なぜ金を持つのが正解?歴史から学ぶ金投資の本質
5月29日に公開した「【ゴールド(金)下落】有事の金にならない今、金は持つべきか?」という動画に、大変多くの方にご視聴いただきました。公開から24時間で3万回以上再生され、多くのコメントも寄せていただきました。その中に非常に気になるコメントがいくつかあり、今回はそのアンサー動画としてお話しします。
前回の動画では、ジェレミー・シーゲル氏が作成したトータル・リアル・リターン・インデックスを紹介しました。これは1802年から2023年までの長期データをもとに、米国株式、米国長期債(10年債)、米国短期債、金、米ドルの5つの資産を比較したものです。その中で、株式が最も強く、金は長期にわたって横ばいが続いているという点をお伝えしました。
視聴者のコメントへのアンサー(2:39)
寄せていただいたコメントの中で特に多かったのは、金本位制に関するご指摘です。「株と金のチャートを比較するなら金本位制が終わった後から比較すべきではないか」「提示されたチャートは金本位制時代も含まれているから適切な比較になっていない」「超長期で見たときに金が鳴かず飛ばずなのは金本位制だったから当然で、金本位制でなくなってから金価格は動いている」といった内容です。
これらはいずれも共通して、金本位制の前と後では金価格の動きが異なるため、比較の前提がおかしいのではないかというご指摘です。確かにその通りで、金本位制とは金の価格と通貨を連動させる仕組みですから、価格が横ばいになるのはある意味当然とも言えます。
ただし前回の動画でお伝えしたかったのは、金が絶対にダメだということではなく、金100%や株式よりも金が優れているという極端な論調には賛同できないという点です。ニクソンショック以降の比較をしても株式の方が優位であることは変わらず、金は一部保有することでヘッジ効果が高く、資産を守る役割を果たすという立場は変わりません。
金の歴史(6:24)
そもそも金はもともと投資商品ではなく、お金そのものでした。古典的金本位制のもとでは、通貨と金の交換レートが固定されており、金何グラムに対して何ドル、何円という形で一致させる仕組みが長く続いていました。金貨の鋳造が困難になるにつれて紙幣へと移行しましたが、その紙幣の価値は金によって裏付けられていました。当時の金の保有目的は、貯蓄や決済、銀行破綻への備え、相続など、現金に近い役割を担うものでした。
この流れが大きく変わったのが1933年です。ルーズベルト大統領が大統領令によって金保有制限を発令し、民間人が金を保有することを禁止しました。当時1オンス20ドル67セントで取引されていた金を国民から強制的に買い取り、その翌日に大統領令で35ドルへと引き上げました。つまり安く買い取った翌日に70%近く価格を上げたことになります。これは金価格が上昇したというより、金に対してドルが切り下げられたと表現するのが正確です。
その後1944年にブレトンウッズ体制が成立し、ドルと各国通貨の交換レートが固定されるとともに、ドルと金の交換が政府・中央銀行間のみで認められる仕組みが整備されました。アメリカが大量の金を保有し、世界の基軸通貨としてドルが機能する体制です。しかしその後、ベトナム戦争による財政赤字とドルの大量発行によって信頼が揺らぎ始めます。
金価格の急騰(15:41)
1971年、ニクソン大統領は金とドルの交換停止を突然宣言しました。これがニクソンショックです。これにより金は自由取引の時代へと突入し、価格は急騰します。35ドルだった金価格はその後850ドル、さらに3000ドルへと大きく上昇しました。
ブレトンウッズ体制崩壊後から現在までの金の年利回りを計算すると、約8%になります。一方で同じ期間の株式は約11%です。やはり株式の方が優れたリターンをあげていることは事実であり、実体経済とも連動していることを考えると、株式の方が投資対象として優位であるという見解は変わりません。
それでも金を持つ理由(19:35)
それでは金に価値があるのかという問いに対しては、「儲かるか儲からないかで金を評価するのが間違い」というのが答えです。長期投資において株式は大きなリターンをあげますが、暴落もあります。暴落前に売り抜けたいと誰もが思うように、株式だけを保有することにはリスクが伴います。
そこで人類が考えてきたのが資産分散です。通貨は時間とともに価値が下がる傾向があり、それに対抗する手段として債券が生まれ、さらに債券発行主体である政府そのものへの信頼が揺らいだとき、資産を守るための選択肢としてコモディティ、とりわけ金が注目されてきました。金は株式や債券との相関が低く、資産分散においてアドオンとして機能します。
つまり金を保有する目的は、儲けることではなく、資産全体を守ることにあります。債券の一部を金として保有するという考え方が現代の金投資の本質です。政府が財政出動や戦費のために通貨を刷り続け、その価値が下がることへの備えとして金が選ばれてきた歴史があります。なお、ビットコインも同様の文脈で語られることが多く、金とビットコインの価格が連動することがあるのはそのためです。
まとめ(30:11)
政府はこれまで戦争や福祉、財政出動などを通じて通貨を増発し、その結果として通貨価値を下げてきました。そうした政府・中央銀行への不信感が、金やビットコインへの需要を生む背景にあります。財政健全化が重視される理由もここにあります。
最終的な結論は前回の動画から変わりません。金は資産の一部として保有することに意味があります。割合としては5〜15%程度、多くても20%までが目安です。金が株式より優れているという極端な主張には賛同できませんが、分散投資の観点からは金を持つことのメリットは十分にあります。今回の動画が、金投資の立ち位置や保有割合を考えるうえでの参考になれば幸いです。
またこちらの動画「【ゴールド(金)下落】有事の金にならない今、金は持つべきか?」では、「有事の金」なのに急落する背景と、守りの資産としての判断軸を解説していますのでぜひご覧ください。





