確定拠出年金は、個人で加入する「iDeCo」と企業が導入する「企業型DC(企業型確定拠出年金)」の2つに制度がわかれています。
2つの制度があることを知っている方は多くいますが、それぞれの制度についてきちんと区別し説明できる方はあまり多くありません。
そこで本記事では「iDeCo」と「企業型DC」の違いを解説します。iDeCoと企業型DCは使い方や拠出限度額が違うので、それぞれの制度を理解してあなたがどちらを利用できるか確認しておきましょう。
iDeCoとは個人で加入する制度
iDeCoとは「個人」で加入する確定拠出年金制度です。
原則、誰でも加入できますが、公的年金にプラスしてある私的年金制度なので利用するかどうかは自分自身で選べます。
iDeCoの特徴は、加入申請から手続き、運用にいたるまですべて自分で行う点です。その際の利用手数料なども全額自己負担になります。
また、iDeCoは個人の働き方によって拠出金額(掛金)の上限金額が変わります。たとえば自営業者(第1号被保険者)がiDeCoに加入する場合、毎月最大6.8万円(年間81.2万円)、専業主婦(第3号被保険者)は毎月2.3万円(年間14.4万円)まで拠出できます。
拠出したお金は原則60歳まで引き出すことはできません。利用自体は最長65歳まで運用できます。
企業型DCは企業で導入する制度
企業型DCは「企業」が社員の福利厚生として導入する制度です。
基本的に、導入した場合は全従業員が自動的に加入するようになります。ただし「選択制DC」と呼ばれる制度を採用している場合は、加入するかどうかを従業員が選択できます。
企業型DCの特徴は企業が掛金を拠出し、金融商品の選定や運用は従業員(加入者)が行う点です。iDeCoと違い、利用時の手数料や口座の開設手続きなどは企業が負担(事業主負担)になります。
毎月の拠出金額に関しては企業側が設定します。そのため制度の重要性をあまり理解していない企業では、掛金が最低設定額の5,000円と少額になっていることも。
企業型DCもiDeCoと同様に、拠出したお金は原則60歳まで引き出せません。企業が定めるDC規約にもよりますが、積み立ては原則70歳まで可能となっています。
iDeCoと企業型DCの違いまとめ
iDeCoと企業型DCの制度をまとめたものが以下の表になります。
iDeCoは「個人」が手数料などをすべて負担し、自営業者であれば拠出限度額が6.8万円まであるといった特徴があります。
一方、企業型DCは「企業」が拠出金や手数料などを負担し、選択制DCやマッチング拠出など拠出方法が複数あることが特徴です。
また、企業型DCだけのメリットとして社会保険料の軽減効果があります。
社会保険料の計算は「標準報酬月額」と呼ばれるものを使って計算します。標準報酬月額は、給与の平均額を一定の範囲ごとで区分し等級表に当てはめたものです。
標準報酬月額には基本給や残業手当などが含まれますが、確定拠出年金の拠出金は含まれません。
ということは、標準報酬月額の等級が下がり社会保険料も軽減できるということです。
iDeCoの場合、すでに給与を受け取った後に拠出する関係上、標準報酬月額には影響を与えません。つまり、企業型DCと比べて高い社会保険料を支払ったあとにiDeCoの掛金を拠出することになります。
加入条件や拠出限度額に関しては別の記事でより詳しく解説をしています。本記事と併せてぜひそちらもチェックしてくださいね。
iDeCoと企業型確定拠出年金は併用可能
現在、企業型DCに加入している方の中で拠出金額をもっと増やしたいと考えている方もいるのではないでしょうか。企業が設定した拠出金額が少ない場合によくある疑問です。
企業型DCは「iDeCo」と併用することができます。併用することで拠出限度額いっぱいまで拠出金額を増やすことが可能です。
これまでは企業型DCの加入者がiDeCoを利用するためには、企業の規約にiDeCoの加入を認める旨の記載があり、かつ事業主掛金の上限を3.5万円まで引き下げた企業だけでした。
しかし、2022年10月より制度が改正され、企業型DCの加入者はDC規約の記載や掛金の上限引き下げがなくても、希望すれば誰でもiDeCoに加入できるようになりました。
そのため、基本的には企業型DCに加入してるほぼすべての方がiDeCoとの併用が可能です。
