全世界株は本当に割高なのか?今後のリターンについて解説

本記事ではマネーセンスカレッジの動画に寄せられた「全世界株はマグニフィセント・セブンの影響で割高なのでは?」という質問に対し全世界投資が依然として有効であるという結論を導き出すまでの詳しい解説を紹介します。

特にインデックス投資のリターン見通しやアセットアロケーションの考え方に関心のある方、初心者から中級者の投資家にとって学びの多い内容となっています。

キーポイント

マグニフィセント・セブンと割高論の背景 (00:00:00)

「マグニフィセント・セブンの影響で全世界株は割高であり今後のリターンは3〜4%に下がるのではないか?」という懸念が寄せられましたしかし結論から言えば全く問題ありません。

確かに2010年代以降の米国ハイテク株、いわゆるGAFAMなどのビッグテック企業が株価上昇をけん引してきた背景があるためその恩恵が剥がれ落ちた後には今後のリターンは下がるのではないかという声もあるでしょう。しかしこうした見方にはいくつかの誤解や前提のずれが含まれています。なぜ問題ないと言い切れるか順を追って解説していきます。

ウェイト比較で分かる実態  (00:03:07)

まず必要なのは現状の正確な把握です。2024年時点でマグニフィセント・セブンはMSCIオールカントリー・ワールド・インデックス(ACWI)の構成比において約20%を占めておりリターンへの寄与は実に50%にも達しています

つまり構成比では5分の1にすぎないにもかかわらず収益の半分をもたらしているという極めて強い影響力を持っているのが現在の市場構造です。これは一見するとバランスを欠いた状態に見えるかもしれませんが歴史的にはこうした偏りがある時期は珍しくありません。たとえば過去のITバブルや現在進行中ともいえるAIバブル、さらにはかつての日本の不動産バブルなどでも少数の銘柄や業種が市場全体を大きく牽引してきた経緯があります。

イコールウェイト指数との比較ではその影響が顕著に表れます。時価総額加重平均で9.18%だったリターンがイコールウェイトでは4.63%に落ち込みました。このことは一部の超大型銘柄がリターンを大きく押し上げていたことの裏付けです。

しかし30年間のデータを見ると加重平均で8.02%、イコールウェイトで6.90%。この差は10年スパンよりもはるかに小さく長期的にはリターンの平準化が進んでいることがわかります。要するに短期的な特定銘柄への偏重が長期では解消され全世界株式の実力が浮き彫りになるというわけです。

「r>g」の法則が示す投資の優位性 (00:06:14)

Vanguardの見通しによると米国を除いた先進国株式は7.3〜9.3%という非常に高いリターンレンジが示されており米国株式についても2.8〜4.8%とされているものの全世界ベースでは他地域が補完するため全体としては問題ないという見方がされています。J.P.モルガンの試算でも為替リスクを除いた為替ヘッジなしの世界株式の予測リターンは約5.20%と堅調です。

こうした数値的裏付けに加えより本質的な視点としてあるのがトマ・ピケティの『21世紀の資本』に登場する不等式「r>g」ですこの「r」は資本収益率、「g」はGDP成長率を意味し過去200年にわたってこの不等式は常に成立してきました。例外は第一次世界大戦と第二次世界大戦のみです。つまり経済が平常に動いている限り資本から得られるリターンは常に経済成長を上回るというのが歴史的事実なのです。

IMFの経済成長率予測によると2025年は一時的に2.8%まで低下するものの、通常は3%以上で推移しています。これが「g」であるならば、「r」である資本収益率は最低でも5〜6%に達することが見込まれます。実際に過去30年間の全世界株式のリターンは年平均8%前後で推移しておりこれは経済成長を大きく上回っている数値です。

この差は単なる統計上のものではなく構造的な資本主義の仕組みに起因します。g(GDP成長率)を賃金上昇率、r(資本収益率)を投資家の収益と見なすと労働よりも資本の方がリターンを得やすい構造が浮かび上がります。上場企業の株主はリスクを取る代わりに高いリターンを得られます。これは資本主義のルールそのものであり、まさに「リスクを取った者が報われる」という考え方が背景にあります。

こうした資本のリターンが今後縮小するとは考えにくいでしょう。むしろ格差が拡大し続けている現状を踏まえればr>gの構造はさらに強まっている可能性さえあります。この格差は是正されるべきではありますが拡大が縮小すると言う予測はできません。

年間リターンが3〜4%に下がるという“誤解” (00:11:35)

ではなぜ「今後の株式投資リターンは年間3〜4%に低下する」という論調が一部で語られるのでしょうかまずよくある誤解は米国のビッグテック株が高PER(株価収益率)で取引されていることだけを根拠に「株式全体が割高」と見なしてしまうことです。PERが30倍〜200倍という異常値を示した企業は確かにありますがそれは市場全体の平均を意味するものではなく一部に過ぎません。このように「一部のデータを全体に当てはめる」のは典型的な平均の罠に陥っているといえます。

さらに短期寄与率をそのまま将来に当てはめる拡大解釈も誤解の原因です。2024年の時点でマグニフィセント・セブンが市場リターンの約50%を生み出したという事実はありますがそれが今後も永続するわけではありません。過去10年間のリターンが高かったとしてもそれをそのまま未来に投影するのは危険です。

ここで重要なのが実質リターンと名目リターンの違いです。名目リターンが6%、インフレ率が2%ならば実質リターンは4%。つまり「3〜4%のリターンに落ち込む」という主張が実質リターンの話であれば過去にもあったことであり特に問題ではないのです。しかし名目で3〜4%というのであればそれは経済成長や資本収益率の構造から見て現実的ではないと断言できます。

まとめ

本記事では「全世界株がマグニフィセント・セブンの影響で割高なのでは?」という視聴者の疑問に対し検証を行いました。その結果、短期的な市場の偏りや誤解を排除すれば全世界投資が今後も有効な戦略であることが明らかになりました。

マネーセンスカレッジが提唱する「全世界に満遍なく投資し、淡々と続ける」スタイルは初心者にも再現性が高く確実な資産形成を可能にします。全世界投資という選択があなたの未来を支える堅実な柱となることでしょう。

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