宇宙誕生138億年から1度も起きないはずの暴落が、明日起きる 

毎年のように、何らかの「ショック」が起きているように感じられます。今年で言えばイランショックがあり、去年はトランプ関税ショックがありました。素朴な疑問として、そんなにショックというものは頻繁に起こるものなのでしょうか。実際にはショックの大きさによるところが大きく、過去にも数多くのショックが存在してきました。例えばリーマンショックは「100年に1度のショック」と表現されることがあります。

そこで今回は、暴落やショック、クライシスと呼ばれるものがどのくらいの頻度で起き、どの程度の下落を伴うのかを紹介します。最近は株式投資をすればお金が自然に増えていくと考える人や、株は下がらないと信じている人も見られるようになりました。投資家の間でモラルハザードが起きているのではないかという懸念もあることから、注意喚起の意味も込めて今回のテーマを取り上げます。

まずは過去のショックを紹介(1:41)

歴代のショックを振り返るにあたっては、オルカンに採用されているオール・カントリー・ワールド・インデックスが仮に当時から存在していたと想定した場合の下落率を、ドル建てと円建てのそれぞれで示します

まず第1次オイルショックは1973年から1974年10月にかけて起こり、ドル建てで約-45%、円建てでは約-50%の下落となりました

この間は円高が進んだため、円建ての下落率がドル建てよりも大きくなっています。続いて1987年のブラックマンデーは、日本で言うバブル期にあたる局面で発生し、わずか2か月でドル建て-30%、円建て-33%まで下落しました。このときは為替が大きく動かなかったため、下落率はドル建てと円建てでほぼ同水準にとどまっています。これ以降もITバブル崩壊やリーマンショックなど、大きな下落局面が繰り返されてきました。

過去の〇〇ショックは本来、何年に一回なのか?(3:13)

過去のショックがどのくらいの頻度で起こるものなのかを説明する際によく使われるのが、標準偏差をもとにした確率の考え方です。

リーマンショックのときは3σ相当とされ、「100年に1度」という表現が使われました

ただし現在ではファットテールと呼ばれる現象が知られており、実際の発生確率は当時考えられていたよりも高いのではないかという見方も広がっています。ここでは、それぞれのショックが当時どの程度のσに相当していたのかを、あくまで参考値として紹介します。

まずブラックマンデーは、2か月間で円建て-33%程度の下落でしたが、1日の変動幅も極めて大きく、ダウ平均は1日で22.6%という史上最大級の下落を記録しました。当時はサーキットブレーカーのような仕組みも十分に機能しておらず、取引は電話中心で行われていたため、売りが売りを呼ぶ展開になったとも考えられています。

統計的には、2か月間の下落は5から6σ程度、1日の変動幅は20σ程度と評価されており、確率に換算すると前者は数万年から100万年に1度、後者に至っては宇宙が誕生してから138億年の間でも1度起こるかどうかという、現実にはまず起こり得ないはずの水準になります。それほどまでに起こり得ないことが実際に1日で起きてしまったからこそ、ブラックマンデーは今でも語り継がれています。

続いてコロナショックは、期間としてはわずか1か月ほどで-25%まで下落しましたが、各国政府による巨額の資金供給によって短期間で回復しました。リーマンショックの経験を踏まえた迅速な政策対応がなければ、下落局面はもっと長引いていた可能性があります。この下落は5σ程度とされ、確率にすると1000年から3000年に1度という計算になります。数十年単位ではほとんど発生してこなかったパンデミックという事象自体が、スペイン風邪以来の大きな出来事だったことも背景にあります。

歴史的な大恐慌として挙げられることが多いリーマンショックは、円建てで-60%程度、期間にして1年5か月にも及ぶ長期の下落となりました。統計的には3から4σ程度、確率にして約100年に1度とされ、当時のニュースや国会答弁でも「100年に1度の経済危機」という表現が用いられました。

第1次オイルショックは、円建てで-50%、期間は約2年に及びました。当時はトイレットペーパーなどの買い占め騒動が起きたことでも知られています。統計的には2.5から3σ程度、確率にして30年から100年に1度とされ、こちらも一生に1度あるかどうかというレベルの出来事でした。ダラダラと下落するのではなく2年かけて一気に下げ続けたため、いつ底を打つのか見通せない恐怖があったとされています。

ITバブル崩壊は、円建てで-35%、期間は2年7か月に及びました。統計的には2から3σ程度、確率にして10年から30年に1度とされています。この期間は円安が進んだため、円建ての下落率はドル建てよりも抑えられており、もし逆に円高が進んでいれば下落率は-50%程度まで拡大していた可能性もあります。

リーマンショックが金融システムの不安定化、第1次オイルショックが供給制約によるコストプッシュ型インフレだったのに対し、ITバブル崩壊は産業バブルの崩壊という性格を持っていました。産業バブルの場合は不動産バブルと異なり、光ファイバー網のようにその後も使われ続けるインフラが残ることもあり、必ずしも負の遺産ばかりが残るわけではないという指摘もあります。現在のAIバブルも同様の産業バブルの一種と捉えることができますが、だからといって同程度の下落が起きないと保証されているわけではありません。

