S&P500、オルカン最高値更新!絶好の売るチャンス

S&P500やオール・カントリー(オルカン)が最高値を更新し、投資界隈が盛り上がっています。こうした状況では、多くの投資家が利益確定を検討するものです。しかし、SNS上では「売るな」「ガチホ(ガチホールド)だぞ」という声が多く聞かれます。

果たして、このタイミングで利益確定をするのは本当に間違いなのでしょうか。今回は、S&P500やオルカンの1本足投資をしている方に向けて、適切な投資戦略について解説します。

S&P500とオルカンの推移 (0:39)

まず現状を確認してみましょう。年初来のチャートを見ると、S&P500は確実に最高値を更新しています。オール・カントリーについても同様に順調に伸びており、純資産総額も増加傾向にあります。多くの投資家にとって、含み益が拡大している状況といえるでしょう

ただ、バンガードが債券にシフトすることを推奨しているようにそろそろ株式市場が下落する可能性を示唆しています。こうした状況を受けて、利益確定を検討する投資家が増えているのも自然な流れです。

マネーセンスカレッジの結論 (1:48)

結論から申し上げると、売ってもよいのではないでしょうか。多くの人が「売るな」と言う中で、なぜこのような判断になるのか説明します。

そもそも問題の根本は、1本で投資をしていること自体にあります。S&P500やオルカンだけに投資している状況では、市場の動きに一喜一憂することになり、精神的な負担が大きくなります。

最も理想的なのは、アセットアロケーション運用を採用することです。この方法を実践していれば、市場の動きに惑わされることなく、平穏な気持ちで淡々と投資を続けることができます。

1本で投資をしている人は、どうしても感情に左右されがちです。「売りたい」という気持ちを無視して経済的合理性だけで判断しようとすると、精神的なストレスが蓄積されます。感情のケアも投資においては重要な要素なのです。

アセットアロケーション運用に移行するということは、資産を分散することを意味します。つまり、株式の一部を売却して債券などの他の資産クラスに振り分ける必要があります。この過程で自然と利益確定が行われるのです。

最もシンプルな方法は、2本以上の投資戦略に移行することです。株式と債券の組み合わせで、より安定したポートフォリオを構築できます。

リバランスとは (3:32)

利益確定を機械的に行う方法として、リバランスという手法があります。リバランスとは、資産配分のバランスが崩れた際に、元の比率に戻す作業のことです

具体例で説明しましょう。AとBという2つの資産に半々で投資していたとします。Aの資産が25%値上がりし、Bの資産が25%値下がりしたとしましょう。このとき、当初の50:50の比率が崩れてしまいます。

10万円のポートフォリオで考えると、最初はA・Bそれぞれ5万円ずつ投資していました。価額変動後は、Aが6万2500円、Bが3万7500円となります。合計は変わらず10万円ですが、比率が崩れています。

リバランスを行う際は、時価総額ではなく口数で考えることが重要です。基準価額×数量という分解した考え方ができなければ、投資家として成長することは困難です。

なので、A・Bの口数と基準価額も見てみましょう。A・Bそれぞれ5万口ずつ、基準価額1万円で買っていました。価額変動後ももちろん口数は変わりません。

正しくリバランスを実行すると、Aの高くなった1万口分、1万2500円を売却し、その資金でBを購入します。するとBの価額が下がっているため、1.67万口購入できます。基準価額を見るとどちらも5万円ずつで50:50の比率に戻っています。

その後、市場が元の水準に戻った場合を考えてみましょう。リバランスを実行していた場合、Aは4万口、Bは6.67万口あるので資産総額は10万6700円となり、6700円の利益が発生します。これは、高い時に売って安い時に多く買うという、投資の基本原則を機械的に実行した結果です。

債券ファンドを購入する (10:35)

効果的なリバランスを行うためには、株式とは異なる動きをする資産が必要ですS&P500とオルカンのように似たような動きをする資産同士では、リバランス効果は期待できません。

最適な組み合わせは株式と債券です。ただし、現在の日本では金利上昇局面にあるため、日本の債券ファンドを購入すると価格が下落する可能性があります。金利が上がると債券価格は下がるという逆相関の関係があるためです。

このため、現在は日本の債券ファンドの代わりに現金で保有することを推奨します。つまり、株式の一部を利益確定して現金化することが、実質的な資産分散になるということです。

債券ファンドの割合は? (11:01)

では、どの程度の割合で債券(現金)を保有すべきでしょうか。一般的な目安として、60:40ポートフォリオ(株式60%、債券40%)が挙げられます。これは多くの投資アドバイザーが推奨する伝統的な配分です。

40%の現金化に抵抗がある場合は、30%程度から始めても構いません。バフェット氏も約30%のキャッシュポジションを持っているとされており、この水準は現実的な選択肢といえるでしょう。

参考になるアセットバランスとして、GPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)のポートフォリオがあります。GPIFは日本債券、日本株式、外国株式、外国債券をそれぞれ25%ずつ保有しており、2001年から2024年まで年率4.2%のリターンを実現しています。

ただし、この数値は運用開始初期に債券の比重が高かったことが影響しており、現在のバランスで運用すれば5%程度のリターンも期待できると考えられます。実際の計算では、リバランスを含めて年率6%弱程度のリターンが見込まれます。

絶対にやってはいけないこと、やってほしいこと (13:32)

投資において絶対に避けるべきことは、ルールを決めずに感情的に現金化することです。なんとなく不安だから売る、なんとなく上がりそうだから買うといった行動は、長期的な投資成功の妨げになります。

明確なルールを設定することが重要です。例えば、株式40%・現金60%、または株式70%・現金30%など、自分なりの基準を決めて機械的に実行しましょう。

一方で、積極的に実行してほしいことがあります。それは、現在使用する必要があるお金については躊躇なく売却することです。投資は将来のための資産形成が目的であり、現在の生活に必要な資金であれば、市場の状況に関係なく売却して使用すべきです。

ただし、無駄遣いには注意が必要です。本当に必要な支出かどうかを慎重に判断した上で、売却を検討してください。

現在1本で投資をしている方が資産分散を行う場合、段階的に変更する必要はありません。現在の株価が高い水準にあることを考慮すれば、一気にリバランスを実行しても問題ありません。これは実質的に利益確定を意味します。

リバランスとは、本来バランスが崩れた際に実行するものです。現在100%株式を保有している状況から、例えば60%に変更することは、大幅なリバランスといえるでしょう。

まとめ (15:38)

1本足投資を続けている限り、市場の動きに振り回される状況は続きます。もしそのような投資スタイルを望むのであれば、それも一つの選択です。しかし、投資に時間を取られることなく、より建設的な活動に集中したいと考えるなら、機械的な投資手法の採用を強く推奨します。

最も重要なのは、投資に振り回されないシステムを構築することです。常に市場の動向を気にして、YouTube動画を見続けたり、投資判断に悩んだりする時間は非常にもったいないものです。その時間を人生をより豊かにする活動に使った方が、長期的な幸福度は高まるでしょう。

適切な投資戦略を一度確立すれば、一生使い続けることができます。「この方法なら大丈夫」と確信できる投資戦略を手に入れることで、投資家としてのレベルアップも図れます。

今回のS&P500・オルカンの最高値更新は、投資戦略を見直す絶好の機会かもしれません。1本足投資から卒業し、より安定したアセットアロケーション運用への移行を検討してみてはいかがでしょうか。

またこちらの動画「【リスク分散になっていない?】「オルカン派は堅実」に要注意。資産が守れない理由」では、オルカン1本ではリスク分散にならない理由について詳しく解説していますのでぜひご覧ください。