老後は生きていれば必ず訪れるものです。いずれやってくる老後の生活をより豊かにするためには、現役世代のうちから老後資金の準備を始める必要があります。
老後資金の確保を目的として投資をする場合、強力な税制優遇が用意されている「確定拠出年金」の利用をおすすめしています。
しかし「毎月分配型投資信託」や「個人年金保険」といった、確定拠出年金と異なる制度で老後資金の準備を行っている方もいます。
確定拠出年金とその他の金融商品や制度では、どちらが老後資金を確保しやすいのでしょうか。
今回の記事では、代替年金としておすすめされる制度と確定拠出年金はどちらが老後資金の準備に向いているのか解説します。その他の制度について把握して、確定拠出年金とどちらを利用するか判断できるようになりましょう。
老後資金の準備に確定拠出年金よりも向いている制度はない
日本には老後の生活を支えるためにさまざまな年金制度が用意されています。
年金制度は3階建ての構造になっており、1階部分に国民年金、2階部分に厚生年金があてはまり、3階部分は公的年金では足りない分の老後資金を用意するための制度になります。
したがって「確定拠出年金」は3階部分に含まれる制度です。
3階に該当する制度はさまざまあり、後述する拠出型企業年金保険や国民年金基金もそのひとつです。
では、3階部分の制度の中で、なぜ確定拠出年金がもっとも老後資金を準備するために向いている制度なのでしょうか。
確定拠出年金の税制優遇は他制度よりも高待遇
確定拠出年金は3階部分にあたる年金制度の中でも強力な税制優遇が適用されます。
- 入口時(拠出時):全額所得控除
- 運用時:運用時非課税
- 出口時(引き出し時):退職所得控除と公的年金等控除
まず、拠出したお金は全額が「所得控除」の対象です。
たとえば毎月3万円拠出した場合は、所得から36万円分(3万円×12カ月)が控除されて税金が安くなります。
次に運用時ですが、拠出したお金を運用して得た利益に対しては税金がかかりません。
通常、特定口座などで投資をして利益が出た場合は「利益×20.315%」の金額が税金として引かれます。1,000万円の利益が出ると200万円は税金になるのです。
確定拠出年金で運用した場合は、この税金がかからないということですね。
最後に引き出し時ですが、ここでは課税はされてしまいます。ただし「退職所得控除」か「公的年金等控除」もしくはその両方を適用可能です。
どちらも強力な控除ですが、特に退職所得控除は上手に活用できれば、引き出し時に支払う税金をゼロにすることもできるでしょう。
さらにポータビリティ制度や企業型確定拠出年金だけで使える社会保険料控除などメリットが豊富にあります。
3階部分に当たる制度でこれほど税制優遇されている制度は他にありません。そのため、老後資金の確保を目的とした場合は確定拠出年金がもっとも向いています。
確定拠出年金の税制優遇やメリットなどを細かく知りたい方は「デメリットしかないのは本当?投資家視点でわかる確定拠出年金のメリットとデメリット」をご参照ください。重厚な記事ですが、より制度について理解を深めることができます。
代替年金とされる商品や制度では損をする可能性が高い
確定拠出年金以外の3階部分の制度に加えて、保険の販売員などから「老後のために必要」とおすすめされる金融商品も存在します。
それらをまとめると、以下の7つが「確定拠出年金の代わりになる年金制度(商品)」としてよく挙げられるものです。
具体的な内容は後述していきますが、7つの制度は確定拠出年金と比べて税制優遇が少なかったり、将来期待できるリターンが低かったりします。
たとえば、確定拠出年金を利用して投資をする場合はマネーセンスカレッジでは「全世界投資」をおすすめしています。
全世界投資とは、世界中の投資可能な金融商品に投資をして、世界の経済成長の波に乗って運用を行う投資方法です。さまざまなアセット(資産)に分散して運用資金を配分することで、リスク(価格変動リスク)を抑えた運用が可能になります。
全世界投資では期待利回り7%、平均利回り5%を目指せます。
一方で上述した7つの商品や制度は、期待できる利回りは高くても2%程度でしょう。購入する商品によっては、途中で解約すると積み立てたお金が目減りして返ってくるものもあります。
