インフレ時代に「ボーナスの給与化」で家計の破綻が減少する理由

最近、ソニーグループをはじめとする大企業で「ボーナスの給与化」が進んでいます。これは冬のボーナスを廃止し、その分を毎月の給与に組み込むという取り組みです。
一見すると年収は変わらないこの施策ですが、実は家計管理の安定化や優秀な人材確保という重要な狙いがあります。海外では一般的なこの給与体系が、なぜ今日本で注目されているのか、そして私たちの家計運営にどのような影響をもたらすのかを詳しく解説していきます。

キーポイント

なぜ「賞与の給与化」が進んでいるのか(00:01:11)

ソニーグループが冬のボーナスを廃止し、給与の一部として組み込む「賞与の給与化」を発表しました。夏のボーナスは残しつつ、冬のボーナス分を毎月の給与に振り分けることで、2025年4月入社の初任給を3万8000円引き上げるとしています。

この取り組みの背景には、外資系コンサル企業などと比較して日本の給与体系が見劣りしていたという課題があります。 優秀な人材を確保し、転職市場での競争力を高めることが主な狙いです。大和ハウス工業やバンダイなど他の企業でも、同様の賞与の一部組み換えが進んでいます。

「賞与の給与化」の背景と狙い(00:02:38)

賞与を月給に組み入れる狙いの一つは、応募者のニーズに応えることです。毎月の手取りが増えることで、求職者にとって見栄えが良くなります。求人情報では毎月の給与が前面に出るため、ボーナスの詳細は面談で聞くしかなく、しかも業績次第では支給されない可能性もあります。

海外企業、特にヨーロッパ(ドイツ、イギリス、フランス、スウェーデン)やアメリカでは固定給が主流です。ボーナスは業績が上がった時の決算賞与や、特定の成果に対するインセンティブとして支給されるのが一般的で、日本のような定期的なボーナス制度は実は少数派なのです。

日本の労働環境も変化しており、従来の総合職制度から、より専門性を重視したジョブ型雇用への移行が進んでいます。総合職では配置転換が可能なため、企業側は簡単に解雇できませんが、ジョブ型雇用では特定の職務がなくなれば解雇も認められやすくなります。この変化に伴い、給与体系も海外に合わせていく動きが出てきています。

「賞与の給与化」の賛否(00:10:29)

この制度には賛成派と反対派の意見があります。賛成派からは「毎月の収支計算が簡単になる」「家計管理を任されている配偶者にとって、毎月一定額が入る方が管理しやすい」という声が聞かれます。興味深いのは、ボーナスからお小遣いがもらえない夫が「毎月増えた方が嬉しい」と述べているケースもあることです。

一方、反対派は「ボーナスがあるから大きな買い物ができる」「ボーナスがないと貯蓄をしていかなければならない」という意見を述べています。これは自分自身の家計管理ができているかどうかの問題でもあります。 本来であれば、欲しいものがあるときは計画的に貯蓄していくべきですが、ボーナス頼みの家計になってしまうと、自分の生活が他人に委ねられてしまうことになります。

マネーセンスでは…(00:15:06)

マネーセンスカレッジでは、すでに全スタッフに対してボーナスを一切支給せず、月給に全て組み込んでいます。退職金制度もなく、代わりに企業型確定拠出年金を導入しています。業績連動型のボーナスについては、海外的な決算賞与やMVP制度のようなものは検討の余地があると考えています。

会社の役割は固定給を約束し、それを安定して支払えるシステムを構築することです。 経営者の仕事は儲かるシステムを作ることであり、そのリスクを負うのも経営者の役割です。労働者は安定性を求めてサラリーマンになるのですから、不定期な収入であれば起業した方が良いという考え方もあります。

マネーセンスの家計管理(00:18:00)

マネーセンスカレッジで提供している家計管理システム「QGS」は、給与が安定していることを前提としています。投資にはリスクが伴いますが、日々の生活は絶対にクリアしなければなりません。定期的に一定額が入ってくる給与があることで、リスクのある投資に対してもある程度の上下動を許容できるようになります。

ボーナスが収入の大きな割合を占めてしまうと、ボーナスありきの家計になってしまい、それに依存する体質になってしまいます。 4ヶ月分や6ヶ月分といった大きなボーナスがあると、その取り扱いに悩むことも多いでしょう。それを平準化して毎月もらう方が、積み立て投資などの時間分散効果も活用しやすくなります。

QGSは月ベースでの家計管理を前提としているため、手取り収入の安定化により、家計運営がよりしやすくなると考えられます。投資には不確実性が伴いますが、月給は予測可能な収入です。この安定した収入を基盤として、計画的な資産形成を行うことが重要です。

まとめ

ボーナスの給与化は、単なる支払い方法の変更ではありません。家計の安定化、優秀な人材の確保、そして海外標準への適応という複数の目的を持った重要な制度変更です。ボーナス依存の家計から脱却し、毎月安定した収入を基盤とした計画的な家計管理へと移行することで、家計破綻のリスクを大幅に減らすことができます。

この流れに適応するためには、自分自身で家計を管理し、コントロールする能力を身につけることが重要です。安定した月収を活用して、計画的な貯蓄と投資を行い、より健全な家計運営を目指していきましょう。