その資産分散、意味ないかも。リターンだけ下がってリスクが下がらない分散を解説 

このところ「アメリカ一強」という空気が少し落ち着き、SNSを見ていても資産分散を意識し始める人が増えてきました。今回は代表的な分散のパターンを三つ取り上げ、それぞれの特徴と注意点を解説していきます。

もちろん、あえて分散をしたくないという人はその判断のままで問題ありません。ここで扱うのは、資産分散や時間分散を通じて安心して長く資産を持ち続けたいと考えているものの、具体的にどう進めればよいか分からないという人に向けた内容です。

①オルカンを含める(1:42)

一つ目のパターンは、S&P500だけを持っていた人が、そこにオール・カントリー、いわゆるオルカンを組み合わせる、あるいはS&P500からオルカンへ完全に乗り換えるという動きです。月に100人、多いときには200人ほど新たに登録がある中でも、このケースは特に多く見られます。

アメリカへの集中をやや懸念し、株式の世界分散を図りたいという動機から、S&P500からオルカンへの移行やアドバイザーの勧めによる乗り換えを選ぶ人が目立ちます。分散したいという気持ちで行動すること自体は良いことですが、実際にはオルカンの中身の約三分の二はアメリカ株が占めています。

新興国や日本株も一部含まれるため方向性としては間違っていないものの、値動きのリスクはほとんど下がらず、その一方でリターンだけは低下してしまうという結果になりがちです。分散を進める本来の目的がリスクを抑えることだとすれば、これでは目的が達成されていないことになります

実際、2003年からの全世界株式投資と比較しても、オルカンとのリスクの差はほとんどありません。アメリカが市場を牽引してきた時代が続いてきたことを踏まえると、もう一歩踏み込んだ分散を検討したほうがよいと考えられます。

②オルカン+金+不動産+暗号資産(4:36)

二つ目は、オルカンに加えて金、不動産ファンド(J-REIT)、そして暗号資産まで組み合わせるパターンです。これこそが本当の国際分散投資だと考える人も一定数います。確かにオルカンの株式に対して金や不動産、暗号資産はそれぞれ異なる値動きをするため、分散効果自体は期待できます。

ただし、これらはいずれもリスクの高い資産である点には注意が必要ですオルカンを半分程度にして金の比率を大きく高めるようなバランスであればリスクを抑える効果も見込めますが、オルカンが9割でその他が1割ずつというような配分では、効果はあまり期待できません

暗号資産については金の代替として持つ考え方もありますが、金とは別のリスクを抱えており、現状の日本では税制面の優遇もありません。アメリカではETFとして購入できる環境が整いつつあるため、日本でも金融所得課税が一体化されれば状況が変わってくる可能性はあります。

このポートフォリオ全体を見ると、値下がりに備える債券が組み込まれておらず、いわば全員が攻めのポジションを取っているような状態で、守りの役割を果たす資産がありません。国内債券は現在の金利上昇局面ではやや厳しいものの、海外債券についてはこの10年で先進国債券がプラス53%程度、新興国債券ではプラス81%程度のリターンが出ており、株式ほどではないにせよ十分にバッファーとしての役割を果たします。

円安による目減り分もおおよそ40%ほど吸収できている計算になり、平均的な期待リターンとされる7%を上回っている点からも、決して損をする資産ではありません。とはいえ、こうした4資産の組み合わせを選ぶ人にとって債券を勧めてもすぐには響きにくいかもしれず、実際に経験してみないと納得しづらい部分もありますが、組み入れの選択肢として債券を加えることは十分検討する価値があります。

③オルカン+現金(9:52)

三つ目としてよく見られるのが、オルカンと現金を組み合わせるパターンです。故・山崎元氏もこの方法を著書の中で推奨していたことで知られています。ここでまず注意すべき点として、生活防衛資金をこの「現金」に含めてしまっているケースが挙げられます。

生活防衛資金は投資の有無にかかわらず誰もが確保しておくべきものであり、実際に生活防衛資金の有無が投資の成否を左右するという研究データもあります。そのため、生活防衛資金とオルカンへのヘッジとしての現金は別会計として考えるべきです。

確かに現金を組み合わせることで資産全体のリスクは下がり、分散効果としては機能しますが、現金は決してリスクゼロの資産ではなく、インフレによる購買力の低下という別のリスクを抱えていますそのため現金の比率が2割程度にとどまるような配分ではヘッジ効果としては弱く、よく見られる比率としてはオルカン7割、現金3割程度が挙げられます

