持ち家VS賃貸の論争に「第3の選択肢」 

持ち家か賃貸かという終わりなき論争がありますが、実はそこには第3の選択肢が存在します。よく言われることとして、独身のうちは買えませんという話がありますが、言い方を変えると、お子さんがいる家庭ではなく、お子さんが巣立って家族構成が変わらなくなった時点で購入を検討してはどうかというお話です。

持ち家か賃貸かの論争は、ほとんどの場合お金の損得だけで語られがちです。しかし、お金が増えたとしても自分の理想の生活が実現できていなければ意味がありません。家は家族にとって絶対に必要なものですが、夫婦2人だけになった時に3LDKや4LDKは必要ないでしょう。そのあたりにズレが生じているのではないかと感じています。

子どもの巣立ち後の部屋について(1:49)

出典:積水ハウス株式会社 住生活研究所

積水ハウス株式会社 住生活研究所が2023年に実施した「子供の巣立ち後の暮らしに関する調査」があります。サンプル数554という、そこそこの精度を持つ調査です。子供の部屋の状態については、そのままの状態が53.8%、片付けた状態が44.7%とほぼ半々でした

出典:積水ハウス株式会社 住生活研究所

その部屋の活用状況を見ると、別の用途として活用していない部屋が43.9%、別の用途として活用している部屋が54.6%という結果でした。活用している場合のトップは「物置き・倉庫」で27.3%と最多です。次いで夫婦別寝室、書斎・仕事スペース、客間、趣味部屋と続きます。

子育て期間中は夫婦で同じ部屋を使っていても、子供が独立すると、それまで専業主婦だった方には専用の部屋がなかったり、夫には書斎がなかったりといった状況が生まれます。子供部屋が空いたことで、その解消に使われているのでしょう。実態としては、物置きとして長期間放置された後、「どうせ使うなら」という流れで別の用途に転用されるケースが多いのではないかと思います

持家は子どもが巣立った後に買う(6:35)

家を購入するケースで最も多いのは、子育て中の家庭で子供が小学校に入学する前後の時期です。子供が巣立つまでの期間は、大学卒業を基準にすると約22年かかります。仮に6歳までに家を購入するとすると、残りの期間は約15年です。子供が2〜3人いても、大体20年程度となります。30歳で結婚して子供が生まれ、35歳で購入したとすると、55歳の時点では子供が巣立っている計算になります。その後、広い家は必要なくなります。

実際に、子供部屋が2つと両親の寝室が1つという2階建ての家でも、子供がいなくなると2階は全く使わなくなり、1階だけで生活が完結してしまうという話はよく聞きます。使わない部屋のために固定資産税や住宅ローンを払い続けるのは、コスパとしては決して良くないでしょう。

子供が2人いれば3LDK、1人でも2LDKが必要だという考えは理解できますが、子供が巣立った後に夫婦2人で3LDKを持て余すケースは少なくないはずです。そう考えると、たった15〜20年のために35年ローン、場合によっては50年ローンを組んで、お金が最も必要な時期を固定してしまうことが果たして合理的かどうか、改めて考える必要があります

マイホームが欲しいと言い出すのは奥さんのケースが多く、感情的な判断になりがちです。大切なのは、感情だけでなくロジカルに「なぜ家が欲しいのか」を掘り下げることです。

あるご家庭では、奥さんがホームステイを受け入れたいという理由で家を欲しがっていました。よく聞いてみると、子供を海外に送り出すためにはホームステイを受け入れる必要があるとのことでした。その場合、持ち家でなくても広い賃貸を借りれば解決できます。実際に3LDKを賃貸し、ホームステイの受け入れも実現できたというケースがあります。目的が明確になれば、持ち家でなくても達成できることは多いのです。

ライフプランで考える(13:26)

30歳で結婚して35歳の時に家を買うか賃貸に住むかを考える場面を想定してみましょう。資産設計の観点から、手取り収入の10%を老後資産として積み立て、さらに15%を現役世代の貯蓄・投資に回すことを推奨しています。世帯収入が月40万円として、その15%にあたる6万円を5%の複利で20年間運用すると、元本は1,440万円、運用結果は約2,440万円になります

これは55歳時点、つまり子供が巣立つ頃の数字です。これだけの資産があれば、その時点で初めて家を購入するという選択肢も十分現実的です。55歳でも住宅ローンは組めます。現行の住宅ローンは80歳までに完済が条件なので、最長25年のローンを組むことができます。フラット20などを活用すれば、金利も抑えられます。

老後資金の中には、もともと賃貸費用として想定していた分も含まれています。55歳以降に家を購入すれば、それまで賃貸として払っていたコストが住宅費に切り替わるだけです。さらに住宅ローン控除を活用すれば、最初の5年間は実質的な金利負担がかなり低くなります。運用利回りが7%程度あれば、ローン金利2.4%との差が生まれるため、繰り上げ返済よりも運用を続ける方が最終的に資産が増える可能性があります。

いろいろな選択肢を持つ(19:25)

55歳や65歳の時点で選択肢が広がることに注目してほしいと思います。例えば、その時に親が亡くなって実家を相続できるケースもあります。30歳で3LDKを購入して90歳まで生きた場合、亡くなった時点で子供は60歳、孫は30歳になっている計算です。60歳の子供にとって3LDKは過剰でも、30歳の孫が子育てを始める段階ではちょうど良いサイズです。一方、夫婦の老後に合った1LDK程度のコンパクトな家なら、子供が60歳で老後を迎える際にも住みやすい選択肢になり得ます。

仮に夫婦どちらかが施設に入ることになって住む人がいなくなった時、「あなたたちが住みませんか」と子供を近くに呼び寄せることも可能です。選択肢を持つということは、それだけ柔軟な対応ができるということです。

ただし課題もあります。住宅は購入後に価値が下がりやすく、一般的に良い物件でも20〜25年で売却時に取得費用とトントンになる程度です。売ったお金で新たに買い替えようとすると、手元に残る資金が少なくなります。だからこそ、「最後に住む家」として購入し、そこに長く住み続けるのが最もコスパが良いという考え方があります。

すでに家を購入されている方を否定したいわけではありません。購入を選択した場合はその家をしっかり有効活用することが大切です。夫婦2人になった時に大きすぎる家を持っているなら、売却して小さな家を買い直すというスケールダウンも1つの方法です。

まとめ(26:10)

持ち家か賃貸かという二択ではなく、子育て期間は賃貸でコスパよく過ごし、子供が巣立った後に自分たちの生活に合ったサイズの家を購入するという第3の選択肢があります。これは社会的にも理にかなっており、使われない空き部屋を減らし、既存の住宅を地域で使い回す観点からも低コストで環境にも優しい選択と言えます。

どの選択が正解かはその人のライフプランや価値観によって異なりますが、大切なのは自分専用のファイナンシャルプランを持ち、理想の人生を描いた上で最もコスパよく実現できる選択をすることです。特にマイホームは長期間にわたる大きな決断なので、じっくりと検討することをお勧めします。

またこちらの動画「住宅ローン控除2028年から新築は対象外!?省エネ性能の基準が変わります。」では、省エネ基準変更による控除対象外の条件と注意点を解説していますのでぜひご覧ください。

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