毎月分配型投資信託はいらない?定期売却3つの方法を徹底比較
本記事では老後資産を安定して取り崩すための「定期売却」について金額・定率・期間という3つの方法を比較しそれぞれの特徴やメリット・デメリットをシミュレーションを交えて詳しく解説しています。
老後資金の運用に不安がある方やどのように資産を取り崩していけばよいか悩んでいる方にとって非常に参考になる内容です。
キーポイント
定期売却とは何か?老後資金の取り崩しの基本 (00:00:00)
老後資金として積み立ててきた資産をどのように取り崩していくのか、これは資産形成と同じくらい重要な「出口戦略」です。資産は積み上げるだけでは意味がなく必要なタイミングで必要な額を取り崩していく「使い方」まで考えることが大切です。その方法として毎月分配型の投資信託よりも自分で計画的に資産を売却していく「定期売却」をおすすめしています。
定期売却では既存の投資信託を保有したまま計画的に一定額や一定割合で資産を現金化できるため資産運用を継続しながら生活費を確保するという柔軟で効率的な戦略が実現可能です。
実際に2025年4月現在で定額・定率・期間指定という3つの方法が提供されているのは楽天証券です。ではそれぞれどういった特徴があるのでしょうか。
金額指定・定率指定・期間指定の違いを理解しよう (00:02:18)
3つの定期売却にはそれぞれ異なった特徴があります。その違いを理解することが重要です。
まず「定額売却」は毎月決まった金額を売却して現金化していく方法です。例えば2020年1月に100万円の資産を持っていた場合、2月に時価が101万円に増えていればその中から1万円を売却し残高は100万円になります。翌月に99万円に下がっていたとしても同様に1万円を売却することで残高は98万円になるといった具合です。そして売却額が全体の50%を超えた場合には自動的に設定が解除されます。
次に「定率売却」は毎月の資産残高に対して一定の割合を売却していく方法です。同じく2020年1月に100万円=100万口の資産を持っていたとすると1%である1万口を2月に売却します。このときの売却金額は基準価額に応じて変動します。3月に基準価額が下がり資産評価額が99万円になっていれば、残った99万口の1%=9,900口を売却することになります。口数ベースで売却を行うため基準価額が低すぎると換金額が設定金額に満たず売却が実行されない可能性もあります。
最後の「期間指定売却」はあらかじめ決めた期間で資産を均等に売却していく方法です。100万円=100万口の資産があり翌月から30年間の売却を開始する場合、口数を360等分した2,777口ずつを毎月売却していきます。毎月の売却口数は変わりませんがそのときの基準価額に応じて現金化される金額は変動します。
シミュレーションで分かる3つの売却方法の違い (00:06:54)
実際に資産取り崩しを行った場合にどのような違いが生まれるのかを把握するにはシミュレーションによる比較が非常に有効です。今回は元本100万円・100万口という条件で21回の売却を行った際の資産推移を想定しそれぞれの方式でどれほど資産が減りどれほど有利な売却ができたかを可視化しました。これによりどの方式がどのような局面に強いのかが明確になります。
まず定額売却では毎月の売却金額が4万円と固定されているため基準価額が低いときには多くの口数を売却することになります。逆に価格が高い時期には少ない口数で済むため相場のタイミングによって売却効率が大きく変わるという特徴があります。今回のシミュレーションではトータルで84万円を売却し約9万口を使い切る結果となりました。平均売却単価は9,300円で基準価格が高い時に売れた量が比較的多かったことが影響しています。固定金額を得たい人には安心ですが市場価格が下がったタイミングでは口数が一気に減ってしまうというリスクを伴います。
一方、期間指定売却ではあらかじめ30年(360か月)といった取り崩し期間を設定しその期間に合わせて均等に売却を行っていきます。毎月売却する口数は変わらないため基準価額が高いときには多くの金額が得られ安いときには少なくなる構造です。この方法で得られた売却総額は84万円、売却した口数は84万口、平均売却単価は10,000円となり今回の3方式の中では最も高い売却単価となりました。計画的に一定期間で資産をゼロにしたいという目的がある人にとっては最も理想的な方式と言えるでしょう。
対して定率売却は常に残高の4%を取り崩すという形式で資産の減少に合わせて売却金額も減っていく仕組みです。売却した金額は55万円強、口数は57万口で平均単価は9,607円でした。期間が決まっていない分柔軟性はあるものの取り崩しに時間がかかるため明確なゴールがないという面もあります。
これらのデータから見えてくるのはどの取り崩し方法も一長一短であり目的に応じて選ぶ必要があるということです。特に重要なのは「資産を最大限活用すること」ではなく「生活を安定させること」にあります。
各取り崩し方法のメリット・デメリット (00:09:34)
