全世界株式オルカンと全世界投資の違い【最近チャンネルを見始めた方へ】
最近チャンネルを見始めてくれた方から、全世界株式と全世界投資の違いについて質問をいただくことが増えています。両者は名前が似ているため混同されやすく、コメント欄でもたびたび話題になってきました。今回はこの点を改めて整理していきたいと思います。今後はチャンネルのトップページなどにも案内を出すことを検討しているほどです。
視聴者から寄せられたコメントには、こちらで使っている全世界投資という言葉をオルカンのことだと思っていた、という声が多く見られました。名前がややこしいのではないかという指摘や、最近チャンネルにたどり着いたばかりで全世界投資の意味がよく分からないので定義を教えてほしいという声もあります。オールカントリーと全世界投資を同じものだと思い込んでいたという意見も少なくありません。
定義と内容の勘違い(0:53)
実は全世界投資という言葉自体は、こちらの方が先に使い始めたものです。ただし発信規模では大手の資本力に及ばないため少数派として扱われてしまい、逆に全世界株式のことを言い間違えているのではないかと受け取られることさえあります。言葉が違う以上、両者が何かしら異なるものだと理解してもらえるはずですが、実際にはそう単純ではないようです。
全世界投資というのは投資戦略の話であり、アセットアロケーションという考え方に基づいています。ここでいうオルカンとは、オールカントリー・ワールド・インデックスを採用した投資信託であるeMAXIS Slim全世界株式の通称で、登録商標にもなっている商品です。オルカン自体は優れた商品であり、実際にこちらでも保有していますし、会員の中にも数多く保有している方がいます。オルカンを使うことがだめだと言っているわけでは決してありません。
伝えたいのは、資産形成を株式だけに頼ると心理面でも構造面でも問題が起きやすいということです。株式に加えて債券やリート、最近では金なども組み入れ、さらに日本・先進国・新興国といった地域の分散も行う。これらをまとめて一言で表すとアセットアロケーション運用という考え方になります。
オルカンは全世界の株式には投資していますが、債券には投資していません。リートも一部含まれてはいるもののその割合はごくわずかで、金についても間接的に含まれる程度で割合は非常に低くなっています。そうした比率について改めて考えてみようというのが今回のテーマです。
オルカンにさまざまな資産を組み合わせることでリスクを下げ、安定的な運用を目指すことができます。こうしたアセットアロケーション運用を行うことで、長期投資・資産分散・時間分散という投資の三大原則を効果的に活用できるようになります。
全世界投資とは、これらの考え方をまとめてマネーセンスカレッジが独自に調べ上げ、アセットバランスとして紹介しているものです。つまり全世界投資はあくまで投資の方法論であり投資戦略であって、細部まで考え抜かれた内容を総称してそう呼んでいるということになります。
全世界株式(オルカン)と全世界投資の違い(4:28)

出典:MUFG
まず混同されがちな全世界株式、通称オルカンについて整理します。オルカンの投資対象は文字通り全世界の株式で、購入方法としては時価総額加重平均という方式が採用されています。三菱UFJアセットマネジメントが公表している2026年3月末時点の国別構成比を見ると、アメリカが63.2%、日本が5%、新興国が11.4%という割合になっています。これは株式の時価総額に基づいて全世界に投資した結果、自然とこうした比率になったというものです。こうした内容を1つのファンドで100円から購入できるのは非常に画期的なことであり、使い勝手の良さという点でオルカンには特に問題はないと考えています。
ただし、これだけが全世界への投資というわけではありません。地域の分散という観点では日本・先進国・新興国の3分類が今の主流になっています。もちろんさらに細かく分けることも可能ですが、分類を増やすほど購入する商品の数が増えてしまうため、おおむね10銘柄程度に抑えるのが望ましいとされています。それ以外の小さな国々も世界には存在しますが、全体に占める割合が非常に小さいため対象から除外しています。
株式以外のアセットクラスとしては債券や不動産があり、その他にオルタナティブと呼ばれるコモディティ、つまりエネルギーや農産物、貴金属などが含まれます。金は古くから投資対象とされてきたため、コモディティの中に含まれつつも別枠として扱っています。地域3分類とアセットクラス3種類を掛け合わせた3×3のマトリクスで9つの分類ができ、そこにオルタナティブを加えた合計10種類がアセットクラスと呼ばれるものです。この10種類にまんべんなく投資し、それぞれの資産に何パーセントずつ配分するかを決めていく考え方がアセットバランスであり、そのバランスに沿って投資することをアセットアロケーション運用と呼びます。
このアセットアロケーション運用の考え方はノーベル経済学賞にもつながっており、関連する研究者は3名います。中でも最初にこの理論を打ち立てたのがハリー・マーコウィッツです。シカゴ大学の学生だった当時にまとめたわずか15枚のレポートが金融の世界に衝撃を与え、当時のウォール街を騒然とさせたといわれています。発表当初はまったく受け入れられず、そんなものは嘘に決まっていると一蹴されていましたが、研究が重ねられるにつれてその正しさが認められていきました。
世界の主流はアセットアロケーション運用(9:07)
実際、皆さんの年金を運用しているGPIFもアセットアロケーション運用を採用しています。資産規模は300兆円にのぼり、年金としては世界最大の規模を誇ることから通称クジラとも呼ばれています。それに匹敵する規模の年金基金としてはノルウェー政府年金基金があり、複数の基金の合計で1.58兆ドル、日本円にして約250兆円にのぼります。さらにカリフォルニア州職員退職年金基金も4500億ドル、日本円で約72兆円の規模を持っています。
