「利上げしないリスク」とは?日銀批判の裏に隠された、日本の本当の危機 

日銀が利上げをしないことに対して批判が集まっています。

なぜ利上げをしないことが批判の対象になるのか、その背景や利上げをした場合の影響、そして批判の内容について解説します。今回はどちらかというと初心者向けの内容となっています。

利上げの見送りと日銀の役割(1:12)

4月28日、日銀は利上げを見送りました。現状の政策金利は0.75%で据え置かれています。一方で、政策委員の中には3名が据え置きに反対し、政策金利を上げるべきだと表明しています。

日銀の大きな目標は物価の安定と金融システムの安定の2つです。現在はインフレ率を2%に維持するというインフレターゲットを設定しています。コロナ前はデフレを脱却することが目標でしたが、今はインフレを抑えることが主な課題となっています。物価が低ければ引き上げ、高ければ抑えるというアクセルとブレーキの両方を担うのが日銀の役割です。

日銀が取れる政策の中で最も重要なのが政策金利の決定です。ただし、デフレから脱却したとはいえ日が浅いため、金利政策だけで物価を完全にコントロールできる段階にはまだ至っていません。また、政府が積極財政にシフトしている中で金利を上げると抑制効果が生まれてしまうため、政府との足並みを揃えることも重要な要素となっています。現状のインフレ率が2%を超えていることを踏まえると、金利を上げることも一つの選択肢ですが、説明が不十分であるとして批判を受けているのは当然とも言えます。

インフレ抑制と利上げの関係(5:28)

政策金利が上がると、信用力のある金利が上がるため、それ以下の信用力の人々の金利も連動して上昇します。国民が住宅ローンなどを組む際の金利も高くなり、返済負担が増えることで「買えない」という判断につながり、需要が減少します。需要が減れば価格が下がるため、インフレを抑制する効果が生まれます。企業の設備投資も抑制され、景気へのブレーキ効果が増すことになります。

さらに、金利が上がると円で資産を持ちたいという動きが強まり、日本への投資が増えることで円高に向かう可能性があります円高になれば輸入品を安く購入でき、エネルギーや原材料などの物価上昇を抑える効果も期待できます。

原油高騰に利上げの効果はある?(8:11)

現状では原油価格が経済に大きな影響を与えています。ただし、日本は原油を産出できないため、原油価格そのものをコントロールすることはできません。日本が取れる手段としては需要を下げるか、円高にして輸入価格を抑えるかという方法になります。

原油はドル建てで取引されているため、円安の時は1ドルあたりの原油調達コストが高くなります例えば1ドル150円の時と130円の時では、円建ての調達コストに大きな差が生じます。円高になれば輸入価格が下がり、ガソリン代や電気代などの物価上昇を抑える効果が期待できます。

ただし、利上げは薬にも毒にもなります。消費や投資が落ち込んで需要が下がり、景気が悪化する恐れがあります。景気が悪化しているにもかかわらず物価が高止まりする「スタグフレーション」という状態は、政府も中央銀行も避けたい事態です。インフレは放置すると家計をじわじわと蝕むため、適切なバランスを取ることが非常に重要です。

日銀が批判を受けている理由(12:39)

名目賃金は上昇していますが、インフレに追いついていないため実質賃金が下がり続けています。これが国民生活を苦しくしている主な原因です。日銀が利上げをしないという選択は必ずしも間違いではありませんが、政府が実質賃金を引き上げる取り組みをしない限り、日銀が動くしかないという状況になります。

国民が求めているのは手取りの増加であり、金利の引き上げそのものではありません金利を上げることで実質賃金が上がり生活が豊かになるならば批判は起きませんが、現実はそう単純ではありません。問題の本質は日銀だけにあるのではなく、政府の財政政策との組み合わせにあります。

理想的には、手取りを増やしつつ金融政策として金利を上げてインフレを抑制し、バランスを取ることが国民の望む形です。しかし、手取りを増やすと消費が活発になりインフレに向かいやすくなるため、財政政策と金融政策の両輪での対応が必要になります。日銀が政府に対して独立性を確保しつつ、「利上げせざるを得ない」という姿勢を明確に示すことも一つの選択肢ではないでしょうか。

また「ビハインド・ザ・カーブ」という言葉があるように、金融政策の利上げはインフレより遅れる傾向があります。インフレが起きてから対応するのが一般的ですが、対応が遅すぎると後で急激な引き締めが必要になります。現状のインフレ率が3.1%と日銀の目標である2%を大きく上回っているにもかかわらず利上げが進んでいないことは、矛盾として批判を受けています。

秋くらいには政策金利1%へ利上げされると予想(19:41)

市場では1年から10年債の長期金利が上昇してきています。これは将来の政策金利引き上げを先取りした動きと見られています。また政府が補正予算を組めば国債発行が増えるとの見方から、国債の信用が徐々に低下し金利が上昇するという面もあります。

市場の予測としては今年中に政策金利が1%程度まで引き上げられるだろうとの見方が多く、日銀の植田総裁も1%程度が正常な金利水準との認識を示しています。長期金利の上昇は住宅ローンや自動車ローンなどにも影響し、購入意欲の低下を通じて経済全体に波及していきます。こうした動きは給与にも間接的に影響するため、政策金利の動向を定期的に把握しておくことは重要です。

まとめ(22:35)

政策金利がいつどの程度上がるかを正確に予測することは非常に難しく、日銀の政策決定会合で決まるものであるため、個人が影響を与えることはできません。インフレが続く中で国民としては自分自身でできることを考えていく必要があります。調子のいい会社への転職で賃金を上げる、家計を見直して支出を削減するといった個人レベルの対策も重要です。どんな経済環境になっても困らないよう、家計管理や資産設計、投資戦略といった備えを今から着実に進めておくことが大切な考え方といえます。

またこちらの動画「日銀が“ETFを売る”と決めた日。「終わりの始まり?」」では、日銀のETF売却の狙いと市場への影響、個人投資家が取るべき視点を解説していますのでぜひご覧ください。

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