50代・60代の生活防衛資金は〇〇円必要!現役世代と何が違う?

50代、60代を迎えると、多くの方が収入の変化に直面します。役職定年による給与減少、延長雇用での収入ダウン、そしてリタイアによる給与の停止など、段階的に収入が下がっていく時期でもあります。

このようなライフステージの変化において、生活防衛資金はどの程度必要なのでしょうか。給料が下がったからといって生活防衛資金を増やす必要があるのか、それとも別の考え方をすべきなのか。今回はこの疑問について詳しく解説していきます。

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生活防衛資金とは、アクシデントや急な出費に対応するための当座のお金のことです。家計でしっかりと予算を組んでいても、予算には収まらない支出は必ず発生するものです。そのような予期せぬ支出に備えて、いつでも引き出せるお金として預金に準備しておくのが生活防衛資金の役割です。

50〜60代は収入が変化しやすい時期です。お子さんも成長し、家族構成も変わってくるかもしれません。また、リタイア後には年金生活や資産の取り崩し生活に入る方も多いでしょう。このような変化の中で、生活防衛資金をどう考えていけばよいのでしょうか。

生活防衛資金は生活費3〜6カ月分(2:01)

基本的な考え方として、生活防衛資金は年齢に関係なく用意したいものです。金額の目安は、生活費の大体3ヶ月分から6ヶ月分程度です。迷った場合は1人100万円、夫婦であれば200万円と考えておけば特に問題ありません。

つまり、年齢に関係なく基準は存在するということです。例えば、家族4人で子供2人の場合、400万円では少し多すぎるのではないかという疑問もあるでしょう。家計の人数は平方根で考えるという考え方があり、1人100万円であるならば、4人世帯でも200万円で大体済むと考えています。√4は2ですので、2倍程度になるということです。

2人であれば1.4倍、3人であれば1.7倍程度になりますが、分かりやすくするためにお1人様100万円という目安を使っています。多めに設定しているので、実際には夫婦で150万円あれば十分でしょう。200万円あればほぼどんなことでも対応できます。

年齢が高くなっていくと、病気や怪我、また急な支出として社会的な責任に関わる出費も増える可能性があります。例えば、通常の結婚式ならご祝儀は3万円で済むかもしれませんが、自身のお子さんの結婚式となると10~30万円という金額になることもあります。このような出費を考慮すると、多めに用意しておくことも安心につながるでしょう。

生活費は夫婦で26.5万円(3:44)

クォーターグリッドシステム(QGS)の中にある生活レベル表を参考にすると、リタイアに入るぐらいの平均的な家庭では、生活費は大体26.5万円程度となっています。27万円の6ヶ月分となると大体150万円、3ヶ月分だと75万円程度になります。

この生活防衛資金は生活費から算出しているものなので、基本的には変わりません。生活費が変わればそれに応じて変更しても構いませんが、2人で150万円で十分でしょう。

この金額は、50代だろうが60代だろうが役職定年しようが給料が下がろうがリタイアに入ろうが変わらず持っておくべきものです。

リタイアメントに入った時本当に150万円で大丈夫?(4:32)

しかし、リタイア後に本当に150万円で大丈夫なのかという疑問を持たれる方も多いでしょう。リタイアするとセーフティネットが外れる場合があります。現役世代で働いている時には社会保険に加入しており、仕事に就けなくなった時には失業給付金や傷病手当金などの保障があります。しかし、リタイア後はこれらの保障が外れてしまいます。

また労働資産がゼロになる、つまり収入がなくなるので、それに対する手当ては必要です。具体的には、介護費用と医療費についてはある程度手当てしておいた方がよいでしょうその金額は、1人あたり500万円、合計1,000万円程度を目安としています。

夫婦2人の場合、片方が介護を必要とする状況になっても、介護の程度にもよりますがもう一方のパートナーが介護を見ることができる場合が多いでしょう。介護する人がいる状況では、すぐにホームや医療機関という状況ではないと考えられます。その意味では1人1,000万円と言いましたが、2人で1,000万円という考え方でも悪くはないと思います。ここは資金力の問題もあります。用意できる人と用意できない人がいますし、用意できなかったとしても、その範囲内で対応すれば良いと考えています。

実際の経験談として、有料老人ホームに入る際の費用について調べた際、毎月30万円程度必要だと言われることもありました。相場も分からない中で、そのような高額な費用を支払うことは困難な場合も多いでしょう。適切な施設を見つけることができれば十分対応可能ですが、最終的には自宅での介護を選択することもあります。

この介護費用や医療費のバッファーとして必要な1,000万円程度のお金は、いつ使うか分からないお金であり、すぐに必要なお金でもありません。そのため、このお金は運用に回していても問題ありません。これは生活防衛資金とは別の性格を持つお金です。使うまでの期間が無限大ということは投資に向いているということです。

もちろん、投資はもういいのなら生活防衛資金と同じように保存しておくという考え方もあります。いつでも引き出せるため、そちらの方が安全です。ただし、インフレには勝てなくなってしまうという側面もあります。