3つの方法それぞれに明確なメリットとデメリットがあります。まず定額売却は毎月一定額が現金として手元に入るため収入が年金中心となる老後において家計の安定性を重視したい方にとって非常に有効です。受取額が固定されていることで計画的に生活費を管理しやすいのが大きなメリットです。さらにもし運用利回りが定額売却の金額を上回る場合、理論上は資産を減らさずに運用益の範囲内で生活を続けられる可能性もあります。ただし取り崩す金額が運用益を上回ると反対に資産寿命は短くなるリスクがあります。
次に期間指定売却の最大の特徴は「あらかじめ設定した期間内に資産を確実に使い切ることができる」という点です。たとえば30年といった期間で均等に取り崩していけば資産はきっちり計画通りにゼロになります。この明確なスケジュール性は老後資金のライフプラン設計において重要な要素となりえます。しかし毎月受け取れる金額は基準価額の変動に左右されるため市場が下落している時期には想定より少ない金額しか受け取れないこともあり得ますし上昇時には必要以上に資産を取り崩してしまい運用に回すべきお金が現金化されてしまうというジレンマもあります。そのため家計の運営においては一定の不確実性を抱える手法とも言えるでしょう。
最後に定率売却は理論上、最も資産寿命が長くなる可能性を持ちます。資産の増減に応じて売却額も柔軟に変動するため市場環境に自然に対応できる点が強みです。他の方法に比べて「資産を枯渇させずに長く保つ」という意味では非常に優れた戦略と言えます。ただし毎月の受取額が変動するため定額売却や年金のような一定収入を求める人には不向きです。
まとめると定額は「家計の安定」、期間指定は「計画的な資産消化」、定率は「資産寿命の延命」が主な特徴です。売却方法の考え方として定額売却は「定量法の売却版」、期間指定は「ドルコスト平均法の売却版」に近いといえるでしょう。
おすすめの売却方法とその理由とは? (00:14:08)
では3つの方法のうちどれが最もおすすめなのでしょうか。マネーセンスカレッジとしては「金額指定」、つまり定額売却を推奨しています。
その理由は明確で「家計の安定性を保つこと」が最も重要だからです。特に老後資金として資産を取り崩していく場面では毎月の支出は大きく変わらないことがほとんどです。家賃や食費、水道光熱費などはおおよそ固定されており、それらを安定して支払うためには毎月の受け取り金額も一定である必要があります。
「効率の良さ」や「資産の最大化」も大切ではありますがそれは生活が破綻しないことが前提です。極端な話、いくら取り崩しの方法が効率的であっても毎月の生活が不安定になってしまえば本末転倒です。
また相場が暴落しているときに多くの資産を取り崩さざるを得ないような状況になると精神的にも負担が大きくなります。一方で、金額指定方式であれば相場に関係なく一定の収入を確保できるため安心感が全く違います。
もちろんライフスタイルによっては期間指定や定率指定の方が合っている場合もあります。たとえば資産を全て30年で使い切ることを明確に決めている人や長期的な資産運用を継続したい人にとってはそれらの方法も選択肢となり得ます。
しかしながら老後の生活を穏やかに安定的に過ごすという目的においては毎月一定額を受け取る金額指定が最も現実的かつ有効な取り崩し方法であるというのがマネーセンスカレッジの見解です。
iDeCo・企業型拠出年金の取り崩し法と注意点(00:19:05)
現在、楽天証券では「定額」「定率」「期間指定」の3つすべての定期売却方式に対応していますがSBI証券では限定的です。現時点で「定額売却」のみが提供されており「定率」や「期間指定」といった売却方法は今後のサービス拡充の一環として導入予定とされています。
一方で確定拠出年金(iDeCoや企業型DC)については定期売却に関して制限が多い点に注意が必要です。これらの制度では「一括受け取り」または「定期的に一定期間にわたって受け取る」の2択しか選べず楽天証券のように細かく売却方法を設定することはできません。
また金額ベースではなく「口数単位」での取り崩しが前提となっており自由度の面では劣ります。そのため特にiDeCoで長期運用してきた資産をスムーズに現金化したいと考える方にとってはかなり不便に感じられる場面もあるでしょう。将来的な資産取り崩しを円滑に行うためにも運用中の口座や制度の特性をよく理解しておくことが求められます。
まとめ
定期売却には金額指定・定率指定・期間指定という3つの方法がありそれぞれにメリット・デメリットがあります。資産の寿命を延ばしたいなら定率、計画的に使い切りたいなら期間、家計の安定を重視するなら金額指定が適しています。
特に老後資金として資産を取り崩す場合、最も重視すべきは「毎月の生活費を安定的に確保すること」です。その観点からも金額指定の取り崩し、すなわち定額売却が最も適している方法であると言えるでしょう。
資産運用の最終段階とも言えるこの「取り崩し」フェーズにおいても自分のライフスタイルと目的をしっかりと見据えた選択が求められます。楽天証券や今後対応予定のSBI証券のサービスを活用し自分にとって最適な方法を見つけることが安心した老後生活への第一歩となります。
またこちらの動画「【出口戦略】4%ルールは本当に安全?老後資産を減らさないための取り崩し戦略【FIREも必見】」では自分に必要な月額はいくらなのか、どのくらいの期間取り崩していくのかといった内容を詳しく解説しています。ぜひ合わせてご覧ください。