つまり、同じ期間、同じ金額を積み立てた場合、確定拠出年金と違う制度で老後資金を準備すると損をする可能性があるのです。そのため、老後資金の準備を行うための制度は確定拠出年金をおすすめしています。
では、本当に税制優遇や将来の期待リターンは確定拠出年金のほうが優れているのでしょうか。
次の項目から代替年金とされる7つの制度と確定拠出年金の比較を解説します。各制度の概要と確定拠出年金を比べて、どちらを利用したほうがいいのか考えてみてくださいね。
損をする代替年金①毎月分配型投資信託
毎月分配型投資信託とは、毎月の利益に応じて分配金が支払われる投資信託です。毎月決まった金額を受け取れるため、老後に買っておくと年金のような仕組みを作れるということで人気があります。
では、確定拠出年金と毎月分配型投資信託の税制優遇や期待できるリターンを比較してみます。
特別な税制優遇はほとんどない
入口時ですが、毎月分配型投資信託には購入した金額だけ所得控除が適用されるような制度はありません。
運用時はNISA口座を利用していれば「運用時非課税」になります。この点は確定拠出年金と同じですね。
ただし、特定口座などで購入した場合は課税されてしまうので注意してください。
運用したお金を引き出す際も、基本的に毎月分配型投資信託は控除されるものがありません。
このように入口時、運用時、出口時のどれをとっても確定拠出年金のほうが優れていることがわかります。
利益が出ている商品が少ない
実は毎月分配型投資信託は、ほとんどの商品で利益があまり出ていません。基準価格が下がり続けている商品ばかりなのです。
たとえば、楽天証券で人気ランキング1位の商品は「ダイワ J-REIT オープン(毎月分配型)」です。この商品を調べると、運用が始まった2004年から2022年12月現在まで基準価格は下がり続けています。
しかし、分配金は支払われているのです。
この「利益が出ていないのに分配金はきちんと支払われている」という矛盾が毎月分配型投資信託の落とし穴。要するに、毎月分配型投資信託で利益が出てないファンドは、元本を切り崩しながら分配金が支払われています。元本から分配金を支払うことで、あたかも利益が出ているように勘違いさせているのです。
元本を切り崩しているということは、いずれ元本がなくなり分配金が払えない状況が訪れます。それが老後に入ってからでは困りますよね。
ほとんどの商品でこの状態なので、毎月分配型投資信託は確定拠出年金の代替年金とはならないでしょう。
事実、平成28年度に金融庁が発表した金融レポートでも、毎月分配型投資信託は複利効果が働きにくく、元本取り崩しの形態も多いため、運用効率を下げる可能性が高いことを指摘されています。
国としても基本的に売ってほしくない商品だということです。
分配金を受け取る仕組みは無料で作れる
毎月分配型投資信託を購入する方は、おそらく「年金のように毎月一定金額がもらえること」に魅力を感じているのではないでしょうか。
国からの年金とは別に毎月一定のお金を受け取れると家計管理が行いやすいメリットはあります。
しかし、年金のように分配金を受け取る仕組みは自分で「無料」で作ることが可能です。
SBI証券や楽天証券には「投資信託定期売却サービス」というのがあります。現在持っている投資信託を毎月設定した金額や数量だけ自動的に売却して現金を受け取れるサービスです。
毎月分配型投資信託は利益が上がっていないうえに、信託報酬手数料が平均1%以上と非常に高くなっています。
しかし、年金のように毎月お金を受け取れる仕組みは証券会社で無料で作れます。ほぼ同じ仕組みであるのなら、手数料を支払うのはもったいないです。
そのため「年金のように受け取れるから」という理由で毎月分配型投資信託を買う必要はありません。
損をする代替年金②定額個人年金保険
定額個人年金保険とは、一定の年齢まで保険料を積み立てることで保険料を払い終わったあとに、その積立金を年金のようにもらえる保険です。
定額個人年金保険は、契約時に定められた予定利率により運用を行います。将来確実に年金を受け取れる商品なので、老後資金を貯める際によくおすすめされる商品です。
では、定額個人年金保険が確定拠出年金の代替年金になるのか比べて良いきます。
