インフレ時代に持つべき現金はいくら?投資と現金の最適な割合 

現在はインフレによる物価上昇が続いており、世の中では貯金などやめて新NISAに全力を注ぐべきだという声も聞かれます。とはいえ、手元に置いておくべき現金は必要です。そこで、現金と投資に回すお金の最適な比率はどのあたりにあるのかを解説していきます。

これから積立貯蓄や積立投資を始めようとする人に向けた話であり、すでに投資をしている人については別の考え方になります。現金と投資の割合をどう考えればよいのかについて、3つのパターンに分けて説明します。

パターンA 全力投資型(1:13)

まず一つ目は、巷でよく言われる全力投資型です。これに関しては、生活防衛資金は絶対に確保してほしいという前提があります。目安としては生活費の3ヶ月から6ヶ月分、できれば6ヶ月分あるとよいでしょう。一人暮らしであれば50万円から100万円程度、100万円あれば十分です。生活防衛資金はいつでも引き出せる状態にしておく必要があり、24時間以内に引き出せるもの、最大でも定期預金程度にとどめておくのが望ましいです。

それを確保せずに全力で投資に回す方法も一つの選択肢ではありますが、基本的にはうまくいかないと考えてください。2万人以上にアドバイスをしてきた中で、生活防衛資金を貯めずに投資をしたケースでは、取り崩せなくなってしまう状態に陥る人が多く見られます。メリットとしては全資金を投資に回せるため、長期的なリターンを最大化しやすい点が挙げられます。

一方でデメリットは、緊急時に投資を取り崩さなければならない場面で、本人が意識を失っていたり病気で動けなかったりすると、どこから引き出せばよいのか分からなくなってしまうことです。投資信託であれば4営業日以内に現金化できますし、証券会社によってはハイブリッド預金などから引き出すこともできますが、それはあくまで本人が正常な状態であることが前提です。定期預金であれば家族カードのような形で家族が代わりに引き出せるサービスもありますが、投資商品ではそう簡単にはいきません。

さらに相場が下落している局面も考慮する必要があります。投資は常に順調なわけではなく、暴落が起きれば数年間ドローダウンが続くこともあり、そうしたアクシデントはタイミングを選んでくれません。手元資金がないと不安が増し、老後の取り崩し方法などに気を取られてしまい、本来の生活が脅かされることにもなりかねません。

生活防衛資金がないと、結局投資自体が継続できなくなるケースも数多く見てきました。特にリーマンショックの際は、毎月積立投資をしていた人でもピークから回復するまでに3年ほどかかったこともあります。その間に取り崩せない状況や、慌てて投資をやめてしまうリスクが高まってしまいます。全力投資はリターンを最大化するという点では優れた方法論ですが、様々なデメリットが伴うことを理解しておく必要があります。

パターンB 生活防衛資金+投資型(5:08)

続いてはパターンBで、生活防衛資金と投資を組み合わせる方法です。生活防衛資金は一人暮らしであれば50万円から100万円程度、投資を行うのであれば100万円ほど用意しておきたいところです。それ以外のお金はすべて投資に回すという考え方で、安定度が高く、多くの人に当てはまるパターンだと感じています。

突発的な出費やアクシデントにも十分対応でき、仮に目減りしたとしてもボーナスや毎月の貯蓄から生活防衛資金を回復させれば特に問題はありません。クレジットカードでの支払いや、いざという時には親族に引き出しを頼むといった対応もできるため、安心感があります。

一方でデメリットは、投資に回す期間が足りなくなる場合があることです。近いうちに使う予定のあるお金まで投資に回してしまうと、増えていればよいのですが、下落局面で必要になった場合には困った状況になります。推奨している投資期間はおおよそ10年です。最近投資を始めた人は増えている実感があるかもしれませんが、下落するリスクがあるからこそリターンが生まれるものであり、期待利回りはあくまで予想であって将来にならなければ分かりません。

