「オルカン1本で老後は十分ではない」運用担当者が語る”3つの死角”

大人気のオール・カントリー(オルカン)ですが、その運用担当者自身が「老後にオルカン1本では不十分だ」と語っているという記事が話題になりました。2025年のファンド・オブ・ザ・イヤーに関連したイベントで、竹川さんという方が運用担当者にズバリ質問したことがきっかけです。

登壇していた三菱UFJアセットマネジメントと別の運用会社の担当者、お二人がその場で答えた内容は、非常に誠実で深い見識に基づいたものでした。

オルカン1本で老後は十分ではない?(1:36)

驚くべきことに、オルカンをはじめとした外国株式インデックスファンドを実際に運用している方々が、口を揃えて「このファンド1本だけでは老後資産の形成は不可能です」と明言しています

SNSでは「オルカン1本でいい」という意見も根強くありますが、ファンドマネージャーもファイナンシャルプランナーも、立場を超えた共通見解として、1本では不十分だという認識を持っています。

貯金と2つ合わせればどうかという意見もありますが、それでもなお不十分である可能性が高いとされています。ここではその理由となる「3つの死角」についてご紹介します

①為替リスク(2:47)

1つ目の死角は、為替リスクです。オルカンをはじめとした外国株式インデックスファンドは、投資対象のほとんどが米国を中心とした外国資産です。ただし、購入も売却も日本円で行えるように設計されているため、外国通貨建てで直接買う必要はありません。とはいえ、資産の中身は外国資産ですから、円高になれば手元に戻ってくる金額は目減りしてしまいます。

例えば、1ドル140円のときに保有していた1万ドルの資産が、1ドル110円になった時点で取り崩すと、円換算では110万円にしかなりません。仮に米ドル建てで資産が10%増えて1万1000ドルになっていたとしても、円高の影響によってはマイナスになってしまうケースもあります。

日本で生活する方は、給与も年金も住居費も医療費もすべて日本円です。家計全体が円に依存しているにもかかわらず、金融資産のほとんどが外国資産に集中しているという状態は、「世界分散」のつもりでも、実質的には「円に対するリスク集中」になっているといえます。特に、老後の取り崩し時期が近づけばなるほど、この為替リスクの影響は大きくなります

為替リスクへの対処法として、オルカンと並行して預貯金(円建て資産)を一定割合持つという方法があります。半々で持てば外国資産の割合が半分になり、ある程度の手当てができます。ただ、円建て資産が多すぎるとインフレへの対応が弱くなるという側面もあるため、バランスの見極めが重要です。緊急資金や生活防衛資金を別途確保しておくことの重要性もこれと同じ考え方で、すべてを投資に回すことには相応のリスクが伴います。

②「世界分散」のつもりが「アメリカ集中」になっている(9:20)

2つ目の死角は、オルカンが「世界分散」と呼ばれながらも、実態は「アメリカ集中」になっているという点です。ファンド・オブ・ザ・イヤーの上位5本はすべて時価総額加重平均型のインデックスファンドでした。SNSでもこの方式は高く評価されていますが、時価総額加重平均には見落とされがちな弱点があります。

時価総額加重平均とは、株価が上がった国や企業の比率が自動的に高まる仕組みです。つまり、「株価が上がれば多く買い、下がれば少なく買う」という構造になっており、高値掴みになりやすい側面を持っています。また、バブル崩壊や暴落時には大きな下落を受けやすいという特徴もあります。

そして最大の問題は、現在のオルカンにおけるアメリカの比率が約3分の2を占めているという点です。日本株の比率はわずか5%程度、新興国も10%強にとどまっています。時価総額加重平均は「現在の状態」に合わせた投資方法であり、投資とは本来「将来」に対して行うものです。

25年後、30年後にアメリカの比率が下がり新興国が台頭する可能性を考えれば、今の構成比率に全額を集中させることが必ずしも正解とはいえません。アメリカのリスクを抑えたい方にとっては、オルカン1本では対応しきれない部分があります

③「出口戦略」の不在(13:09)

3つ目の死角は、老後の「出口戦略」が設計されていないという問題です。お二人の運用担当者はともに、老後の資産運用においてオルカン1本では「リスクが高すぎて不可能」という見解を示しており、社内でも活発に議論されているテーマだということでした。

老後にどれだけ取り崩すのか、リスク許容度はどの程度か、分配金をどう扱うか、といった個別の設計なしには、安定した老後資産運用は難しいとされています。

歴代の市場ショックを振り返ると、オイルショックで約50%、ブラックマンデーで約33%、ITバブル崩壊で約35%、リーマンショックで約60%、コロナショックで約25%の下落がありました。老後の生活に入ってからこうした暴落が起きると、下落している最中にも生活費のために資産を取り崩し続けなければなりません。

この問題への対処として、使う予定のお金は少なくとも3年前には現金化しておくことが推奨されています。これは投資戦略ではなく、ファイナンシャルプランの観点からの提言です。3年の余裕があれば、暴落が起きても取り崩しを一時停止したり、家計を見直したりする時間が生まれます。

しかし翌月の生活費を取り崩すような状況では、精神的な余裕を保つことは非常に困難です。最悪の場合、底値で全額解約してしまうといった事態にもなりかねません。

ターゲットイヤー型ファンドや毎月分配型ファンドでは、個人の取り崩し金額や生活設計に合わせた柔軟な対応はできません。老後の資産設計は、金融商品の選択だけで完結するものではなく、自分自身の人生設計に合わせてファイナンシャルプランをしっかり組み立てることが不可欠です。

まとめ(19:36)

20代から40代の方が低コストで世界分散しながら株式のみで運用していくことは、ある意味で合理的な判断といえます。しかし老後が近づくにつれて、為替リスク、アメリカへの集中リスク、そして出口戦略の欠如という3つの死角が顕在化してきます。投資家の本来の役割は、こうしたリスクをできる限り軽減することです。

老後に備えた資産設計が必要だと感じるなら、若いうちからその方法を学び、自分でコントロールできる力を身につけておくことが大切です。何かが起きたときに「こんなはずじゃなかった」とならないよう、今から準備を始めることをお勧めします。

またこちらの動画「日経平均最高値更新!それでもオルカンの日本株比率が下がるカラクリ」では、円安の影響も踏まえてオルカンの日本株比率が下がる理由を解説していますのでぜひご覧ください。

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