こどもNISA検討開始!資産形成に役立つポイント解説
「こどもNISA」が検討されているという報道がありました。以前存在していたジュニアNISAとどのように違うのでしょうか?
本記事では初心者向けに整理し金融リテラシーを高めたい方やお子さんの将来に備えたい親御さんに向けてまとめています。
キーポイント
こどもNISAとは?(00:01:44)
現在、新NISAは成人を対象につみたて投資枠と成長投資枠に分かれています。今回の「こどもNISA」案ではこのつみたて投資枠を未成年者にも開放する提言がなされました。つまり今まで18歳以上に限定されていたつみたて投資枠を0歳から利用できるようにしようというわけです。
この変更により年間120万円というつみたて投資枠を子どもたちが利用できるようになります。以前存在していたジュニアNISAでは年間80万円だったため単純に考えても1.5倍の枠拡大です。ジュニアNISAは2023年末で新規開設が終了しているため未成年者向けの非課税投資枠が再び整備される意義は大きいでしょう。
ただしジュニアNISAとは違い子ども専用の新たな制度ではなく、あくまで既存の新NISA制度に組み込まれる形です。この点は誤解されやすいため注意が必要です。
こどもNISA創設案の背景と課題(00:03:35)
この「こどもNISA」創設案は資産運用立国議員連盟による提言から生まれました。このグループの会長は元総理大臣であり「NISAの生みの親」とも呼ばれる岸田文雄氏です。
議論の中では「こどもNISA」を少子化対策の一環と位置づける意見もありました。しかしながらこの考えには懐疑的です。資産形成の支援が直接出生数の増加につながるとは考えにくくむしろこじつけに過ぎないと言えるでしょう。
本来、少子化対策とは教育費の無償化や子育て支援の充実が中心であるべきであり金融制度の拡充だけでは根本的な問題解決にはつながりません。そもそも義務教育すら完全に無償化されていない現状を考えれば優先順位が違うのではないでしょうか。
つまり制度創設の大義名分がややズレているのです。この点をしっかりと理解しておく必要があります。
こどもNISAが少子化対策にならない理由(00:05:34)
本質的な問題は若い世代、特に20代の結婚・出産が難しくなっている現状にあります。単に経済的な負担だけでなく非正規雇用の増加や将来不安が背景にあり若者が家庭を持つハードルは高まる一方です。
子どもNISAを設けたところで産む人そのものが減っているという根本問題にはアプローチできません。つまり政策としてターゲットを間違えているのです。
また減税こそが即効性のある少子化対策です。特に基礎控除を拡大し所得税・住民税を軽減することが効果的でしょう。しかし政府内では財源不足を理由に消極的な声も多く根本的な解決は容易ではありません。
このように少子化問題と資産形成支援を無理に結びつけることには無理があるといえます。
未成年者口座と資産格差問題(00:07:20)
また議論の中で資産格差の拡大が起きるのではという指摘もあったようです。
もともと資産を持っている家庭では子どもの名義で投資を行うことができる一方、経済的に余裕のない家庭ではそれが難しい。このため子ども世代の間でも経済格差が広がるというのです。
しかしそもそも新NISAの時点で1800万円という大きな枠があるため、この時点で格差が広がると言う指摘がなければおかしいでしょう。さらに言えばNISAによって格差が広がる以前の問題であるためNISAに責任を負わせるのは見当違いです。
さらに未成年者口座に関する税収懸念も議論されていますが実際には未成年者の売買益に対する税収は極めて小さいと見られています。基礎控除があるためほとんどのケースで非課税になるからです。
要するに未成年者口座を非課税対象にしても国全体の税収にはほとんど影響しません。むしろ若い世代に早期から投資教育の機会を与え将来的な資産形成を促す方が国家経済にとってプラスになる可能性が高いのです。
それにもかかわらず目先の税収減を恐れる一部の政治家の発言には違和感を覚えざるを得ません。
つみたて投資枠だけでは不十分(00:14:00)
またつみたて投資枠だけしか使えない点も懸念されます。アセットアロケーション運用で必要不可欠なリバランスはつみたて投資枠だけでは行えません。つみたて投資枠だけでなく成長投資枠も一部開放すべきではないでしょうか。
利用できる年齢差が大きい点にも注意が必要です。0歳から15歳程度の場合は子ども自身が能動的に投資するのは難しいと思われますが高校生以上であれば十分に投資を学び実践する能力があります。金融リテラシー向上のためにはある程度の投資自由度も必要でしょう。
こどもNISAの制度設計に求める改善点(00:16:03)
かつてのジュニアNISAの失敗を繰り返さないことも重要です。ジュニアNISAが不人気だった最大の理由は「18歳まで引き出し制限」という使い勝手の悪さにありました。老後資金が目的のiDeCoならまだしも、留学やスポーツの遠征費など大金が必要になる可能性がある子ども時代に引き出せないというのは不便です。
引き出し制限が改善された新規開設終了までの2年間は利用者がぐんと増えました。このことからもこどもNISAの制度設計時には柔軟な引き出し要件を盛り込み利便性を高めるべきです。
こどもNISAの運用方法(00:17:42)
もしこどもNISAが本当に開始された場合、どのように運用すべきでしょうか。
ジュニアNISA時には大学資金などのために利用していた人も多いでしょうがそのような使い方は枠が拡充された新NISAがあるためあまり必要ありません。それよりも子どもの金融リテラシーの向上や金融教育のために使用することをおすすめします。もしくは長期投資を見据え子どもの結婚資金や開業資金など30歳ごろに使うお金を貯めておくのもいいでしょう。
さらに子どもの老後資金を貯めておくというのも強く推奨しています。0歳時点で80万円を一括投資すれば65歳時点で4000万円ほどにすることも可能です。
どのように使う場合でもファイナンシャルプランニングの重要性を忘れてはなりません。枠が大きいからといって無理に埋める必要はなく生活費や緊急資金とのバランスを取りながら計画的に運用していくことが求められます。
まとめ
「こどもNISA」は未成年者にも資産運用の機会を開くという意味で前向きな動きではあります。しかしその設計思想や制度内容には改善の余地が多く特に利便性と公平性をどう担保するかが大きな課題です。
単なる少子化対策のアリバイ作りではなく真に未来世代のためになる制度設計を目指して国民の声を反映していくことが求められます。
今後の続報にも注目しつつ家庭内でもしっかりと資産形成と教育について考えていくべきタイミングが訪れていると言えるでしょう。
またこちらの動画「【2024年版】子供の老後資金はジュニアNISAがなくても、80万円1回のみで準備できる!」ではジュニアNISAなしでも子どもの老後資金を貯める方法を紹介していますのでぜひご覧ください。