株式100%にしようか、債券にも分散しようか迷っている人へ。これが答えです。

2003年1月から2025年6月までの全世界投資とオールカントリーの資産推移を示したグラフを見ると、リーマンショック前まではオールカントリーが優位に推移していました。当時は不動産バブルの影響でREITなどが大きく伸びていましたが、サブプライム問題をきっかけにリーマンショックが発生し、大きく値を下げます。

その後、オールカントリーと全世界投資の順位が逆転し、以降12年9ヶ月にわたって全世界投資がオールカントリーを上回り続けました。その関係が再び逆転したのは、2020年のコロナショック後に世界的な金余りが進んだタイミングです。

このグラフを見ると、株式100%の商品と分散投資の商品がこの先も交互に優劣を繰り返していくのか、あるいは株式100%のオールカントリーが最終的に引き離していくのか、という疑問が生まれます。一般的に「株式100%が最終的に最も増える」と言われているため、時間とともにその差が広がっていくと思われがちです。しかし、その考え方にはリスクの視点が含まれていません。リターンとリスクをセットで考えると、長期スパンでは結論が変わってきます。

オールカントリーと全世界投資の最終到達点はほぼ同じ(4:17)

2003年1月からの運用実績を見ると、オールカントリーのリターンは8.26%、リスク(標準偏差)は17.85%でした。一方、全世界投資のリターンは7.05%、リスクは約11.13%と、リスクがオールカントリーの約3分の2に抑えられています。

リスク(標準偏差)の考え方として、1σ・2σ・3σという表現があります。3σの範囲を超える出来事は確率論上99%を下回らないはずですが、リーマンショックはそれを超えてしまいました。これが「100年に一度の大暴落」と表現された理由です。

ただし、現実の市場では「ファットテール」と呼ばれる現象が起きます。価格が大きく動く確率は本来非常に低いはずですが、価格が上昇すると乗り遅れまいとした投資家が殺到し、動きがさらに加速します。その結果、極端な値動きが起こる確率は数学的な想定より高まり、99%と言われていたものが実質90%程度まで下がると考えられています。これは「100年に一度」ではなく「10年に一度」程度の頻度で大きな値動きが起こり得ることを意味します

実際に2008〜2009年のリーマンショック、2020年のコロナショックと、おおよそ10年周期で大きな下落が起きています。次の節目は2030年前後と見ることができ、その規模はより大きくなる可能性もあります。オールカントリーのリスク17.85%の3倍は約53%であり、リーマンショック時のマイナス約60%とも整合します。現在はインデックス投資が普及したことで分散が進んでいるため、当時よりショックが和らぐ可能性はありますが、それでもリスクは20%〜22%程度を前提に考えておくのが適切です。

リスクは20%〜22%で考える(9:42)

投資においてリスクが存在すると、値動きの上下が繰り返されます。下落した後に同じ割合で上昇しても元の水準には戻れないため、実際に多くの人が得られるリターンは期待値よりも低くなります。これはボラティリティドラッグ(逓減効果)と呼ばれる現象で、リスクが大きければ大きいほどこの影響も強まります。

この効果を加味した中央値で見ると、オールカントリーは5.83%、全世界投資は5.81%となり、その差はわずか0.02%ですつまり、リターンとリスクを合わせて長期視点で評価すると、株式100%のオールカントリーも、債券を組み入れた全世界投資も、最終的な到達点はほぼ同じと言えます

先ほどの中央値の話に戻ると、リスクがゼロの商品であれば期待値・中央値・最頻値はすべて同じになります。しかしリスクが大きくなるにつれ、これらの値は乖離していきます。オールカントリーの場合、期待リターン8.26%と中央値5.83%の差は約2.5%です。全世界投資はこの差が約1.2%であり、最頻値で比較すると全世界投資の方が優位です。つまり、最も多くの人が実際に得られるリターンという観点では、分散投資の方が有利と言えます。

もし仮にリスクゼロで5.81%の利回りが得られる預金商品があれば、多くの人はそちらを選ぶはずです。リスクを取ってもリスクを取らなくても中央値がほぼ同じなら、リスクは少ない方が合理的です。

個別株のリスクは40%程度にもなり、そうなるとほぼギャンブルに近い状態です。市場の歪みを読めるのであれば個別株投資も意味を持ちますが、それには高度な分析と本業以上の時間が必要です。長期投資の考え方は、その歪みを読もうとすることから一歩引いて、平均値で十分という姿勢に立つものです。世界全体という最も大きな対象に投資することで、誰でも再現性のある結果を得ることができます。

リスクを抑えるためには債券が必要(19:56)

この考え方から導かれる結論が、債券の組み入れです。債券は株式の大きな値動きを抑える役割を持ちます。株式が大きく上昇している局面では利益の一部を蓄積する場所となり、クライシスが起きた際にはバランスを整えることで回復を早めます。年に一度のリバランスを続けることで、資産推移が滑らかになっていきます

まとめ(27:53)

結論として、株式100%のオールカントリーと債券を含む全世界投資は、長期の中央値ベースで見ればほぼ同じ到達点に行き着きます。それでも株式100%を選ぶかどうかは、値動きのスリルを楽しみたいかどうかという感覚的な部分に委ねられます。計画通りに資産を育てたいと考えるなら、リスクを抑えた分散投資の方が適しています。

長期投資において重要なのは、投資を継続することです。大きな下落局面でも慌てて売却しないためには、自分が許容できるリスク水準に収まったポートフォリオを組んでおく必要があります。いつ資産を取り崩すことになるかは誰にも分かりません。リーマンショック直後に使わなければならない局面を迎えるケースも現実に存在します。そのためにも、どのタイミングで取り崩すことになっても対応できる備えとして、リスクを抑えた運用が多くの人にとって現実的な選択肢となります。

またこちらの動画「S&P500・オルカン1本で安心してない?“リターンしか見ない人”が損する理由」では、リターンより先にリスクを見るべき理由や株式一本の弱点を解説していますのでぜひご覧ください。

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