この配分であれば期待リターンは全世界投資の平均に近い6%弱まで近づきますが、現金部分の3割については、たとえば3%のインフレが続けば実質でマイナス3%の運用をしているのと同じ状態になります。信託報酬などの固定コストはかからないとはいえ、インフレによる目減りは避けられません。個人向け国債を選んだ場合でも利回りは1.5〜2%程度にとどまるため、年間の期待リターンは6%程度まで下がってしまいます。

ここまで来るのであれば、もう一歩進んだアセットアロケーションによる分散を検討してもよいはずです。オルカンと現金の組み合わせは最低限の資産配分としては機能するものの、インフレへの耐性や円安への為替ヘッジという面では弱く、金や海外資産を加えることでその弱点を補える可能性があります。この現金プラスオルカンという考え方の根底には、海外資産に投資する経済的な合理性が見出せないという主張もありますが、それは必ずしも市場の実態と一致するわけではありません。

全世界投資なみにリスクを減らすには?(14:16)

経済的合理性だけで説明しようとすると、従来型の経済学では成り立っていた部分もありますが、現在は感情が経済を動かすという行動経済学の視点も重要になってきています。実際にこの分野の研究にノーベル経済学賞が贈られていることからも、その重要性がうかがえます。

SBIグループの北尾氏も「感情経済圏」という言葉を用いており、人間には経済的合理性だけでは説明できない感情があり、そこにビジネスや収益のチャンスがあります。SNSでの発信自体もそうした感情に基づく側面を持っていることは否めず、感情によるリターンやその逆のブレをアセットアロケーションに正確に組み込むのは難しいものの、そうした不合理な部分にもリターンが存在するのであれば、それを自身の資産形成の中に取り入れていく考え方もあり得ます。こうした視点は社会学的アプローチとも呼ばれ、純粋な資産配分理論だけではうまくいかない部分を補う要素として重要です。

改めて先ほどの「オルカン7割、現金3割」の配分は、リスクとリターンのバランスとしては比較的優れており、全世界投資と同程度までリスクを抑えられる水準です。これはリーマンショックのような市場の急落局面に対する耐性が高まることを意味します。実際、全世界投資のアセットアロケーション運用ではリーマンショック時の下落幅がマイナス30%台後半程度に収まったのに対し、オルカン単体ではマイナス60%程度まで下落しました。ただし、その分リターンも6%弱まで下がってしまうため、リバランスの効果を加味しても6%程度に落ち着く見込みです

ここでさらにリスクを抑えつつリターンを維持している例としてGPIFの4資産均等分配が挙げられ、なぜここまでオルカンにこだわる必要があるのかという疑問が浮かびます。アセットアロケーションという視点に立てば、よりリスクを抑えながらリターンを高められる選択肢が存在し、これはオルカン一本という考え方から一度離れてみないと気づきにくい発想です。

実際には4資産均等分配や3地域均等分配といった単一ファンドの選択肢も存在しており、それでもなぜオルカン一本に人気が集中するのかについては、発信者側の主観が大きく影響している可能性があります。「経済的合理性」という言葉がひとり歩きしている面はあるものの、実際に投資を続けてみるとその通りにはいかないこともあるため、それぞれの主張を丁寧に理解した上で、最終的には各自が納得できる方法を選ぶべきです。

まとめ(18:18)

分散をしたいという考え方自体は、これまで築いてきた資産を守り、値動きの振れ幅を抑えたいという意味で非常に良い方向性です。ただし、単一のファンドを選ぶことやNISA制度を前提に配分を決めることは、本来の運用方法から出発した考え方ではなく、あくまで金融商品や口座制度という枠組みから出発した発想にすぎません。

世界の経済成長そのものはそうした制度の枠に合わせて動いているわけではなく、日本独自のルールや個人の思い込みによって縛られている面も少なくありません。また、金などの資産を組み入れる場合には、その資産だけが値上がりすることでバランスが崩れやすくなるため、定期的なリバランスを行い分散の効果を維持し続けることが欠かせません。

こうした資産配分とその維持を続けていく考え方はアセットアロケーション運用と呼ばれ、その重要な部分については会員向けのコンテンツや今後公開予定のブックレットでも詳しく取り上げていきます。ここまでの内容も踏まえた上で、それぞれがどう感じ、どう行動するかを決めていただければと思います。

またこちらの動画「オルカンより勝率の高い投資を1万回シミュレーションで検証」では、モンテカルロ・シミュレーションでリスクと着地点の考え方を“見える化”していますのでぜひご覧ください。

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