「パートだから賞与なし」は違法?2026年10月から変わる同一労働同一賃金のルール
パートで働く人には賞与なしが原則というのは違法だと聞いたけれど、これは本当なのでしょうか。今年の10月からガイドラインなどが変わり、原則としてできないという言い方が正しくなります。違法というわけではありませんが、この点について解説していきます。
今回の内容は労働者にもちろん知っておいてほしいものですが、経営者や管理職にとっても、対応を誤れば訴訟に発展しかねない話です。改正内容を踏まえて、今後の対応に役立ててもらえればと思います。
よくある会話として、なぜ賞与がないのかと聞き、パートだから賞与はありませんと会社から言われ、仕方ないと納得してきた人も多いはずです。パートだけでなく有期雇用契約や正社員にもいろいろな形があり、たとえば60歳以降の継続雇用者のように、正社員としては異なる枠組みに入る人にも同様のケースが見られます。多くの会社がこうした人たちに賞与はありませんとしてきたケースも珍しくありません。
この考え方が2026年10月以降に変わります。もちろんパート全員に賞与を支給しなければならないという法律ではなく、あくまでガイドラインという位置づけであり、賞与を支給しなければならないと書かれているわけでもありません。ただし、仕事内容が正社員と全く同じであるにもかかわらず、パートだからという理由だけで賞与を支給しないのは不合理な待遇であり、いわゆる同一労働同一賃金に違反することになります。
これは厚生労働省の同一労働同一賃金ガイドラインが改正され、より明確に明文化されたことによるものです。パートや有期雇用契約の人が、自分は賞与をもらえる可能性があるのか、会社に聞いてもよいのか、といった点について解説していきます。
「パートだから仕方ない」はもう通用しない?(2:58)
パートだから賞与なしでは済まされない時代になりました。社員もパートも同じ仕事をし、同じ責任を負い、同じ成果を求められているにもかかわらず、社員には賞与があってパートはゼロという会社は、これまでむしろ多数派だったとも言えます。しかし、その会社が理由を説明できなければ、不合理な待遇として賞与を支払わなければならない可能性が出てきます。
「私も対象?」チェックポイント(3:45)
自分が対象になるかどうかは、正社員と同じ仕事をしているか、教育も同じか、売上目標などの責任もほぼ同じか、お客様から見て社員かパートか区別がつかないか、といった点を確認してください。これらに当てはまるのであれば、なぜ賞与がないのか疑問を持って当然だと思います。一方で、勤務時間や責任の重さ、転勤の有無などに違いがある場合は、当然その差は待遇差として認められます。
ここで重要なのはパートかどうかではなく、仕事の内容と責任の違いです。今回は賞与が注目されがちですが、対象となるのは賞与だけではありません。退職金、家族手当、住宅手当、夏季や冬季の休暇、福利厚生、病気休業中の給与保障なども含まれます。
たとえば休憩室や更衣室を社員は使えるのにパートは倉庫のような場所しか使えない、健康診断も社員は業務中かつ有給で行けるのにパートや有期雇用契約の人は休みの日に行くよう言われる、といった扱いも、仕事内容や責任が同じであれば不合理な待遇として設けてはならないと明確化されました。明確な理由もなく、パートだから使えない、パートだから対象外、今までそうだったから、という説明はもう通用しなくなったということです。
会社に聞いてもいいのか?(5:54)
待遇に差があるのに会社側が対応していない場合、労働者はなぜ正社員と待遇が違うのかを説明するよう会社に求めることができると明文化されました。しかも10月以降の労働条件通知書は法定文書であり必ず書面で交付しなければなりませんが、そこに説明を求めることができる旨を記載しなければならなくなっています。会社は尋ねられれば、待遇の内容やその理由を説明する義務を負うことになりました。
これまでは遠慮して忖度し我慢する時代でしたが、これからはきちんと理由を確認できる時代に変わったと言えます。もし会社がパートだから、あるいは特別な理由はないが今までそうだったから、としか答えられない場合、労働局などに相談されると話が大きくなる可能性もあります。経営者や管理職はこの点について認識を改める必要があります。
対立する必要はなく、まずは聞いてみて、そうした回答が返ってきた場合は、会社側がまだ法令改正やガイドライン改正を知らないのだと捉え、明確な基準はあるか、正社員との違いは何か、なぜこの違いが設けられているのかを確認するとよいでしょう。この説明に納得できない場合は労働局に相談することもできると、厚生労働省がアナウンスしています。
