個人向け国債がNISAに?利回り2割アップ、解約規制の緩和
個人向け国債の保有を後押しするための購入促進策が浮上しているというニュースが出てきました。日経新聞の報道によると、与党内で個人向け国債の販売拡大に向けた議論が活発になっているとのことです。自民党からは相続税の減税を絡めた案が出ており、国民民主党からはNISAの対象商品に加えるべきだという意見が上がっています。さらに議員の一部からは、利回りを2割程度引き上げることも一案だという声も出ているようです。
現在販売されている7月6日から7月31日分の個人向け国債の金利で考えると、変動10年の金利は1.8%ですので、これが2割アップすると2.16%になる計算です。5年ものであれば2%を超える水準になりますが、5年は固定金利のため単純に2割アップするのは難しく、実際には税金を非課税にすることで実質的な利回りを引き上げる形が想定されているようです。
非課税という話であればNISAという案も出てきますが、NISAの枠を使ってしまうと国民全員が使えるわけではなくなるため、むしろシンプルに一定額までの利子を非課税にする仕組みの方が現実的ではないかと感じています。
正直なところ、NISAで個人向け国債が買えるようになったとしても、そもそも興味を持たない人も多いのではないかと思います。NISAを使いたい層は株式など値上がり益が非課税になる商品の方に魅力を感じやすく、簿価で計算されて含み益がすべて非課税になるような仕組みを好む傾向があるからです。投資にあまり積極的でない人にとっては良い制度かもしれませんが、それならNISAとは別枠で用意した方が使いやすいのではないかとも思います。
新商品の導入も検討(2:24)
新商品の導入についても検討が進められています。物価連動債を個人向け国債に組み込んではどうかという話は、今まさに求められているものだと感じているので、早期の実現を期待しています。
物価連動債は現状ほとんど販売されておらず、金額も大きいことから機関投資家しか購入できていないのが実情です。個人でも購入できるように制度上は変わってきているものの、実際に買う機会はほとんどないという状況が続いています。今のところ物価連動債を買おうとするとファンド経由になりますが、そうしたファンドは手数料が高くなりがちなので、それであれば個人向け国債として直接組成してもらった方がありがたいというのが正直なところです。
日経新聞がまとめた資料によると、個人向け国債の販売拡大に向けた議論として、自民党は相続税の減税や利回りを2割程度高めること、そして解約規制の緩和を挙げています。解約規制の緩和というのは、現在は購入から1年以内は解約できず、1年を過ぎても解約時には直近の利子相当分を返還しなければならないルールになっていますが、これをなくして、いつでもペナルティなしで解約できるようにするというものだと理解しています。
ただ、詳細についてはまだ発表されておらず、現時点では各党がそれぞれの案を出し合っている段階のようです。国民民主党はNISAの対象商品に加えるべきという立場ですし、財務省としては新商品の導入、たとえば期間のバリエーションを増やしたり、ゼロクーポン債のような商品を検討したりしているのではないかと考えています。
物価連動債にボーナスクーポンを組み合わせる案も出ていますが、これは自民党案と近い発想だと感じます。ただ、この方式にすると発行時の利率も引き上げる必要が出てきますし、市場で形成される価格や金利に対して一部だけボーナスを乗せる形になると、価格形成そのものが歪んでしまう懸念もあります。
そう考えると、一定金額までの利子を単純に非課税にする方が最もシンプルで分かりやすい仕組みになるのではないかと思います。国としても個人向け国債を買ってほしいという狙いがあるのであれば、解約規制の緩和とあわせて実施すれば購入のハードルはかなり下がるはずです。
一方で、これは銀行にとってはたまらない話でもあります。利回りが上がり、解約規制までなくなれば、預金に集まっていたお金が個人向け国債に流れ込み、直接的な資産の移動が進むことになるため、間接金融を担ってきた銀行にとっては貯蓄型保険などの商品がより一層売れにくくなる可能性があります。
それでも、NISAで個人向け国債が買えるようになったら買うかどうかという点については、目的に合っていれば買っても良いと考えています。実際のところ、NISAの1800万円という非課税枠をすべて埋められる人はそれほど多くなく、夫婦2人で資産形成が進んでいる世帯であっても枠が足りないと感じる人はごく一部にとどまります。
毎月の積立額を考えても、枠を使い切れていない人が大半であることを踏まえると、その余った部分を個人向け国債のような、10年以内に使う予定があり、リスクを取りにくいお金の置き場所として活用するのは理にかなっていると感じます。長期の資産運用はリスクを伴うものなので、そこまでリスクを取れない資金については、元本確保型や元本保証型の商品で運用するのが望ましく、その意味で2割程度利回りが上がり、税金も取られなくなるのであれば十分にメリットがあると考えています。
マネーセンスカレッジとしてのおすすめ資産(6:36)
マネーセンスカレッジとして個人向け国債で保有するのにふさわしい資金の性質について整理すると、やはり10年以内に使う予定のあるお金が最も適していると考えています。使う時期が決まっているのであれば、その期限に合わせて最も金利の高い商品を選べば良いですし、今のように金利が上昇局面にあるのであれば、基本的には変動10年を持っておくのが合理的です。
ただし、現行制度では解約時に1年分の利息相当を返還しなければならないため、その分だけトータルのリターンが下がってしまいます。この点が緩和されるのであれば非常にありがたい話です。インフレが加速していく局面も想定されるため、現状の水準で考えると5年ものなどは金利がかなり高く、インフレヘッジとしても十分機能していると感じています。
一方、20年や30年といった長期の運用ということになると、財務省などもそうした長期商品を視野に入れているようですが、それだけの期間があるのであれば、個人向け国債よりも資産運用や投資に資金を向けてほしいというのが率直な考えです。
とはいえ、どうしても投資に回せない性質の資金というものも存在します。個人であればまだしも、法人やマンションの管理組合といった団体が扱う資金については、運用によるリスクを取りにくい事情もあるため、そうした場面では個人向け国債や新窓販国債を活用することも十分に選択肢になり得ると考えています。
まとめ(8:10)
今回の促進案については、ぜひ実現してほしいというのが率直な思いです。国民が国債を購入すること自体には特に問題はなく、それぞれのニーズに応じて使い分けながら、同時に資産運用にも取り組んでほしいと考えています。
お金を使うタイミングが近づいた資金については、たとえ投資に回していたお金であっても、使用予定の3年前にはリスク資産から外すべきだとお伝えしていますが、そうした場面ではまさに3年国債のような商品が活躍します。1万円から購入できて使い勝手も良く、これが非課税になるのであれば言うことはありません。
運用先はそのお金の目的によって変わってきます。大学資金のように確実に貯めておきたい資金であればそれに応じた準備の仕方が必要になりますし、最終的には使うまでの期間にどれだけ耐えられるかによって投資の力を借りるのか、それとも投資に回さずに積み立てていくのかが決まってきます。
ファイナンシャルプランとは、必要な時に必要なお金を用意することが目的であり、いつ、いくら必要になるのかによって資産形成の方法を変えていくべきものです。その意味で個人向け国債の選択肢が広がり、利回りも上昇してきていることは非常にありがたい変化だと感じています。
以前であれば0.何%という水準は無視して構わないとお伝えしていましたが、今や1%台、2%台という水準になりつつあり、もはや無視できない存在になってきています。ぜひこの機会を有効に活用してください。
またこちらの動画「インフレに負けない新しい個人向け国債が登場へ。「物価連動債」って結局おトクなの?」では、物価連動債の仕組みとメリット・デメリットを解説していますのでぜひご覧ください。





