SBI、信託報酬0%のオールカントリー「ゼロカン」を発表。eMAXIS Slimオルカンと比較
SBIから、信託報酬0%のオールカントリーが発表されました。ついに来たかという印象です。すでにニュースなどでご覧になった方も多いのではないでしょうか。
SBI証券は、こどもNISA向けと一般向けの2本を設定しました。どちらもACWI(通称オルカン)に採用されているインデックスに連動するファンドです。ここでは、その内容を順番に見ていきます。
SBIから「ゼロカン」と「SBIオールカントリー」が登場(0:35)
1本目は、こどもNISAの中で購入できる「SBI・ゼロ・オールカントリー・インデックス・ファンド」です。SBI自身が「ゼロカン」と呼んでおり、オルカンにちなんだ愛称になっています。
2本目は、業界最低水準をうたう「SBI・オールカントリー・インデックス・ファンド」です。こちらは名称に「ゼロ」が付きません。似た名前のファンドなので、間違えて購入しないようご注意ください。こちらはすべての口座で購入でき、こどもNISAでも買えます。
それぞれの商品概要(1:27)
ゼロカンは、購入できる口座がこどもNISAのみです。信託報酬は年0%で、これ以上は下げようがない水準です。設定日は2026年11月17日で、こどもNISAの取り扱いが始まった時点から購入や積み立ての設定ができます。
18歳になった年の翌年1月1日には、こどもNISAの資産が成人のNISAのつみたて投資枠へ自動的に移管されます。その後は新規の購入や積み立ての設定はできませんが、継続して保有することは可能です。保有している間も信託報酬は0%のままです。SBIはどこで利益を出すのかと思ってしまうほどで、まさに客寄せパンダと言えます。ただ、見応えのあるパンダです。
もう1本のSBIオールカントリーは、信託報酬が年0.055%(税込)です。これはあくまで名目上の信託報酬なので、実際のコストは今後の決算で経費率などが出てから確定します。募集期間は2026年10月19日から11月16日までで、設定日は11月17日です。その後も継続して購入でき、通常の購入や積み立ても11月17日から可能になります。
オルカンの動向について(4:59)
ここで気になるのは、オルカンの今後の動きです。eMAXIS Slim全世界株式の前回決算を見ると、実質的なコストは0.085%でした。このうち信託報酬にあたる部分は0.058%で、残りの約0.027%は売買委託手数料や有価証券取引税などです。
SBIのゼロカンは、この信託報酬の部分を0%にしています。売買手数料や取引税などの費用は別途請求すると明記されているため、差がつくのは信託報酬の部分だけです。一方、SBIオールカントリーは信託報酬が0.055%なので、オルカンより0.003%低くなります。もはや0.001%単位の勝負で、私たちにとってはほぼ誤差に近い差です。それでも、購入するなら少しでも安いほうがよいので、オルカンの運用会社がどう対応してくるのかが注目されます。
SBIにはすでにオールカントリーが存在する(6:21)
SBI証券には、すでに全世界株式のファンドがあります。正式名称は「SBI・全世界株式インデックス・ファンド」で、通称は雪だるまです。
雪だるまとの違いは、連動する対象インデックスです。雪だるまはFTSEグローバル・オールキャップ・インデックスに連動します。これに対して、ゼロカンとSBIオールカントリーはMSCI・ACWI(オール・カントリー・ワールド・インデックス)に連動します。eMAXIS Slim全世界株式も同じMSCI ACWIに連動しているので、SBIは対象インデックスをオルカンに合わせ、真っ向勝負を挑んできたことになります。FTSEとMSCIは、ほぼ同じような動きをします。ただ、MSCIのほうが知名度は高く、多くの運用会社が採用したがるため、ライセンス料は高いのではないかと推測されます。ボリュームディスカウントのような仕組みもあるようなので、SBIグループが大量に販売することで有利な条件を引き出した可能性もあります。
参考までに、雪だるまは信託報酬が0.068%、実質的な信託報酬が0.079%です。さらに投資先にETFが含まれていて、その分が約0.03%加わるため、総経費率は0.10%程度になります。これよりも大きく下げてきたことから、SBIは今後こちらの2本に集約して勝負するつもりなのだと感じます。
ゼロカンは「こどもNISA」のみ。仕組みを簡単に解説(9:25)