賞与だけではない(7:47)
ガイドラインの概要を見ると、役職手当のように役職の内容に対して支給するものについては、同一の役職であれば同一の支給を行い、違いがあればその違いに応じた支給を行わなければならないとされています。家族手当や深夜労働手当、皆勤手当などその期間に応じて支払われるものについては、働き方によって責任の重さが異なるのであればその差があってもかまいませんが、期間が全く同じであれば同一の支給を行わなければなりません。
食堂や休憩室、更衣室についても同一の利用をさせなければならず、場所が取れないからという理由で片方だけ利用させないことが合理的な判断と言えるかどうかは、実態によって判断が分かれるところです。それであれば正社員と逆の扱いにしてもよいのではないか、という話にもなってきます。
病気休職についても、有期雇用のパートタイムの人や正社員と同一の有期雇用契約を結ぶ人に対して、契約が終了するまでの期間を踏まえて同一の付与を行わなければならないとされています。法定を超える有給休暇を与えている会社もありますが、これについても勤務形態ではなく、責任や勤務期間が同じであれば基本的に同じ扱いをするべきだと書かれています。もちろん責任の重さや勤務時間、勤務内容に違いがあれば、それに応じた待遇差をつけても問題はありません。ただし、正社員と全く同じ仕事をしているにもかかわらず、正社員かパートかそれ以外かという違いだけでは、待遇差の理由にはならなくなりました。
理由を確認できる時代へ(10:14)
平成の頃から非正規雇用という言葉が使われるようになり、非正規雇用の増加自体が社会問題となってきました。その中で待遇差の問題が浮かび上がり、給与面では同一労働同一賃金の考え方が進み、その差は徐々に埋められてきました。男女差についても、ほぼ埋まってきたと言われています。そこで最後に残ったのが賞与などの待遇差でした。
雇用形態によって差をつけるのではなく、同じ仕事をして同じ責任を負っているのであれば、基本的に同じ待遇にするべきというのが今回の趣旨です。クレーム対応をしなくてよい、残業をしなくてよい、転勤がない、出向がないといった責任の差があれば、当然待遇差があってもよく、それは認められています。だからこそ、労働条件通知書などにその内容をしっかりと明記するという時代に変わってきました。
ジョブ型とまでは言わないものの、これまで解釈や遠慮に委ねられ、会社側が強い立場にあった勤務内容や勤務場所について、区別したいのであれば明確に示すことが求められるようになったということです。一言で言えば、説明できない待遇差は認められなくなりました。逆に言えば、理由があれば認められます。ここが大きな違いだと感じます。
経営者の中には日常業務に追われて対応が後回しになっている人もいると思いますが、10月には待ったなしで施行されるため、知識をブラッシュアップしておく必要があります。労働者側も、大きい企業であれば立場の弱さから泣き寝入りしてきた面があったと思いますが、ガイドラインに基づいて行政指導が行われるため、パートだからという理由だけで賞与が出ないという取り扱いは認められなくなりました。すぐに争うのではなく、会社にガイドラインが変わり待遇差が見直されてきていることを伝え、もう一度検討してもらえないかと促すのがよいでしょう。
職場の雰囲気として、こうしたことを言うと不利益に扱われるのではと不安に思う人もいると思いますが、その不利益な扱い自体も禁止されています。大きい企業であれば労働組合を通じた労使交渉の中で当然話し合われているはずですが、中小企業では店舗を任されている店長ですら知らないというケースも少なくないため、周知が進んでほしいところです。
まとめ(13:44)
賃金に関してはこれまで是正が進んできましたが、実際の統計データを見てもほとんど差がなくなってきました。最低賃金も上がってきている中で、最後に残った待遇差にもメスが入ってきたという状況だと感じます。
管理職や店長、経営者にとって、こうした待遇差の問題は採用活動にも影響してきます。改善しなければ公表されたり噂が広がったりし、従業員もそれを知ることになります。そうなると採用がうまくいかず、仕事はあっても人手が足りずに倒産や廃業に至るケースも少なくありません。こうした状況が続けば従業員が定着せず事業が滞り、正社員として働く人たちの将来にも影響が及びかねないため、時代が変わってきているという認識を持つ必要があります。それでもどうにもならない場合は、弱者救済という考え方が法律の根底にあるため、労働局などに相談してほしいと思います。
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