ローンを使って買ってもいい3つのパターン 

ローンや借金は、できることなら使いたくないものですが、時には必要になる場面もあります。お金の学びには六段階あり、最初の段階では「使う」を学びますが、本来は自分のお金しか使えないはずです。ところが大人になると、ローンや借金という誘惑にさらされる場面が出てきます。

今回はあらためて、ローンや借金とどう付き合っていけばよいのかを整理していきます。前提として、ローンを使ってまで買わなければならないもの、払わなければならないものはごく少数であり、基本的には不要なものが多いといえます。

借金 ローンは基本的にはいらない(1:14)

借金やローンは基本的にはしたくないという考え方が世の中の主流かというと、実はそうではないようです。多くの人は「ローンで買えるのなら買おう」という発想を持っており、これがむしろ一般的だと考えられます。ただしこれは、買うことがすでに前提として決まっているからこそ成り立つ話であり、ローンが組めなければ買わないという選択になるだけで、実際には「買うこと」自体はすでに決定しているケースがほとんどです。

では、なぜローンや借金は基本的にはない方がよいのか、その付き合い方について考えていきます。借金を無条件にしてよい場面は、実は三つのパターンしかありません。一つ目は、生命や健康に今まさに危機が実現しているとき。二つ目は、借金と利子を合わせた金額を上回る収入が得られるとき。三つ目は、借金と利子を合わせた金額を上回る支出が減るときです。それぞれについて、順を追って見ていきます。

①生命や健康に今実現している危機があるとき(3:05)

命や健康はお金では買えないものです。だからこそ、お金で解決できるのであれば、まずはそれを回復させ、危機を脱するべきだといえます。たとえば突然入院や手術が必要になり、その費用が今すぐには払えないという場合、ローンが組めるのであれば組んだ方がよいでしょう。

ここでいう「健康」については誤解しないでほしい点があります。今現実に健康を損なっていて、薬や治療のためにお金が必要であり、手持ちがないという状況であれば、ローンを組んでもよいということです。一方で、いわゆる健康食品のように、なくても生きていけるものについては、わざわざローンを組む必要はありません。今まさに健康を損なう状態があり、それを回復するためにお金が必要で、手持ちがなく、借金によってそれを解消できるのであれば、ローンを組んでもよいと考えられます。根底にあるのは、生命や健康はお金では買えないという事実です。だからこそ、お金を払うことでそれを回復・維持できるのであれば、支払う価値があるといえます。

②借金+利息を上回る収入が増えるとき(5:33)

二つ目からは経済的な話になります。もっとも分かりやすいのは、独立して起業する際の資金調達のようなケースです。借金をして利息を払うことになっても、それ以上の売上や収入が見込めるのであれば、無条件にローンを組んでよいといえます。

ただし、多くの人は消費者としてお金を使うため、こうした発想にはなかなか至りません。消費のためにお金を払えば、そのお金は単純に減っていくだけで、増えることはないからです。そのため、この二つ目のパターンは、ほとんどの人にとってはローンを組む必要のない、むしろ組んではいけない典型例になります。

③借金+利息を上回る支出が減るとき(6:17)

三つ目は、時間の経過によって損失や迷惑が発生してしまう場合です。たとえば家が老朽化し、今にも崩れそうな状態であれば、隣家に被害が及ぶ可能性があります。時間が経つほどリスクは高まるため、早めに手を打つ必要が出てきます。また、庭木が伸びて隣家にはみ出している場合、伐採には意外とお金がかかります。

こうしたケースは、事前に備えておけば払えることが多く、突然降りかかるものではないため、本来は見込んでおける支出です。備えていれば払えるはずのものをローンに頼れば、当然利息の分だけ余計にお金を払うことになります。

インフレによって将来的に値上がりする前に、今のうちにローンを組んで安く済ませようという考え方もありますが、世の中の金利は大抵インフレ率を上回るように設定されているため、借金をすれば結局は損をする可能性が高くなります。インフレに勝つためだけにローンを組むのは現実的ではなく、それならばしっかり計画を立てて貯蓄で対応する方が理にかなっているといえます。

どこまでが借金(8:35)

