資産の取崩し時期にリーマン級の暴落が来ても、資産を枯渇させない「黄金ルール」【出口戦略】 

先日、リーマンショックを追体験する動画を公開したところ、非常に多くのコメントが寄せられました。何度も見返してくださった方も多かったようです。そこまで怖がらせるつもりはなかったものの、正しく恐れてほしいという思いで作成した動画でした。

寄せられたコメントの中には、悪いタイミングでショックが起きたら出口戦略もなくなってしまう、取り崩しの時期にリーマンショックのような下落が来たら地獄だ、リスク資産を甘く見ていた、取り崩し期間中だったらどうすればいいのか、といった声がありました。

考え方はいろいろありますが、資産活用期、つまりこのチャンネルでよく扱う資産形成期や資産増大期を経て、25歳前後から老後までの間に積み立てた資産を実際に使っていく時期に入ったとき、大きく下落してしまうと資産が想定より早く枯渇してしまう恐れがあります。これは誰もが不安に感じるところだと思います。

リーマンショックのような下落を受けても資産寿命を伸ばしていくためにはどうすればよいのか。避けられるものと受け入れるしかないものがあることを踏まえたうえで、過去にも扱った取り崩しシミュレーションをもとに考えていきます。

取り崩しシミュレーション(2:13)

日本円建てのシミュレーションサイトがないため、米ドル建てのサイトです。表記上は5000万ドルとなっていますが、日本円に置き換えて5000万円からスタートしたと考えてください。もちろん米ドル建ての商品を使っているため、日本円としての為替リスクは反映されていませんが、参考値としては十分に使えるものだと考えています。

シミュレーションの条件は、5000万円からスタートし、毎月16万6666円を取り崩すというものです。これは開始時点の資産額に対して年間4%を定額で取り崩すというルールで、その後資産額が変動しても取り崩し額そのものは変えないという設定になっています。

出典:testfolio

運用先は3つのケースを用意しました。ひとつは日本株のTOPIXのみ、ふたつめはオールカントリーなど全世界株式のみ、みっつめは全世界株式60%と債券40%を組み合わせたケースです。期間は1999年末から2025年末までとしています。

グラフでは青がTOPIX、赤がオールカントリー、黄色が株式60%・債券40%を示しています。結果を見ると、TOPIXだけでは力及ばず、途中で資金が枯渇してしまいました。一方、赤と黄色はどちらも生き残り、最終的には開始時点の5000万円を上回る結果となっています。

このシミュレーションの期間には、2000年のITバブル崩壊と2008年のリーマンショックという2つの大きな下落が含まれています。どちらも米国発ではありますが、日本市場にも大きな影響を与えたショックであり、それを2回受けているという意味では、かなり厳しい条件でのシミュレーションだと言えます。だからこそTOPIXが力及ばずという結果になったわけですが、これは必ずこうなるという意味ではありません。ただ、取り崩しは老後の間、長期にわたって続くものであり、100歳まで取り崩しを続けるという前提でシミュレーションを行っています。

ここから見えてくる肝は大きく分けて2つあります。ひとつは下落幅をできるだけ抑えること、もうひとつはキャッシュポジションを持っておくことです。この2つについて、続けて解説していきます。

リスクを抑えることの重要性(5:27)

グラフを見ても分かるとおり、下落幅が小さかった黄色、つまり株式60%・債券40%のケースが最も安定して生き残っています。オルカンも資産としては生き残ってはいるものの、5000万円からスタートしてわずか数年のうちに2000万円まで落ち込んでいます。取り崩しを続けながらこれだけの下落を経験するというのは、精神的にもかなり厳しいものです。

さらに、そこから資産が回復して5000万円近くまで戻ってきたとしても、その後再び大きく下落するという展開もあり得ます。それだけ株式だけの運用は値動きが大きいということです。

一方、債券を組み込んだケースでも下落自体は避けられません。ITバブル崩壊の局面では4000万円を少し切る程度まで下落し、その後6000万円近くまで回復したものの、リーマンショックによって再び3500万円程度まで下落しています。それでも、株式のみのケースと比べれば下落幅は明らかに小さく抑えられています。

