50代からでもiDeCoは最強
今年はiDeCoの改正が控えており、これまで以上に注目が集まっています。とてもよいことだと感じています。
一方で、50代以降になると老後までの期間が短いため、今から始めても遅いのではないかという意見も耳にします。しかし、投資期間として10年ほど確保できれば基本的には問題ないと考えています。老後が近いとしても、実際にお金を使うまでの期間をしっかり見極めることが大切です。
長期投資を前提にお話しするのは、資産運用の再現性を高め、リスクを抑えながら期待利回りを確保するためです。期待利回りはおおよそ7%程度、インフレ分を差し引いた実質ベースでは5%程度を目安にシミュレーションすることが多くあります。
インフレ局面ではリスクオンの資金が集まりやすく運用がうまくいきやすい面もありますが、今の相場環境がずっと続くとは限らず、これまでも暴落は何度も経験してきましたし、今後も起こり得るものです。それでも再現性を高めるためにリスクを抑えながら長期投資を続けることが、資産分散や時間分散にもつながります。
投資期間が短いというのはあくまで個人の事情であり、投資は世の中の値動きに委ねるものなので、用意できる唯一の武器は投資期間だということになります。50代であれば老後を迎えるまでにまだ10年ありますし、実際にお金を使う時期はさらにその先になります。
60歳で定年を迎えても65歳まで働くケースは少なくなく、65歳から年金を受け取れる仕組み上、できるだけ長く働きたいと考える方も多いはずです。iDeCoは入り口の戦略として所得控除という強力な仕組みがあるため、50代から始めても全く遅くなく、むしろ本格化してもよいくらいです。
結論として遅くないどころかむしろやるべきだと考えていますが、注意点もあるため順番に解説していきます。
2026年の制度変更をおさらい(3:13)
2026年はiDeCoにとって大きな制度改正の年です。まず12月に予定されているのが加入可能年齢の引き上げで、これまでの65歳未満から70歳未満まで拡大されます。
ただし65歳までの加入も、実際には国民年金の被保険者であることが条件でした。国民年金の保険料は原則60歳で納付が終了するため、40年間きちんと納めていた方は60歳以降加入できないケースがありました。
60歳から65歳の間は、厚生年金に加入して働く第2号被保険者や、国民年金に任意加入している方に限ってiDeCoに加入できる仕組みだったのです。12月の改正以降はこの条件が大きく緩和され、70歳未満であれば、老齢年金を受給しておらず、かつiDeCoの老齢給付金を受け取っていないという2つの条件を満たせば、原則として誰でも加入できるようになります。
働いている方の多くはこの2つに該当しないため、65歳以降の方でも計画次第で加入を続けられるようになります。
同時に、拠出限度額の引き上げも行われます。これまで第1号被保険者は国民年金基金と合わせて月額6万8000円、企業年金のある会社員は月額2万円、企業年金のない会社員は月額2万3000円が上限でした。企業型DCであれば本来5万5000円まで拠出できるにもかかわらず、iDeCoには別の上限が設けられていたのです。
改正後はどちらの立場の方も一律で月額7000円引き上げられ、第1号被保険者は月額7万5000円、会社員は企業年金の有無にかかわらず月額6万2000円が上限となります。60歳から70歳の方も申請をすれば同様に月額6万2000円まで拠出できるようになります。なお、専業主婦などの第3号被保険者については月額2万3000円のまま変更はありません。
iDeCoの制度をおさらい(6:47)
iDeCoが節税効果の高い制度だと言われるのは、拠出時、運用時、受け取り時それぞれに税制優遇があるためです。
特定口座で投資する場合、拠出する原資はすでに所得税や住民税、社会保険料が差し引かれた後のお金になります。運用中に配当や利子を受け取れば国税と地方税を合わせて20.315%の税金がかかり、売却益にも同じ税率が課税されるため、入り口から出口まですべての段階で課税されるのが特定口座です。
一方NISAも、拠出する原資自体は税金が引かれた後のお金である点は同じですが、運用中の利益や売却益には税金がかからないため、特定口座よりも有利な制度として2024年から新しいNISAがスタートしています。
これに対してiDeCoや企業型DCは、拠出する時点から非課税という違いがあります。拠出した金額は全額が所得控除の対象となり、そもそも税金がかかっていないお金を投資に回せる仕組みです。運用中も配当や売却益に税金はかからず、口座の中で売買を繰り返しても課税されません。
ただし、拠出時と運用時の両方を非課税にしている分、受け取る出口の段階では課税される仕組みになっています。とはいえ、一時金として受け取る場合は退職金と同じ退職所得控除が使え、年金として受け取る場合は公的年金等控除が使えるため、受け取る金額が大きい方に多少の税負担が生じることはあっても、特定口座やNISAと比較して損をするような制度ではありません。
iDeCoに拠出すると税金が少なくなる仕組み(9:30)
所得控除の仕組みがよく分からないという方も多いので、税金の流れに沿って説明します。
給与所得者であれば、まず給与収入から給与所得控除が差し引かれ、給与所得が算出されます。これは給与を得るために必要な経費を一律の金額で概算控除してくれるものです。
そこからさらに基礎控除や扶養控除などの所得控除が差し引かれ、残った金額が課税所得となります。iDeCoの掛金はこの所得控除の中の小規模企業共済等掛金控除という項目に該当し、掛金の全額をそのまま差し引くことができます。
課税所得に税率をかけたものが所得税額で、住民税額はほぼ一律10%として計算されます。そこからさらに住宅ローン控除などの税額控除が差し引かれ、最終的な納税額が決まる仕組みです。