ここで、そもそもどこからが借金なのかを整理しておきます。基準はシンプルで、返済義務があるかどうかです。返済義務があるということは借りているということであり、借りているということは返さなければならないもの、つまりすべて借金だということになります。ローンであろうとリボ払いであろうと、呼び方をどれだけ柔らかくしても、本質的には変わりません。住宅ローン、奨学金、クレジットカードの分割払いやリボ払いなど、いずれも借金という点では同じです。

ここで住宅ローンについて疑問が出てきます。住宅はローンを組まなければ買えないものが多いため、ローンを組まないという考え方を貫くなら、住宅も基本的に買わないという結論になりかねません。ただし将来のインフレや不動産価格の動向は誰にも分からないため、実際に得をするかどうかは結果を見てみないと分からない部分があります。

十年ほど前にマンションを購入していた人であれば、家賃を払わずに住み続けた結果、売却額でローン残債をきれいに清算できたというケースもよくある話です。これは住宅に限らず、人気の高い車をローンで購入し、数年乗って初回車検の頃に売却しても値段がほとんど下がらない、あるいは上がっているというケースにも当てはまります。ただしこれも、蓋を開けてみなければ分からず、暴落のリスクを負うことにはなります。

必要性があるならローンを組むこと自体は問題ではありませんが、その必要性にも限度があります。住宅の場合、ローンの返済以外にも固定資産税や都市計画税といった維持費がかかります。賃貸であればエアコンやトイレの故障、水漏れなどは大家が直してくれますが、持ち家では自分で対応しなければなりません。不動産事業者は多数の物件を扱う中で修繕の発生確率をある程度予測し、それを踏まえて家賃を設定しています。つまり家賃より安く物件を購入できているのであれば、その分を自分で積み立てておく必要があるということです。

マンションには修繕積立金がありますが、これは共用部分に関するものであり、専有部分である自室の修繕には別途自分で備える必要があります。鉄筋コンクリート造のマンションは比較的長持ちしますが、木造の戸建てはそうもいかず、外壁のコーキングや屋根の葺き替え、地震への備えなど、経年に応じた維持費も考慮しなければなりません。こうした維持費もすべて含めた上で賃貸と比較し、それでも経済的に見て購入する方が得だという合理性があるのであれば、住宅購入に踏み切ってもよいといえます。太陽光発電や蓄電池、電気自動車などを活用して電気代を抑えられる可能性も、トータルで考える材料の一つになります。

そのうえで、毎月の給料からきちんと返済できるのか、家計が破綻しないかどうかも重要な確認事項です。住宅ローンにきちんとした経済的な裏付けがあるのであれば、それ自体は問題ありません。加えて、新築の家に住むことや、自分だけの空間を持つことには感情的な満足感もあります。ローンを払い終えるまでは抵当権が付いているため厳密には自分のものとは言えませんが、返済を続けられている限り住み続けることができ、その意味での安心感や所有感は確かに存在します。

必要と欲求を分けて考える(14:44)

大切なのは、必要と欲求を分けて考えることです感情と理性を天秤にかけ、両方に重りを乗せたうえで、自分がどちらを選ぶのかを決めればよいと思います。経済的に見れば、ローンを組んで住宅を購入する場合、同等のグレードの物件を賃貸で借り、余った分を貯蓄や投資に回した方が得になることは少なくありません。それでもなお、経済的に損をしてでも欲しいと思うのであれば、購入すればよいのです。ローンでしか実現できないものとして、世の中で該当するのはおおむね住宅くらいで、車については必ずしもローンを組む必要はないといえます。

たとえば、地震に強い家で家族を守りたいという思いが天秤を傾けるのであれば、それにお金をかける価値は十分にあります。実際に大きな地震を経験した中で、耐震性の高い新築の家はしっかりと建っていた一方、周囲では倒壊してしまった家もありました。こうした「命を守る」という要素は、お金を払ってでも守る価値があるものであり、生命や健康に直結する話でもあります。

一方で、天秤に何も乗せず、感情だけで買うことを決めてしまっている人も少なくありません。欲しいから前借りしてでも買うというのは、お小遣いが足りないから前借りさせてほしいとねだる子どもの発想と本質的には変わらないともいえます。理性的に考えて明らかに得だと納得できるのであれば問題はありませんが、そうでない場合、それは単なる感情によるものだと自覚しておく必要があります。とはいえ、ローンを組まずに自分で貯めてから買うのであれば、誰かに口出しされる筋合いはありません。しかし借りたものは返さなければならない以上、借金をすれば周囲から意見されることもあり得ます。