比較的最近の調整局面としては、インフレを背景にした金利ショックが挙げられます。円建てで-8%程度、期間は10か月ほどで、σは1未満にとどまり、確率にすると2年から5年に1度程度の頻度で起こり得る水準とされています。この局面では大幅な円安が進行し、ドル建てでは一時-22%まで下落していたものの、円建てでは下落幅が抑えられました。これは、日本の投資家にとって為替リスクを一定程度保有しておくことが、株式下落に対する緩衝材になり得ることを示す例でもあります。

定説はまだない(13:12)

ここまでσから確率を導き、それをもとに何年に1度という表現を使ってきましたが、現時点でこの数字をそのまま鵜呑みにすることはできません。

金融工学の世界でも、これが決定版だと言えるような理論はまだ確立されておらず、複数の主張を比較検討しながら組み合わせていく段階にあります

リーマンショックの当時は、正規分布という考え方をもとに確率が説明されていました。正規分布とは、サイコロの出目のようにランダムな事象が従うとされる分布で、平均値を中心として標準偏差の範囲ごとに発生確率が決まっています。

具体的には、平均からプラス-1σの範囲に収まる確率は68.3%、プラス-2σでは95.4%、プラス-3σでは99.7%とされ、それを超える範囲に収まる確率はわずか0.15%程度とされています。この考え方に基づき、3σを超える下落は100年に1度というように表現されてきました。

しかし実際の市場はこの正規分布どおりには動かないことが、リーマンショックによって明らかになりました。これがファットテールと呼ばれる現象です。市場が2σや3σといった大きな下落や上昇に差しかかると、人間の心理がその動きをさらに加速させる方向に働きます。下落局面では逃げ遅れることへの恐怖から売りが売りを呼び、上昇局面でも乗り遅れまいとする心理から買いが買いを呼ぶため、本来の経済合理性だけでは説明できない値動きが生まれます。

分布の形自体は正規分布に近い形を保ちながらも、両端の裾野の部分の発生確率が実際にはより高くなる、これがファットテールの正体です。こうした偏りを補おうとする理論もいくつか提唱されていますが、まだ定説と呼べる段階には至っておらず、金融工学における研究課題の一つとなっています。

10年に1回はショックが来るかもくらいに考えておく(17:10)

定説がない中でどう捉えればよいかについては、これまで紹介してきた確率をそのまま信じるのではなく、桁を一つ下げて考えることが一つの目安になります。

例えばリーマンショックが100年に1度とされていたのであれば、それを10年に1度程度と見積もっておくという考え方です

株価が半値近くまで下落するような暴落が、10年に1度程度の頻度で起こり得ると想定しておくのが、投資をする上での心構えとして妥当だとされています。

全世界投資を例に、標準偏差を仮に15%とすると、期待リターンをプラス7%としても、3σの下落で-38%程度の下落が10年に1度は起こり得る計算になります。仮にこの標準偏差を10%まで抑えられれば、同じ3σの下落でも-23%程度に収まります。-23%からの回復に必要な上昇率は約30%であるのに対し、-38%からの回復には61%以上の上昇が必要になり、必要なリターンはほぼ倍になります。わずか4から5ポイントほど標準偏差を抑えるだけで、回復に必要な値上がり幅を大きく減らせることになります。

この差を軽視してしまうと、暴落後に資産が元の水準へ戻るまでに想定以上の時間がかかり、資金を使いたいタイミングとの間にずれが生じかねません。だからこそ、資産運用においてはリスクをいかに抑えるかが重要な課題になります。株式だけに集中して運用した場合はもちろん、アセットアロケーションを組んで分散運用した場合でも、10年に1度程度は-38%や-23%といった下落が起こり得るという前提を、投資をする上で心に留めておく必要があります。

まとめ(21:02)

株式投資をしていればお金は自然に増えていくという考え方は、ここ10数年から20数年という比較的長い期間で見れば、間違いとは言えない面もあります。しかし、ここ10年程度で投資を始めた人の多くは、実質的に大きな下落をほとんど経験していません。コロナショックは短期間で終息し、その後のインフレを背景にした金利ショックも、円建てで見ればそれほど大きな下落にはならず、比較的早く回復しています。

一方でリーマンショックやITバブル崩壊を経験した投資家にとっては、回復までにかなりの時間を要した局面でした。ブラックマンデーの当時は、日本国内で影響を受けたのは主に不動産バブルに関わっていた一部の層にとどまり、その裏でインフレが強かったものの所得も大きく伸びていたため、社会全体としてはそれほど悪い時代ではありませんでした。

自分自身の体験だけから学ぶのではなく、歴史から学ぶ姿勢が重要だとされる理由もここにあります。ここ10年ほどの投資経験だけを振り返れば、多くの人にとって利益が出ていた期間であり、その成功体験が「株は下がらない」といった極端な考え方につながりやすい面があります。

しかし、そうした楽観的な見方をする人はいつの時代にも存在し、そのたびに大きな損失を被る人も一定数存在してきました。すでに利益が出ている場合は、それを維持しながら安定的な運用へと切り替えていくための時間的な余裕を得られたと捉えることもでき、資産分散という考え方に改めて目を向けるきっかけにもなります。

全世界投資であっても、10年に1度程度は-38%や-23%といった下落が起こり得るという前提を踏まえたうえで、こうした歴史から得られる教訓を生かし、あらかじめ備えておくことが大切だと言えます。

またこちらの動画「米国株の仕込み時ってあるの?100年分データで見た長期投資家の本当の答え」では、中間選挙アノマリーを100年分のデータで整理し、長期投資の考え方を解説していますのでぜひご覧ください。

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