「金利上昇で株価下落」噂に踊らされてない?歴史からみる株価の真実
各国で長期金利が上昇しているという話を受けて、そろそろ株価が下がるのではないかと唱える、いわゆる暴落系の発信者がインターネット上にはたびたび登場します。金利が上がれば株価が下がるというのは一般的によく言われる説明ですが、それは本当に正しいのでしょうか。
今回は実際のデータをもとに、金利上昇と株価の関係を改めて確認していきます。
各国の長期金利(1:13)
まずは長期金利が本当に上昇しているのかを、報道をもとに確認していきます。時事通信が報じている内容では、世界的な長期金利の上昇についてインフレや財政不安が背景にあるとされており、この時点ではまだ株価との関係については触れられていません。日本経済新聞の報道でも世界各国の長期金利が上昇していることが伝えられており、5月末の時点で日本の10年国債利回りは2.75%程度まで上がってきています。
たしかに以前よりは高くなってきていますが、財政が危ぶまれるほどの急上昇とまでは言えない水準です。アメリカやイギリスといった国では金利が高止まりしており、イギリスでは5%を超える水準まで来ていますが、先進国の長期金利は歴史的に見ればおおむね4%前後が通常の範囲で、上限としては7%程度まで想定されることを踏まえると、現状の水準が極端に高いとは言いにくいところです。それでもこうした金利上昇を理由に、株価暴落が近いと唱える発信者が一定数存在しています。
「金利が上がると株価は下がる」と言われる3つの理由(4:07)
金利上昇が株価下落につながるとされる根拠は大きく3つに整理できます。1つ目は企業の収益が圧迫されるという点です。金利が上がると企業が銀行から設備投資や運転資金を借り入れる際のコストが増し、利払い負担の増加が最終的な利益を圧迫することで株価の下落要因になるとされています。
2つ目は安全資産の魅力が高まるという点です。国債などの金利が上昇すると、元本や利息が保証された債券で運用する妙味が増し、相対的にリスクの高い株式から資金が流出しやすくなります。
3つ目は将来の利益の現在価値が目減りするという点です。株価は今の利益ではなく将来稼ぐであろう利益を見込んで形成されているため、金利が上がるとその将来利益を現在の価値に割り引く際の割引率が高くなり、同じ将来利益であっても現在価値としては小さく評価されてしまいます。結果として、より多くの利益を生み出さなければ株式としての魅力を保てなくなるというわけです。理屈としてはこうした3つの要因が一般的に説明されています。
実際の過去データではどうだった?(6:22)

出典:岡三証券
理屈だけでなく実際の過去のデータを確認することも重要です。岡三証券のレポートでは1980年以降のS&P500と長期金利の推移が比較されており、この期間中に長期金利が上昇した局面は18回あったとされています。その18回のうち、株価が上昇していたのは14回で、下落していたのは4回にとどまっていました。つまり金利が上昇している局面のほうがむしろ株価は上がりやすい傾向にあったということになります。
ただし長期的な大きな流れで見ると、1980年代以降アメリカの長期金利は基本的に右肩下がりで推移しており、株価は逆に右肩上がりを続けてきました。その意味では現在のような金利上昇局面自体が、長期トレンドの中ではむしろ珍しい部類に入るとも言えます。実際、現在の英米の金利水準も4%から5%程度であり、1980年代から90年代に経験した2桁近いインフレ期と比べれば、決して異常な高さではありません。
90年代後半のアメリカでは金利が低下し金融緩和が進む中で、Windows95の登場を象徴とするベンチャーブームが起こり、ベンチャーキャピタルからの資金流入とIPOによる利益確定が循環する構造が生まれました。この過程で上場そのものが目的化し、売上も利益もないビジネスモデルでも「インターネットがすべてを変える」という期待だけで資金を集める企業が続出しました。
結果として生き残ったのはAmazonやYahoo、eBay、AOLなどごく一部にとどまり、NASDAQ総合指数は1995年の1000前後から2000年3月にはおよそ5000まで上昇しました。この間、金利はおおむね5%を下回る水準で推移し、終盤にようやく6%台半ばまで引き上げられた程度で、株価上昇を金利が押し上げたという構図ではありませんでした。むしろ市場が企業の実態に気づき始め、資金が急激に引き上げられたことでバブルが崩壊し、その後を追うように金利も低下していった流れになります。
リーマンショックについても同様で、不動産バブルという実体のない資金循環が崩れたことで金融システム不安が広がり、株価の下落に追随する形で金利も低下しています。これらを踏まえると、金利が上昇している局面では企業業績の拡大が伴っていることが多く、株価が下落するのはむしろ金利低下が始まったあとであるケースが目立ちます。
ITバブルとの違い(16:40)
現在はS&P500やNASDAQに加え、SpaceXやOpenAI、Anthropicといった企業の大型上場も話題になっています。半導体やAI関連という分野の近さから、当時のITバブルと似ているという指摘も少なくありません。しかしITバブル当時に起業を経験した立場から見ると、現状はそれとは異なる印象だといいます。当時は売上やアクセス数だけを根拠に上場する企業が大半で、利益どころか事業の実態すら伴わないまま資金が流入していました。