買いたいものが人生において本当に必要だと思うのであれば、無理にローンを組む必要はなく、貯めてから買えばよいだけの話です。子どもがお小遣いをもらうために手伝いをするように、大人にとっては稼ぐという行為が同じ役割を果たします。ローンを使うということは、将来稼ぐお金で先に支払うということでもあります。

ここで見落としてはいけないのは、ローンを組まなければ発生しなかったはずの利息の分だけ、他にも使えたはずのお金が失われているという点です。時間をかけて我慢し、欲求を抑える力を養っておけば、必要な時までにきちんと貯めることができます。自分は欲深い生き物だと自覚し、将来また何か欲しくなることを見越して先に貯めておくという考え方も、理性的な選択の一つです。

貯蓄や計画を怠り、欲しいものをすべてローンで買い続けてしまうと、生活水準がどんどん膨らみ、将来的にお金が足りなくなってしまいます。その結果、老後の生活が不安定になり、実際に苦しい状況を招いてしまうこともありますが、それは事前に備えておけば防げたことでもあります。貯めてから買うのであれば、それは自分のお金で払っているわけですから、たとえ感情的な理由であっても、幸せや彩り、豊かさを感じるための支出として、他人にとやかく言われるものではありません。

ただし借金をしてしまうと、返済義務がある以上、他人に口を出される立場になってしまいます。本当に大切なものであるなら、自分の力で貯めて、増やして、支払うという選択肢も十分にあり得ます。

人は自分の得にならないことには行動しない生き物です。経済的な利益だけでなく、感情的な満足も含めた「便益」がプラスにならない限り、人は動きません。ローンを組めば利息を払う分、経済的には損をするはずなのに、それでも行動するのは感情が満たされるからです。その感情が一時的なものなのか、長く続くものなのかを見極めることも大切です。見栄や他人との比較ではなく、自分の人生にとって本当に大切なものかどうかを基準にすれば、ローンとの付き合い方も自然と上手になっていくはずです。

お金に余裕のある人ほど、賢く借りるという選択をしています。たとえば投資で年利七パーセントほどの運用ができている資金があるとき、それを取り崩して現金で買うよりも、金利が最大でも三パーセント程度に収まる借入を利用した方が合理的な場合があります。

運用益が借入コストを上回るのであれば、これは二つ目のパターンに当てはまります。事業を行っている場合も、手元の現金を使うよりローンやリースを活用した方がよいことがありますが、これも手元資金を運用に回せる分だけ得になるという同じ考え方です。逆に、より高い金利で借りざるを得ない状況を避けるために借り換えるようなケースは、三つ目の支出が減るパターンに該当します。

まとめ(22:15)

基本的な考え方は三つのパターンに集約されます。一つ目は生命や健康に現実の危機があり、それを回避する必要があるとき。二つ目と三つ目は、借金と利子を合わせた金額を上回る収入が得られる、あるいはそれを上回る支出が減るときで、こうした場合には経済的合理性があるためローンを組んでもよいといえます。それ以外の理由は、基本的にはすべて感情によるものです。見栄や体裁のためにお金を使うのは、他人と比較するための支出にすぎず、そうしたものにとらわれず自分自身の人生を生きることが大切です。

ローンを組む必要がないというのは、多くのものは事前に用意しておけるからです。そうした支出を計画的にプランニングすることこそがファイナンシャルプランニングであり、計画を立てれば立てるほど効率が良くなり、投資に回せる資金が増えたり、より有利な条件で貯められたりします。結果として、より豊かな人生につながっていきます。人生において、金利を払う側に回るのか、それとも金利を受け取る側に回るのか、この二つしかありません。どちらの立場を選ぶかによって、これからの生き方も変わってくるのではないでしょうか。

またこちらの動画「【金利〇%が分かれ道】住宅ローンを繰り上げ返済すべきか、投資すべきか?」では、繰り上げ返済と投資を比較する判断基準を紹介していますのでぜひご覧ください。

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