全体的に控除額は少ない
定額個人年金保険と確定拠出年金では、適用される税制優遇の種類が異なります。比較を行いやすいように「入口時」「運用時」「出口時」の3段階に分けて、どのような税制優遇があるのか解説します。
入口時は最大6.8万円の控除がある
定額個人年金保険で支払った保険料は「生命保険料控除」の対象になります。
生命保険料控除は年間に支払った保険料の総額によって控除額が変わるので、確定拠出年金のように全額控除ではなく、控除額に上限があります。
控除額は、定額個人年金保険を契約した日付によって変わります。契約日によって「新制度」と「旧制度」に分かれ、それぞれ控除額が変わるので注意してください。
2012年1月1日以降に契約した場合(新制度)
- 一般生命保険料控除
- 介護医療保険料控除
- 個人年金保険料控除
2011年12月31日以前に契約した場合(旧制度)
- 一般生命保険料控除
- 個人年金保険料控除
控除額は以下の表を参考に計算してみてください。
新制度か旧制度かによって控除額が異なりますが、定額個人年金保険の場合は生命保険料控除の中で「個人年金保険料控除」が適用されます。
たとえば、2013年1月1日から定額個人年金保険を利用して、毎年4万円保険料を支払っている場合の控除額は次のようになります。
年間払込保険料:4万円
所得控除の計算式「払込保険料×1/2+1万円」
4万円×1/2=2万円
2万円+1万円=3万円
所得税の控除額:3万円
年間払込保険料:4万円
住民税の控除額の計算式「払込保険料×1/4+1.4万円」
4万円×1/4=1万円
1万円+1.4万円=2.4万円
住民税の控除額:2.4万円
つまり、毎年4万円の保険料を支払う定額個人年金保険に加入すると控除額は合計5.4万円になります。このように自分が支払っている保険料をもとに控除額は計算することが可能です。
ただし、年間払込保険料が8万円(旧制度は10万円)以上からは控除額は増えません。所得税と住民税合わせて6.8万円(旧制度は8.5万円)が最大控除額になります。
言い換えると、年間払込保険料が8万円(旧制度は10万円)以上からは控除が増えないので損をしているということです。
基本的に、個人年金保険は老後資金を準備するために利用します。そのため、将来ある程度の金額を受け取るには毎月の積立金額も必然的に高くなります。
生命保険文化センターが発表した「令和3年度 生命保険に関する全国実態調査」によると、個人年金保険の年間払込保険料は世帯平均20.6万円です。毎月約1.7万円ほどが支払われている状況になります。
要するに、多くの方は生命保険料控除の上限を大幅に超える保険料を支払っているのです。
すぐに上限を迎えてしまう定額個人年金保険と比べて、確定拠出年金は全額が所得控除の対象です。
したがって、入口時の控除は圧倒的に確定拠出年金が有利ということがわかります。
運用時は非課税の対象になる
定額個人年金保険の中で運用されている商品は非課税の対象になります。運用して得た利益に課税されることはありません。
保険を契約されている方は運用している意識はないかもしれませんが、元本割れ云々が書いてある以上、何かしらの価格変動商品で運用されていることは知っておいて損はありません。
受け取り時は3つの受け取り方がある
個人年金保険の受け取り方は以下の3種類があります。
- 一時金
- 年金
- 死亡時
受け取り方によって適用される税制優遇が異なるのできちんと確認しておきましょう。
一時金として受け取る場合の比較
一時金として受け取る場合、個人年金保険のお金は「一時所得」の扱いになります。
一時所得は他のすべての一時所得を合算した金額から「最大50万円の特別控除額」が設けられています。50万円を控除して1/2を乗じた金額が一時所得の課税所得金額です。
((個人年金保険の一時金-保険料支払総額+他の一時所得)-50万円)×1/2 = 一時所得の課税所得金額
そして課税所得金額を他の所得と合算して累進課税となります。
確定拠出年金で一時金として受け取る場合は退職所得の扱いです。
退職所得には「退職所得控除」が適用できます。
したがって、退職所得控除を控除して、さらに1/2を乗じた金額が退職所得の課税所得金額となります。
