税制改正で仮想通貨への投資はあり?税率20%でも慎重になるべき理由

仮想通貨が最大税率55%から20%に引き下げられる可能性やそれによって金融資産としての扱いへ転換される動きがあります。そのような税制改革が進んだ場合、仮想通貨がメイン投資先になり得るでしょうか。

仮想通貨に興味がある方、今後の投資判断に迷っている方にとって非常に有益な内容です。

キーポイント

仮想通貨税率20%の時代は来るのか?(00:01:18)

仮想通貨に関する税制改革の議論が進んでいますこれまで仮想通貨は決済手段として取り扱っており、税率については資金決済法に基づいて総合課税が適用され、最大税率は55%にも及ぶものでした。

しかし、実際の利用の多くは投機目的であり、その価格変動の大きさからも実態としては金融商品と変わらない存在となってきています。この現状において今の仮想通貨の取り扱いは他の金融商品とは異なり投資家にとって非常に不利なものです。例えばビットコインの価格が急騰し多額の利益が出た場合でもそれが雑所得として扱われるため税率が非常に高くなる上に経費の計上もできない状況で、取引に制限をかけてしまうような状態です。

そこで政府は2025年の税制改正大綱において仮想通貨を「金融資産」として扱う方向に舵を切りました。これはつまり仮想通貨を投資商品として認め株式などと同様に分離課税(おそらく税率20.315%)で扱うようにしようというものです。仮想通貨が金融商品として正式に扱われれば法律や税制が現状にあったものに変わり、投資家の選択肢が広がってより参加しやすくなるという見通しがあります。

ただしこの法整備はまだ完全ではなく2026年以降の施行を目指している段階です。今後、仮想通貨が株や債券のように一般的な金融商品として広く受け入れられるには税制だけでなく規制の整備も不可欠になります。特に取引の透明性や発行体への規制、インサイダー取引の防止といった点についても制度としての整備が求められています。

順調に進めば数年以内には仮想通貨が金融商品として税制上一体化され税率も20.315%に落ち着く可能性があります。ただそれが即座に仮想通貨を投資対象として魅力あるものに変えるかというと話はそう単純ではありません。

金融資産としての仮想通貨に立ちはだかる課題(00:04:47)

仮想通貨の法的位置づけの変化はその利用実態と規模の拡大を背景にしています。前述の通り、もともと仮想通貨は決済手段の一つとして考えられていました。しかし実際の利用の多くは投機目的でありその価格変動の大きさからも実態としては金融商品と変わらない存在となってきています。

こうした実態を踏まえ政府もようやく税制と規制の再設計に乗り出したわけですが金融資産として仮想通貨を扱うことには多くの新たな課題も伴います。

もし金融商品として扱われることで申告分離課税の中で特定口座ができれば、源泉徴収ありにすることで確定申告が不要となります。仮想通貨がこの枠組みに入るのか、もしくは日本のFXのように雑所得の一部として金融所得と同じように20.315%の税率をかけるのかはまだわかりませんが、これにより投資家の選択肢が広がることが期待できます。

一方で、今まで金融商品として扱っていないものとの整合性をよく吟味していく必要があります。

たとえば「損益通算」を認めるかどうかは非常に大きな論点です。損益通算とはある投資で出た利益と別の投資で出た損失を相殺できる制度で、もし特定口座内で扱えるようになれば手間がかからず投資対象として組み入れやすくなります。

同じような投資であれば同じ税制が適用されるべきという「税の中立性」という観点から見れば現在の仮想通貨はこの原則から外れています。株式や投資信託、ETFなどと違い仮想通貨の利益は損益通算できず税務上も分離課税ではなく総合課税となっています。これでは同じようにリスクを取って投資しているのに仮想通貨だけが不利な扱いとなってしまい公平性に欠ける状態です。

金融商品として扱うのであれば、この課題が解決できなければ損失が税務上で全く考慮されず投資家にとって非常に不利になるため法整備が必要となるでしょう。

また、法人で仮想通貨を保有する場合や発行体の情報開示義務、取引所への規制強化、インサイダー取引等の防止策などもセットで進めなければ信頼性の高い金融資産とは言えません。投資商品としての地位を確立するには「管理」と「透明性」が不可欠です。

このような制度整備が完了すれば仮想通貨はようやく本格的な投資対象の一つとして選択肢に加わる可能性がありますが現段階ではまだ「道半ば」と言えるでしょう。

アセットアロケーションに組み込める可能性は?(00:09:40)

仮想通貨が金融資産としての地位を獲得しつつあるとはいえ実際に投資戦略の中でどのように位置づけるべきかという点は依然として明確な答えが出ていない課題ですマネーセンスカレッジの「全世界投資」や「アセットアロケーション」など分散投資の一部に組み込めるかという点においては、現時点では慎重にならざるを得ません。

モノとして扱われるもの(コモディティ)の中で投資対象となりうるのは金や不動産が挙げられます。仮想通貨は「金(ゴールド)」に近い資産として語られることがありますが、ブロックチェーン技術により所有の明確さはむしろ金よりも確かになる時代が来るかもしれません。また金の価格に一定の相関があるというデータも存在し金の代替資産として一定の役割を果たす可能性が示唆されています。

仮想通貨がアセットアロケーションの一部として組み込まれるには、「税制度の整備・一体化」「法的な安全性の確保」「取引所や発行体への厳格な規制」といった条件が整う必要があります。現時点ではまだそのすべてが不十分であるため、ポートフォリオの一部に入れるには時期尚早という結論になります。

まとめ

仮想通貨を取り巻く税制改革と金融資産化の動きは確かに投資家にとって希望の持てるニュースです。税率が最大55%から20%へと下がる方向性は制度的な改善を示しています。しかしそれだけで仮想通貨が主流の投資対象になるかといえば話はそれほど単純ではありません。

税制の一体化、損益通算の可否、特定口座対応、法整備と規制、インサイダーの取締り、そして投資対象としての収益構造の欠如——こうした数々の課題が残っている以上、マネーセンスカレッジとしては「今すぐポートフォリオに組み込むのは早すぎる」というスタンスを取っています。

今後、制度や環境が整えば仮想通貨がアセットアロケーションの一部を担う日が来るかもしれません。ですがそれはあくまで「安全性と信頼性」が確保されて初めて意味を持つ話です。読者の皆様も仮想通貨への投資を検討する際にはその魅力だけでなく、制度的・構造的リスクを十分に理解したうえで慎重な判断を心がけましょう。

全世界投資の観点から見ても仮想通貨はまだ「補完的な位置づけ」であり主要投資として据えるには時期尚早です。今後もマネーセンスカレッジではこうした制度改正の動向を追い続け正確な情報と戦略を提供していきます。

またこちらの動画「投資リターンの80%が決まる!資産分散の割合「アセットバランス」の2つのアプローチ」ではアセットアロケーションで重要なアセットバランスについて解説していますのでぜひご覧ください。