退職金・年金があっても老後貧乏に…物価高でやってはいけないお金の使い方5選
老後が近づいてくる50代、60代でやってはいけないお金の使い方について解説していきます。多くの方は慎重に資産管理をされていますが、それでも知らず知らずのうちにやってはいけないことをしてしまったり、会員の方からも同様の相談を受けることが少なくありません。子どもが独立したり世帯構成が変わったりして、老後に向けた準備を本格的に始めようとするタイミングで、失敗したくないという思いから悩みを抱える方が多いようです。
今回は特に注意したい5つのポイントに絞って解説していきます。
なぜ50代以降のお金の使い方の失敗が老後貧乏につながるのか(1:34)
50代というのは、老後生活に入るまでの残り時間がおよそ10年、長くても20年程度しかないと感じられる時期です。若い世代であれば失敗しても時間をかけて挽回できますが、50代以降はその猶予が相対的に短くなります。さらに、この年代は資産をある程度持っている世代でもあるため、一度の失敗で失う金額そのものも大きくなりがちです。だからこそ慎重になる方が多いのですが、失敗を恐れるあまり不安を抱える方も少なくありません。
①ご褒美としての過度な浪費(2:27)
まず気をつけたいのが、ご褒美と称した過度な浪費です。退職を機に旅行に出かけたり、これまで乗っていなかった車に買い替えたりするケースがよく見られます。子育てが一段落し、教育費の負担がなくなった分、支払いに余裕が出てきたと感じ、高級車を検討する方も多いようです。
こうした楽しみ方自体は決して悪いことではありませんが、老後資金や今後の生活とのバランスを崩すほどの過度な支出になってしまうと話は別です。想定していた運用がうまくいかなかったり、病気などで貯蓄計画が崩れたりすることもありますし、ちょうど50代はサラリーマンの収入が下がり始める時期と重なることもあります。人生を楽しむこと自体は大切にしていただきたいものの、計画的に使える範囲を見極めることが重要です。
②子どもや孫への過剰な援助(5:07)
次に注意したいのが、子どもや孫への過剰な援助です。大切に思う気持ちから早めに資産を渡したいと考えたり、ここ10年ほどの良好な相場環境を背景に、今のうちに渡しておいた方が得だと感じたりするケースがあります。2027年から贈与に関する制度が変わることを見据えて、早めに贈与しておこうと考える方もいるようです。
ただし、これはあくまで自分自身の老後資金をしっかり確保した上での話です。非課税枠をすべて使い切る必要はなく、無理のない範囲で行うだけでも十分に効果があります。相続税対策として語られることが多いものの、実際に相続税がかかる方はそれほど多くありません。援助すること自体は素晴らしいことですが、まずは自分の老後資産設計を固め、余剰資金の範囲内で行うことが大切です。
③過剰な生命保険を払い続ける(6:40)
3つ目は、過剰な生命保険を払い続けてしまうことです。子どもが独立すると、必要な死亡保障額は大きく下がります。世帯人数が変わったタイミングでファイナンシャルプランを見直す必要があるのですが、実際にはなかなか手が回らず、数年間そのままになってしまうケースも多く見られます。生命保険はもともと扶養義務がある人がいる場合に必要となるものです。子どもが自立し、配偶者の生活も貯蓄で十分賄えるようになれば、死亡保障そのものが不要になるケースが増えていきます。

出典:野村アセットマネジメント資産運用研究所
野村アセットマネジメントの資産運用に関するアンケート調査では、使ってよかったお金にも、使って後悔したお金にも保険料が上位に入っており、実際に保障が必要になった際には大きな安心をもたらす一方で、過剰な保険料が家計の負担になっている実態もうかがえます。0歳の子どもが65歳を迎える確率は99.6%というデータもあり、多くの人にとって大きな死亡保障の必要性はそれほど高くないとも言えます。掛け捨てなど、必要な範囲に見合った保険を選ぶことが望ましいでしょう。
④安易な投資(9:34)
4つ目は、焦って始める安易な投資です。老後が近づくにつれ、インフレへの不安や退職金を早く増やしたいという思いから、慌てて投資を始めようとする方が少なくありません。まずは落ち着いて、自分自身の家計管理やファイナンシャルプランの見直しから着手することが大切です。
