国民年金は「追納」と「投資」どっちがお得? 

国民年金は義務化されていますが、学生時代や子どもが学生のころに払えなかった分をどうするかという質問は、繰り返し寄せられます。すでに動画でお答えしたことはありますが、先日もプライベートで同じ質問を受けました。知りたいと思ったときに情報が届くのが一番よく、同じ話を繰り返すのも悪くありません。年金財政検証の内容も新しくなっているため、今回は最新の状況に合わせて整理し直してお話しします。

例えば、20歳から大学に通い、22歳で卒業したとします。その2年間は学生納付特例制度を申請して、保険料を払っていません。社会人になり、追納できる期間が過ぎてしまう前にどうしようかと悩む方は多いと思います。こうした学生の方には、基本的に追納をせず、そのお金を運用したほうが有利だとお伝えしています。

まず結論基本的に「追納せず運用」が有利(1:42)

この動画では、判断の目安になる残りの年数についても取り上げます。対象は学生や20代の方だけではありません。コロナ禍で仕事が苦しくなり、失業して免除申請をした方もいるでしょう。特に自営業の方や、影響を受けやすい業種の方にはつらい時期だったと思います。最近はインフレや金利の上昇もあり、ようやく稼げるようになってきて、今から追納するかどうかを考えている方もいるはずです。

ただし、学生のころと違って年金を受け取るまでの期間が短く、運用に回せる期間も短くなります。そうなると、追納と運用のどちらが得なのかが変わってきます。この点は後半でお話しします。

追納に必要な金額と税控除(2:35)

まず学生の方を想定して、追納に必要な金額と税金の控除を見ていきます。令和8年度の国民年金保険料は月額1万7,920円で、前年より上がりました。この金額は物価の変動に応じて毎年変わります。1年分を追納すると、1万7,920円に12か月をかけて21万5,040円、つまり約21万5,000円です。

この保険料は社会保険料控除の対象になります。若い方ですからそれほど年収は高くないと考え、所得税5%と住民税10%の合計15%の税率で計算します。21万5,040円に15%をかけると、軽減できる税額は約3万2,256円で、年末調整などで還付されます。したがって、実質的な負担は21万5,000円から3万2,256円を引いた約18万3,000円です。これは1年分の金額で、2年分なら2倍になります。

1年追納すると年金はいくら増える?(4:00)

では、1年分を追納すると年金はどれだけ増えるのでしょうか。1年分の追納で、満額の老齢基礎年金の40分の1が増えます。2026年には満額が月7万円を超えたというニュースもありました。この月7万円を12か月分にして40で割ると、年金は年間で約2万1,000円増える計算です。

ただ、これは現時点の金額であり、将来は下がっていくと考えられます。その目安になるのが所得代替率です。2024年の年金財政検証によると、現役男性の平均的な手取り収入に対して、夫婦2人の基礎年金と夫1人分の厚生年金を合わせた年金額の割合は61.2%です。内訳は、厚生年金にあたる比例部分が25%、基礎年金の部分が36.2%で、基礎年金は2人分なので1人あたり18.1%になります。

問題は、この18.1%がどこまで下がるかです。ここではいつも最悪のケースで考えることにしています。前提条件はいろいろありますが、経済が過去30年よりは良くなるはずだと考え、過去30年投影ケースを最低ラインとして置いています。厚生労働省の試算では、このケースで2057年に基礎年金の割合が25.5%まで下がります。2人分なので1人あたりは12.75%です。

18.1%から12.75%への変化を計算すると、12.75%÷18.10%で約70.44%になります。今の基礎年金の額から、最悪の場合は70%程度まで落ちるということです。これより増えたらラッキーだと考えておけばよいでしょう。先ほどの2万1,000円に70%をかけると約1万5,000円になり、1年分を追納したときに増える将来の年金は年間1.5万円ほどと考えられます。これに加えて物価スライドもあり、年金は物価にある程度連動します。マクロ経済スライドは2057年に終わり、その後は物価スライドで調整されます。

一方、21.5万円を43年間、5%で運用した場合(7:13)

一方で、最初に払う21万5,000円を43年間、年5%で運用した場合を考えます。22歳の方が65歳になるまでの期間で、65歳から年金を受け取ると想定しています。すると資産は約176万円になり、かなり大きく増えます。

