【対策5選】投資の利益で保険料が上がる時代へ。2028年1月利益から対象になります。
投資の利益が保険料に反映されるという話は以前から出ていましたが、ついに開始時期が決定しました。2030年前後と聞いていたので、まだ先だと思っていましたが、想像以上の早さです。厚生労働大臣の諮問機関である社会保障審議会で、一定の見解が得られたとのことです。以前の法律では、5月に成立して6月に公布された後、5年以内に開始するとされていましたが、今回はそれがさらに前倒しになりました。
日経新聞の報道によると、厚生労働省は75歳以上の高齢者の金融所得を医療保険料や窓口負担の判定に反映させる新たな仕組みを2029年8月から始める方針です。なお、預貯金は反映されないとされています。現状で反映されているのは、給与所得、公的年金や私的年金、確定申告した上場株式の配当や譲渡益、国債の利子です。家賃などの不動産所得も、確定申告をすれば反映されます。
2029年夏に追加されるのは、確定申告をしていない上場株式の配当や譲渡益、そして国債の利子です。対象外となるのは、預貯金、有価証券、新NISAやiDeCoなどの非課税口座の金融所得で、その年度の所得として反映されません。
具体的にどれくらい反映される?(2:13)
どのくらい反映されるのか、日経新聞がまとめた極端な例で見てみます。75歳以上で、配当収入が年500万円ある方のケースです。約1億円の元手に5%ほどの配当がつく計算で、実際には5%も難しいので、相当に極端な例といえます。
これまでは、特定口座の源泉徴収ありで配当を受け取り、確定申告をしなければ、配当収入は反映されず、公的年金だけの方と同じ扱いでした。その場合、年間の医療保険料は全員が負担する均等割の1.5万円のみで、窓口負担は1割です。一方、確定申告をすると、均等割5万円に所得割47万円が加わって年間52万円となり、窓口負担も3割になります。
今回の法改正は、確定申告をしない場合もこれに近づけようというもので、導入は2029年8月です。判定の前提は2028年の金融所得ですから、2028年1月以降の取引から反映されます。今年は2026年なので、特定口座で自由に動けるのは2027年の1年間ほどで、それ以降は特定口座の魅力が大きく薄れていくでしょう。
導入方法(4:58)
導入にあたっては、新しいデータベースを作り、確定申告をしていない投資の利益の情報を、後期高齢者医療制度に届ける仕組みになります。後期高齢者医療制度は、75歳以上の全員が漏れなく加入する保険です。確定申告をしない配当や分配金、譲渡益は、現行制度でも源泉徴収の形で税務署に情報が行きますが、これまではそこで止まっていました。
2029年8月からは、その情報が支払調書としてオンラインで提出されます。提出された情報は法定調書データベース(仮称)に入り、後期高齢者医療広域連合に届いて、保険料や窓口負担に影響を与えます。このデータベースを急いで作ったということでしょう。まだ作っている最中だとは思いますが、期日を決めて間に合わせるあたり、取るものを取るときの早さを感じ、消費税の減税にはどれだけ時間がかかるのかと思うと本当にひどい話です。
スケジュールと対象になるもの(6:35)
厚生労働省が発表しているスケジュールを見ていきます。対象になるのは2028年分の所得からで、施行日は2029年1月、初回の反映日は2029年8月の予定です。施行と同時にオンライン提出が義務化されます。提出するのは、誰がいくら儲かったかが記載された法定調書です。2029年1月に提出されるのは、2028年1月から12月までの1年間の金融所得を記載したものです。
ただし、最初から反映されるのは一部で、枚数ベースでおよそ8割にあたります。残りは2030年8月以降に反映され、最終的にはすべてが反映される予定です。2029年1月31日が提出期限のものは最初から反映されますが、随時1か月以内に提出するものは、データベースの整備が間に合わないのでしょう。
