4〜6月の給与調整は無意味?社保の真実

本記事では給与から毎月引かれていく「社会保険料」について労働者視点でどこまで削減可能かを深掘りしていきます。

「4〜6月の給与調整で保険料が下がるって本当?」というネットの噂に答えつつ結局のところ“何ができて何ができないのか”を明確にします。

キーポイント

社会保険料は所得税より重い?(00:00:00)

社会保険料は多くの人が見落としがちですが実は所得税よりも負担が大きい場合が多いです特に年収200万〜300万円の層でも自己負担として約15%が給与から差し引かれています。しかしこの15%は「自己負担分」に過ぎず企業側も同額を負担しており実際には労働者1人あたり給与の約30%が社会保険料として計上されています。

この構造を「労使折半」と呼びますが実質的には全額が自分のために払われているものと考えるべきでしょう。企業が支払う分も従業員に還元されるはずだった利益の一部です。特に問題となるのは年収1億円を超える高所得者と低所得者の社会保険料負担が税率的にはあまり変わらないことです。所得税が累進課税なのに対し社会保険料は「一定の上限額」があるためある一定ラインを超えると負担率が実質的に下がってしまいます。

これにより結果的に「逆進性(貧しい人ほど負担感が大きい)」が発生します。この制度設計そのものが格差拡大の一因であると指摘されています。さらに言えば社会保険は障害年金や遺族年金などセーフティネットとしての役割も担っており削減=リスク増大ともなりかねません。

結論:社会保険料の削減テクニックは存在しない(00:02:57)

多くの人が検索する「社会保険料を合法的に減らす方法」は実のところ、ほとんど意味がありません。なぜなら社会保険料は給与額を基に自動的に計算される仕組みになっており労働者側が自由に操作できる領域がほぼ存在しないからです。

確かにネット上には様々なテクニックが散見されますがそれらの多くは経営者側が制度を理解していてかつ従業員と連携して行う必要があるものばかりといえます。実際には正社員として勤務する限り社会保険の対象外になることはほぼ不可能です。

つまり社会保険料は“準税金”として捉えるべきものです。税金のように節税テクニックが効きにくく法律でがっちり制度化されているため労働者が単独で削減を試みても効果は期待できません。

社会保険から「逃げる」ことはできません。だからこそそれにエネルギーを費やすよりも自身の収入を1万円でも上げる方法を模索する方がよほど建設的です。

巷で噂の4月〜6月給与調整テクは意味があるのか(00:04:41)

社会保険料の決定には「定時決定」というルールがあり4月〜6月の給与平均をもとに標準報酬月額が決まります。この時期に給与が高いとその後1年間の保険料が高くなってしまうため「この期間だけ残業を控えよう」という対策がよく紹介されています

しかし実際にはこの方法も万能ではありません。多くの企業ではこの3か月が繁忙期であり残業を減らすのが難しい場合も多いでしょう。また給与体系が固定残業代制の場合は実働時間に関係なく一定の手当が支給されるため調整の余地がありません。

さらに仮に4月〜6月の給与を下げても7月に昇給があれば「随時改定」によって保険料が再計算され結局保険料は上がってしまう可能性があります。つまり一時的な節約に成功しても年単位で見れば大きな効果は期待できないのです。

このことから給与調整による削減テクニックは「やれるならやればいいが現実的には難しい」という結論に落ち着きます。

給与以外の控除や工夫、実は逆効果になることも(00:09:29)

社会保険料を抑えるために給与以外の部分で工夫できないかと考える方も多いでしょう。たとえば「通勤手当を現物支給にする」「賞与を減らして月給に振り替える」「確定拠出年金に加入する」などの手法が知られています。確かにこれらの方法の中には合法的に社会保険料の算出対象から外れる部分を利用して結果的に保険料を抑える効果を持つものもあります。

しかし現実問題としてこれらのテクニックもすべての労働者が使えるわけではありませんどれも企業側の制度設計次第であり従業員自身が主導して行えるものではありません。つまり雇用主側に柔軟性や理解がなければ成立しないのです。

また「給与を減らして退職金や福利厚生に回す」といった手法もありますがこれは従業員にとって喜ばしいこととは言えません。このような手段を取る経営者は賢くやっていると考えるかもしれませんが従業員にとっては損になり転職を考えるきっかけにもなり得るでしょう。

つまり経営者側が行える社会保険料対策も万能ではなくかえって従業員に悪影響を及ぼすリスクがあることを理解しておく必要があります。制度の穴を突くよりも制度を理解し付き合っていく方が現実的と言えるでしょう。

根本解決は政治と制度改革にしかない(00:15:43)

これまで述べてきたように社会保険料の構造自体が非常に硬直的で個人の努力でどうにかなるものではありません。特に労働者側が制度に介入できる余地はほぼなく「どうしても削減したい」と考えても自助努力では限界があります。

ここで重要になるのが「政治」の力です。現在の日本では所得の再分配機能が十分に働いておらず高所得者が相対的に社会保険料の負担を軽く済ませてしまう仕組みが維持されています。一方で低〜中所得層はその恩恵を受けにくく相対的な負担感が重くのしかかっているのが現実です。

たとえばアメリカでは高所得者も26%以上の税率で負担しているのに対し日本では約15%にとどまっています。これは明らかに不均衡であり日本の社会保障制度全体のあり方が問われている問題でもあります。

このような構造的な問題は個人がどうこうできる領域ではありません。だからこそ国全体としての制度改革が求められているのです。具体的には社会保険料の上限見直しや年収による負担率の再設計などが考えられます。いずれも政治の決断なくしては実現しないものであり私たちができることはその方向性を支持する声をあげることそして必要な情報を正しく理解しておくことです。

まとめ

本記事では「社会保険料を削減するテクニックが本当に存在するのか?」というテーマを中心に制度の構造や労働者の現実について深掘りしてきました。結論としては労働者個人が法的に削減できる手段はほとんど存在せず巷で紹介されている裏技的な方法の多くは実行困難、もしくは効果が限定的です。

それでもなお社会保険料の問題は個人にとっても国家にとっても避けて通れない重要課題です。真の解決策は、政治や制度の改革に委ねるしかありませんがその中でも私たちができることは「収入を増やす努力をする」「投資や転職などの手段で生活の質を向上させる」など前向きなアクションを取ることです。

本記事が社会保険制度を正しく理解し自身の働き方や将来設計を考えるきっかけとなれば幸いです。社会保険料という“見えないコスト”に向き合いながら賢く人生設計を立てていきましょう。