iDeCoと企業型確定拠出年金が併用できない場合
企業型DCに加入している場合でも、多くの方がiDeCoを使えるようになりました。
ただし、iDeCoと企業型DCを併用できない場合が3パターンあります。
- 企業型DCでマッチング拠出を行っている場合
- 企業型DCの事業主掛金が各月拠出ではない場合
- いわゆるキャリーオーバーを行う設計になっている場合
3つのうちどれか1つでも実施しているとiDeCoとの併用はできないので、それぞれの内容をきちんと把握しておきましょう。
・企業型DCでマッチング拠出を行っている場合
企業型DCだけで導入できる「マッチング拠出」を利用した場合、企業型DCとiDeCoの併用はできません。
マッチング拠出とは、企業が拠出する掛金に加入者が掛金をプラスして拠出できる仕組みです。企業がDC規約で導入していないと利用することはできません。
加入者がマッチング拠出で拠出する金額は、企業が拠出する金額を超えてはいけません。たとえば、企業が毎月1万円拠出している場合は、加入者が拠出できる金額も最大1万円までになります。
企業型DCが導入されていて、マッチング拠出制度を採用していたとしても、マッチング拠出を利用していなければ、なおiDeCoに加入できます。
併用することができないだけで、導入されていてもiDeCoに同時加入することは可能ですので、この点は理解しておきましょう。
・企業型DCの事業主掛金が各月拠出ではない場合
企業型DCの事業主掛金が各月拠出になっていることも必要になります。
確定拠出年金では、基本的に各月拠出ですが「年単位制」と呼ばれる拠出方法を選ぶこともできます。年単位拠出は、いままで月単位で管理していた拠出額を年単位にすることができる制度です。
たとえば、1月に拠出限度額が5.5万円のところ3万円拠出したとき、残りの2.5万円は2月に余裕があっても拠出することができませんでした。普段は少ないけれども賞与のときに大きく拠出するといった運用ができないといった問題点がありました。そこで生まれたのが年単位制になります。
年単位制を導入すると、12月から翌年11月までの1年間で拠出するタイミングを1ヶ月毎ではなく、2ヶ月毎、6ヶ月毎などのように柔軟に変更することもできます。
年単位制を採用している場合で、事業主掛金が各月拠出ではない企業型DCになっている場合、残念ながらiDeCoを併用することができません。
併用したい場合にはDC規約の変更をして各月拠出に変更する必要があります。
・いわゆるキャリーオーバーを行う設計になっている場合
企業型DCの事業主掛金が各月の拠出限度額を超えていないこともiDeCoを併用するための条件です。
これには企業型DCのDC規約に定めが必要になりますが、事業主は各月の拠出限度額を超えて掛金を拠出することが可能です。
前項の年単位制のところでも説明しましたが、たとえば、各月の拠出限度額が5.5万円で3万円しか拠出しなかった月があったとき、DC規約の定めがあれば、事業主は他の月に差額の2.5万円を加えて拠出することができます。
この場合、翌月の5.5万円に2.5万円を加えた8万円を拠出することができるということです。
実際にこのようなDC規約があり運用されている場合はiDeCoを併用することができません。併用したい場合にはDC規約の変更が必要になります。
企業の掛金と加入者の掛金の累計が制度上の拠出限度額を超えないことも利用の条件になります。
併用する場合の拠出限度額などに関しては「確定拠出年金の拠出限度額」の記事で解説しています。併用時の具体的な金額を知りたい方はぜひご参照ください。
自分がどちらの制度を利用できるかきちんと把握しておこう
iDeCoと企業型DCの制度目的は同じです。
これからの不安定な時代に向けて、国民に老後資金を作ってもらうために政府が用意しました。
2つの制度には手数料の負担や拠出限度額などの細かい違いがあります。それらの違いは、利用する場合のメリットやデメリットにも影響するのでしっかりと把握しておきましょう。
どちらを利用する場合も最後に運用するのは自分自身。そのためにしっかりと資産運用の知識を身につけながら制度を活用し、豊かな老後を送る準備を始めましょう。
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