「とりあえずiDeCo満額」は危険?
2026年は確定拠出年金の制度改正によって拠出上限額が引き上げられる年です。
上限額が引き上げられたことを受けて、SNS上では「まずはiDeCoを優先して上限まで埋めるべきだ」という意見が話題になりました。この主張が本当に正しいのかどうかを、今回はじっくり検証していきます。
2026年の制度変更のおさらい(1:17)
2026年12月には、iDeCoの掛金上限額が大きく引き上げられます。これまで会社員の拠出限度額は月2万3000円でしたが、改正後は月6万2000円まで拠出できるようになります。
これまで2万3000円という上限だったこと自体に明確な根拠があったわけではなく、なぜその金額に制限されていたのか不思議なくらいです。自営業者についても、上限が7万5000円まで引き上げられます。
一方で、第3号被保険者については従来通り月2万3000円のままとされており、この扱いの違いには疑問の声も上がっています。専業主婦や専業主夫を狙い撃ちして拠出額を抑えようとしているようにも見える制度変更ですが、本来は誰もが自分の望む生き方を自由に選べるべきであり、こうした制限をかけること自体がナンセンスだと考えます。
あわせて、加入可能年齢も引き上げられ、原則70歳まで拠出できるようになります。ただし、老齢基礎年金を受給していないことと、iDeCoの老齢給付金を受け取っていないことという2つの条件を満たす必要があります。企業型など他の年金制度との併用については特に制限はなく、この2条件に該当しなければ70歳まで拠出を続けられる制度に変わりました。
「iDeCoファースト」の意見がSNS界隈で盛り上がる(4:03)
拠出限度額が2万3000円から6万2000円へと大幅に引き上げられたことを受けて、SNS上では「投資はまずiDeCoの上限を埋めてから始めるべきだ」という意見が盛り上がりを見せました。
この主張に対して、ファイナンシャルプランナーの水瀬ケンイチ氏がブログで異論を唱えたところ、ちょっとした炎上のような形で話題になったといいます。
この異論の趣旨自体には共感できる部分が大きく、結論としてはおおむね賛同できる内容だと評価されています。ただし、具体例の挙げ方についてはファイナンシャルプランナーとしての実務経験の少なさを感じさせる部分もあるようです。
iDeCoファーストが危険だという根拠(5:06)
そもそもiDeCoを活用すべきなのは、老後の資産設計、つまり自分自身のファイナンシャルプランを持っている人に限られます。ファイナンシャルプランを持たないまま安易にiDeCoを始めるべきではありません。
ファイナンシャルプランを自分で作るのが難しいという人のために、その土台となる考え方を学べる無料の機会も用意しています。まずはそうした形でファイナンシャルプランを手に入れたうえで、iDeCoの活用を検討するのが本来の順序です。もちろん、投資に回す金額が収入に対して小さい範囲であれば、先にiDeCoを始めるケースがあってもよいかもしれません。
しかし、年齢や状況を問わず一律に6万2000円まで拠出額を引き上げるべきだという主張については、あまりに大雑把すぎるという批判がなされました。その理由は、iDeCoには60歳まで引き出せないという決定的な特徴があるからです。
この点はむしろメリットとして捉えられることもありますが、裏を返せばiDeCoで積み立てたお金は老後以降にしか使えない資金だということになります。さらに受け取り方についても、年金として受け取るか一時金として受け取るかで税金の扱いが変わってくるため、税金を避けたいという理由だけで安易に加入すると、かえって不自然な受け取り方になってしまう人も出てきます。このように税金を払いたくないという発想が先に立ってしまうのは、ファイナンシャルプランを持たないまま制度に飛びついてしまうことが原因です。
本来大切なのは、自分が理想とする老後の生活のためにいつ、いくらのお金が必要なのかを把握し、それを準備するために資産運用を行うという順序です。その結果として税金の負担が生じたとしても、必要なタイミングで必要なお金が用意できていなければ意味がありません。そのためにiDeCoが有効な制度であれば、積極的に活用すればよいというのが基本的な考え方です。
iDeCoが対応できない具体例と備え方(7:59)
iDeCoファースト論への反論としては、退職後に世界一周旅行をしたい場合や、老人ホームへの入居一時金として数百万円単位のまとまったお金が必要になる場合、あるいは葬儀費用のようにすぐに現金が必要になる場面でiDeCoでは対応できないという指摘もありました。
ただし、これらの指摘については、いずれも当てはまらないケースが多いでしょう。老人ホームの入居一時金が数百万円から数千万円にのぼるのはかなり高額な施設に限られる話であり、世界一周旅行についても、あらかじめ計画を立てているのであれば一時金として受け取れるよう準備しておけばよいだけです。
葬儀費用についても、生活防衛資金でまかなったり、一旦立て替えて後で精算したりすることができるため、すべてをiDeCoで賄う必要はありません。
とはいえ、iDeCoだけに資産形成を頼るのは望ましくないという主張自体には賛同できますし、NISAとiDeCoをバランスよく併用していくことが望ましいです。
