NISAに「毎月分配型」誕生!?何が起きているのか解説します 

「NISAに毎月分配型が入った?」という記事が話題になりました。実際に入ったのかと問われると、正確には「入った」というよりも「生まれてしまった」という表現の方が近いといえるでしょう。

HDVが四半期分配から毎月分配へ(0:16)

今回話題になっているのは、ティッカーでよく知られているHDV、正式にはiシェアーズ・コア米国高配当株式ETFです。このETFはNISA口座でも購入できる商品で、これまでは四半期ごとに分配を行う仕組みでした。高配当株式に投資し、配当収入に重きを置いたETFとして四半期ごとに分配金を出していたところ、これを毎月分配に変更するという発表があったことが、今回の一連の出来事の発端になっています。

HDVはこれまでNISAの成長投資枠で購入できる商品でしたが、今後は新規の買い付けができなくなる対象に該当することになりました。

今後はどうなるのか?(1:24)

運用会社であるブラックロックが2026年6月、分配方式を四半期分配から毎月分配へと変更すると発表したことが直接のきっかけです

この変更により、HDVはNISA口座の対象商品としての条件を満たさなくなり、各証券会社からも新規買い付けを対象外とする発表が相次ぎました。すでに受け付けていた注文については執行されるものの、それ以降の新規買い付けはできなくなるという扱いです。

一方で、すでに保有しているHDVについてはそのまま保有を続けることができ、非課税での運用も引き続き可能とされています。もともとNISA制度では毎月分配型の投資信託やETFは対象として採用されない仕組みになっていますが、HDVは四半期分配だった時点でNISAの対象商品に組み入れられていたため、後から分配方法が毎月に変更されたことで、結果的に毎月分配型の商品がNISAの中に生まれてしまったという経緯になります。

何が問題なのか?(2:40)

なぜこれが問題になるのかを考える上では、NISA制度そのものの趣旨を確認する必要があります。

金融庁が公表している制度概要では、成長投資枠の対象商品として上場株式投資信託等が挙げられているものの、毎月分配型の投資信託およびデリバティブ取引を用いた一定の投資信託は除外されると明記されています。つみたて投資枠についても、長期の積立分散投資に適した一定の投資信託が対象とされており、その要件の一つとして毎月分配型ではないことが挙げられています。つまり成長投資枠、つみたて投資枠のいずれにおいても、毎月分配型は制度上想定されていない商品ということになります

これを踏まえて証券会社各社は、制度の趣旨に合致しない、あるいは制度上適正な運用を確保するという理由から、今回の新規買い付け中止という対応を発表しました。もっとも、分配のタイミングが四半期から毎月に変わっただけで、商品としての中身自体はほとんど変わっていません。

HDVとは(4:29)

HDVについてあまり詳しくないという人も少なくないかもしれませんが、個別株式を選定する手間をかけずに高配当株式へ投資したい人に向けた、以前から人気のあるETFです。同じような位置づけのETFとしては、SPYDやVYM、QYLDといったティッカーも知られており、配当や分配金による収入を重視する投資家に支持されてきました。

もっとも、毎月分配型の投資信託自体は個人投資家にとって必ずしも必要なものではないと考えています。商品自体で分配タイミングを選ぶ必要はなく、SBI証券や楽天証券などが提供している定期売却サービスを利用すれば、保有している資産を毎月売却して同じような効果を得ることができるためです。わざわざ毎月分配のファンドを用意しなくても、投資家自身が売却のタイミングを選べば済む話です。

また、分配を望まず再投資を続けたいという投資家にとっては、分配金が出ることでNISA枠を再投資のために消費してしまうという問題も生じます

HDVは誰向けの商品か(8:22)

HDVという商品自体についても、運用会社はブラックロック(iシェアーズ)で、米国の高配当株式指数に連動する運用成果を目指しており、経費率は0.08%と非常に低水準です

直近12か月の分配金利回りは2.91%、設定来のトータルリターンは10.54%という実績があり、3年の標準偏差で見たリスクも11.39とS&P500などと比べて低めに抑えられています。分配方法が四半期から毎月に変わったからといって、投資対象そのものが変わるわけではないため、経費率が大きく上がることも考えにくいです。