ここで、こどもNISAの仕組みを簡単に確認しておきます。こどもNISAは2027年1月1日にスタートする制度で、口座開設の申し込みは10月1日から始まっています。0歳から17歳の方が開設でき、成人のNISAのつみたて投資枠によく似た制度です。年間投資枠は60万円、非課税保有限度額は600万円なので、枠を最短で埋めるのに10年かかります。
投資対象は、長期の積み立てや分散投資に適した一定の投資信託です。大人のつみたて投資枠で買えるものは買えるだろうと予想していましたが、子ども専用のファンドまで作られたことになります。
注意したいのは、原則として引き出しができない点です。12歳以降は一定の要件のもとで一部の引き出しも可能になります。要件は、資金の使い道が子どもの教育費や生活費であることと、子どもが引き出しに同意した書面を提出することです。親子の双方が同意している必要があります。
18歳になった翌年の1月1日には、大人のつみたて投資枠に自動で移行します。大人のNISAは、つみたて投資枠が年120万円、成長投資枠が年240万円で、生涯の非課税保有限度額は1800万円です。
ただし成長投資枠だけで使える上限は1200万円なので、国は最低でも600万円はつみたて投資枠で使ってほしいという設計にしているわけです。こどもNISAで600万円まで投資しておけば、大人になってからもつみたて投資枠で1800万円を目指せます。成長投資枠に回すことも、子どもの間に600万円を積み立てて、あとは成長投資枠を使うことも可能です。成長投資枠では上場株式なども買えて、投資対象の自由度も高くなります。未成年のうちから大人のNISAへシームレスにつながるのは、とても便利な仕組みです。
もう1点、こどもNISAでは金融機関の変更ができません。変更したければ口座をいったん廃止し、新しく作り直す必要があります。大人のNISAは金融機関を変更できますが、こどもNISAは同じ金融機関で保有し続けるしかないため、どこで開設するかが非常に重要になります。
そう考えると、これはマクドナルド戦略のようなものです。子どもの頃からSBI証券に慣れ親しんでもらえば、そのまま大人になっても使い続けるはずだというハッピーセットの発想です。SBIの北尾会長も、若い世代は自社に来るという趣旨の話をされていました。ネット証券同士の競争というより、野村證券のような業界トップを見据えているのでしょう。信託報酬をいただかなくても、その後ずっとSBI証券を使ってもらえればよいという、手数料0を掲げるSBIグループらしい戦略です。
「オルカン」と「ゼロカン」を比較(15:08)
多くの方が気になるのは、オルカンとゼロカンでどれくらい差がつくのかという点だと思います。そこでシミュレーションをしてみました。
条件は、0歳から年60万円を10年間投資して合計600万円とし、その後は据え置きで運用するものです。運用利回りは年5%とやや控えめに設定しました。売買手数料や税金は同じとみなし、信託報酬の差だけを比べるため、ゼロカンは0%、オルカンは信託報酬相当の0.058%で計算しています。
18歳の時点では、ゼロカンが約1171万円、オルカンが約1161万円で、差は約10万円です。30歳では約31.4万円、40歳では約70.6万円、50歳では約146.6万円の差になります。65歳になると約402.6万円もの差が生まれます。65年という期間の長さが効いてきます。
驚いたのは差額よりも、そもそも65歳時点の資産が1億円を超える点です。総額は1億1000万円を超えます。年5%のため、物価上昇を考慮しても、今の物価水準で1億円近くになる計算です。以前、別の動画で、0歳の時に年80万円の枠をすぐに使い切り、65歳まで引き出さないという方法をご紹介しました。実際に動画を見て始めた知人もいます。子どもに老後資金を用意するなんてという否定的な声もありましたが、用意できるならしてあげたほうがよいと考えています。ただ、600万円をすべて使える方がどれだけいるかは別の問題です。半分の300万円なら差も半分、100万円なら約6分の1の2000万円ほどになります。
なお、マネーセンスカレッジでは、オルカン1本で運用することは推奨していません。GPIFのバランスを参考に、外国株式は全体の25%程度にとどめるのが目安です。600万円のうち25%をオルカンで持つ場合、65歳時点の差は約100万円になります。今の物価水準で100万円ですから、決して小さくありません。これが複利の力です。