マネーセンスの見解(9:37)
今回のような話題に一喜一憂して流されるのではなく、腰を据えて考えることが大切です。確定拠出年金は税制優遇効果が高く、企業型DCであれば社会保険料の軽減効果も期待できる、非常に強力な制度です。平均的な所得がある人であれば、NISAよりもiDeCoを優先したほうが税制面での効果は高いと考えられます。
ただし、だからといって全員が上限いっぱいまで拠出すべきだという主張は乱暴すぎます。iDeCoは60歳以降にしか受け取れないという制約があるため、年齢によって必要な積立額は大きく異なります。
すでに老後資金の準備を始めている40代であれば、60歳や65歳までの20年から25年という期間で十分に対応できる場合もありますが、資産形成が遅れている50代や60代の人にとっては、6万2000円という上限自体が足りないケースも起こり得ます。逆に20代であれば、上限いっぱいまで拠出する必要がない人も多いはずです。老後資金の準備がどこまで進んでいるかによって最適な金額は変わってくるため、一律に語れる話ではありません。
また、iDeCoやNISAの非課税枠はあくまで「枠」であり、必ずしも使い切る必要はありませんクレジットカードの利用限度額のようなものであり、NISAの年間投資枠とiDeCoの拠出上限をすべて合わせて毎月30万円以上を投資に回せる会社員はほとんどいないはずです。
大切なのは、こうした情報に流されることなく、それぞれが順序立てて資産形成に取り組むことであり、その出発点となるのがファイナンシャルプランです。必要な金額が明確になれば、それに応じた毎月の積立額もおのずと決まってきます。
資産運用に必要な4つの変数(12:00)
資産運用を考えるうえで重要になるのは、利回り、毎月の積立額、資金を使うまでの期間、そして必要な金額という4つの変数です。このうち利回りについては、全世界投資であれば年7%程度、インフレを考慮した実質ベースでは年5%程度を前提に考えるのが妥当だとされています。これは過去の長期的な運用データに基づく数値であり、長期運用によってこそ期待できるリターンです。
利回りが固定だとすると、残る変数は3つになります。年齢についてはすでに決まっているため、65歳や60歳までの残り年数はおのずと算出できます。そうなると実質的に検討すべき変数は、毎月の積立額と将来必要になる金額の2つに絞られます。この2つはどちらか一方が決まれば、もう一方も自動的に決まるという関係にあります。
毎月の積立額は、収入から生活費を差し引いた残りの範囲で暫定的に決めることはできますが、それだけで将来必要な金額を本当にまかなえるかどうかは分かりません。逆に65歳時点で必要な金額から逆算しようとしても、それにはファイナンシャルプランを作るしかありません。
将来受け取れる年金の額や老後の生活費を踏まえて必要な総額を算出し、そこから毎月の積立額を逆算することは可能ですが、それが実際に積み立て可能な金額かどうかはまた別の問題です。収入には上限があるため、今の生活と将来の生活のバランスを見ながら、自分にとって納得できる着地点を探っていくことこそがファイナンシャルプランを持つということです。これは誰かに代わってもらえるものではなく、自分自身で向き合うべき課題です。
専門家ができるのはあくまでサポートまでであり、最終的には生活費を切り詰めて積立額を増やすのか、それとも今の生活水準を優先して将来の資産形成をゆるやかにするのか、それぞれの家庭の事情に応じて決めていく必要があります。そうした家庭の事情や希望を丁寧にすり合わせないまま、一律に上限まで拠出すべきだと主張するのは、やはり乱暴だと言わざるを得ません。
まとめ(15:51)
iDeCoは便利でお得な制度であり、多くの人に活用してほしい制度であることに変わりはありません。ただし、投資を始める時点でiDeCoや企業型DCを利用できる環境にあるとは限らず、その場合はNISAなどを活用すればよいでしょう。
そのNISAについても、長期投資という観点からは10年以上先に使うお金と位置づけるのが基本的な考え方です。この期間の長さについては人によって意見が分かれるところであり、直近10年程度は株式相場が好調だったこともあって、もっと短い期間でも問題ないと感じる人もいるかもしれません。
しかし、過去には何度も暴落を経験しており、25年ほどにわたる投資教育や情報発信の中でも、そうした局面を繰り返し目の当たりにしてきました。そうした下落局面を乗り越えられるような投資方法や考え方を一つひとつ確認しながら準備していく必要があるため、こうした知識を一人だけで身につけるのはハードルが高いともいえます。
そのためにも、専門的なサポートを活用したり、ファイナンシャルプランニングについて自分自身で学んだりすることをお勧めします。
ファイナンシャルプランニング技能検定であれば、3級では内容としてやや物足りず、2級やAFPまで学べば、自分自身のファイナンシャルプランを作れるレベルに近づけるでしょう。試験としての難易度は高いため相応の勉強は必要になりますが、身につけた知識は人生を通じて役立つものになるはずです。
またこちらの動画「【放置厳禁】SBI証券iDeCoで「積立不可」になるファンド発生!あなたの設定は大丈夫?」では、除外商品で積立不可になる前の確認と対応策を解説していますのでぜひご覧ください。