生命保険料控除のように支払った金額の一部しか控除されない制度もある中で、iDeCoは掛金の全額が控除対象になる非常に強力な制度だと言えます。
年収別控除額のシミュレーション(11:29)
このiDeCoの所得控除がどれほどお得なのかは、計算してみないと実感しづらいものです。多くの方は年末調整で手続きが完結してしまうため、自分がどれだけ税金を納めているのか意識する機会が少なく、節税効果を知らないまま過ごしているケースも珍しくありません。
所得税は累進課税のため、年収が上がるほど税率も段階的に上がっていきます。例えば年収400万円程度の方であれば、所得税率はおおよそ5%、住民税10%を合わせて15%程度になります。
現行制度でこの方が上限いっぱいの月2万3000円を拠出すると、年間27万6000円の拠出額に対して年間4万1400円の節税効果が生まれます。12月の改正後、上限が月6万2000円まで引き上げられた場合、同じ考え方で計算すると節税効果は年間11万1600円となり、7万200円の増加になります。
次に、50代の方の平均的な年収である600万円、中央値である500万円程度で考えてみます。他の所得控除を差し引いても課税所得はおおよそ230万円前後残ると想定すると、所得税10%、住民税10%の合計20%程度の税率になるケースが多くなります。
この場合、月6万2000円を満額拠出すると年間拠出額は74万4000円、節税効果は年間14万8800円にもなります。仮に55歳から65歳までの10年間続ければ、節税効果の合計は148万8000円にのぼり、拠出したお金がまるまる自分の資産として残りながらこの金額を税金として納めずに済むことになります。
さらに所得税率20%、住民税10%の合計30%になる高所得の方であれば節税効果はさらに大きくなり、所得が多い人ほど有利な制度だと言えます。
50代の人ほどiDeCo使うべし(16:13)
50代の方は20代や30代と比べて年収が高い傾向にあり、平均値でも中央値でもその差は明らかです。20代で年収500万円に届く方はごく少数派ですが、50代であれば中央値500万円、平均値600万円という水準は決して珍しくありません。
この水準の年収があれば満額拠出で10年間の節税効果は150万円ほどにもなり、非常に大きな恩恵を受けられます。老後資金がまだあまり貯まっていないという50代の方であれば、なおさら積極的に活用したい制度です。
年間74万4000円の拠出を10年間続けても元本は744万円であり、理想とする老後資金からすると少し物足りなく感じるかもしれませんが、運用によって1.5倍程度になれば1000万円ほどに達する可能性があります。
子育てが一段落し、すでに手元にまとまった資金がある方であれば、その資金も合わせて運用することで、例えば500万円が10年で倍になれば2000万円に届き、いわゆる老後2000万円問題は十分クリアできる水準になります。
こう考えると、50代からiDeCoを始めるのが遅いということは全くなく、むしろ最も効果を発揮しやすい年代だとも言えます。受け取り方によっては多少の税金がかかる場合もありますが、これまで受けてきた節税効果がすべて相殺されてしまうようなことはありません。
すでにNISAを活用しているという方はそれも並行して続けてよいと思いますが、どのみち老後のために貯めていくお金であれば、iDeCoの制度をあわせて活用しない手はないはずです。なお、専業主婦などもともと所得税や住民税がかかっていない方の場合は、そもそも控除を受けるべき所得がないため恩恵は受けにくくなりますが、給与所得があり実際に税金を納めている方であれば、この節税効果は決して無視できるものではありません。
iDeCoの注意点(19:42)
iDeCoを活用するうえで注意したいのは、60歳になるまで原則として資金を引き出せないという点です。そのため、老後資金がどのくらい必要になるのか、大まかにでもよいので見通しを立てておくことが大切です。
老後に必要な金額はあくまで目安であり、その範囲で生活すれば十分ですし、健康的な生活を心がけること自体が将来への備えにもなります。
掛金を満額まで拠出できるのは収入や資産に余裕がある方に限られますが、50代や60代であれば子育てが一段落し住居や車もすでに揃っているなど、満額拠出が現実的な選択肢になりやすい年代でもあります。
また、iDeCoの運用商品には必ず元本確保型の商品が含まれているため、投資によるリスクを取りたくないという方でもこの制度を利用すること自体は可能です。元本確保型を選んだ場合でも拠出した金額に対する所得控除の効果はそのまま得られるため、同じ金額を銀行預金で貯めるよりも確実にお得になります。
60歳まで、あるいは会社を退職するまで引き出せないという制約はありますが、リスクを取らずに貯めるだけでも銀行預金より有利な制度だと言えます。手数料についても口座開設時に数千円程度、毎月の口座管理費用は数百円程度とごくわずかで、制度を正しく理解して活用する価値は十分にあります。
まとめ(21:32)
拠出した掛金がそのまま将来の資産として積み上がっていくことを考えると、銀行預金だけで貯めていく場合に心配になりがちなインフレへの目減りも、十分にカバーできる可能性があります。
年間74万4000円を10年間拠出した場合、節税効果だけで100万円から220万円程度にのぼるため、単純に割り戻して考えてもインフレ率を上回る効果が期待できます。
これほど有利な制度を利用しない理由はなく、特に50代でまとまった収入がある方にとっては見逃してしまいがちな大きなチャンスだと感じています。iDeCoの制度についてよく分からないという方も多いと思いますので、まずは基本的な仕組みから理解を深めていただければと思います。
またこちらの動画「【NISAだけの人、要注意!】退職所得控除がゼロでもiDeCoを使わないと損する理由」では、NISAとの比較や受取方法を踏まえたiDeCo活用法を紹介していますのでぜひご覧ください。