マネーセンスカレッジの見解 購入するかどうか(20:26)
では、来年から買えるこどもNISAのゼロカンや、11月から買えるSBIオールカントリーを購入すべきでしょうか。基本的に、新規設定のファンドは購入をあまり推奨していません。決算が出るまでは、名目上の信託報酬が予定でしかなく、実際のコストが分からないからです。
ゼロカンの信託報酬は0%です。ただしSBI証券の注意書きには、売買委託手数料、外国での保管費用、税金などの費用が発生する場合があると書かれています。つまり総コストが完全に0%になるわけではありません。
オルカンの運用報告書(2025年4月26日から2026年4月27日)で1万口あたりの費用の内訳を見てみると、信託報酬にあたる部分は先ほどのとおり0.058%で、売買委託手数料や有価証券取引税、その他の費用が約0.027%でした。ゼロカンはこの0.058%がなくなるので、残りの費用がどの程度かかるかで総コストが決まりますが、現時点では確定していません。それでも、オルカンの0.085%を超えることはまずないでしょう。0%とうたっている以上、少なくとも実質コストはオルカンより安くなると想定できます。したがって、こどもNISAでゼロカンを購入すること自体は悪くないと考えています。
ただ、トラッキングエラーなど運用の質は、1年ほど見ても分かりません。最低でも2〜3年、できれば5年は見たいところです。それでは5年間は買えないのかと言われると、返す言葉もないのですが、それくらい慎重になってもよいと思います。特にNISAでは、一度買った商品の入れ替えが簡単ではないからです。そのうえで、こどもNISAでの購入はありだと考えています。
一方、SBIオールカントリーは信託報酬が0.055%で、オルカンとほぼ同じです。0.003%の差がどう影響するかは、決算が出るまで分かりません。総コストは最初の運用報告書が出るまで確定せず、中身はまだブラックボックスです。マネーセンスカレッジとしては、こどもNISAでゼロカンを購入するのはありですが、大人のNISAでSBIオールカントリーを購入するのは、運用報告書が出てからでも遅くないと考えます。
アセットアロケーションに組み入れるか?(24:29)
マネーセンスカレッジの投資戦略編ブックレット内での推奨ファンドには、MSCI ACWIに連動するeMAXIS Slimのオルカンが入っています。外国株式にあたる部分で、GPIFのバランスを参考にした資産配分のうち25%程度を、オルカンで持つという考え方です。この枠を、ゼロカンやSBIオールカントリーで置き換えることは、十分ありうると思います。
こどもNISAのゼロカンは信託報酬が0%です。0.058%は小さく見えますが、超長期で見れば差は大きくなります。ただ、SBI証券で購入する場合、投資マイレージはおそらく付かないでしょう。SBI証券は、インデックスファンドでも運用会社から受け取る信託報酬の一部を還元する仕組みを採っています。ゼロカンは信託報酬が0%なので、受け取るものがなく、還元もないと考えられます。ちなみに、eMAXIS Slimのオルカンの投資マイレージは年0.0175%です。それでも、マイレージが付かないことを考慮してなお、ゼロカンのほうが有利と言えるでしょう。
配分の目安は、外国株式で25%程度です。オルカンの中には日本株が約5%含まれており、これを25%に当てはめると約1%の誤差になります。この程度はどのみち普通にずれる範囲です。気になる方は1%単位で調整してもよいですが、基本的にはそのままで問題ありません。
オルカンからSBIオールカントリーへ乗り換えるべきか?(27:05)
すでにオルカンを持っている場合、基本的に乗り換える必要はありません。売却してから資金が入るまでに数営業日かかり、買い付けてから受け渡しまでにも時間がかかります。この間の機会損失がスリッページコストです。さらに、NISA口座で売却すると、その利益分の非課税枠は消えてしまいます。特定口座の場合は、税金を払ったうえで買い直すことになります。これらのロスを考えると、NISA口座からNISA口座へ、あるいは特定口座から特定口座へ乗り換えるのは、基本的に不要です。信託報酬の差も0.003%しかありません。
ただし、今までずっと特定口座で運用してきた方が、来年に新しいNISAの枠が空いたときに、特定口座からNISA口座へ移す形で乗り換えるのはありかもしれません。どのみち売却が必要になるからです。いずれにしても、無理に動かす必要はないと考えます。