中高年層は金融機関にとっても投資詐欺の対象としても、いわゆる良いお客さんに見られやすい存在です。老後への不安、まとまった資金があること、投資経験が少ないことという3つの条件が揃うと、勧められるままに商品を購入してしまうリスクが高まります。年齢を重ねているということは、それだけ経験則を積んでいるということでもあるため、焦らず慎重に判断することが重要です。
商品を売ろうとしている人にその商品の良し悪しを尋ねても、良い答えが返ってくるとは限りません。仕組み債や外貨建て商品、毎月分配型のような複雑でリスクの高い商品には特に注意が必要です。まずは基本的な投資の考え方を自分自身で学んだ上で、必要な金額と取れるリスクの範囲で始めることをおすすめします。
⑤住宅ローンの一括返済(13:14)
5つ目は、住宅ローンの一括返済です。マイホームを持つこと自体を否定しているわけではありませんが、慎重に検討してほしいというスタンスは変わりません。最近は金利の上昇により家計への負担が増しているという相談が非常に多くなっています。変動金利で借り入れている方の中には、毎月の返済額が1万円から1万5000円ほど上がったという方も少なくありません。ちょうど50代以降は収入が下がるケースも出てくるため、想定していなかった負担増に不安を感じる方が増えているようです。
繰り上げ返済をする際は、返済額軽減型ではなく期間短縮型を選ばないと、せっかくの効果が薄れてしまいます。子どもの学費がかかる時期と重なると不安から一括返済に踏み切りたくなりますが、奨学金なども活用しながら学費を賄える見込みがあるなら、無理に資金を投じる必要はありません。

出典:フィデリティ退職・投資教育研究所
フィデリティ退職・投資教育研究所が2018年12月にまとめたデータによると、退職金の使い道として住宅ローンの返済を選んだ人の割合は、退職金の受取額が100万円から500万円台の層ではおよそ30%であるのに対し、1000万円から2000万円台の層ではおよそ22%まで下がる傾向が見られます。つまり、資産に余裕がある人ほど住宅ローンの一括返済を選ばない傾向がうかがえます。住宅ローンを一括返済してしまうと、後になって資金が不足した場合に借りるローンの金利は、もともとの住宅ローンよりも高くなるケースがほとんどです。
同じ調査では、退職金の金額を受け取る1年前まで知らなかったという人が8割以上に上るというデータもあり、夫婦間で情報共有ができていないケースが多いことも見えてきます。まずは退職一時金だけでなく企業年金やiDeCoなどの資産状況を正確に把握し、手元のキャッシュを失わないことが家計破綻を防ぐ最大の鍵になります。 専門家に相談する際も、もらえるお金と出ていくお金をすべてリストアップした上で判断することが大切です。
まとめ(20:38)
50代、60代というのは、お金に余裕が生まれてくる一方で、世帯人数の変化に伴いファイナンシャルプランの見直しが求められる時期でもあります。人生100年時代のちょうど折り返し地点にあたり、いわゆるミッドライフクライシスと呼ばれる悩みの多い時期とも重なります。
今回取り上げた5つの事例は、いずれも良かれと思って判断した結果、後になって失敗だったと気づくケースが多いものばかりです。だからこそ、家族の中だけで結論を出そうとせず、専門家や第三者の意見を聞きながら、急いで結論を出さない姿勢が大切になります。50代、60代は人生経験が豊富な分、様々な選択肢やデメリットをじっくり検討できるという強みも持っています。
今回紹介した5つのケースに共通しているのは、自分自身に必要な老後資金を逆算して確保した上で、余剰資金の範囲で判断するという姿勢です。完璧なプランを作る必要はなく、大まかにでも全体像を把握しておくことが重要になります。調べればわかることはきちんと調べて埋めていき、将来の不確実な要素についてはその上で慎重に判断していくことが、失敗を防ぐための近道と言えるでしょう。
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