リタイアに入ったからあと少しだろうと考える方も多いのですが、実際には皆さん元気で長生きされています。そのため、このお金を運用に回していても良いのではないかと考えています。

いろいろ準備しているけど本当に大丈夫?(8:39)

それでも「本当に大丈夫?」と心配される方もいらっしゃるでしょう。リタイア後の方や年齢が高くなった方が、それだけリスク資産に投資していて良いのかという疑問です。

若い頃から資産運用をされていて、老後資産としてある程度の資産を運用されている方の場合、運用されているもの全てが投資に回っていて、さらに1,000万円も運用している、生活防衛資金は手元にあるという状況で、本当にそれで大丈夫なのかという不安を感じる方もいるでしょう。

ここで重要なのは、投資に回していても使う3年前までには現金化しておくということです。例えば、65歳になって年金生活に入り毎月5万円程度取り崩すとします。その5万円(年間60万円)は使う3年前の時点までに用意しておく必要があります。

そうすると、65歳時点ではなく62歳時点で取り崩しが始まり、65歳時点では3年分の取り崩し金額、つまり60万円×3年で180万円は手元にある状態になります。これは生活防衛資金ではなく生活費です。

例えば、年金を繰り下げ支給する場合、夫婦2人だと生活費として毎月27万円が必要になります。27万円×12ヶ月×3年は手元において安全を確保します。

資産全体を見てみると、まず生活防衛資金が夫婦2人のケースで大体150万円あります。繰り下げ支給をする場合、27万円を使い、それを3年間用意します。27×12×3で972万円、約1,000万円が手元にあることになります。

リタイアするまでに、サラリーマンの方であれば3,000万円から4,000万円程度あれば十分だと思います。4,000万円としたら、そのうちの1,000万円が投資されておらず、3,000万円が投資されているという状況です。2,000万円は取り崩し用のお金で、1,000万円はそのまま運用して自分自身の介護や配偶者の介護、医療費で使うという設計になります。

資産の中の3分の2は運用されて残りの3分の1は運用されていないという状況になります。年齢が高くなってリスクを取れないのは、使うまでの期間が短くなるからです。

投資する資金と投資しない資金の割合を決めて、投資する場合はその中身をいじるのではなく、投資する場合は全世界に合わせます。そして、資金は自分自身で投資しないお金として安全資産にします。全体として投資していない分が多く、安全な商品で持っているため、資産全体としては安全に運用されているということになります。

ターゲットイヤーなどで調整するといった投資の方法論で調整するのではなく、投資するかしないかで判断します。投資をする場合は皆同じで良いです。結局、現金で持っている部分で安全は保たれています。これがファイナンシャルプランから考える資産運用の正解だと考えています。

日本に住んでいる以上、一定の割合のリスクは取った方が良いでしょう。為替リスクなどを考慮したバランスによって合わせているわけですから、投資をするか投資しないかという選択でそのバランスを取るということがシンプルで良いのです。

まとめ(13:36)

生活防衛資金は、生活費の大体3ヶ月分から6ヶ月分程度で良いでしょう。1人に対して100万円、それに平方根をかけても良いでしょう。4人世帯でも200万円で十分です。

不安が大きければもちろん400万円用意しておいても問題ありませんし、もっと切りの良い数字にしても構いません。

老後に入ると現役世代のセーフティネットの一部が切れるため、介護費用や医療費が今後上がってくる可能性を考慮して、その費用として1人1,000万円もしくは夫婦で1,000万円用意するとよいでしょう。本当に余裕を持たせるなら夫婦2人で2,000万円あった方が良いですが、家庭によって用意できるできないがあります。ただ、用意できないからといって詰んでいるわけではありません。その中でできる範囲で対応すれば良いです、しかし一定額はどうしても必要です。

この金額に関して生活防衛資金のように考えがちですが、いつ使うか分からないお金なので期限としては無期限として考えて良いため、投資に回しておけるお金です。生活防衛資金はいつでも引き出せなければいけませんが、こちらは運用できます。運用しなくても良いし、しても良いです。

そして生活費があります。老後に対しての生活費がある中で、その生活費プラスアルファで家の修繕費などもあるかもしれませんが、そのようなものを全部ひっくるめて老後資金として持っておきます。それは使う時期の3年前に取り崩して現金化しておきます。現金化することによって使うお金ですから、安全に運用しなければいけません。

資産全体を見てみると、現役の人たちよりも投資する割合は減っていきますが、それは使うお金が多いからです。皆さんのファイナンシャルプランに合わせて現金化しておきます。資産をたくさん持っている人はそれだけ運用できるということになります。

ここまで準備できたら、あとはもう今を楽しめば良いと思います。現役だろうがリタイア後だろうが、人生を楽しんでいただければと思います。

またこちらの動画「資産形成の前に貯めるべき生活防衛資金とは?金額の目安や口座などを解説」では、生活防衛資金の考え方について基礎から解説していますのでぜひご覧ください。