元本割れしない金融商品「個人向け国債」の上手な使い方5選

個人向け国債は、とても地味な金融商品として知られています。多くの方は「投資信託を買った方がいいのではないか」と考えがちですが、実は個人向け国債にも上手な使い方があります。

今回は、この個人向け国債をテーマに、その特徴と活用方法について詳しく解説していきます。

「個人向け国債」とは (0:45)

個人向け国債は、個人にしか購入できない国債で、3つの種類があります。「変動10年」「固定5年」「固定3年」の3タイプです。半年ごとに利子がもらえ、満期時には元本が全額返還されます。これは国が元本を保証している金融商品です。

毎日購入できるわけではなく募集期間が定められていますが、毎月1回は必ず募集があり、年間12回購入することができます。購入できる場所は金融機関であれば大体どこでも可能で、銀行、信用金庫、郵便局、証券会社などで取り扱っています。

銀行で購入する場合、公社債専用の口座を開設する必要がありますが手続きはそれほど難しくありません。現在(令和7年8月募集分)の金利は、変動10年が0.97%、固定5年が0.97%、固定3年が0.79%となっています。

金利の決定方法は種類によって異なります。変動10年は10年国債の66%、固定5年と固定3年は5年債または3年債の金利から0.05%を差し引いた金利設定になっています。どの種類でも0.05%の最低金利が保証されています。

おすすめは「変動10年」 (2:30)

現在購入するとすれば、変動10年がおすすめです。日銀が政策金利を上げていく姿勢を示しており、景気が上向きの状況では長期金利が上昇していく傾向があります。短期金利も政策金利に連動して上がりますが、長期金利の方がより早いペースで上昇します。

この変動10年は、固定金利である10年国債を参照して変動金利で提供するという、反則級の商品設計になっています。このような商品は民間では作ることができず、国だからこそできる必殺技と言えるでしょう。

興味深いことに、銀行でもこの個人向け国債を扱っているにも関わらず、お客様に勧められることはほとんどありません。その理由は、銀行にとって儲からないからです。銀行が売りたい定期預金よりも、国が保証している個人向け国債の方が信用力が高く、金利も高いのです。さらに変動金利なので、今後金利が上昇していく局面では定期預金よりも有利になります。

銀行は預金を集めたいため、預金が国債に流れることを好みません。そのため、銀行が売りたい商品は積極的に紹介されますが、銀行が売りたくない商品は紹介されないのが実情です。

リスクは低い (5:02)

個人向け国債は立派な金融商品であり投資商品なので、リスクは存在しますが、限りなくリスクは低い商品です。日本円で運用する場合、これほど安全性の高い商品はありません。国が元本保証をしているからです。

主なメリットとしては、まず元本割れの心配がないことが挙げられます。国が発行して保証しているため、1年経過すれば元本保証となります。1年間は解約できませんが、1年以降であれば元本保証で解約が可能です。

また、1万円から購入できるのも大きなメリットです。現在では株式投資でも1万円から購入できるプチ株やミニ株がありますが、1万円で元本保証というのは非常に買いやすい商品と言えます。

さらに、0.05%の最低金利保証もついています。これは10年国債がマイナス金利だった時代に設定された仕組みで、現在は金利が上昇してきているため過去のデフレ時代の名残りとも言えますが、最低限の金利保証があるのは安心材料です。

①教育資金の準備 (6:26)

個人向け国債の上手な使い方として、まず教育資金の準備が挙げられます。現在約1%程度の金利がつき、1万円単位で購入できるため、積立投資のような形で活用することも可能です。

教育資金を保険で準備するよりも、はるかに効率的です。保険の保障機能が必要であれば、別途3000万円の定期保険を月2000円程度で加入できるため、保障と貯蓄は分けて考える方が合理的です。

現在、教育資金として1000万円級の資金が必要になる時代ですが、教育資金を運用に回すことに抵抗を感じる方も多くいます。大学入学時期が決まっているため、その時点で元本割れしていたら困るという不安や、お子さんのことなので運用に対してギャンブルのような意識を持つ方もいます。

夫婦間でも意見が分かれることがあります。そのような場合は、半分を投資、半分を安全資産という配分も考えられます。従来は学資保険が選ばれることが多かったのですが、現在の学資保険は利回りが低く魅力に欠けるため、個人向け国債を選択する方が良いでしょう。

②定年退職後の生活費 (8:25)

定年退職後の生活費を取り崩していく段階で、数年後に使う予定のお金を活用する方法です。運用に回すには期間が短すぎるものの、できるだけ高い金利を得たい場合に適しています

銀行のキャンペーンに合わせて1年定期で1.6%や2%の金利を得ることもできますが、これらは主にボーナス時期に実施されるため、定年退職の時期(通常3月)とはタイミングが合わないことが多いのです。