(確定拠出年金の一時金(源泉徴収される前の金額)-退職所得控除額)×1/2 = 退職所得の課税所得金額
そして課税所得金額は、他の所得と分離して累進課税となります。
退職所得控除は非常に強力な控除で、拠出年数によって控除額が変わります。
- 20年以下:40万円×拠出年数(最低80万円)
- 20年以上:800万円+70万円 ×(拠出年数-20年)
たとえば、30年間運用していれば「1,500万円(=800万円+70万円×10年)」の控除を受けることができます。
退職所得は一時所得と違って、確定拠出年金から受け取る一時金から拠出金総額を引くことはできません。
そのため、単純に比較することができませんが、サラリーマンのiDeCoは年27.6万円(月2.3万円)が最大拠出可能額なので、これを例にできるだけ条件を合わせて考えてみましょう。
拠出年数が20年以下であっても1年あたり40万円の控除があります。拠出金が年27.6万円(月2.3万円)ですので、12.4万円分(利益率約45%分)の利益まで退職所得控除が受けられる試算になります。
40万円(控除)-27.6万円(拠出金)=1年あたり12.4万円分の利益まで退職所得控除
拠出年数が20年超の部分であれば70万円の控除になりますので42.4万円分(利益率約153%分)の利益まで控除を受けることができます。
70万円(控除)-27.6万円(拠出金)=1年あたり42.4万円分の利益まで退職所得控除
拠出金額や運用期間、運用利回りによってはこれらの金額を超える利益がでることもあるでしょう。全世界投資の平均利回りである年5%で複利計算すれば、20年後の利益率は165%になります。
そうだとしても、一時所得と同じく「退職所得控除後の1/2が課税対象」であること、「分離課税」であること、次項で説明する「年金受取と併用することが可能」なことを合わせると、退職所得とみなされる確定拠出年金のほうが有利であると言えます。
年金として受け取る場合の比較
年金として受け取る場合ですが、個人年金保険で得た利益は「雑所得」の扱いになります。
確定拠出年金で年金として受け取ると、雑所得の扱いにはなりますが「公的年金等控除」が適用できます。
公的年金等控除は65歳以上かどうか、公的年金等の雑所得以外の所得金額が1,000万円超2,000万円以下、2,000万円超によって控除額が変わります。
ただ、確定拠出年金は60歳からしか受け取れず、多くの方は合計所得1,000万円を超えないでしょう。今回の記事も60歳以降の老後資金を確保するために利用できる制度について解説しています。
そのため、公的年金等の雑所得以外の所得金額が1,000万円以内の雑所得を確認していきます。
次の表が公的年金以外の雑所得に関わる合計所得が1,000万円以下の雑所得の早見表です。
たとえば、65歳で年金を受け取るとして、公的年金などの雑所得(確定拠出年金の給付額を含む)の合計が400万円の場合、所得金額は272.5万円になります。
400万円×75%-27.5万円=272.5万円
272.5万円とそのほかの所得を合わせた金額で税額を計算して、算出した課税額を毎年支払わなければなりません。
一方、個人年金保険で年金として受け取る場合は、必要経費を控除することができます。
雑所得の計算式は次の通りです。
年金の総収入金額-必要経費=雑所得の金額
必要経費は、払込保険料のうち今年の年金額に対する金額になります。
たとえば、年金受取期間10年で払込保険料総額が720万円、今年受け取る年金額が86万円だとしましょう。
この条件でかかった必要経費は1年間で72万円(経費率約83%)になります。したがって、雑所得の金額は14万円です。
86万円(今年の年金額)×(720万円/86万円×10年)=72万円(必要経費)
86万円(今年の年金額)-72万円(必要経費)=14万円(雑所得金額)
注意点として、例のように雑所得金額が25万円未満の場合は源泉徴収はされません。25万円以上になると、保険会社で雑所得金額の10.21%(所得税+復興特別税)を所得税として源泉徴収されます。
控除金額のみを比較すると、経費率でいえば個人年金保険のほうが大きくなる傾向があります。言い換えると、それは儲かってないということでもあります。
