米国株最高値更新でも全力投資は危険?世界経済の本質を見抜け

6月27日、S&P500が最高値を更新したニュースが投資家の間で話題となりました。一方で、これから投資を始めようとする方や、トランプ関税ショックを乗り越えた投資家にとって、今後の投資戦略をどう考えるべきか迷いが生じているのも事実です。

20年以上の投資指導経験から語る重要なポイントは、個人投資家が耐えられる損失率は20%程度が限界ということです。今回の解説では、最新の投資家アンケート調査結果と実際の市場動向を踏まえながら、長期的な資産形成に必要な考え方について詳しく説明します。

キーポイント

現状把握 (00:01:37)

S&P500は6月27日現在で6,173ポイントとなり、大きく谷を作った状況から回復して最高値を更新しました。日経平均株価も4万円台を回復し、上昇基調にあります。

振り返ると、S&P500は年初来で20%近く下落する局面がありました。これは4月の頭から中旬にかけての出来事で、オール・カントリー(オルカン)に投資していた方も同様の下落を経験しています。オルカンは分散投資されているため、14.95%程度の下落で留まりましたが、それでも15%程度の下落は投資家にとって大きな痛手となりました。

投資家の許容損失率アンケート調査 (00:02:51)

野村アセットマネジメントが実施した「投資信託に関する意識調査2025」から興味深いデータが明らかになりました。期待リターンと許容損失率について、投資家と非投資家の両方にアンケートを実施した結果です。

非投資家の期待リターンは7%から7.5%程度の範囲内に収まっており、これは全世界投資のアセットアロケーションで期待される7%とほぼ一致しています。投資家も大体同様の期待値を持っており、30代を除けば7.5%や7%程度のリターンを求めています。

しかし、許容損失率については非投資家が4%、投資家でも平均9.7%(約10%)という結果が出ています。これは非常に低い数値で、期待リターンが高い一方で許容損失率が低いという現実的でないギャップが存在していることが分かります。

今回のトランプ関税ショックを考えると、10%の許容損失率では全てのポジションを手放すことになってしまいます。オルカンでも15%下落したため、10%以内に収めることは困難です。

マネーセンスが思う許容率 (00:06:13)

20年以上の投資指導経験から見ると、個人投資家が実際に耐えられる許容損失率は20%程度が限界です。20%でもほぼギリギリの状態で、33%の下落となるとその時点で投資を手放してしまうのが現実です。

この33%という数字は、レバレッジ3倍の投資商品との関連もあります。信用取引などで3倍まで買える場合、資産が1/3減少した時点でロスカットが発動するため、そこで強制的に手放さざるを得なくなります。

特に一人で投資を行っている場合、33%の下落に耐えることは非常に困難です。これがリーマンショック時の状況でした。20%と33%は数字上近く見えても、実際のダメージとしては大きな違いがあります。

アセットアロケーションを行っていても、リーマンショック級の出来事があれば30%後半程度の下落は避けられません。長期投資における考え方として、大体20%程度の下落率で収まってくれることが個人投資家にとっては重要です。

全世界投資が必要な理由 (00:08:18)

全世界投資によるアセットアロケーションでは、同期間の下落率を7.76%まで抑えることができました。これはオルカンの約半分、S&P500の約3分の1という大幅なリスク軽減効果です。

このリスク軽減効果がどれだけ大きいかは、実際に市場の下落を経験してみないと理解できないものです。投資を開始した直後では分からないことが多いのですが、実際に損失を被ってみると、分散投資の重要性が身に染みて理解できます。

アセットアロケーションで運用することを決めれば、いつ買うか、何を買うかといったタイミングを考える必要がなくなります。常に全ての資産クラスを買い続けるため、銘柄選択も不要になります。

考えるべきは投資金額だけです。投資へのモチベーションは、将来その資金を使う目的から生まれます。使用時期にいくら必要なのかを明確にし、それに間に合うように積立金額を決めることが重要です。

投資方法として全世界投資を選択すれば、今から始めても全く問題ありません。アメリカ経済が今後下降したとしても、ドルコスト平均法で買い続けていれば、いずれは上昇してきます。これは全世界の経済成長が右肩上がりで続いていくという前提があるからです。

長期投資では10年以上の運用期間で考えることが重要です。10年以上先に使う資金に対してのみ投資を行い、それ以外の資金は投資に回さないという原則を守ることが大切です。

まとめ

投資において最も重要なことは、勝ち残ることではなく負けないことです。リターンを追求するよりも、リスクを減らすことに重点を置くべきです。

ウォーレン・バフェット氏の投資ルールは明確です。「ルール1:損をしない。ルール2:ルール1を決して忘れない。」これが投資の本質を表しています。

分散投資を行うことで、特定の国や大統領、政党に依存することなく、世界全体の成長に投資することができます。今の形ではなく、未来の形を見据えて投資することが重要です。

S&P500の最高値更新は喜ばしいニュースですが、冷静に受け止めることが大切です。上昇局面では資産配分の見直しがしやすくなるため、このタイミングで分散投資、長期投資、地域分散、時間分散といった基本原則を改めて確認し、実践していくことをお勧めします。

またこちらの動画「【インド株投資】新NISAでインド株が人気!米国株を超える成長率 それでも全世界投資を続ける理由【きになるマネーセンス920】」では、全世界投資の重要性を再認識しながら、新興国投資の見極め方が学べますのでぜひご覧ください。