これに対してSpaceXはStarlink事業がすでに黒字化しており、ロケット打ち上げ事業では世界シェアの8割から9割を占めるとされ、利益は約80億ドル、売上はその倍以上に達しています。その利益を元手にXAIやX、宇宙空間でのAIデータセンターといった新規事業へ投資している構図であり、攻めの姿勢ではあっても、収益基盤のない投機とは性質が異なります。テスラについても中国メーカーとの競争で苦戦は指摘されるものの、利益自体は出ており、ITバブル期の無収益企業と同列には語れません。
一方でOpenAIやAnthropicは現状大きな赤字を抱えており、バブル的な側面がないとは言い切れません。ただしAIはすでに事業活動に不可欠な技術になりつつあり、少子高齢化が進む先進国にとって労働力を補う必須技術としての側面も強まっています。
現在月額20ドル程度の利用料も、電力コストなどを踏まえればいずれ50ドル程度まで引き上げられる可能性があり、その負担を企業側が価値として転嫁できるかどうかが今後の収益化のカギになります。それができなければバブルとして終わる可能性も残りますが、現時点で実態がまったくないとは言えない状況です。
必ずしも「金利上昇=株価下落」というわけではない(22:12)
ここで参考になるのが、1960年代から70年代初頭にかけて存在した「ニフティ・フィフティ」と呼ばれる優良企業群です。IBM、Xerox、Polaroid、Coca-Cola、McDonald、Disney、Johnson&Johnson、Philip Morrisなど、当時「永遠に成長を続ける優良企業」と評された銘柄群で、投資家たちは「いくら高くても今買っておけば安い」という発想で買い続けていました。これは現在のAI関連大型株に対する熱狂とも重なる部分があります。
これらの企業は実際に高い収益力を持ち続け、今も存続している企業がほとんどです。しかしオイルショックによるインフレと金利上昇を受けて株価は大きく下落し、Polaroidは9割、Xeroxは7割もの下落を記録しました。重要なのは、これらの企業自体は倒産しておらず、実体のある優良企業が単に過大評価されていたために株価が適正水準まで調整されたという点です。これはまったく収益基盤がないまま資金だけが流入し崩壊したITバブルとは本質的に異なります。
当時のPERは40倍や50倍に達することも珍しくなく、投資家が冷静さを欠いて高値で買い進めた結果として下落したと言われています。現在のNVIDIAやMicrosoft、Amazon、Meta、Alphabetといった企業も実際に利益とキャッシュフローを伴っていますが、果たして本当に優良企業として将来も成長を続けられるのか、その評価が適正かどうかが問われています。NVIDIAにしても、電力消費が1/100で済む、あるいは処理速度が150倍といった新興チップを開発する競合企業が次々に現れており、収益基盤や競争優位を維持しながら設備投資を続けられるかどうかは引き続き注視が必要です。
SpaceXやOpenAI、Anthropicについてはまだ判断が難しい部分もありますが、少なくとも現在のS&P500やNASDAQの上昇が実体を伴わないバブルとは言い切れず、実際に優良企業は存在しています。ただしバリュエーション自体が割高であることは否めず、アメリカ株、とりわけNASDAQだけに資産を集中させるのはリスクが高いといえます。
まとめ(26:19)
金利が上昇すると株価が下がるという説明は理屈としては成り立ちますが、実際の過去データを見る限り、その上昇分を上回る収益拡大が伴っていれば株価は成長を続けてきました。むしろ金利が上昇している局面のほうが企業は成長していることが多く、株価が下落するのはその後、金利上昇が行き過ぎた結果として投資への過熱感が冷め始めたタイミングであるケースが目立ちます。
実体のない期待だけで資金が集まり崩壊したITバブルと、実体ある優良企業が過大評価された末に調整されたニフティ・フィフティでは性質がまったく異なり、現在の状況はどちらかといえば後者に近いと考えられます。実際に収益を生み出している企業は存在しており、問題はその株価が本当に妥当な水準にあるかどうかという点に尽きます。
ニフティ・フィフティ崩壊時には「偉大な企業が必ずしも偉大な株であるとは限らない」という格言が生まれましたが、これは今の市場にも通じる教訓といえます。歴史は繰り返すとよく言われますが、過去の教訓を踏まえつつも投資自体をやめる必要はなく、AI関連企業についても収益化はまだ始まったばかりの段階です。今後数年がその実力を見極める正念場になるでしょう。
株式投資の基本は投じた資金が将来の収益として回収できるかどうかにあり、目先の熱狂に乗るのではなく、企業の実態と成長性を見極めながら投資判断を行うことが何より重要です。
またこちらの動画「SpaceXがNASDAQ上場へ。NASDAQ100のルール変更で今が仕込み時?」では、NASDAQ100のルール変更を踏まえ、SpaceX上場の影響を解説していますのでぜひご覧ください。





