住宅ローン破綻予備軍45%!金利上昇時代に家計を圧迫しない安全な借り方とは?
近年、住宅ローン破綻が深刻な問題となっています。特に「フラット35」を利用している人の約45%が破綻予備軍とされ、適正な住宅ローンの借り方が求められています。
本記事では、住宅ローン破綻の実態や原因を統計データをもとに解説し、適正な返済負担率や金利上昇への備え方、破綻を防ぐための具体的な方法を紹介します。
これから住宅を購入する方や、すでにローンを抱えている方にとって必見の内容です。
キーポイント
住宅ローン破綻の実態と統計データ (00:01:22)
まず、住宅ローン破綻の現状を統計データをもとに確認してみましょう。
住宅金融支援機構のデータによると、住宅ローン破綻率は、2010年の8.48%から2022年の3.05%まで、ほぼ右肩下がりの状況です。
バブル崩壊後、金利が非常に高かったため返済に苦労した人が少なくありませんでしたが、2010年は、まだその名残がありました。
ところが、完済すれば住宅ローンを組んでいる人の母数は減り、新たにローンを設定する人は、以前より低い金利で融資を受けられるので、破綻率が下がってきたといえます。
加えて人口減によって、住宅ローンを組む人の絶対数が減っていることも、破綻者が減っている要因です。
ただし、今後は金利の上昇に伴って破綻率も上昇する可能性はあります。
ちなみに住宅ローン破綻者の内訳は、以下の2パターンに分かれます。
- 半数は、完全に支払い不能となり自己破産に至るケース
- 残りの半数は、銀行に支払いの延期(リスケジュール)をお願いしている状態
住宅ローン破綻の主な原因とは? (00:04:07)
住宅ローンの破綻理由はさまざまですが、大きく分けて 「外的要因」と「内的要因」 の2つがあります。
1. 外的要因(避けるのが難しい要因)
- 会社の倒産やリストラによる収入減
- 病気やケガで働けなくなる
- 景気の悪化(コロナの影響など)
2. 内的要因(計画次第で回避可能な要因)
- 無理な借入額設定(収入に対して借りすぎ)
- 将来の支出を見越した計画不足(教育費や修繕費の考慮不足)
- 住宅ローン以外の借入(車のローンやカードローン)の影響
特に、無理な借入額の設定 は、破綻の大きな原因です。
「今の収入なら払える」と思っても、金利上昇や収入の変化に対応できないと、簡単に破綻へと向かってしまいます。
適正な住宅ローン返済負担率とは? (00:06:04)
住宅ローンを借りる際、よく「返済負担率」が重要だと言われます。
では、適正な返済負担率とはどのくらいでしょうか?
出典:住宅金融支援機構「2023年度 フラット35利用者調査」
上記のグラフからわかるように、住宅ローンだけでなく、自家用車などのローンを含む総返済負担率が年収の25%以上という人たちが増えています。その理由は、住宅価格が上昇しているからに他なりません。
とりわけ2013年以降からの上昇は顕著で、マンション価格は約10年で2倍になっています。戸建なども含む住宅総合の指数は同10年で140%に上昇しています。
こうした状況を理由に住宅購入のためにはローンを組まなければなりませんが、理想ばかりを追い求め、身の丈にあった物件を選ばなければ当然破綻リスクは増加します。
総返済負担率の算出方法 (00:09:07)
銀行と不動産業界の総返済負担率は、おおむね以下の通りです。
- 銀行が貸し出す基準は「年収の30~40%」
- 不動産業者の目安は「年収の25%未満」
ただし、年収というのは手取りではない点に要注意です。
銀行は「借りられる額」を基準にしていますが、重要なのは「無理なく返せる額」です。
不動産業者の基準は銀行よりも厳しく、この数値の方が現実的には適性であると言われています。
住宅ローンの返済負担率はいくらなのか (00:10:42)
住宅ローン以外にも修繕費(修繕積立金や管理費)・維持費(固定資産税・都市計画税・火災保険・地震保険など)がかかるため、最初にそれらを考慮したうえで返済負担率を計算する必要があります。
目安としては、「物件価格の0.15%(手取り収入の1%)」を修繕費と維持費としてそれぞれ見積もるのがおすすめです。これが高いと感じれば、物件価格に対して各0.1%(合計0.2%)でもいいかもしれません。
総返済負担額が家計に占める割合 (00:10:42)
物件価格の目安は、年収の約7倍です。住宅金融支援機構の調査では、マンションが年収の7.2倍、中古マンションが5.6倍、中古戸建が5.3倍です。
先ほど述べた修繕費と維持費の合計を少なく見積もって物件価格(=年収の7倍)の0.2%とすると、「年収の1.4%」となります。
ただしこの場合の年収は額面給与のため、手取り収入に直すと、年収の77%換算で約1.8%となりますので、これを2%と考えます。
つまり手取り収入の2%は、修繕費と維持費に必要となります。
マネーセンスカレッジが推奨しているQGSで考えると、住居費に割り当てられるのは、手取り収入の22%です。ただし車を持たない場合は、これに4%プラスして26%と考えても構いません。
ここで住居費を、不動産業者が返済負担率の目安とする支給額の25%とすると、手取りに換算した場合は、32.5%になります。上記の修繕費と維持費の合計である2%を加えると34.5%となり、これはQGSからするとかなりオーバーした数値です。
続いて、銀行が目安とする返済負担率の30%で考えると、手取りベースでは38.9%になり、これに修繕費と維持費を加算すると40.9%に達します。
つまり銀行の考え方に沿ってローンを組むと、かなり負担が増すことがわかります。
こうなると貯蓄する余裕がなくなってくるため、今は良くても、将来(老後)の破綻リスクが高まります。
マネーセンスカレッジの推奨する返済負担率 (00:18:10)
QGSでは、返済負担額を手取り収入の22%で抑えるのが理想ですが、これを支給額ベースで換算すると17%になります。これに修繕費と維持費の2%を加えると19%です。
現在、住宅ローンを抱えている方は、収入や手取りに対して住宅関連費がどれくらいの割合になるかを計算しておくことが大切です。これが修繕費と維持費を加えて19%以内であれば健全です。
しかし、これを超えるようなら、今は大丈夫でも将来の破綻リスクは高まります。
現実として、フラット35を利用している人の45%が破綻予備軍であり、30%はすでにほぼ破綻しています。これを他人事と考えず、ご自分の家計がどのような状況かを把握しておく必要があるでしょう。
まとめ
住宅ローンは長期にわたる大きな負債ですが、計画的に借りれば怖くありません。
「借りられる額」ではなく「無理なく返せる額」を意識し、手取り収入の25%以下に抑える ことが、破綻を防ぐための鍵となります。
ぜひ本記事を参考に、安心して住宅購入を進めてください!
関連動画「シンプルかつ一定の貯蓄を生み出すQGSの仕組み【家計を学ぶ007】」では、記事内で触れたQGSについてわかりやすく解説しています。これから安全かつ計画的に住宅ローンを組みたいとか、家計の見直しをしたいとお考えの方は、ぜひ参考にしてください。