社会保険の扶養(第3号)、対象者縮小へ。誰が外れる?

社会保険の扶養、いわゆる第3号被保険者が縮小されるというニュースが出ました。結論から言えば、これはもう出来レースだと考えています。

新しく会議が開かれたという報道もありましたが、時期的には次の年金制度改正に向けた議論を進めていきましょうという趣旨のものです。第3号被保険者の実態調査に向けた会合が開かれたということで、2024年に年金財政検証が行われ、それを受けて2030年の改正に向けた動きが本格化していきます。年金だけの話ではなく、社会保険も含めて実態を踏まえた上でどのような国にしていくのかという点について、有識者の会議を経て政策に生かしていこうというものです。

第3号を縮小していくというのは政府資料の中にも入っていますので、実際に縮小は進んでいくのだろうと思います。ただ、だからといって第3号を一律に廃止していこうという流れではありません。後ほど触れますが、第3号にならざるを得ない人と、第3号をあえて選んでいる人は、区別して話す必要があるのではないかと考えています。

第3号被保険者とは(1:57)

そもそも第3号被保険者とは何かというところですが、会社員に扶養されている方で、原則として年間収入が130万円未満の方になります。年金生活者の方は180万円という基準になりますが、その方たちは通常、扶養に入ることになります。

第3号被保険者になると、本人の年金保険料の負担はありません。現状においては健康保険の負担もないという形です。年金制度の仕組みについては厚生労働省の資料にも示されている通りで、ここは多くの方が理解されているところだと思います。

第3号被保険者制度は「縮小」と明記(2:39)

政府与党に関しては、この第3号被保険者制度は縮小していくと明記されています。第3号被保険者についてはその縮小に向け、マルチワーカーへの対応等を含めた短時間労働者への被用者保険の適用拡大を早期に進展させるとともに、第3号被保険者に係る実態調査を実施して令和8年度中にその結果を取りまとめ、課題の整理を行うという書き方になっています。縮小に向けという文言も明記されていますので、これはもう出来レースです。

ただ、この第3号被保険者制度には歴史的な経緯もあります。厚生年金の保険料率も、第3号の方が入ることを前提に引き上げられた経緯があり、当時は4%から5%ほど引き上がっていたはずです。それを考えると、どうなのかという思いはあります。年金財政自体を検証しながら、保険料率の部分も見直していく必要があるでしょう。政府はそんなことを言わないとは思いますが、縮小させていくのであれば、制度だけが自然に消えていって料率だけが残るという形になってしまいます。これは国民としては納得のいかないところです。

縮小の方法①短時間労働者を第2号へ移す(4:12)

130万円という扶養の壁があったわけですが、改正を経て、短時間労働者、いわゆる年収の少ない方であっても、条件を満たす方は厚生年金に入って社会保険料を負担してくださいという流れになっています。

厚生労働省の資料で経緯を追いますと、2012年の改正、施行は2016年10月ですが、ここで週の労働時間が20時間以上、月額賃金が8万8000円以上、勤務期間が1年以上の見込みであって、学生は除外、そして501人以上の企業という条件で、社会保険に入ってくださいという制度に変わりました。原則としては週30時間以上、本来の正社員であれば労働基準法における法定労働時間は週40時間ですので、その4分の3以上働いている方は正社員に準じて社会保険に入ってくださいという制度だったところ、適用拡大に踏み切ったということです。

次に2020年の改正です。これは2022年10月と2024年10月にそれぞれ施行されていますが、1年以上の見込みという要件が2か月超となり、正社員と同じ基準に揃えられました。企業規模に関しても501人以上が101人以上、さらに51人以上と、だんだん小さいところまで対象が広がってきています。

そして2025年の改正では、週の労働時間20時間以上という要件は変更ありませんが、賃金要件が撤廃されました。最低賃金をもらっていれば週20時間以上働けば当然この要件を満たすでしょうということで、それならもう要らないのではないかという判断であえて消してきたということです。

学生の適用除外は基本的に変更がありませんが、企業規模の要件は段階的に撤廃していくことになっています。2027年10月以降は36人以上、2029年10月は21人以上、2032年10月は11人以上、そして2035年10月には全ての企業で、この条件を満たす場合は社会保険に入ってくださいという制度に変わっていきます。今から10年ほどかけて、徐々に規模要件は撤廃されていくという形です。

縮小の方法②マルチワーカーへの対応(7:00)

縮小の方法の2番目として、マルチワーカーへの対応が挙げられています。本業があって副業をされている方、3つほど掛け持ちされている方もいらっしゃると思いますが、現在、短時間労働者の週20時間要件は基本的に勤務先ごとに判定されます。

そのため、複数の会社で働いている場合、例えばA社で15時間、B社で15時間、合わせて30時間働いている方は、どちらの会社でも要件を満たさないことになります。合算すれば十分に働いているけれども、一社ごとに見れば足りていないということですね。