死亡時に受け取る場合の比較
死亡した場合は、個人年金保険のお金は「死亡保険金」として受け取ることになります。
死亡保険金は相続税の課税対象ですが、相続税の生命保険料控除の枠(非課税枠)が利用可能です。
どのような生命保険に入っていたとしても、非課税枠は一律で最大「法定相続人×500万円」で計算します。
通常の核家族であれば、夫婦2人に対して子ども1人。もし旦那さんが亡くなった場合は2人になるので、どれだけお金が得られるとしても最大1,000万円の控除になるということです。
確定拠出年金の加入者が死亡した場合、遺族が「一時金」として積み立てた資産を一括で受け取ることになります。
保険と同様に相続税の対象になりますが、確定拠出年金では死亡退職金の非課税枠を適用可能です。死亡退職金の非課税枠は「法定相続人×500万円」で計算されます。
死亡退職金(確定拠出年金)と生命保険金(個人年金保険)の非課税枠は別枠なので、どちらもある場合は両方使うことができます。
定額個人年金保険の平均利回りは1%を切る
税制優遇が劣っていても、確定拠出年金より老後資金を貯めやすいのであれば定額個人年金保険を利用したほうがメリットはあるでしょう。
定額個人年金保険は、保険会社が保険料を受け取りそのお金を投資して得た利益で将来の年金を支払う仕組みです。
ということは、全世界投資と同じように何かしらの金融商品に投資を行っています。投資対象となる資産はさまざまありますが、定額個人年金保険の中身は「超長期国債」に投資をしています。
私たち個人が購入できるのは個人向け国債と10年国債の2つのみですが、そのほかにも実はさまざまな国債が発行されています。元本償却期間が20年や30年といった「超長期国債」です。
超長期国債に関しては機関投資家(証券会社や保険会社など)しか購入できません。個人で購入できる国債よりも利回りが高いので、その分だけ契約者に還元しやすい商品です。
つまり、保険会社はリスクが少なく利回りも多少ある安定した商品で運用を行っているのです。
ただ、超長期国債の一つである「日本国債20年」の利回りは2023年1月現在で約1.2%程度です。そして運用して得た利益から各種一定の手数料が引かれます。
そうすると実際の利回りは1%を切る商品がほとんどなのです。運用して事務手数料を取るのであれば、必然的に予定利率よりも実際の利回りは低くなります。
一方で、全世界投資であれば平均利回り5%を期待できます。もちろん定額個人年金保険と違い将来受け取れるお金が確定している訳ではありません。
しかし、利回りが1%を切る商品ではある程度のお金を積み立てなければ老後資金は準備できないでしょう。
平均利回り5%を得られる全世界投資であれば、年齢にもよりますが手取り収入の10%を積立投資できれば老後資金を確保できます。
そのため、金額面で考えても確定拠出年金のほうが有利になるのでおすすめです。
損をする代替年金③変額個人年金保険
変額個人年金保険とは、保険の運用成績によって、将来受け取る年金額や解約返戻金額などが増減する保険です。
定額個人年金保険は超長期国債に投資をしていますが、変額個人年金保険は「投資信託」が投資対象です。投資信託を購入して、その運用益を契約者に還元します。
ただ、運用指示は契約者が行います。要するに「投資」を行うための保険商品なのです。
そのため「確定拠出年金で投資をするのが怖い」と言っている方が変額個人年金保険を選ぶことは矛盾しています。保険と書いてあるので安心してしまう気持ちはわかりますが、中身を紐解くと自分で投資をするのと同じことなのです。
控除額は定額個人年金保険と同じ
変額個人年金保険の税制優遇は「定額個人年金保険」とそれほどかわりません。そのため、具体的な税制優遇に関しては上述した「定額個人年金保険」の項目をご参照ください。
ただし、入口時に適用される生命保険料控除が少し違うのでその部分だけ解説しておきます。
生命保険料控除は「一般生命保険料控除」が適用される
変額個人年金保険も生命保険料控除が用意されていますが、その中で「一般生命保険料控除」が適用できます。
新制度の場合は所得税が最大4万円、住民税は最大2.8万円の控除が可能です。
