「確実な老後」が欲しい人へ。オルカンより勝率の高い投資はこれです。
リターンを下げてでもリスクを抑えた投資のほうが圧倒的に勝率が高い、という話をこれまでさまざまな角度でお伝えしてきました。ただ、数字やグラフだけで説明することが多く、「なんとなくわかるけれど、腑に落ちない」と感じている方も多いかもしれません。そこで今回は、モンテカルロシミュレーションを使って実際にデータを作り、2つの投資方法を見比べてもらう形でお伝えします。
アセットアロケーション運用が王道だとご案内してきた理由は、リターンはあまり下げずにリスクを大幅に下げられるからです。しかし「期待リターンが1%でも高いほうが最終的に増えるのでは」と思われがちです。実はそうはならないのですが、ここが多くの方にとって直感と合わない部分です。「期待」リターンはあくまでも期待値であり、実際に投資した結果は別物になるからです。
モンテカルロシミュレーションで解説(3:14)
今回使ったのはモンテカルロシミュレーションという手法です。乱数を発生させて確率の実験を行うもので、過去のデータから取得したリスクとリターンの数値を入力し、それが将来も続くと仮定したうえで、30年間の運用をサイコロを振り続けるように繰り返します。その1万通りの結果を並べて分布として見ることで、どのような着地になりやすいかを確認できます。
比較するのはオルカン100%と、マネーセンスカレッジが提唱する全世界投資の2つです。データは2003年1月から2025年6月までの実績に基づいています。オルカンのリターンは8.26%、リスクは17.85%です。一方、全世界投資はリターンが7.05%、リスクが11.13%となっています。リターンは1.21%下がっています。「7%より8.26%のほうが高いからオルカンでいいのでは」と思うのが自然な感覚ですが、そこが今回のポイントになります。
オルカン100%をシミュレーション(4:50)

初期資産1,000万円、毎月の積み立て0円の一括投資、運用期間30年という条件で計算します。期待リターン8%、リスク18%として1万通りのシミュレーションを回した結果、まず平均値は約1.01億円です。ただしこの平均値は、グラフの分布を見るとピークから大きく右にずれており、実態を表していません。
中央値は6,311万円で、確率50%でこの金額になるという意味です。最頻値、つまり最も起こりやすいピークの値は2,464万円です。最悪の1%では66万円と元本割れが起きており、下位10%でも185万円にとどまります。一方、上位10%では2.18億円、上位1%では6.27億円と非常に大きな幅があります。平均値以上になる確率は31.0%、元本割れの確率は約2.8%です。多くの投資家が実際に体験するであろう金額は、最頻値の2,400万円程度と考えるとよいでしょう。
全世界投資をシミュレーション(8:53)

同じ条件で、期待リターン7%、リスク11%として1万通りを計算します。平均値は7,568万円で、オルカンの1億円から約2,500万円下がりました。「オルカンのほうが期待リターンが高い」という話はこの平均値の話にすぎません。
ところが中央値を見ると6,307万円で、オルカンの6,311万円とほぼ同じです。最頻値はここで大きく変わり、4,380万円とオルカンの約2,000万円上になります。多くの投資家が体験するであろう金額がこれだけ違うわけです。最悪1%のケースでも1,521万円と元本は増えており、下位10%でも2,926万円あります。上位10%は1.38億円、上位1%でも2.54億円で、オルカンの6.27億円には及びませんが、分布全体が中央値に集まっています。元本割れの確率は0.1%未満でほぼゼロに近い水準です。平均値以上になる確率は37.6%に上がっています。
2つのデータを比べた結果(11:54)
この2つのグラフを並べて見ると、どちらに投資したいかは明らかです。平均値だけを見るとオルカンが約1億円、全世界投資が約7,500万円で差があります。しかし、最頻値を比べると全世界投資のほうが約2,000万円も高く、最悪ケースでも元本が守られており、下ぶれのリスクが大幅に低くなっています。
大勝ちする可能性は下がりますが、分布全体が中央値にぎゅっと寄っており、これがリスクが低いということの意味です。リスクが高い投資はギャンブルと異なり期待値がプラスなので長期では基本的に勝てますが、変動が大きいぶんだけ着地点が読めなくなります。
最頻値で見てみる(14:27)
中央値では違いがピンとこないという方のために、最頻値まで比較することが重要です。1,000万円を30年運用して最頻値ベースで4,300万円になるとした場合、利回りに換算すると約5%です。アセットアロケーション運用では投資結果の7〜8割が決まるといわれており、その割合で計算すると4.9〜5.6%程度になります。
「7%の期待リターンに対して5%か」と思われるかもしれませんが、実際に多くの人が体験するであろう最頻値ベースではこの水準になります。さらに、インフレを考慮して2%程度を保守的に差し引いたうえでの試算ですので、インフレが加速すれば株式資産は恩恵を受けるため、実際にはさらに上振れる可能性もあります。
なぜこんな逆転現象が起きるのか?(18:28)
8%の期待リターンがあるのになぜ結果が劣ってしまうのか。これはボラティリティドラッグと呼ばれる複利の負の効果によるものです。資産価格が下落した場合、元の水準に戻るために必要なリターンは下落幅よりも大きくなります。
たとえば10%下がれば回復に11.1%必要で、20%下がれば25%、30%下がれば42.9%、50%下がれば100%のリターンが必要になります。リーマンショックのような局面では株式だけのポートフォリオはマイナス60%近くまで下落することがあり、その回復には相当な時間と大きなリターンが必要になります。
下がる時は早く、上がる時はゆっくりというのはこういう構造から来ています。リスクが高いとこの押し下げ効果が強く働き、平均値と中央値の差、さらに中央値と最頻値の差がどんどん広がっていきます。リスクが1%増えるだけでその差はぐんと開き、リターンが1%増えても平均値はさほど上がりません。
オルカン + 現金の場合(22:28)
「オルカンを持ちつつ現金も一定割合持っているから、自分も似たようなリスクになっているのでは」と思う方もいるでしょう。全世界投資と同じリスク水準にするには、オルカン2/3と現金1/3という配分になります。ただしこの場合、リターンは5.6%程度まで下がってしまいます。全世界投資が7%ですから、1.4%の差が生じます。これはアセットアロケーションの波を打ち消し合う効果によるもので、株式、債券、不動産、金など異なる値動きをする資産を組み合わせることで、リスクを下げながらもリターンを高く保てるのです。
オルカン+現金のリバランスと、8資産のリバランスの手間はそれほど大きな差ではなく、年1回数分の作業で1.4%の利回り差が得られるなら、その手間は惜しむ必要はないでしょう。
まとめ(25:44)
アセットアロケーションは世界の王道の資産運用方法です。「それでも手間をかけたくない」という方には、オルカン+現金という方法でも構いません。リターンはやや下がりますが、メンテナンスのコストは大幅に下がります。大切なのは自分自身の老後資産として使えるお金を作ることであり、そのためには着地点をある程度揃えることが重要です。
今回は一括投資でシミュレーションしましたが、積立投資であれば時間分散の効果も加わり、さらに安定した結果が期待できます。長期投資、資産分散、時間分散という3つの原則を組み合わせることが、確実な老後のための資産形成につながります。
またこちらの動画「ひふみ投信その後。我々の言っていたことは本当だったのか?」では、急落後のひふみ投信を検証し懸念点3つを解説していますのでぜひご覧ください。