この176万円を5%で運用し続けながら、年5%ずつ取り崩したとすると、年間の利益は約8.8万円です。追納で増える年金は1.5万円でしたから、もう答えは出ています。差は数倍に及び、運用のほうが明らかに有利です。しかも43年間という長期の運用ですから、この運用利回りは達成できる可能性が高いと考えています。もちろん確実とは言えませんが、このようにシミュレーションできます。

では、65歳以降は運用せず、インフレも考慮せずに、176万円を年1.5万円ずつ取り崩したらどうなるでしょうか。約117年分になり、182歳まで毎年1.5万円を受け取れます。つまり運用しなかったとしても、運用のほうが有利です。65歳まで運用し、その後はリスクを一切取らないとしても、3倍の年4.5万円を取り崩せます。それでも100歳ごろまでもつ計算です。65歳以降の運用リスクを取らなくても3倍ほど受け取れるので、この場合は追納をする理由がほとんどありません。特に若い人ほど運用期間が長くなるため、この傾向は強くなります。

損益分岐点の運用期間「約7年」(9:05)

では、何年以上あれば、追納よりも運用のほうが有利になるのでしょうか。損益分岐点を計算したところ、約7年でした。自分が年金を受け取る年齢の7年前の時点で、そこまでの期間が残っていれば、基本的には追納するより運用したほうが得になります。

計算すると約6.8年になります。65歳から受け取る場合、逆算して58歳が目安です。つまり7年未満しか残っていない方は、追納も選択肢に入ります。裏を返せば、受け取りの直前の時期に年金を一気に増やそうとしても、それなりの効果しか期待できないということです。厚生年金は仕組みが違うため、ここでは触れません。

とはいえ、長期投資と呼べる期間は10年ぐらいが目安です。計算上は7年でも、それでは運用期間が短く、5%という利回りが大きくぶれてしまいます。ですから55歳未満であれば、追納よりも運用のほうがよいと考えてください。10年以上あるなら、追納するより、そのお金を運用したほうが有利です。

【別手段】60歳以降の任意加入(10:37)

追納以外の手段として、60歳以降の任意加入があります。60歳の時点で国民年金の納付期間が40年に満たない方は、条件を満たせば任意加入できます。現行の制度では、国民年金に加入できるのは40年までです。20歳から始まる場合、60歳で満期になります。

その間に未納の期間があったとします。届け出のミスがあった場合や、転職したときに国民年金を払うべきところを払っていなかった場合などです。お知らせは届くのですが、払わないまま追納もしなかったケースがあります。この場合、40年に達していないので、60歳から65歳の間に任意加入して保険料を払えます。

ただし、そのときは当時の保険料ではなく、60歳時点の保険料を払います。インフレの影響で保険料は高くなっているはずですが、そのときの収入から払うため、リスクはないと考えてよいでしょう。例えば、学生時代の2年間が未納で、38年間しか納付していなかったとします。60歳を迎えたあとでも、60歳から2年間任意加入すれば、40年に近づけることができます。

【別手段】継続雇用(11:57)

もう一つの手段が継続雇用です。現在は、60歳の定年後に65歳まで再雇用で働く方が多いと思います。その場合は厚生年金に加入します。厚生年金には国民年金にあたる部分も含まれているため、国民年金そのものに上乗せされるわけではありませんが、厚生年金の金額が増えます。仕組みは少しややこしいものの、保険料が無駄になることはありません。

40年を超えて加入する場合も同じです。20歳から60歳まで真面目に払い続け、60歳以降に厚生年金へ入った場合でも、国民年金にあたる部分は厚生年金に上乗せされ、払い損にはなりません。

年金を増やしたいという意味では、60歳から65歳まで働くのは理にかなっています。先ほど、受け取りまで7年以内であれば保険料を払ったほうがよいとお話ししました。年金を受け取る直前の時期に働いて保険料を払うことは、この考え方に合っています。細かく計算すればお得度は変わりますが、基本的にはそういう作りになっています。

まとめ(13:20)

生活を圧迫してまで追納をする必要はないでしょう。また、運用する力があるなら、基本的には投資したほうが有利です。境目は計算上は7年ですが、10年ぐらい投資期間があるなら、追納よりもその資金を投資したほうが有利になる可能性が高いといえます。

ただし、確実なことは言えません。運用結果が悪くなっても、年金が3分の1になってもよいから、確実に年金を増やしたいという方であれば、追納を検討してみてください。

またこちらの動画「【要注意】個人年金保険、続けたら損!解約して投資すべき理由」では、個人年金保険が資産形成に向かない理由や、解約後に検討したい投資戦略を解説していますのでぜひご覧ください。

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