一般生命保険料控除や個人年金保険料控除、介護保険料控除は併用ができます。そのため、たとえば定額個人年金保険と変額個人年金保険の両方に入っていた場合、それぞれに生命保険料控除が適用可能です。
ただし、制度全体の所得税の所得控除限度額は12万円まで。住民税は7万円までしかありません。節税対策でいろいろな個人年金保険に加入しても控除額には限度があるので注意してください。
各種手数料が非常に高くなっている
マネーセンスカレッジでは、投資信託を購入する場合、基本的にノーロード(購入手数料が無料)の商品を推奨しています。ノーロードの金融商品を購入できれば、少しでも手数料を安くすることが可能です。
変額個人年金保険で購入できる商品のほとんどは「購入手数料」を取られます。
運用利回りも変額個人年金保険で購入できる商品と全世界投資では、全世界投資のほうが高くなります。
さらに信託報酬手数料が高く、事務手数料なども別途かかるので、その分だけ運用益は目減りします。
つまり、変額個人年金保険は高い手数料などを支払いながら投資をしているということです。
死亡保険金は一定額が保証されていますが、年金受け取り時の元本が保証されていないことは同じなので、死亡保障が必要であれば掛け捨て保険で安く手に入れて、自分自身で確定拠出年金やNISA口座で税制優遇を受けながら投資をしたほうがはるかに高いリターンを目指せます。
そのため、年金としてお金を運用するのであれば変額個人年金保険よりも確定拠出年金がおすすめです。
損をする代替年金④終身保険
終身保険とは、契約者が死亡もしくは高度障害状態になった場合に保険金が支払われる商品です。保障が一生涯続くため、契約者が亡くなった場合にかかる葬儀代や遺族の生活費を確保するために加入される方が多いです。
契約時から基本的に保険料は一定です。保険料の払込期間は複数あり、契約する商品によって異なります。
では、終身保険と確定拠出年金を比べてどちらが老後資金の準備に向いているか解説します。
税制優遇はあるが控除額が低い
終身保険で適用される税制優遇は、個人年金保険と変わりません。
支払った保険料には「一般生命保険料控除」が適用されます。新制度の場合は所得税が最大4万円、住民税は最大2.8万円の控除です。
運用時も「運用時非課税」が適用されます。
受け取り時ですが、終身保険の受け取り方は2パターンです。
- 途中解約
- 死亡時
終身保険を途中で解約すると解約返戻金として支払った保険料が返ってきます。ただし、保険期間にもよりますが、早くに解約する場合は支払った保険料の総額よりも目減りした金額の返戻金を受け取ることになります。つまり、途中解約した場合は損をしてしまうのです。
解約返戻金として受け取って利益がある場合は「一時所得」の扱いになります。一時所得は他のすべての一時所得を合算した金額から「最大50万円の特別控除」です。
50万円を控除して1/2を乗じた金額が一時所得の課税所得金額になります。
((個人年金保険の一時金-保険料支払総額+他の一時所得)-50万円)×1/2=一時所得の課税所得金額
死亡した場合に受け取るお金は死亡保険金の扱いです。死亡保険金は相続税の課税対象になりますが、相続税の生命保険料控除の枠(非課税枠)が利用可能です。
非課税枠は「法定相続人×500万円」の金額になります。
このように終身保険は死亡するか解約するかしか受け取り方法がありません。
入口時、運用時、出口時のすべての面で税制優遇は確定拠出年金のほうが優れていることがわかります。
期待できるリターンは1%前後になる
基本的に、終身保険は個人年金保険と中身は同じです。積み立てたお金の受け取り方や保障内容が異なるだけで仕組みは似ています。
したがって、個人年金保険とリターンはそれほど変わりません。年利回り1%前後の商品ばかりです。
全世界投資は20年間の運用実績があり、期待利回り7%、平均利回り5%を目指せます。
終身保険は将来受け取るお金は多少増えますが、確定拠出年金で全世界投資を実施したほうが資産を増やせます。
元本割れの確率はありますが、運用期間が10年以上あれば元本割れする確率はかなり低くなります。そのため、金額の部分でも確定拠出年金の方が多くの資産を貯めることができるでしょう。
損をする代替年金⑤拠出型企業年金保険