個人向け国債は毎月購入できるため、タイミングを選びません。投資での取り崩しは3年以内の資金で行うことが推奨されますが、3年以内に使う予定のない資金については、解約してそのまま個人向け国債で運用を続けることで、約1%の金利を確保できます。

③将来の旅行の積立 (9:20)

将来の旅行資金の積立にも個人向け国債は適しています。1万円から購入できるのが大きなメリットで、家族全員での海外旅行など大きな旅行には相当な資金が必要になります

5年後の旅行を計画している場合、投資では5年間で増えているか減っているかが分からず、子供たちも楽しみにしているという状況では、確実に5年間積立を行いたいと考えるのは自然です。このような目的がある場合、個人向け国債は適切な選択肢となります。

④親の介護や医療費の備え (10:10)

親の介護や医療費など、突発的な支出に備えたい場合の活用方法です。持病を抱えている場合など、ある程度のお金を手元に置いておきたいという需要があります。

これは生活防衛資金でも対応できますが、いつ使うか分からない資金を銀行預金に預けておくよりも、より高い金利を得られる方が有利です。現在の銀行預金金利が0.2%から0.4%程度なのに対し、個人向け国債なら1%程度の金利が期待できます

例えば100万円であれば年間1万円、500万円であれば年間5万円の金利差が生まれます。これが2年、3年、4年と続くことを考えると、口座開設などの手間をかけても十分にペイできる金額です。

1年経過すれば元本保証で解約できるため、突発的な支出にも対応できます。それまでの期間は生活防衛資金で対応すればよく、運用には回せないが置いておきたい資金で、より高い金利を得たい場合に適した使い方です。

⑤インフレ対策 (11:24)

預金だけではインフレによって実質的に目減りしてしまうため、実質金利がマイナスになってしまうことがあります。そのような場合のインフレ対策として、国債での運用も有効です。

過去のバブル期から現在までの10年国債を見ると、10年国債の方がインフレ率よりも高い金利を提供していた期間が長く、ほとんどの期間でインフレに負けていませんでした。インフレが始まってから金利がインフレ率を上回るまでには、通常3年から4年かかります。

ただし、変動10年は10年国債の66%の金利設定のため、完全にインフレに対応できるかは分かりませんが、銀行預金や定期預金よりは有利と考えられます。資産運用は資産全体で考えるべきもので、ポートフォリオ全体の中の一つとして個人向け国債を活用することが重要です。

⑥ペイオフ対策 (13:13)

ペイオフ対策としての活用も考えられます。預金保険機構による預金保険では、1000万円までの元本と利息が保証されますが、それを超える金額については銀行が破綻した場合に保証されません。

通常の対策としては、銀行を複数に分けて1000万円以下になるようにする方法がありますが、個人向け国債は元本保証のため、金額に制限がありません。1億円でも元本保証されます。

MRF(マネー・リザーブ・ファンド)という選択肢もありますが、現在MRFが使える証券会社は限られています。MRFはすぐに引き出せますが、個人向け国債は1年間の拘束期間があります。ただし、MRFが約0.4%の金利に対し、個人向け国債は約1%の金利が期待でき、今後金利が上昇していく局面では、この差がさらに広がる可能性があります。

途中換金は原則1年間不可 (14:42)

個人向け国債の注意点として、途中換金は原則として1年間不可能です。発行日から1年間は解約できず、1年以降であればいつでも換金可能になります。しかも1万円から換金できるため、10万円分購入していても1万円から解約できます。

1年以内で解約できる場合は非常に限られており、本人が死亡した場合や災害救助法の適用がある場合など、厳しい条件が設定されています。

途中解約する場合は、直近2回分の利子相当額を返還する必要があります。そのため、1年ちょうどで解約すると利子が0円になってしまいます。1年後に使うことが分かっている場合は、個人向け国債ではなく預金の方が適しています。現在の金利差を考慮すると、2年以上先の資金と考えた方が良いでしょう。

NISA口座では購入できない (15:57)

残念ながら、個人向け国債はNISA口座では購入できません

しかし、NISA制度の検討会でも、国債を扱えても良いのではないかという意見が強く出ていました。昔はマル優という制度がありましたが、現在はほとんど税制優遇がないため、NISA口座で扱われても良いのではないかと思われます。

まとめ (17:06)

個人向け国債について、聞いたことはあるけれどよく知らなかったという方も多いでしょう。インターネットでも個人向け国債の専用ページがあり、詳細な情報が掲載されており、国としては販売したいという姿勢が見えます。

個人向け国債は、完全にリスクを避けたい資金の運用先として、また資産全体のポートフォリオの一部として、非常に有効な金融商品と言えるでしょう。

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