日本株であれオルカンであれ、株式のみで運用すると、下落局面での振れ幅がどうしても大きくなります。だからこそ取り崩しの段階になってから債券を組み込めばよいという考え方もありますが、実際に相場が良いときにその判断を変えられるかどうかは別の問題です。

これまで投資教育や資産設計に携わってきた中で、最初に相談に来られる方の多くは投資の方法論を知りたいという動機で来られます。2003年からこの活動を続けている中で、ITバブル崩壊の直後からスタートし、そこからリーマンショックに至るまでの大きな上昇相場を経験した方も少なくありません。その間、アセットアロケーションを守り、きちんとリバランスをしてほしいと伝え続けてきましたが、実際にはリバランスをしていなかった方や、株式だけで運用していて債券を組み入れていなかった方も多くいました。結果として、いざ下落局面を迎えたときに想定以上のダメージを受けてしまったというケースも見てきました。

これは住宅ローンの変動金利と固定金利の関係にも似ています。変動金利で始めて、金利が上がってきたら固定に切り替えればよいと考えている方は多いのですが、実際に切り替えたという声を聞いたことはほとんどありません。人間の心理は、リスクが高まった局面ほど逆方向に動いてしまう傾向があり、思っているようにはリスク管理ができないものです。だからこそ、事前に備えておくしかありません。

参考までに、黄色と赤のケースでは運用利回り自体はそれほど大きく変わっていません。アセットアロケーションの強みは、債券を組み入れても利回りが大きく下がるわけではないという点にあります。それでいて下落を抑える効果は非常に大きく、特に取り崩しの局面ではその効果がより顕著に表れます。これは実際に経験してみないと実感しにくい部分ではありますが、事前にこうしたデータを見たうえで判断し、安全に運用を続けていくことをあきらめないでほしいと思います。

資産活用期における”順序リスク”(9:46)

資産活用期において、下落が最初に来るのか後に来るのかによって結果が天国と地獄ほど変わってしまうと言われることがあります。コメントの中にも、取り崩し直後にリーマンショックのような下落が来たら目も当てられないという声が多くありましたが、こうしたショックは1回きりとは限りません。今回のシミュレーションのように、期間中に2回訪れる可能性も十分にあります。

こうした大きな下落は、おおよそ10年に一度は起こり得るものとして想定しておいたほうがよいと考えています。それを乗り越えるための方法として重要なのは、リスクを抑えることです。リターンが多少下がる可能性はあっても、中央値で見ればそれほど大きな差にはならず、値動きの振れ幅が小さくなる分、資産活用期における安心感にはつながります。

こうした備えをしておけば、取り崩しの局面でも完全に安心とまでは言えないものの、耐えられる可能性は高まります。結局のところ、取り崩しの時期に上昇相場になるか下落相場になるかは誰にも分かりませんし、年齢によっても状況は変わってきます。

100歳まで生きるからといって、100歳まで運用を続けられるとは限りません。加齢とともに認知症のリスクや判断力の低下も考えられるため、どこかの時点で投資をやめるという勇気ある撤退も必要になります。

そのため、シミュレーションとしては75歳以降は投資をしなくても済むように設計し、それ以降は現金を取り崩していくという想定にしています。もちろん75歳の時点であれば国債などで運用を続けても耐えられるとは思いますが、定期預金のような形でインフレによる目減りをできるだけ抑えながら取り崩していくという考え方でも構いません。75歳以降になれば、資産をほぼ現金化してしまうという状態も想定しています。

下落がいつ起きるかは分からない以上、これに対する備えは投資の世界だけで完結させることはできません。債券の比率を高めるという話もよく出ますが、それでも投資している資金である以上、値動きから完全に逃れることはできません。

結局のところ、資産のうちどれくらいの割合を現金化しておくかという話になってきます。では何のために現金化するのかといえば、使うためです。使うタイミングで目減りしてほしくないからこそ、リスクを避けて取り崩しておく必要があります。つまり、使う時期の何年か前から現金化しておくという機械的なルールを作っておけば、誰でも実践できるということになります。

ここから先は資産設計(12:39)

目安としては、使う3年前から現金化しておくことをおすすめしています。より安全にいきたい場合は5年ほど見ておいてもよいと思いますが、3年から5年のサイクルを確保しておけば、基本的に問題は少なくなるはずです。

