもありますが、それでも自分自身の意思を形にして残しておくという意味で、これらの選択肢を一度検討してみる価値は十分にあると言えます。
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