【年末調整2026】減税なのに手取りが減る?年収665万円の「年収の谷」と損しないための確認ポイント
毎年恒例の年末調整の時期がやってきましたが、今年は過去一ややこしいと感じています。今年は正しく説明できるかどうか自信が持てないほどの複雑さです。動画のコメント欄にも、一般の人が理解できる範囲ではないという声が多く寄せられており、まったくその通りだと思います。
間違った情報を伝えたくありませんし、ミスリードも避けたいので、すべてを網羅することはしません。多くの方に影響があり、影響の度合いも大きい大事なポイントを3つに絞ってお伝えします。
経理担当者や税理士事務所の方は、ミスがないように何重にもチェックされているはずです。それでも何か起こる可能性はありますし、それは担当者のせいではなく制度を複雑にした国のせいです。自分のお金に関わることですのでご自身でもチェックしていただきたいと思います。具体的なチェック方法については、税理士や会計士の方のYouTubeチャンネルが増えており、詳しく解説している動画もたくさんあります。詳細はそちらに譲り、ここでは3つのポイントだけをお話しします。
全員に関係あること 自分の税金が安くなる!(2:08)
1点目は税に関することです。まず覚えておいていただきたいのは、自分の税金が安くなるということです。
国税庁の資料によると、基礎控除の引き上げがすでに決まっています。令和8年分・9年分については、基礎控除が最大104万円まで上がります。年収665万円以下の方であれば、104万円まで大幅に引き上げられると考えてください。正確には、年収665万5556円を超える方については、基礎控除が67万円まで一気に下がります。それでも改正前より4万円は引き上げられています。ご自身の基礎控除額がいくらになるのか、ぜひ確認してみてください。
給与所得控除も引き上げられています。最低保障額が65万円から74万円になりました。控除額が上がった分だけ所得が減り、その分だけ税金が戻ってきます。ただ、これは年収220万円以下の方が対象で、それ以上の方は特に変わりません。パートや時短勤務で働いている方には、かなり影響の大きい改正だと思います。
扶養家族がいる方 家族が稼ぎやすくなる!(3:48)
2点目は扶養家族がいる方に向けた内容です。家族が稼ぎやすくなりますが、注意点もあります。
子ども、親、配偶者といった扶養家族について、所得税がかからない収入の上限が、これまでの123万円から136万円に引き上げられました。月収にすると、10万円ちょっとだったところが11万円ちょっとまで広がるイメージです。
ただし、ここで注意したいのは、130万円の壁がなくなったわけではないということです。今回引き上げられたのは税金に関する基準であり、130万円は社会保険料に関する基準です。勤め先の事業規模が小さく社会保険の適用拡大の対象になっていない場合、136万円まで働けると考えて130万円を超えてしまうと、社会保険の扶養から外れて自分で社会保険に入らなければなりません。年末の忙しい時期に残業で一時的に130万円を超えた場合は、届け出をすれば扶養の対象に入れてもらえる措置があります。しかし、雇用契約上の収入が130万円を超えてしまう場合は、社会保険の扶養には入れません。
ちなみに、子どもが123万円以上稼いでも親の扶養に入れるようになったのか、というご質問をいただくことがあります。正確には、扶養に入るというより親が扶養控除を受けられるようになった、という言い方が適切です。扶養に入ると言うと社会保険を思い浮かべる方が多いので、ここは区別して考えていただきたいと思います。
次に特定親族についてです。これは19歳から22歳の子どものことで、アルバイト収入が一定額を超えると、扶養控除の対象から外れてしまいます。この上限が、188万円以下から197万円以下に引き上げられました。この水準になると、すでに社会保険の話をはるかに超えているので、そこは大丈夫だと思います。
配偶者特別控除についても上限が引き上げられています。配偶者控除を受けられなくなる収入を超えても、配偶者特別控除を受けられますが、その上限が、これまでの201万5999円以下から207万円以下まで広がりました。細かい数字ですので、覚える必要はありません。ご自身に関係するところだけ確認していただければ十分です。
勤労学生本人については、150万円以下だった基準が163万円以下に変更されました。いずれの場合も、働ける金額が増えて、より稼げるようになったということです。ただ、普通の扶養家族の場合は、130万円以内に抑えて社会保険の扶養に入っている方が多いと思います。136万円まで上がったからといって、130万円を超えてしまうと扶養から外れて自分で社会保険に入らなければならなくなります。この点は税金の話よりも影響が大きいので十分にご注意ください。
23歳未満の子どもがいる方は生命保険料控除が拡大 さらに減税の可能性がある!(7:27)
3つ目は23歳未満の子どもがいる方に関する生命保険料控除の拡大です。これも手取りが増える政策です。
子どもを育てている方は、死亡保障のある保険に入っているケースが多いと思います。その控除の上限が、4万円から6万円まで拡大しました。
生命保険料控除には旧契約と新契約があります。最近加入された方の多くは、新契約に当たると思います。新契約の控除は、新生命保険料、介護医療保険料、新個人年金保険料の3区分に分かれており、それぞれ最高4万円、合計で最高12万円まで控除を受けられます。これまでは、4万円の控除を受けるために、保険料として8万円を支払う必要がありました。今回の改正では、新生命保険料の区分が6万円まで引き上げられました。12万円を支払っている方なら、6万円の控除を受けられる仕組みです。
12万円の保険料というのは、月にして1万円です。夫婦2人で加入しているなら、1人あたり5000円ずつになります。たとえば、定期保険で1000万円、生活費のための収入保障保険に加入していれば、5000円はすぐ超えてしまうでしょう。子どもが2人いれば、学費のために2000万円は必要になりますから、1人だけでも5000円を超える方は多いと思います。そのため、23歳未満の扶養家族がいる方にとっては、使える控除枠だと言えます。