積み立てた金額が100万円であっても、運用結果として90万円や80万円になっている状態も起こり得ます。その状態で使おうとすれば当然お金が足りなくなり、回復するまでに時間がかかってしまいます。だからこそ10年以内に使う予定のあるお金は運用に回さないでほしいと考えています逆に10年を超えて長期投資をしていて損をしている人は、これまでほとんど見たことがありません

パターンBではこうした区分けをしていないため、目減りしているタイミングで使わざるを得なくなる可能性があります。これをもう少し良くするためには、ファイナンシャルプラン、つまり資金計画が必要になってきます。10年以内に使うお金を把握できていない人は意外と多いものです。結婚資金や旅行代金、新居の費用など、考えようとすれば大体は洗い出せるはずですが、それを考えたことがない人が多いために、このお金まで投資に回してしまい、結果として叶えたい夢が叶わなくなってしまうことがあります。

パターンC 生活防衛資金+10年以内に使うお金(現金)+投資(9:37)

続いてパターンCですが、生活防衛資金と10年以内に使うお金を現金で確保し、残りを投資に回すという考え方です。これがもっともおすすめできる方法だと考えています。もちろん先ほど触れたファイナンシャルプランは必要で、10年以内に使うお金は必ず計算しておかなければなりません。生活防衛資金もあわせて貯める必要があり、今まさにゼロの状態から始めようとしている人もいるでしょう。これは自分の人生を相場に合わせるのではなく、自分の人生に相場を合わせるようなスタイルが必要だということです。

このパターンでは、生活防衛資金が貯まるまでは、10年以内に使うお金も投資に回すお金もない状態が続きます。生活防衛資金が貯まる前に叶えたい夢のためにお金をどんどん使ってしまうと、自転車操業のような生き方と変わらなくなってしまいます。

まずは生活防衛資金を貯めることが先決で、最初は50万円を貯め、そこから残りの50万円と10年以内に使うお金、投資分を並行して貯めていっても構いません。その間投資ができないと感じるかもしれませんが、生活防衛資金さえきちんと確保できているのであれば、10年以内に使うお金や投資に月1万円程度回しても特に問題はないでしょう。生活防衛資金が貯まった後は投資金額を自由に決めてよく、投資に回すか10年以内に使うかはトレードオフの関係にあるため、自分自身と向き合いながら判断すればよいことです。

この話をすると大抵出てくる反論が、インフレの時代に貯蓄だけしていてはインフレに負けてしまうのではないかというものです。実際その通りで、負けてしまいます。ただ、負けてよいのです。負けた分だけ多く積み立てればよいだけの話です。なぜなら投資は確実なものではないからです。

ここ5年、10年で投資を始めた人たちは増えている実感を持っているかもしれませんが、いずれ痛い目を見ることもあります。10年程度の期間があればそこそこ乗り越えられるとは考えていますが、それも確約できるものではありません。例えば5年後に使うお金を投資に回したとして、5年間で確実に増えているかどうかは誰にも約束できません。それでも「どうにかなるだろう」と考えて進めてしまうのは、自転車操業やギャンブルに近い生き方になってしまいます。

プランとは、確実にその時期に必要で、確実に叶えたいものを指します。イメージしやすい例で言えば、子どもの大学費用です。これはずらすことができないお金であり、ローンで賄いながら同時に運用資産が目減りしているという状態では、お金に対する不安がどんどん増大してしまいます。それであれば、安全に運用できる商品を取り入れる方法もあります。

目減りする金額の目安は、インフレ率1%で計算した場合、10年で1割程度です。つまり毎月の積立額を1割ほど多くしておけば、10年後に使うお金としてはおおむね足りる計算になります。1年後や2年後、3年後に使うお金であれば、インフレ率としては1〜3%程度なのでそこまで気にする必要はなく、生活防衛資金の範囲で調整すれば十分です。

10年以内に使うお金は預金?国債?(14:18)