拠出型企業年金保険とは、企業が採用していれば加入できる特別な保険です。確定拠出年金と同じように、日本の年金制度の3階部分に位置付けされています。
拠出型企業年金保険の仕組みは、厚生年金基金とほとんど同じです。
厚生年金基金では、従業員の厚生年金の一部に加えて会社からもお金を拠出し、その資金を別の運用会社が運用を行っていました。運用して得た利益を退職時に受け取ることができます。
ただ、運用が順調に進まなくなると、会社の資金力が足りずに年金を支払えなくなるということが起こり制度自体が破綻してしまいました。
そこで厚生年金基金の代わりに生まれたのが拠出型企業年金保険です。拠出型なので自分自身で掛金を拠出する必要があります。従業員が積立金を支払うので会社の体力がなくても支払い続けることが可能です。
運用時についてですが、拠出型企業年金保険の中身は「団体保険」です。
団体保険は会社が保険会社と提携することで利用できる制度。従業員を一括りにまとめて契約できるため、保険料を安くしてもらえたり、利回りを上げたりできる少しお得な保険になっています。
つまり、通常の保険よりお得に運用される企業年金が拠出型企業年金保険ということです。
税制優遇は確定拠出年金が有利
拠出型企業年金保険は保険商品なので、積み立てたお金は「生命保険料控除」の対象になります。
ただし、契約期間によって適用される生命保険料控除が変わるので注意してください。
50歳を超えて加入する、もしくは加入期間が10年未満の場合は「一般生命保険料控除」が適用できます。
50歳未満で加入、もしくは加入期間が10年以上の場合は「税制適格あり」となり「個人年金保険料控除」の対象です。
どちらも新制度の場合は所得税が最大4万円、住民税は最大2.8万円の控除を受けられます。
個人年金保険などに加入していて、拠出型企業年金保険にも加入すると控除額は合算して計算されます。そのため、個人年金保険などと重ねて入ると全くお得ではありません。
運用時は運用している会社が保険会社になるため運用時非課税が適用されます。
出口時は加入している拠出型企業年金保険によって受け取り方が決まっています。
受け取り方にはさまざまな種類があり、確定年金でもらったり、終身年金や一時金として受け取ったりすることが可能です。
保険商品になるため、受け取り方によって適用される税制優遇も変わります。
たとえば、年金として受け取る場合は個人年金保険と同じで「雑所得」の扱いになります。
したがって、税制優遇の面では拠出型企業年金保険よりも確定拠出年金のほうが所得控除と合わせると控除額は大きいです。
予定利率は平均1.1〜1.7%
上述したように拠出型企業年金保険の中身は団体保険です。通常の保険よりも予定利率は高めに設定されています。
保険会社にもよるため一概には言えませんが、予定利率は平均1.1〜1.7%です。
保険商品で1%を超えるため良い商品に思えます。ただ、全世界投資の平均利回り5%と比べると利回りは低いですね。
また、多くの場合、保険料を支払うときは2〜3%程度の事務手数料を支払わなければなりません。
企業型確定拠出年金では、企業が負担してくれるので手数料はかかりません。個人型確定拠出年金(iDeCo)の場合は、拠出するたびに170円の手数料を負担する必要があります。
たとえば、会社員の方でiDeCoを利用すると拠出限度額は5.5万円です。限度額まで拠出している場合、実際に負担する手数料の割合は約0.3%です。
170円÷5.5万円=0.309%
ただ、拠出型企業年金保険は手数料が2%を下回る商品はほとんどありません。
手数料は高いですが、一般的な保険商品と比べると利回りは高いので「本当に運用はしたくない」という方には向いている商品と言えます。
損をする代替年金⑥国民年金基金
国民年金基金とは日本の年金制度の3階部分に当たる制度です。
通常、自営業者(第1号被保険者)は国民年金しか利用できません。厚生年金にも加入できる会社員(第2号被保険者)と比較すると、将来受け取る年金は少なくなります。
そこで国民年金の第1号被保険者が老後に必要な生活費の不足を補うために利用するのが「国民年金基金」です。
国民年金基金に加入する場合、1口目は「終身年金」と「15年の期間保証型」の2種類のタイプがあります。終身年金の中にも「期間保証があるA型」と「期間保証がないB型」が用意されています。