ただし、リーマンショックのときは、下落してから回復するまでに、こうした方法を使っていてもなお7年以上かかっています。リバランスをしていてもそれだけの期間がかかったということです。そのため、3年分のバッファーを持っていても、下落自体が続く期間は避けられません。それでも、使う分のお金をあらかじめ現金化しておくことで、その部分は値動きの影響を受けず、下落の進行を緩やかにすることができます。運用を続けている部分は下落の影響を受けますが、そこはアセットアロケーションによってリスクを抑えておく。この2つの組み合わせによって、資産活用期を乗り越えていくという戦略になります。

この、使う3年前に取り崩しておくという考え方は、資産運用の話ではなく資産設計、つまりファイナンシャルプランの話です。運用の方法論だけでは語りきれない部分であり、家計管理、資産設計、投資戦略という3つの柱がすべて必要になってきます。これは老後においても変わりません。年齢を重ねてから新しいことを覚えるのは大変なことですから、平時のうちから仕組みを理解し、そのまま運用を続けていくことが乗り越えるための近道になります。

少なくとも、ITバブル崩壊とリーマンショックという2つの大きなショックを10年ごとに立て続けに受けたとしても、今回のシミュレーションでは資金は枯渇しませんでした。そこに3年前からの現金化を組み合わせれば、4%程度の取り崩し割合であれば十分に対応できると考えられます。将来同じことが起きるとは限りませんが、少なくともこの2つの大きなリスクは乗り越えられているという実績にはなります。

過去の動画でも触れているとおり、3%まで取り崩し割合を下げられれば、より安全性は高まります。2%、1%とさらに下げられればそれに越したことはありませんが、それでも生活のために資産を使う以上、取り崩し割合が上がってしまうこともあります。それは老後資金の準備が思うように進まなかった結果であり、その場合は家計を見直すか取り崩し額を調整するかを、それぞれの生活に合わせて判断していくしかありません。いずれにしても、取り崩し割合が過度に高くならない限りは資産を活用しながら乗り越えていくことができます。

運用においてリスクを抑えることは必須条件だと考えています。債券を組み入れるかどうかは好みの問題ではなく、資産運用の世界における常識です。これは独自の主張ではなく、世界的な資産運用の共通認識です。実際に大きな下落を経験してから気づくのでは遅すぎるため、どれだけ意見が分かれたとしても、この考え方は伝え続けていきたいと思っています。今の状態が良いときにこそ伝えておく意味があるからです。

まとめ(16:22)

運用においてリスクを抑えることは必須条件であり、これは取り崩しの局面に限らず、資産形成期から一貫して意識してほしいことです。オールカントリーだけで十分だという考え方も理解はできますし、それはそれでひとつの選択です。ただ、リターンがほぼ同じ水準であるなら、下落幅を抑えられる分、債券を組み入れる価値は十分にあると考えています。

どれくらいの割合で債券を組み入れればよいか具体的に知りたいという場合は、実際に少額で1か月ほど試してみるという方法もあります。月2000円程度の投資であれば気軽に試すことができ、その結果を見ながら自分に合った配分を考えることもできます。

そして運用だけでは不十分で、使う時期の3年前、安全を重視するなら5年前を目安に、その分を現金化しておくという仕組みも合わせて必要になります。あまりに短い期間だと十分な効果が得られないため、1年や2年では少し心もとないというのが実感です。取り崩し割合についても、資産が思うように増えていない場合はどうしても高くなってしまうため、そうした場合はより慎重な対策が必要になることもあります。それでも、モデルケースとしてはおおよそ3%から4%程度の取り崩し割合が目安になると考えています。

この水準であれば、3年前からの現金化と組み合わせることで、ITバブル崩壊とリーマンショックという2つの大きな下落を乗り越えられるという結果が今回のシミュレーションで示されています。絶対に大丈夫だとは言い切れませんが、十分な備えにはなっているはずです。これでも足りないと感じる方がいるのはもちろん理解できますし、その場合はさらに上乗せして対策をしてもらえればよいと思います。ただ、少なくともここまでは実践してほしいという思いから、今回のシミュレーションを紹介しました。

またこちらの動画「【日経平均7万円】もし今リーマンが来たら資産半分以下…大暴落を追体験」では、リーマンショック級の暴落で資産がどこまで減るのかを追体験できますのでぜひご覧ください。

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