10年という期間、インフレに負けてしまう可能性はあるものの、その間ずっと普通預金に置いておく必要はありません。使う時期がすでに決まっているのであれば、その時期までの中で一番利回りの良い、元本確保型の商品で運用すればよいでしょう。定期預金であっても現状は1%を超える金利のものがありますし、2年後や3年後に使う予定であれば個人向け国債などを組み合わせることもできます。

満期まで保有する計画を立てておけば、2年後、3年後、5年後に使うお金にもきちんと対応できます。しかも1万円から購入できる商品もあり、2年物であれば5万円からとなりますが、それくらいの金額はまとまってくるものです。こうした商品を組み合わせれば、インフレ率1%程度には十分対抗できると考えられますが、1.5%までは勝てないかもしれません。それでも1%の目減りをそのまま受けてしまうよりはずっとましなので、こうした方法で対処していくのがよいでしょう。

最後に、10年以内に使うお金として考える際、まだ確定していないものについてはカウントしなくて構いません。例えば10年以内に結婚するかもしれないが相手がまだいない場合や、家を買うかもしれないが一緒に住む相手がいない場合などは、想定する必要はありません。逆に、確定的に使うと決まっているお金については、10年以内に含めて考えてください。例えば車の買い替え費用のように、はっきりと何年後とは決まっていなくても、3年から5年以内には使うことが分かっているものは含めるとよいでしょう。

予定が立っていないものについては余裕資金となるため、投資に回して構いません。ただしそれをそのまま投資に回してしまうとパターンBと同じ状態になってしまうため、使う予定の3年前になったらリスク商品から撤退するという対応をとっています。こうして3年間のバッファーを設けることで、その時点で足りているのか足りていないのかがはっきり見えてきます。足りない場合は他の貯蓄から補ったり、必要であれば追加で貯蓄をしたりし、足りている場合はそのままプラスとして扱えばよいのです。

投資は儲かるか儲からないかが分からない不確実なものであり、最近始めた人が儲かっている例をインターネット上でよく見かけたとしても、それがすべてのケースというわけではありません。だからこそ、あらかじめ対策を立てておく必要があります。

まとめると、生活防衛資金はまず最初に貯めておき、10年以内に確実に使うお金は運用に回してはいけません現状は金利の高い商品も存在するため、それらを組み合わせることでインフレの影響をある程度クッションできるはずです。10年以降に使う予定のお金であれば、投資に回しても問題ないでしょう。

投資は早く始めるほど運用期間が長くなるため、余裕資金を貯められている人にとっては将来の自分を助けてくれることになります。その時点で儲かっていれば取り崩せばよいですし、損をしていても待てる状況であれば待てばよいでしょう。貯蓄の分で補ったり、ローンを利用したりしても特に問題はありません。例えば車のローンであれば現状3%程度で借りられることが多く、一方で投資の期待利回りは7%程度とされているため、自身の信用力を活かして賢く資産を運用していくこともできます。

まとめ(18:58)

まとめると、投資をするかしないかに関わらず、まず全員が生活防衛資金を確保しておくことが大切です。これがあることで安心感が大きく増します。次に、お金の置き場所は使う目的ではなく、使うまでの期間で考えるということです。各家庭で叶えたい夢や目標によって、適切な現金比率は変わってきます。10年以内に使うお金が多ければ多いほど現金比率は高くなり、すでに使う予定が決まっている人ほど投資比率を高めていくことになります。

投資に対して怖さを感じる理由は、結局その時点でお金が減っているかどうかという点に尽きます。期間さえ確保できれば、確実ではないもののその値動きを乗り越えられる可能性が高まり、その目安はおおよそ10年、それ以上であればなおよいといえます。リスクにさらせないお金についてはしっかりと貯蓄で賄うという使い分けを、ぜひ意識してみてください。

またこちらの動画「インフレに負けない新しい個人向け国債が登場へ。「物価連動債」って結局おトクなの?」では、物価連動債の仕組みや注意点、お金の置き場所の考え方を紹介していますのでぜひご覧ください。

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