最初から反映される1つ目は特定口座年間取引報告書で、証券会社が源泉徴収した上で税務署に提出するため、本人は何もしなくてよく、これが大元になります。続いて利子等の支払調書ですが、利子とあるので預貯金も入るのかと思いきや、預貯金の利子は源泉分離課税で提出義務がないため含まれません。社会保障審議会の部会でも、銀行の預貯金の利子は含めないとされており、国債などは含まれて反映されます。そのほか、国外公社債等の利子等の支払調書、名義人受領の利子所得の調書、配当所得、信託の計算書なども含まれます。
2030年8月から反映されるのは、剰余金の配当や金銭の分配、基金利息の支払調書、国外の投資信託や国外株式の配当、投資信託の収益の分配金などで、配当に近いものを含め、金融所得はおおむねすべて入ります。含まれないものについて、「預貯金、有価証券、新NISAやiDeCo口座の金融所得」とありましたが、有価証券は資産残高の話でそもそも対象外です。部会の資料には「金融資産と金融資産から派生した配当等」と書かれており、それをそのまま書き写したのでしょうが、日経新聞も落ちたなと感じます。
正確には、預貯金や有価証券といった残高は反映されず、そこから生まれた金融所得のうち、支払調書の提出義務があるものが対象になります。皆さんにとっては、新NISAもiDeCoも含まれず、非課税のものはスイッチングで売却しても含まれないと覚えておけば十分です。
どのくらい影響が出るのか?(12:54)
三菱総合研究所が、75歳以上の単身世帯で負担割合がどう変わるかを試算しています。1割負担の方が0.4ポイント、2割負担の方が2.3ポイント下がり、3割負担の方が2.7ポイント上がる結果で、ほとんど動きません。3割負担の方が増えても、そもそも貯蓄を持つ人が少なく、特定口座で溢れるほど持つ人はさらに少ないので、当然の結果でしょう。
逆にいえば、これに文句を言っているのは相当お金を持っている方ということになります。負担力のある人に負担してもらい、負担力のない人に恩恵を回すというのが、高市政権の趣旨ですから仕方がないと思いますが、増えるにしても25%までにしてほしいところです。
どんな対策ができる?5選(15:25)
対策は大きく5つあり、過去の動画でも扱いました。1つ目は新NISAの活用で、非課税の運用益は所得に反映されないため、多くの方がすでに実践されているでしょう。2つ目は、特定口座の資産を75歳前に売却しておくことです。税金を早めに払うことになりますが、どうせ払うのですから、2027年中に一度売却して買い戻す、いわゆる益出しをしておきます。利益を少なくしておけば、社会保険料にも反映されにくくなります。
3つ目はiDeCoや企業型DCの活用で、今後は最も有力になるでしょう。退職金の10年ルールの見直しで税負担が大きくなる話はありますが、社会保険料の面では別で、一時金で受け取れば退職所得になり、算定に含まれません。運用中も非課税ですから、魅力はさらに増しています。4つ目は、DCの年金受け取りを75歳までに終了することです。年金で受け取ると所得が増えて、確定申告が必要になり、保険料や3割負担の判定に響くため、75歳までに受け取り終えるわけですが、国民健康保険料には反映されるので、一時金での受け取りが有力な選択肢になります。
5つ目は、75歳までに投資を終了し現金化した資産を取り崩して生活することで、これなら銀行の利子は反映されません。国債で運用していると反映されますが、金額は知れていますし、定期預金などに替えて、資金を使う時期に応じて預金の種類を変える方法もあります。
どれもまんべんなく使えばよいのですが、皆さんが敬遠しがちなDCの活用が、ここに来て大きくなってきました。退職者特例の話もあるので、なるべく早く始めたほうがよく、後回しにすると後で差が出ますし、設計も必要になります。
75歳未満でも関係がある人(19:27)