ジュニアNISAからこどもNISAに乗り換えるべきか?(28:47)
ジュニアNISAを持っていて、それをこどもNISAに移すべきかという悩みもあります。原則としては、こどもNISAに移したほうがよいと考えます。ただし、お子さんの年齢によって判断は変わります。
たとえば5歳のお子さんなら、18歳まであと13年あります。その間に資産は増えていくので、早く移したほうが簿価計算方式の効果で将来の含み益が小さくなります。ただ、ジュニアNISAは全額を引き出す必要があり、引き出した分は特定口座で運用するしかありません。さらに、こどもNISAの年間投資枠は60万円で、非課税保有限度額も600万円です。ジュニアNISAで最大400万円を投資してきた方は、増えた分が600万円を超える可能性もあります。それでも、成人までの期間が長ければ、早めに移したほうがよいと思います。
特定口座で運用する間の税金はどうでしょうか。お子さんが小さければ、基礎控除を使って利益を出す方法があります。住民税の基礎控除まで考えると、利益が年43万円以内なら、源泉徴収ありの特定口座であれば確定申告も不要です。自治体によっては100万円程度まで非課税として扱うところもあるので、お住まいの自治体でご確認ください。この範囲に収めれば、基本的に課税されません。ただ、600万円規模になると、移動の際に利益が出てしまうことがあります。売って買う手間もかかるため、少し面倒ではあります。
それでも、こどもNISAでは、大人のNISAにそのまま移行できるのが大きな利点です。非課税枠を埋めつつ、子どもの頃からの資産を引き継げるので、非課税の恩恵がとても大きくなります。
一方、18歳に近いお子さんは注意が必要です。たとえば今15歳で、3年後に大学へ進み、その学費として資金を使う予定なら、18歳の時点で引き出すことになります。そうなると、こどもNISAに移して簿価計算方式の恩恵を受ける意味は薄れます。運用期間が短い場合は、ジュニアNISAのまま継続保有でも非課税が続くので、ケースバイケースで判断してください。ただ、お子さんが小さく、そのまま長く運用する資金であれば、こどもNISAに移すほうが原則として有利です。
まとめ(32:51)
こどもNISAの獲得を巡って、各社の競争が来年12月に向けて本格化していくでしょう。SBIがこのタイミングで発表してきたのも、それなりに準備してきたからだと思います。証券会社から見れば、お子さんの口座が作られ、大人のNISAも自動的に作られます。親のお金も子どものお金も呼び込めますし、ハッピーセットのように子どもの頃から使い慣れてもらえば、大人になっても使ってくれるでしょう。業界としては盛り上がると見ています。
ここで親御さんが考えたいのは、何で運用するかです。過去10年は、オルカン1本やS&P500の1本という投資がうまくいきました。しかし3年ほど前から、特に米国を中心に、先進国株式の動きは徐々に変わってきています。そのまま米国の比重が高いファンドで本当によいのか、今一度考えていただきたいところです。
特に子どもの教育資金のように、使う時期が決まっている場合は注意が必要です。大学入学は待ったなしでやってきます。その時期に株価が大きく下がっていると、資金計画が崩れてしまいます。株式1本、全世界株式1本というのは、リスクが高いと思います。
最近は円安傾向も続いています。米国の長期金利が上がれば、米国が売られる可能性もあります。その資金がどこへ向かうかというと、長期金利が3%を超えてきた日本かもしれません。円高方向に動けば、オルカンの約95%、S&P500の100%が外国資産のため、大きな影響を受けます。この10年間に経験したこととは違う動きが、すでに3年ほど前から始まっています。日本国内でも、コロナ禍を経て金利のある世界に変わりました。長期投資では、リスクを分散していくことが重要です。
しかも、運用するのは自分のお金ではなく、お子さんのお金です。親のマネーリテラシーが問われます。ゼロカンはとても魅力的な商品ですが、そこに全力で投資するのは危険だと考えています。世界標準の考え方であるアセットアロケーションを、ぜひ学んで資産を守ってください。
またこちらの動画「《ジュニアNISA》子供の老後資金 約4000万円をたった80万円で用意する方法」では、ジュニアNISAに拠出した80万円を長期運用し、子供の老後資金約4000万円を目指す方法をシミュレーションで解説していますのでぜひご覧ください。





