家計管理(QGS)

家計管理におけるボーナスや贈与の考え方

家計管理(QGS)

家計を管理していると扱いをどうすればいいのか困惑してしまうのが臨時の大きな収入です。会社からのボーナスや親や祖父母からの贈与などが代表的なものとして挙げられますね。

本記事ではボーナスや贈与のような月の収入とは別にお金が入った場合の考え方について解説します。

「あぶく銭は身につかない」を避けるためにルールや使い道を決めておこう

ボーナスや贈与のような臨時収入はつい簡単に使ってしまいがちです。その結果、後で「なんでこんなことにお金使っちゃったんだろ…」と後悔することも。

「あぶく銭は身につかない」とよく言われますが、まさにボーナスや贈与などのお金は「あぶく銭」となってしまう危険性があるのです。

ノーベル経済学賞も受賞している有名な経済学者リチャード・セイラーが行った、ある検証を紹介します。

ある2つのグループに以下の条件でAとBのどちらを選択するか質問しました。

グループ1
Aを選択:30ドルを獲得
Bを選択:39ドルを獲得、もしくは21ドルを獲得(確率はそれぞれ50%)

グループ2
あらかじめ30ドルを渡している状態
Aを選択:そのまま30ドルを獲得
Bを選択:さらに9ドル獲得、もしくは9ドルを失う(確率はそれぞれ50%)

それぞれのグループにおけるAとBの条件は一見異なるように見えますが、言い回しが違うだけで内容としては同じになります。しかし結果には大きな差が生まれました。

グループ1の結果
Aを選択した人:57%
Bを選択した人:43%

グループ2の結果
Aを選択した人:18%
Bを選択した人:82%

なぜかグループ2の条件だとBを選択する人が約80%という結果になったのです。

この結果が何を示しているかというと、簡単に言えばこの30ドルの価値は「あぶく銭」のように捉えていたということです。

いずれのグループもBの条件はギャンブルの要素があり、さらにグループ2のBの条件は「既に30ドルを獲得した状態でさらにお金を9ドル増やすか減らすか」というギャンブル色の濃い文言でした。

ギャンブル志向の強さは人それぞれですが、全体の80%超がBを選択しているということは、おそらく普段は安定志向の人でも今回はBを選択したのではないかということは想像できます。

「どうせ損するわけじゃないし、9ドル失ってもいいから追加で9ドルもらえるならギャンブルしても構わないだろう」と考えてBを選択する人が増えたということなのでしょう。普段ギャンブルをしない人でも、グループ2に入ったらBを選択しがちになるというのはなんとなく理解できるのではないでしょうか。

おそらくこれが労働の対価である給料で行われる話だったら、Aを選択する人が多くなるでしょう。ギャンブルしてもいいと思ったのは、何の対価も払わずに得られた30ドルがあるからこそなのです。

このように、自身の努力や労働の対価とは関係なく降って湧いたようなお金に対しては、その価値を軽く見てしまいがちです。そして、これはボーナスや贈与においても同じことですね。

しっかりと使い道を考えておかないと、自分らしくなかったり自分にとってプラスではない選択を取ってしまうこともあるのです。

思いがけずお金を手に入れ、つい財布の紐が緩んで浪費してしまった経験はないでしょうか。きっと心当たりがある人は多いはずです。

だからこそ臨時収入が入ったらどういうことに使うべきか、ある程度ルールや使い道を決めておくことが大事なのです。

具体的な解説に入る前に、そのことをまず頭に入れておきましょう。

貯蓄や投資に回すのは全体の25%でOK

マネーセンスカレッジが推奨している家計管理法「QGS」では、月収の75%を生活費に使い、月収の25%を貯蓄もしくは投資に回せる家計バランスを理想としています。

ボーナスや贈与なども臨時とはいえ収入ですので、バランスはQGSと同じで問題ありません。つまり、ボーナスや贈与のうち貯蓄や投資に回すのは25%でOKということです。

本サイトなどでお金や投資の勉強をしている人は投資に前のめりになりがちです。もちろん投資は大事ですが、他にも大切なことがあります。残り75%の使い道については後ほど解説します。

ボーナスや贈与を家計のあてにしてはいけない

QGSでは収入の75%で生活を行うとしています。ボーナスや贈与も「収入」ではありますが、これらの臨時収入を最初から家計内に組み込むものとして考えてはいけません。

ボーナスや贈与で入ってくるお金をあてにした家計バランスの家庭は非常に危険です。破綻予備軍と言って差し支えないでしょう。

臨時収入はあくまで「臨時」です。ボーナスも本来はもらえるかどうかわからないもの。もしもらえなかった時に家庭が破綻してしまう状態になるのは非常に危険ですので、これらを含めずにQGSのバランスを維持できる家計になるよう見直しましょう。

詳しくは以下の記事でも解説していますので気になる人はこちらもチェックしてください。

贈与やボーナス(75%)の使い道

25%は貯蓄や投資に回すとして残り75%の使い道ですが、次のような優先度で使ってほしいと考えています。

  1. 生活防衛資金の補填
  2. 生活の彩り
  3. 3年以内の支出でまだ確保できていない分の貯蓄
  4. 投資

4つ挙げましたが、基本的には上記2つの「生活防衛資金の補填」と「生活の彩り」に充ててください。それでも余った場合の最終的な使い道が3年以内の支出に対する貯蓄、そして最後の最後が投資資金です。

本サイトなどでお金や投資の知識を積極的に学ぶ方たちは、どうしても気持ちがまえのめりになりがちで、つい貯蓄や投資に意識が集中して他のことをおろそかにしてしまいがちです。