安定した配当収入を重視する人や、資産形成をすでに終えて取り崩しの段階に入っている人にとっては魅力的な商品である一方、これから資産を積み上げていきたい人にとっては、あえて選ぶ必要のない商品だといえます。

マネーセンスとしての違和感(11:46)

NISAで買えるかどうか、あるいは非課税枠に収まるかどうかだけを基準に投資の可否を判断している人が意外と多いという点に違和感があります。

投資をするかしないかで言えば、積極的に投資はしてほしいです。投資を行う口座については特定口座でも構わないし、NISAでなくiDeCoでもよく、それぞれの人のファイナンシャルプランやニーズに合わせて選べばよいでしょうNISAで買えないからという理由だけで投資自体をやめてしまう人が一定数いることについては、そもそも投資商品を選ぶ基準が非課税になるかならないかに偏ってしまっているのではないでしょうか。

非課税口座で運用できないからといって投資をしない方がよいという理由にはならず、逆に非課税だからという理由だけで投資をした方がよいということにもなりません。マネーセンスカレッジが活動を始めた20数年前には、そもそも非課税で運用できる口座制度自体が存在しておらず、その後確定拠出年金制度が導入され、続いてNISAが登場したことで、個人投資家が非課税で運用できる環境が徐々に整ってきました。

金融商品は制度から選ばない(14:00)

投資商品や口座の種類は、本来もっと別の基準で考えるべきものであり、その基準とは一人ひとりにとって大切なファイナンシャルプランです。

人は生まれてすぐにお金を持っているわけではなく、むしろ社会的にも借金からスタートすることが問題視される状況の中で、働いて得た給料の一部を積み立て投資に回しながら資産形成を行っていきます。

資産形成を行う理由は、老後の生活資金や子どもの教育費など、将来のどこかで使うタイミングがあるからであり、その目的があるからこそインフレへの備えや利回りを求めて投資という選択肢が出てくることになります

一攫千金を狙う人もいれば短期売買を繰り返す人もいますが、いずれにしても目的達成のための投資戦略があってこそ商品選びが決まるという順序が本来の姿です。

資産形成期にある人にとっては、毎月分配型はもちろん、四半期分配や個別株式の配当であっても基本的には必要ないものであり、それよりも分散投資やアセットアロケーション運用を取り入れることで、リスクを抑えながら安定的な運用を目指す方が合理的です。

金融庁がNISA制度において毎月分配型投資信託を対象から外し、つみたて投資枠を特定のインデックスなどに絞っているのも、資産分散・時間分散・長期投資という三つの原則を投資家に守ってほしいという想いがあるからです。

一方で証券会社などの金融機関にとっては、株式などの売買手数料が収益源になっている事情もあり、ある程度自由に売買できる商品ラインナップを確保したいという思惑も働いています。いっそのこと、元になった英国のISA制度のように、年間投資枠の上限だけを決めて、あとは自由に投資できる仕組みにしておけばよかったのではないかとも思います。

今のような複雑な制度になっているのは、これまで金融商品を販売する側が消費者を惑わすような商品を提供してきた歴史があり、それに乗せられてしまう国民も少なくなかったため、双方に落ち度があったことを踏まえて、国民の資産を守る目的で制度設計が行われてきました。

まとめ(23:30)

今回の一件は、他のメディアで指摘されているような制度の抜け穴を狙ったものというよりは、ブラックロックが日本のNISA制度を意識して毎月分配型を作ったわけではないでしょう。

今回のようにNISAの対象から外れて新規買い付けができなくなるケースが、今後他の人気ETFでも起こり得ます。分配方針を四半期から毎月に切り替える動きが他の銘柄にも広がれば、同じように買えなくなる商品が増える可能性があるため、買えるうちに買っておこうと焦って購入する人が出てくることも考えられます。

しかし、それは本来長期投資であるはずの資産形成が、駆け込み購入という形で歪んだリスクの取り方になってしまうことを意味しており、もう少し落ち着いて考えてほしいです。

またこちらの動画「【新NISAで失敗したくない…】高配当株投資を選ぶと損する理由とは?」では、高配当株のリスクと賢い取り入れ方を解説していますのでぜひご覧ください。

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