「新しいNISAの生涯投資枠はすぐに使い切るべき」
「生涯投資枠1,800万円は早く消費したほうがお得」
2024年から始まる新しいNISAについて、生涯投資枠が増えたことで上記のような主張をされる方がいます。
将来に向けた資産形成に大きなメリットがある制度ですが、果たして本当に生涯投資枠はできるだけ早く消費すべきなのでしょうか。
今回は日本の貯蓄額などを参考に生涯投資枠の考え方を解説します。生涯投資枠1,800万円の正しい使い方を学んで、新しいNISAを上手に活用していきましょう。
2つのデータからわかる投資家の現状
生涯投資枠をすぐに使い切るべきか考えるために、日本人の貯蓄額と貯蓄先の割合をチェックしていきます。参考にするのは2021年の家計調査報告における次の2つの世帯です。
- 2人以上世帯
- 2人以上世帯のうち勤労者世帯
2人以上世帯とは、住居・生計を共にしている2人以上の人の集まりを指します。勤労者世帯とは、世帯主が会社や学校、官公庁などに雇用されている世帯です。世帯主が社長や取締役、会社・団体の役員である世帯は「勤労者以外の世帯」となるので、今回のデータには含まれていません。
金融資産のデータになるので高齢者が含まれるほど貯蓄額は大きくなりやすいのですが、今回は全体をざっくりと把握したいので2つの世帯を参考にします。
このデータをもとに、日本でどれくらいの人が5年間で1,800万円投資できるか確認していきましょう。
2人以上世帯の貯蓄額は中央値1,104万円
2人以上世帯の貯蓄額は次の通りです。
- 平均値:1,880万円
- 中央値:1,104万円(貯蓄0円世帯を含めた中央値:1,026万円)
平均値は貯蓄額が数十億円もあるような極端に多い方の影響を強く受けてしまうため、中央値のデータもみる必要があります。
貯蓄額の平均値は、新しいNISAの一人分の生涯投資枠とほとんど同じ金額です。中央値で考えると700万円ほど足りない結果になっています。
2人以上世帯ですので新しいNISAの生涯投資枠も2人分(3,600万円)あります。貯蓄額総額を持ってしてもその半分しか使い切れないことになります。
注意する点として、貯蓄のすべてを投資に回しているわけではありません。預金や生命保険なども貯蓄に含まれます。そのため、貯蓄の構成比率もチェックしてみましょう。
2021年の平均貯蓄額1,880万円のうち、有価証券の割合は「15.7%」しかありません。金額にして300万円弱になります。有価証券よりも預金や生命保険の割合が多く、ほとんどの方が投資にお金を回していない状態です。
したがって、たとえ平均ほどの貯蓄があったとしても、多くの方は生涯投資枠1,800万円を短期間で使い切ることはできないでしょう。
2人以上世帯のうち勤労者世帯の貯蓄額は中央値833万円
2人以上世帯のうち勤労者世帯の貯蓄額は以下のようになっています。
- 平均値:1,454万円
- 中央値:833万円(貯蓄0円世帯も含めると784万円)
このデータではお金を多く持つ高齢者の割合が少なくなるため、2人以上世帯だけの統計よりも貯蓄額は少なくなります。
貯蓄額の平均値は1,454万円となっており、一人分の生涯投資枠よりも350万円ほど低い金額です。
中央値ではさらに下がり約800万円と、生涯投資枠の半分ほどの金額しかありません。貯蓄額総額で考えても、二人分の生涯投資枠の1/4ほどしか使い切れないことになります。
2人以上世帯のうち勤労者世帯の貯蓄構成比は次の通りです。
貯蓄のうち有価証券の割合は13.6%と、2人以上世帯のデータよりもさらに低くなりました。平均貯蓄額1,454万円のうち200万円弱しか投資されていないということです。
新しいNISAの年間投資可能額360万円の半分しか投資していないので、2人以上世帯のうち勤労者世帯になるとさらに生涯投資枠を使い切るのは難しいでしょう。
1,800万円を投資に使えるのは国民の10%
家計調査の結果から、ほとんどの日本国民が生涯投資枠をすぐに使い切れないことがわかりました。各種内訳を見ても有価証券の割合は約13〜15%なので、1,800万円分投資できる方はさらに限定されます。
おそらく生涯投資枠を5年間で消費できる方は日本全体で10%程度しかいません。
そのため、SNSやメディアに出るような一部の方が主張する「枠をすぐに使い切れ」という言葉に耳を貸す必要はありません。自分に合った積立金額を決めて、少しずつ投資をしていきましょう。
生涯投資枠1,800万円は長い期間を通じて使い切る
生涯投資枠をすぐに使い切る必要がないなら、どのように消費したら良いのでしょうか。
枠を使う際に重要な考え方は「今も楽しんで、将来もきちんと手当てをする」ということです。現在と未来にかけるお金のバランス感覚が新しいNISAを活用する秘訣になります。
将来は年金受給額が減るかもしれませんし、子どもの教育費も年々上がっています。その他に老後費用や車の買い替え費用なども必要なので、不安になる気持ちはよくわかります。
ただ、今の年齢だからこそ経験できることがあります。30代で経験できることは、30代だから経験できることなのです。