ただ忘れてはいけないのは、私たちが貯蓄や投資を頑張るのは「幸せで豊かな生活」を送るため。未来の生活だけでなく、今の生活も大切です。

普段から貯蓄や投資で未来の生活のための資産を作り上げているからこそ、臨時収入ならではの使い方があります。

最優先は生活防衛資金の補填

まず真っ先にしてほしいのは「生活防衛資金」の補填です。生活防衛資金とは事故や病気などのアクシデントなどで想定外の支出が発生した時のための資金のこと。資産形成を始める前に確保しておくべき重要なお金です。

詳しくは以下の記事で解説していますのでここでは割愛します。どのくらい生活防衛資金があればいいのかなど、重要な事項も解説していますので、もし生活防衛資金を知らないという方はこちらもお読みください。

日々の生活を送っている中でアクシデント的な出費があった場合、用意していた生活防衛資金からお金を出しているはずなのでその分が失われているはずです。

生活防衛資金は生活を守るためのセーフティーネットになる資金なので、減ったら早めに元に戻しておきたいです。

ただし、家計から毎月の積立貯蓄・投資額を決めて捻出している中で、さらに生活防衛資金に回すお金の余裕があるのかというと、決してそうではありません。

だからこそボーナス等の臨時収入で補填しましょう。こうすることで日々の生活や家計に影響することなく生活防衛資金を補うことが可能です。

生活防衛資金が補填できたら生活の彩りとなるものへ使おう

生活防衛資金を補ってもまだ余っているというのであれば、ぜひ生活の彩りになるようなものに使いましょう。いわゆる「ご褒美」ですね。

私たちは未来「だけ」を幸福で豊かな生活にしたいわけではありません。現在の生活も楽しく暮らしてこそですよね。

たとえば日々の生活がより豊かになったり便利になったりするものを購入したり、パートナーにプレゼントを渡したり、家族で旅行したり食事に行くのもいいかもしれません。

もし親からの贈与でいただいたお金であれば、そのお金で里帰りしたり孫の顔を見せに行くということも喜ばれるでしょう。

ただの散財をするのでなく、そのお金で有形・無形問わずなにか自分や周りの人の環境や心身が豊かになるような使い道ができるとよいですね。

それでも余ったら貯蓄、投資へ

生活の彩りにお金を使って、それでも余ったのであれば貯蓄や投資に回してもよいでしょう。ただし、まずは「3年以内に必要となる支出項目」を確認し、まだ捻出できていない項目があれば優先的にお金を充ててください。

マネーセンスカレッジでは3年以内に発生する支出に関しては投資ではなく貯蓄で確保するようにお伝えしています。

理由はシンプルで、支払時期が近いため投資だと損をする確率が高いため。詳しくは以下の記事で解説していますのでここでは割愛します。

まずはファイナンシャルプランから直近3年の支出項目を確認して、不足分があればその分を貯蓄として入れましょう。それでも余った分は投資に回して問題ありません。

ファイナンシャルプランや家計管理については「家計を学ぶ」で考え方や方法論を解説していますので、まだやってない人はこの機会に始めてみてくださいね。

親からの贈与は親にお金の使い道の希望や意図を聞いてみるという手も

本記事の読者の中には、親から子に資産を分け与えていく、いわゆる「贈与」を受けている方もいるかもしれません。

特に資産をある程度持っている親であれば贈与税や相続税がかからないように毎年分割して贈与していくという家庭もあります。

現状の贈与税の制度では年間110万円以下であれば贈与税は発生しません。たとえば毎年100万円を上限として親から子へ資産を移動させていけば、子どもに税負担をかけることなく贈与できます。

もしあなたが親から贈与を受けているという場合は、いったん親に贈与してもらったお金をどう使ってほしいか聞いてみるのも良いと考えます。

生きている間にお金を子に渡しておきたいと考える際、もしかすると親は贈与したお金について「こういう風に役立ててほしい」という想いがあるかもしれません。その想いを汲み取って用途を決めても良いでしょう。

たとえば、あなたに子どもがいる場合は「孫の教育に役立ててほしい」と思っているかもしれません。そういう場合は優先度の話はすこし変わってきますね。

生活防衛資金の補填後に余ったお金は、子どもの教育資金のために残しておく方がより良い使い道かもしれません。

子どもがまだ小さければ親が教育資金用としてNISAなどで運用し、大学までの教育資金をそこから拠出するという使い道だとあなたの親の希望に沿った活用ができます。その後も運用を続けて、今度はあなたが子どもに資産を継承していくというのもいいかもしれませんね。

当然、これはあくまで一例です。もちろん好きに使っていいと言われることもあるでしょう。その場合は基本的に先述した使い道と同様に考えてもらって問題ありません。

家計外のお金だからこそ人生を彩り、豊かにする使い方を考えてみよう

しっかりと家計をととのえ、貯蓄や投資をきちんと管理できている人にとっては贈与やボーナスは家計に含まれない計画外のお金。だからこそある意味取り扱いに困るのです。

だからといってあぶく銭として無為に使ってしまうのは非常にもったいない。最低限やっておきたい25%分の貯蓄・投資と生活防衛資金の補填さえやってしまったら、あとは自分や家族の人生の彩りとなるようなものに使いましょう。

有形のもの、無形のものは問いませんが、どうせならあなたや家族の思い出になるような使い方をして欲しいと思います。

QGSで家計をととのえて月収の25%を貯蓄や投資に回し、ファイナンシャルプランに沿って積立投資を行っているのであれば、金融資産に対してはすでにやるべきことをやっている状態です。

しかし、資産というのは決して金融資産だけではありません。経験や思い出、人間関係など形に残らない資産(無形資産)というものもあります。

ボーナスや贈与など家計外のお金が入ってきた時こそ無形資産に目を向けるよい機会です。自分や大切な人たちの人生を彩り、豊かにするような使い方を考えてみましょう。

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