さらに2口目以降は終身年金に加えて、他に5つのパターンから選ぶことが可能です。
加入は口数単位で決まり、何口加入したか(毎月いくら掛けるか)によって将来受け取れる年金額が確定します。
加入すると将来確実に年金を受け取れますが、一度加入すると基本的に脱退することはできません。脱退するためには第1号被保険者でなくなるなどの条件があります。
さらに、掛金を途中で変えることも難しくなっています。掛金を減らす場合は2口目以降の口数を減らすことでしか対処できません。
税制優遇は確定拠出年金と似ている
国民年金基金の税制優遇は確定拠出年金とほとんど同じです。
拠出した掛金は全額所得控除になり、運用時非課税。出口時も受け取り時は公的年金等控除が適用されます。
死亡一時金として受け取るときは確定拠出年金とは違い非課税となります。
しかし、国民年金基金は途中で解約することや拠出金額を変更することが難しいため、1度加入すると止めることができません。
確定拠出年金は原則60歳まで引き出せませんが、投資が不安になったら掛金を減額したり、拠出を止めたりすることができます。
税制優遇の豊富さはどちらも似ていますが、長期間利用することを考えると確定拠出年金のほうが利便性が高く使いやすいです。
国民年金基金の利回りは平均1.5%程度
国民年金基金は、制度加入時の予定利率によって将来受け取る年金額が決まります。加入した段階で国民年金基金から一定額の年金を死ぬまで受け取れることが確定するということです。
国民年金基金の現在(2022年12月)の予定利率は「1.5%」になっています。
しかし、ここから事務手数料などの費用も引かれることを考えると実際の利回りは1%を切るでしょう。簡単に言えば、税制優遇などを受けられる制度で積立貯金をしているのと同じ状態です。
一方で、繰り返しになりますが確定拠出年金で全世界投資を実施すると平均利回り5%は期待できます。10年以上運用するのであれば、元本割れの確率も低くなります。
そのため、老後資金を用意するための制度は、やはり確定拠出年金がおすすめです。
損をする代替年金⑦小規模企業共済
小規模企業共済は、会社経営者や役員、自営業者(フリーランス)の方達が退職時や廃業時などに必要な資金を積み立てておくための制度です。退職金代わりに利用する制度だとイメージしてください。
小規模企業共済に用意されている税制優遇は確定拠出年金と同じです。
- 入口時:全額所得控除(小規模企業共済掛金等控除)
- 運用時:運用時非課税
- 受け取り時:退職所得控除、公的年金等控除
税制優遇が同じなので、確定拠出年金と小規模企業共済はどちらを使って老後資金を貯めたら良いのか悩まれる方は多くいます。
「老後資金」の確保を目的とするなら確定拠出年金のほうがおすすめです。
小規模企業共済は運用利回りが基本的に固定です。増えたとしても最大1%程度になります。
確定拠出年金で全世界投資ができれば平均利回り5%は確保できるので、将来の資産に大きな差が出るでしょう。
老後資金を貯めるなら確定拠出年金のほうが有利ですが、小規模企業共済をあわせて利用することもできます。そうすればさらに節税効果が受けられます。
そのため、確定拠出年金を最大まで利用していて、それでも資金に余裕がある方は税金対策として小規模企業共済を利用するのがおすすめです。
各制度をきちんと比較して目的に合わせて活用しよう
老後資金を準備するための商品や制度はさまざまな種類があり、どれを選んだら良いのか悩む方は多いです。
確定拠出年金はもちろん、紹介した7つの制度も目的によっては活用することもできます。目的に合わせて柔軟にどの制度を使えるか考えましょう。
ただ「老後資金」という目的があり、それを貯めるための手段としては確定拠出年金が最適です。優れた税制優遇があり、他制度と比べて老後資金を貯めやすくなっています。
そのため、まず確定拠出年金が最優先です。確定拠出年金を満額まで拠出して、さらにプラスして老後資金を確保したり、税金を減らしたいという場合は他の制度を利用するのも手段のひとつになります。
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