IMF世界経済見通し大幅悪化でも全世界投資を継続すべき理由
IMFが2025年4月に発表した世界経済成長率の予測が、従来の3.3%から2.8%へと大幅に下方修正されました。通常、IMFの世界経済成長見通しが3%を下回ることはほとんどなく、今回の2.8%という数値は相当センセーショナルなものです。
この背景にはトランプ関税ショックの影響があり、アメリカを震源地として各国の経済見通しが軒並み下方修正される結果となりました。しかし、こうした状況下でも全世界への分散投資を継続することの重要性について解説します。
キーポイント
IMF発表の経済成長率予測 (00:01:10)

2025年4月に発表されたIMFの経済成長率予測では、2025年の世界経済成長率が従来の3.3%から2.8%へと0.5%の大幅な下方修正となりました。これは通常3%を下回ることがないIMFの予測としては異例の数値です。
2026年についても3.3%から3.0%へと下方修正されており、先進国、新興国、発展途上国すべての地域で成長率の見直しが行われています。特にアメリカの成長率は2.7%から1.8%へと0.9%もの大幅な下方修正となり、この影響が世界全体に波及している状況です。
日本についても、2025年の経済成長見通しは1.1%から0.6%へと0.5%下方修正されており、元々低い成長率からさらに下がる結果となりました。これらの下方修正の主要因は、トランプ関税ショックによる貿易への影響が各国経済に波及したことにあります。
全世界に投資をしてもいい? (00:04:10)
経済成長率の下方修正を受けて、全世界投資から日本株式や債券への資産シフトを検討する声もありますが、重要なのは経済成長がマイナスではなく、依然としてプラス成長を維持していることです。過去の歴史を見ても、3%を下回る成長率予測は極めて稀であり、それでも成長は続いています。
確かにアメリカの成長率は大幅に下方修正されましたが、アフリカ諸国では4.5%、サハラ以南アフリカでは3.8%といった高い成長率が維持されています。中国も4%、インドに至っては6.2%という力強い成長が予測されており、世界全体で見れば成長の源泉は多様化しています。
メキシコなど一部の国ではマイナス成長も予測されていますが、これもアメリカの関税政策による一時的な影響と考えられます。IMFも今回の成長鈍化は一時的なものであると言及しており、政策変更により状況は改善する可能性があります。
資産分散・地域分散は功を奏している (00:06:54)
今回のトランプ関税ショックにより、資産分散と地域分散の重要性が改めて証明された形となりました。アメリカ株価が下落する中でも、日本市場の回復は早く、全ての地域が同時に下落することはありませんでした。
株式だけでなく債券投資も組み合わせることで、株式単体投資よりもリスクを大幅に軽減しながら、リターンの大部分を維持することができています。成長率は株式100%の投資よりも劣る可能性はありますが、その差は半分や3分の1といった大幅なものではなく、リスクを大きく下げながらもしっかりとしたリターンを得ることが可能です。
実際に、今回の市場変動期間中のオールカントリー(オルカン)やS&P500との比較データも用意されており、全世界投資の有効性が数値で確認できる状況となっています。
全世界投資は継続した方がいい (00:07:50)
アメリカが景気後退に入ったとしても、他の国々が全て同時に景気後退に陥るわけではないというのが歴史的な傾向です。アメリカが伸び悩む時期に、新興国や小規模な国々が代わりに成長するパターンは過去にも見られています。
仮にアメリカの影響力が強すぎて新興国にもダメージが及んだ場合、今度は金などの他の資産クラスが上昇する可能性があります。こうした様々な資産に幅広く投資しておくことで、どの資産が上昇してもその恩恵を受けることができます。
市場のタイミングを読んで資産を乗り換える「波乗り投資」は、アセットアロケーション理論の観点から見ると、プロが行っても長期的には分散投資に勝てないことが証明されています。世界中の年金基金や大学基金が全てアセットアロケーション運用を採用している理由がここにあります。
投資家が信じるべき未来とは? (00:09:28)
投資を行う上で最も重要なのは、経済成長はしていくということを信じられるかどうかです。この信念の根源は、私たち一人ひとりが「明日をより良くしたい」と思う気持ちにあります。
個人が明日をより良くするために努力し、それが付加価値を生み、その付加価値がさらなる付加価値を生むという循環が経済成長の本質です。各国のGDP(国内総生産)は、こうした付加価値の総和を表しており、IMFの経済成長予測もこの積み重ねから算出されています。
人々が将来をより良くしたい、便利な世の中になってほしい、もっと豊かになりたいという気持ちを持ち続ける限り、世界の経済成長は止まることはありません。企業の成長やイノベーションも、こうした人々の願いが原動力となっています。
経済成長は指数曲線を描いて複利効果により加速していくため、5年、10年だけでなく、50年、100年という長期スパンでも成長は続いていくと考えられます。経済体制が根本的に変わらない限り、この成長トレンドは維持されるでしょう。
今後はどうしたらいい? (00:13:02)
結論として、何も変わらないということが答えです。トランプ関税ショックがあって株価が暴落したり暴騰したりしますが、私たちにとっては何の変化もありません。経済成長が少し鈍化した程度の出来事なのです。
未来は誰にも分からないものの、現状においては従来の投資方針を継続することが最適です。積立投資を継続し、資産形成を着実に進めていくことが重要です。
経済ニュースに関心を持つことは良いことですが、メディアの中には事実とは異なる解説をするものもあります。事実として何が起こっているのかを把握し、その後の解説は自分自身で考えるか、より専門性の高いレポートを参考にすることをお勧めします。
世界経済は一つの国がマイナス成長になったりゼロ成長になったりしても、全体としては成長を続けていきます。この事実を信じて、それに適した投資方法を継続していけば良いのです。
まとめ
IMFの経済成長見通しが過去に例を見ないほどの下方修正となり、通常3%を下回ることのない予測が2.8%という数値になったことは確かにセンセーショナルな出来事です。しかし、これは成長スピードが鈍化しただけであり、成長が止まったわけではありません。
3%が2.8%になったということは、実質的には0.2%の差であり、私たちの資産形成にとって決定的な影響を与えるものではありません。むしろ、このような時期だからこそ、全世界への分散投資を継続し、積み立て投資でコツコツと資産形成を続けていくことが何よりも重要です。
またこちらの動画「【これを知れば富裕層の仲間入り?】お金持ちになる人はなぜ『3つの資産』に注目するのか?」では、実際の下落率・リスク・リターン・長期的な推移まで、「データで見る」分散投資の底力を詳しく解説していますのでぜひご覧ください。