増えるのは2万円ですが、所得税10%、住民税10%の方であれば、4000円ほど手取りが増える計算です。ただし、3区分の合計で最高12万円という上限は変わっていません。すでに他の区分で4万円ずつ控除を受けている場合は、新生命保険料の控除枠が6万円に増えても、結局合計で12万円に収まってしまいます。
個人年金保険料については、最近加入する方もいらっしゃるかもしれませんが、投資をされている方が多いと思いますのでそれほど多くはないでしょう。介護医療保険も、医療保険は不要だと考える方が多いと思います。ただ、子どもがいて死亡保障に入っていない無責任な親はいないはずですし、貯蓄をしている最中という方もいるかもしれません。一部の医療保険が必要だという方もいますので、控除枠をすべて使い切っているわけではない方が多いと考えています。
なお、23歳未満の扶養家族がいない方には関係ありません。この改正は、令和8年分から適用されます。年間の新生命保険料が3万円以下なら全額、3万円超6万円以下なら2分の1に1万5000円を足した額、6万円超12万円以下なら4分の1に3万円を足した額となります。12万円を超えると、控除額は一律6万円です。平均的な所得の方なら、所得税と住民税を合わせて20%の税率ですので、4000円ほどの減税になります。
今回の改正で谷ができた(11:12)
ここまで、3つのポイントについてお話ししてきました。それ以外のことは、誤解を招かないようにあえて触れないことにします。最後にお伝えしたいのが、今回の改正で壁でも崖でもなく谷ができたということです。
先ほどお話しした年収665万5556円を超えると、基礎控除が急に下がります。この金額を1円でも超える方は、所得税額が大きく増えてしまいます。
具体的な例で見てみましょう。給与収入が650万円の方は、給与所得控除が174万円で、給与所得が476万円になります。ここまでは同じですが、確定申告で投資の利益20万円を加えるかどうかで、所得税額がこれだけ変わります。申告しなければ収入は650万円のままですが、申告して20万円が加わると、670万円という扱いになります。この場合、所得税額は17万8100円から21万5900円まで上がってしまいます。これは、基礎控除が104万円から67万円へと、37万円も減ることが原因です。
この方の課税所得は、272万円から309万円に増える計算です。どちらも税率10%の範囲ですので、37万円の10%で、3万7000円ほど税金が増えます。つまり、1円超えただけで、およそ3万7000円の増税になるということです。
年収665万円というのは、そんなに特別な金額でしょうか。普通に飛び越えてしまう方もいらっしゃいますし、その付近にいる方も、実際には結構多いのではないでしょうか。今回は計算しやすいように確定申告の例を挙げましたが、給与所得だけでもこの谷は存在します。給与収入がそのまま基準を超えてしまえば、どうにもなりません。調整のしようがありません。
だからこそ、控除をきちんと計算することが大切です。1円変わるだけでも相当大きな差になりますので、基礎控除が上がったこと、給与所得控除が変わったことを、計算に間違いがないか確認してください。今回の谷には直接関係ありませんが、扶養家族についても、種類がたくさんあります。4万円変わるだけでも相当な違いですし、1人入れられないだけでも、税額はだいぶ変わります。
生命保険料控除についても、契約者と実際に保険料を払っている人が異なる場合があります。税金については払っている人が大切ですので、払っている方が申告すれば控除を受けられます。ただし、保険金を受け取る際の税制が変わる場合がありますので、その点も含めて検討してみてください。税理士や会計士に相談するのも一つの方法ですが、小手先でできることは限られています。最低限、所得控除を忘れずに受けてください。保険料控除の書類も、かき集めてみたら忘れていたということがよくあります。
それでも税金が上がってしまう場合は、国は自分を守ってくれていないのだとしっかり味わってください。給与所得だけでもこの谷が生じるので調整は難しいですが、控除の申請だけはぜひ忘れないでください。
年末調整で損をしないために確認したいこと(15:13)
年末調整で損をしないために、確認していただきたい3つの項目を挙げます。
1つ目は、昨年の申告書を丸写ししないことです。昨年は昨年、今年は今年で、今年の方が難しくなっています。控除額がいろいろと変わっていますので、申告項目をしっかり確認してください。
2つ目は、扶養対象になる家族の年収を確認することです。
3つ目は、見積もり額を正しく記入することです。ここの記入だけでも、結果が変わることがあります。
税額の計算は会社が行いますが、申告内容に誤りがないか、ご自身でも今一度確認してください。今回のように制度が複雑な場合、人間が作業をするため、間違いは起こります。ソフトを使っていても、入力ミスなどは考えられます。最終的には、ご自身でもチェックしていただくのが安心です。
まとめ(15:59)
今回は駆け足でお話ししましたし、すべてを取り上げたわけではありません。それでも、多くの方に関係する内容を含んでいますので、3つのチェックポイントだけでも確認していただければと思います。詳しい内容については、税理士や会計士の方が解説している動画も、ぜひご覧ください。
分からないことがあれば、そのまま放置せずに、必ず確認してください。会社の担当者や顧問税理士、税務署に問い合わせても問題ありません。そうした問い合わせが増えれば、制度を複雑にした側が困るはずです。ただ、税務署の職員の方々は、実際に対応する立場ですのでお気の毒です。こんなに複雑にしないでほしいという文句は、本来は政府に向けたいところですが、職員の方々も国民の一人ですから、内部でそうした声が上がってほしいと思います。フランスのようにデモをするとまでは言いませんが、声を上げていく姿勢は大切ではないでしょうか。
またこちらの動画「【年収の壁も要確認】年収別NISAとiDeCoのベストな使い分け方法【2025年最新版】」では、年収の壁を踏まえたNISAとiDeCoの使い分けを年収別に解説していますのでぜひご覧ください。





