2000万円では足りない?老後資金の真実と備え方

2017年に老後資金が「2,000万円必要」とする「老後2,000万円問題」が話題となりました。2023年現在は、このテーマがやや放置され気味ですが、なお「2,000万円」という数字は、私たちの不安の根源として残っています。

そこで今回は2023年の最新データに基づき、この問題の背景や現実的なリスクの対策を解説します。老後の生活設計や資産形成に関心がある方は、ぜひ最後までご覧ください。

キーポイント

老後2000万円問題の発端と背景 (00:03:30)

老後2,000万円問題は、2017年に総務省が実施した家計調査の結果から発出した問題です。「年金で不足する月額約5万5,000円×30年=約2,000万円」が問題視され、政府は「老後2,000万円不足」という提言を発表しました。

2017年の調査で、高齢夫婦無職世帯の平均収入が月21万円であるのに対し、生活費として必要な支出は26.5万円とされ、月に約5万5,000円の不足が生じていることが明らかになったのです。

2017年 高齢夫婦無職世帯の家計収支
出典:総務省 高齢夫婦無職世帯の家計収支-2017-



そこで政府は「2,000万円の資産形成が必要」と主張しました。ただ、これはあくまで統計上の平均値であって収入や資産状況は人によって異なります。賃貸暮らしや自宅の所有など生活スタイルの違いもあるため、個々の老後の生活コストは一概に同じとは言えません。

当初、マスコミがこの問題を大きく報道したことで、多くの人々が将来の生活に不安を抱くきっかけなったのです。

真の問題は生活費の平均的不足額が「5万5,000円」ということ以上に、それが一人歩きしてさまざまな偏った解釈を生んだ点にあります。

私たちがすべきことは、この数字にとらわれずに自分に合った老後資金のプランを立てることです。

老後2,000万円では足りない現実 (00:09:55)

老後資金不足が「2,000万円」という言葉が一人歩きしている中で、実際にはその金額では足りないとする新たな指摘も浮上しています。

日本の平均寿命の伸びや物価上昇率を加味するとより多くの資金が必要になるためです。近年の平均寿命は男女ともに80歳を超え、老後生活が長期化する一方で食費や医療費、住宅費などの基本的な生活コストも増加傾向にあります。

2023年の最新データによれば、消費支出がさらに増加しているため2,000万円を超える資産が必要になるケースも少なくありません。

しかも年金の所得代替率が低下する影響も無視できません。年金の所得代替率とは、現役時代の収入に対する年金額の割合です。

2019年の厚生労働省の年金財政検証ではこの所得代替率が61.7%ですが、将来的にはさらに低下して50%を切る可能性も指摘されています。所得代替率が低下するほど年金だけで生活するのが難しくなり、私的な資産形成の必要性が高まります。

これらを総合すると、老後生活を安心して送るためには2,000万円以上の資産が必要になると考えられます。また平均寿命以上に長生きするリスクも考慮し、3,000万~4,000万円の資産を準備することが理想です。

65歳以降に年金のみで生活できるか? (00:19:57)

多くの人が老後の生活を年金だけに頼ることは難しいと感じているでしょう。特に所得代替率が低下することで年金だけでは老後の生活費がまかなえなくなる現実があります。
そこで将来、年金で生活するために知っておくべき点を見ていきましょう。

年金制度は定期的に財政検証が行われており、現行の年金支給額が将来的に減額される可能性も示唆されています。2024年には年金の財政検証が予定されており、経済成長の停滞や少子高齢化による年金支給額の削減が予測されています。

現実として所得代替率が37%まで下がる可能性があるため、年金支給だけでの生活設計が破綻しないようにするには資産形成が必須です。

公的年金に加えて私的な資産形成も合わせた「ライフサイクル仮説」が推奨されており、手取り収入の約10%を投資や貯蓄に回すことが推奨されています。これにより現役時代に蓄えた資産を20年間の老後に有効活用し、一定の生活レベルを維持することができます。

長生きリスクと老後資産の増やし方 (00:26:52)

「長生きリスク」とは、寿命が延びることで想定していた資産を使い果たすリスクのことです。このリスクに対応するための資産形成の基本戦略を見ていきましょう。

まず一つ目は終身年金の重要性です。
民間の終身年金は、基本的な生活費を長期的に支えて長生きした場合の支出をカバーする手段として注目されています。終身年金は、終身での支給が保障されるため老後の生活に一定の安定をもたらします。

ただし、物価上昇の影響を受けるため、他の資産とも組み合わせることが推奨されます。

二つ目の戦略は、投資の活用と長期的な資産運用です。

老後資金は、貯蓄するだけでなく資産運用を行なって増やすことが可能です。特にインフレリスクに対応しながら長期的に運用すると資産の目減りを防ぎ、少しでも多くのリターンが得られると期待されます。これにより長生きした場合でも資産を効率的に活用できます。

現実的な老後資産形成の計画 (00:37:00)

老後生活を充実させるための現実的な資産形成の計画を立てるために、いくつかの具体的な対策を見ていきます。

老後資産形成の具体的なアプローチ

  1. 早期の投資開始: 若い時期からの投資は、長期で複利効果を期待でき老後資産形成に大きな力となります。
  2. 生活費の見直し: 老後に必要な生活費を想定し、無理のない貯蓄・投資プランを立てましょう。
  3. 年金の繰延と継続雇用: 年金を受給する年齢を引き上げ(最高75歳まで)、それまで仕事をするなどして収入を得ます。すると65歳時点でもらうより年金額が上がるため、無収入になってからは年金と貯蓄や投資利益を合算することにより余裕のある生活が送れます

まとめ

老後2,000万円問題は下火になりつつありますが、現実は2,000万円では足りなくなる可能性が高いです。とはいえ悲観する必要はありません。

早期から投資を開始するとか65歳以降も仕事を継続して年金の受給開始を繰延れば年金額がアップするため、貯蓄や投資利益と合算するとより多くの老後資金を確保できます。
皆さんの家庭に合った老後資産設計を行なって、安心できる老後を迎えましょう。

関連動画「将来の年金は今の手取り収入の37%になる!年金財政検証を検証してみた【きになるマネーセンス#206】」では、所得代替率と老後資産設計について深掘りしているので、年金と老後資金についてさらに詳しく知りたい方はぜひ参考にしてください。