75歳未満の人は関係ないと安心していると、そうはいきません。国は不公平の是正という正義の味方の立場で、現役世代の中低所得者への手当てを手厚くするのが高市政権の方針であり、給付付き税額控除や消費税減税からの流れの着地点を探っています。収入のある人に負担してもらうなら、会社を辞めてから75歳までの国民健康保険料を払っている方への拡大も、当然視野に入ります。国民健康保険も後期高齢者医療制度も地域が運営しているので、データベースがあれば反映できます。まずは事故がないよう、少ない範囲でスモールスタートをするのでしょうが、今回の社会保障審議会でも言及があり、できる限り早く入ってくるでしょう。
関係するのは、繰り上げ受給をして老後資産を運用しながら取り崩そうという人です。年金はそういう使い方をするものではないと何度かお話ししましたが、お得だからと新NISAに入れるのであれば問題ありません。ただ、新NISAの枠は1800万円で育つまでの時間も必要なため、特定口座に溢れる人には影響が出ます。iDeCoや企業型DCを選べたのに入れず、特定口座で運用している方も影響を受けます。FIREを目指す方、すでにFIREした方には直撃で、金融資産は多額になりますから生活水準を下げない限り新NISAだけでは厳しいでしょう。
家族信託も関係します。信託報酬を受け取ると確定申告が必要な所得なので、すでに国民健康保険料に反映されています。回避するには、75歳の時に自分の所得でなければよいので、生前贈与で子どもに資産を渡し、会社員の子ども名義で収入を得る方法がありますが、これは親子の厚い信頼関係がなければ成り立ちません。
サラリーマンは関係ない?(25:03)
これまでは、サラリーマンには関係ないだろうと考えていました。協会けんぽや健康保険組合の加入者は標準報酬月額で保険料が決まるため、金融所得課税は強化されないと見ていたのです。ところが審議会の資料を見ると、国はやる気満々で、金融所得による保険料徴収を考えているようです。
単純には金融所得を標準報酬月額に加える形で、毎月の給料にかける仕組みを国民健康保険と同じ前年所得に変えるか現行制度に金融所得を加えるかの2通りが考えられます。保険料の徴収は企業側が行うため、金融所得を知られてしまうのが嫌だという声は多いはずです。実際、会社に分かってしまうからとiDeCoに入らない人もいました。かなりの制度改正ですが、このスピードでデータベースを作ってきた人たちなので、やる気になればやりそうです。
そうなれば75歳未満に広げるハードルも下がり、現役世代は3割負担が基本なので窓口負担は変わらない一方、保険料自体が上がります。ただ、話されているのは特定口座で、新NISAやiDeCoは含まれないので逃げ道はあります。今後は特定口座の売却や配当、分配金がいずれ健康保険に反映されるので、資産を増やすのをやめる必要はなくとも、預け先を考えたほうがよく、iDeCoや企業型DCへの加入は待ったなしです。
まとめ(30:24)
厳しい世の中になってきましたが、使える制度はまだあります。今年12月からは、iDeCoや企業型DCの拠出上限が、多くの方で月額6.2万円まで引き上がるでしょう。投資資産を増やしつつ、非課税で運用し、保険料にも窓口負担にも反映されない形を取り入れたいところです。ただ、iDeCoに入れすぎると元気な世代で使えなくなるため、新NISAを取り崩しながら使う方法もあります。
特定口座に溢れる人は、完全に富裕層や準富裕層で、法の趣旨はそうした人に少し負担してもらうことなので、基本はやはり非課税口座の活用です。iDeCoと新NISAのどちらがよいか、その割合はという質問は多いのですが、将来どう生活し、いくら使うのかが分からなければ答えは出ません。目安としては、手取り収入の10%までならiDeCoや企業型DCに入れてもやりすぎではなく、それ以上は資産設計が必要です。将来いくら必要か、毎月いくら貯蓄や投資ができるかを考える家計管理と資産設計、その上で投資に回せるお金があるなら投資戦略と、この3つは全員に必要で、分からないままではお金の不安は消えません。
またこちらの動画「60歳繰り上げ受給で投資すれば得?実は危険な理由3選」では、年金を繰り上げて投資するリスクと、長生きに備えて公的年金を活用する老後の資産設計について解説していますのでぜひご覧ください。