出典:厚生労働省

厚生労働省の図表では、事例が4つのタイプに分かれています。1つ目は1か所で週20時間働いている方で、この場合はその事業所の報酬から算定されます。2つ目は掛け持ちで両方とも20時間ずつ、合計40時間働いている方で、正社員並みに働いていらっしゃるわけですが、両方とも20時間を超えていますので、両方の事業所の合計で報酬が算定され、保険料に反映される仕組みになっています。これは実務的には非常に煩雑です。3つ目は、事業所Dで20時間、事業所Eで10時間という場合で、事業所Eの方は適用外ですので算定の基礎に入りません。4つ目は、両方とも20時間に満たない場合で、月の報酬がないという扱いになり、社会保険の適用除外になっています。

合計で見たいという気持ちも分からなくはないのですが、そもそもこういう働き方を生んできたのは制度をつくってきた側ではないかと言いたくもなります。ブーメランで返ってきているような気もします。

もちろん、長時間の残業でうつになるといったことも社会問題になってきましたので、そこを改善していくのは当然必要だとは思います。ただ、労働法体系というのは少し特殊だと感じています。法律で決まっているものが守られておらず、それに対してのとがめもないから、こういうことになっているのではないでしょうか。厳しく取り締まればよいのではないかと思うのですが、これが日本の行政の在り方なのかもしれません。とはいえ歪みも当然出てきますし、真面目に生きている人間がバカを見るような社会になっているような気もします。

さらに130万円の壁をどうするのかというところですが、これについては具体的な案や具体策が示されているわけではありません。基準を切り下げていくという話は、今のところ出てきていない状況です。

縮小の方法③残る第3号を実態調査して制度設計(10:44)

では、なぜ実態調査を進めていくのかというと、冒頭でもお話しした通り、第3号にならざるを得ない人はやはり守る必要があるからです。

例えば介護であったり育児であったり、また健康上の理由で制約を受けて働けない人にとっては、扶養制度は必要なものです。その人たちに負担力はありませんので保護する必要がありますし、国としても政策としてこういう制度を残しておく必要があるという判断になります。

これはずっと前から言われていることですが、一方であえて第3号を選んでいる人もいます。働く力があり、働きたいという意欲もあるけれども、壁によって働き控えをしている人たちです。本来であれば働いてほしいとお願いする立場なのが国のはずですが、今回はその方たちに負担をかける方向に進んでいます。言い方は悪いですが、結局は保険料が欲しいということなのでしょう。

とはいえ、鬼の所業というわけでもなく、守るべき人は守ろうというところで実態調査から進めていき、2030年に向けた議論を進めていこうという流れが見えます。国民の理解が得られるようにという言い方はよいのですが、要は外堀を埋め始めたということでもありますし、ちゃんとやったというパフォーマンスでもあるでしょう。

ただ、第3号を全部消滅させて、社会的な弱者や経済的な弱者の方が暮らしていけないような国づくりをしようとしているわけではないという点は、批判する側も理解しておく必要があるかと思います。それを踏まえて建設的な議論をしていけばよいのではないでしょうか。ただ文句を言うのではなく、よい国をつくっていくという意味で政治に参加していただければと思います。

今後あり得る流れ(12:56)

今後の流れをまとめておきますと、確度として高いのは企業規模要件の撤廃です。これはすでに決まっていることで、2025年の改正で法改正も済んでいますので、2035年に向けて全ての企業で、週20時間以上働き一定の要件を満たす人は社会保険に入ってくださいという形になります。小さい企業でも社会保険料の負担が進んでいきますので、事業者側もきちんとした準備が必要になってくるでしょう。

マルチワーカーに対する適用拡大についても明記されましたので、対応が進んでいくと思われます。実態調査を進めて課題を整理しましょうという点も、すでにニュースで発表されている通り進んでいくでしょう。

一方で130万円という基準そのものを下げていくことに関しては、資料などでは触れられていません。こちらは社会的な弱者の範囲まで入ってきてしまうという事情があるのかもしれません。

ですので、第3号被保険者という制度自体は残しつつ、社会的な弱者や経済的な弱者の方は社会のセーフティネットに入れておいた上で、働いている方、働く意欲のある方、実質的に働いているけれども壁によって社会保険料を負担していない方について適用を拡大していこうという流れなのでしょう。

まとめ(14:26)

ネットニュースなどで議論が進んでいること自体は、非常によいことだと思っています。その中で第3号がなくなったらどうしようとおっしゃる方もいらっしゃいますが、政府資料や研究会、有識者会議などで話されている内容も踏まえつつ、今どこが課題で、政府がどこを見ているのかを知りながら政治に参加していただければと思います。

また、自分自身がいくら年金をもらえて、老後にいくら必要で、これからいくら準備しなければならないのかが分かっていれば、こういった制度変更にも対応しやすくなります。その意味では、資産設計や投資、家計管理といったものを進めていただければと思います。老後の資産設計を計算しておけば、今回のような改正があってもそれなりに対応していけるはずです。事前の準備は、できるところからスタートしていくのがよいでしょう。

またこちらの動画「できれば効果絶大!合法的に社会保険料を下げる裏技」では、選択型DCで社会保険料を抑える仕組みと年金への影響を解説していますのでぜひご覧ください。

動画アイコン 動画目次 [目次箇所から再生]