マネーセンスカレッジでは「お金がすべてではないけれど、すべてのことにお金はつきまとう」と考えています。何をするにしてもお金は必要になるので、お金を使って今経験できることも大切にしてほしいのです。
今も楽しめる金額を確保しつつ、将来必要になるお金を確保できる金額で積立投資をしていきましょう。必要以上に家計を削ったり、不安を抱えながら生涯投資枠を早く埋めたりする必要はまったくありません。
生涯投資枠は1,800万円あるので、少しずつ使ったとしてもきちんと資産を築くことができます。
たとえば、毎月3万7,500円を40年間積み立てると1,800万円になります。このペースで年利回り5%で運用した場合、40年後の最終積立金額は5,700万円。これが非課税で受け取れます。30歳でスタートしたとしても、70歳時点で約6,000万円の資産を確保できるということです。
さらに5,700万円を年利回り5%で運用すると、毎年285万円の複利利回りが得られます。年金プラス285万円の生活費があるなら、贅沢は難しいかもしれませんが健康的な生活を送ることはできるでしょう。
もちろん、1,800万円を投資できる方であれば、生涯投資枠を5年で使い切ろうとすることは問題ありません。
ただ、多くの方は生涯投資枠をすぐに消費するのは難しいので、急がず、焦らず、周りに流されずに自分のペースで投資をすることを心がけましょう。
生涯投資枠の使い方はファイナンシャルプランが鍵になる
新しいNISAの生涯投資枠を使う場合は、自分のペースで消費していくことが重要になります。
そして自分のペースで投資をするためにはあなたの「ファイナンシャルプラン」が必要です。
ファイナンシャルプランとは、家族それぞれに将来想定されるライフイベント(結婚、出産、リタイア、家族旅行、車の買い替えなど)を考慮してライフプランを立て、ライフプランを実現するために必要なお金を用意するための資金計画です。
ファイナンシャルプランを立てると将来必要になる支出がわかります。未来の支出がわかれば、そのお金を用意するための積立金額がわかるので、計画的に生涯投資枠を使うことができます。
自分のライフプランを考えるのは難しいかもしれませんが、自分自身が将来何にお金を使いたいかをすべて網羅し書き出すと作ることができます。
家計の全体像がわかる「家計を学ぶ」の記事の中にも、毎月必要な積立金額を計算できる「必要積立額計算表」を無料で配布しています。
計算表も参考に、とにかく一度ファイナンシャルプランを作ってみましょう。
実はファイナンシャルプランを作ってみると誰もが最初は絶望を味わいます。なぜなら、ライフイベントを考慮してファイナンシャルプランを練ってみると、ほとんどのプランが金銭的に実現不可能なことがわかってしまうためです。豪華な結婚式を挙げたり、広いマイホームを持ったりするような理想の人生は今のままでは達成できません。
ただ、それでも自分自身や家族と向き合い、どうやって理想を実現できるか考えなければなりません。
限りある収入の中から支出を捻出するために、自分自身が何にお金を使って何にお金を使わないのか(トレードオフ)をハッキリさせて、理想の人生に含めたライフイベントが本当に重要なものなのか見極めていきましょう。
投資はあくまで人生の中で使うツールであり、これがすべてではありません。そして必ずしも貯蓄するものをすべて投資しないといけないわけでもありません。
しかし、理想の人生を実現したい場合に「投資」の力は絶大なパワーを発揮することは事実です。そのため、きちんとファイナンシャルプランを立てて、そのプランをもとに生涯投資枠の使い方を考えていきましょう。
ファイナンシャルプランを立ててみたい方は「現代人こそファイナンシャルプランが必要な理由」の記事がおすすめです。ファイナンシャルプランを作ることで得られるものがわかります。
焦らずに自分のペースで新しいNISAを活用していこう
新しいNISAは現行NISAよりも使いやすくなったので、投資を始める際はぜひ活用してほしい制度です。
ただし、毎月どれだけ積み立てるのかは「バランス感覚」が大切です。今と未来の生活がどちらも充実するように金額を考えてください。
投資は長い時間をかければ確実に進んでいくので、周りに流されず数字だけを追わないで、焦らずに地に足をつけてやっていきましょう。
自分の人生としっかりと向き合えば「生涯投資枠1,800万円」という数字に惑わされることはありません。枠に惑わされている方は、自分の人生に必要なお金というのを1分たりとも考えていない。
これが問題なのです。
1分でも10分でもいいので少しずつ時間をかけて自分のファイナンシャルプランを作っていきましょう。すると、自分自身に必要な生涯投資枠がわかります。
本サイトの「家計を学ぶ」のコンテンツを上から順番に読み進めていけばファイナンシャルプランは作ることができます。さらに細かい内容やパーソナルな内容は「チーム7%」のなかで解説をしているので、もし興味がある方は会員制サイトの方もご覧ください。
どちらにしても時間はかかりますが重要なことなので、他人に流されずにコツコツと投資を始めていきましょう。
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