これらはいずれも国家予算を超えるほどの金額をアセットアロケーション運用によって運用しており、それでいて安定的な結果を残しています。GPIFについては、紹介を始めた当時はまだ150兆円に届いていませんでしたが、今では300兆円と倍以上に増えています。このことからも、アセットアロケーション運用が世界の主流な投資方法であり投資戦略であることが分かると思います。
なぜ年金がこの運用方法を採用するのかといえば、それだけ大切な資金だからです。しかし大切だからといって手をつけずに寝かせておくだけでは当然運用は回りません。実際GPIFもかつては債券中心の運用で、ほとんどが国内債券を占め、利回りがまったく上がらない時代がありました。そこで株式を組み入れてアセットアロケーション運用を導入したことで、リスクは増えるものの相対的に見ればかなり抑えられ、インフレや年金財政の悪化にも対応しやすくなりました。
長期運用と資産分散、これがアセットアロケーション運用の基本であり、そこに時間分散も組み合わせることで、できるだけリスクを抑えながら安定した運用を目指しています。
GPIFは市場運用開始以降で4.33%の利回りを出しています。マネーセンスカレッジのアセットアロケーションは2003年にサービスを開始し、現在までの実績で8.06%となっており、期待利回り7%に対してやや上振れした結果が続いています。これはあくまで過去から現在までの実績であり、将来を保証するものではありませんが、少なくとも25年ほどの期間で運用に耐えうる結果を示しているといえます。
〇〇ショックは定期的にある!(12:08)
とはいえ、リーマンショックやコロナショックのように資産が大きく下落する局面は定期的に訪れます。株式は本来ずっと保有し続け、その成長を享受したいものですが、心理的にそれが難しいという問題があります。値段が下がってしまうことによる心理的な負担だけでなく構造的な問題も生じてしまうため、結局はアセットアロケーション運用の方が安定的で再現性の高い結果を得られると分かり、この方法を採用しています。
日本国内にアセットアロケーション運用という言葉すらなかった時代から、25年ほど前にサービスを開始し、全世界投資という言葉を使い続けてきました。オルカンが登場したのはここ数年のことですから、歴史の長さには大きな違いがあります。
とはいえ規模としては非常に小さな存在であることは素直に認めるところです。それでも一人ひとりの資産運用に寄り添いながら、ファイナンシャルプランや家計管理の大切さも含めて伝えてきました。ここからは、なぜアセットアロケーション運用によってリスクが抑えられるのか、その仕組みについて見ていきます。
リスクを低減させる仕組み(13:30)
この仕組みを理解するうえで分かりやすいのが、ノイズキャンセリングイヤホンの例えです。ノイズキャンセリングイヤホンは外部の音をマイクで拾い、その音とちょうど正反対の波形を耳元で流すことで、音を打ち消して静かな環境を作り出しています。聞きたい音楽や会話は残しつつ、混ざっているノイズだけを打ち消す仕組みです。ノイズの波をAとすると、それとは正反対の波Bを作り出し、AとBを同時に流すことで波同士が打ち消し合い、結果として平坦な状態になります。
これを金融の世界に応用したのがアセットアロケーション運用の考え方です。金融商品の価格も上下に大きな波を打っており、ある金融商品Aとまったく正反対の値動きをする金融商品Bを半分ずつ持てば、両者を合算したときになだらかな線に近づいていきます。ただしここで問題になるのは、Aがオルカンだった場合、リーマンショックのように60%も下落するような局面で、オルカンと完全に正反対の値動きをしながら資産が伸びていく商品は世の中に存在しないということです。そんな都合の良い商品があれば苦労はしません。
そこで、できるだけ違う値動きをしながらも長期的には価格が上昇していくものを探すことになります。その代表例が株式に対する債券です。債券を組み入れることで、株式と完全に打ち消し合うわけではないものの、値動きの方向を和らげる効果が期待できます。その配分比率は単純な1対1ではなく、適切な配分を導き出すために金融工学という数学に基づいた計算手法が使われます。
実際にこの計算を突き詰めて作られた金融商品が引き起こした問題が、リーマンショックの引き金となったサブプライムショックでした。そのため金融工学だけでは説明しきれない部分についても、現在進行形で研究が続けられています。
実務家としては、実際にうまく機能する形で提供することを重視しています。皆さんの資金は300兆円規模の年金とは違い、月に数千円からでも始められる金額です。そこで、日本国内で購入できる少ない本数の金融商品でこの考え方を実現しようと組み立てたのが全世界投資であり、2003年からサービスとして提供してきました。
アセットアロケーションを組み入れることによって得られる効果は大きく2つあります。1つは下落に強くなること、もう1つは長期投資の効果とも重なりますが、元本割れの確率を下げられることです。
リスクを低減させるメリット①下落に強くなる(17:11)
まず下落に強くなるという点について、リーマンショックの例がわかりやすいです。当時は先進国株式や新興国株式、日本のリートなど、あらゆる資産が軒並み大きく下落しました。オルカンも同様の商品として計算すると、およそ60%の下落率になります。100万円が40万円まで目減りするということです。この40万円を元の100万円まで戻すためには、単純な100%のリターンでは足りず、138%のリターンが必要になります。
同じ計算で63%の下落からの回復には170%のリターンが必要というように、下落率が大きくなるほど必要な回復リターンは急激に膨らんでいきます。しかもそのリターンを同じ期間で得られる保証はなく、回復までに長い時間がかかってしまいます。
一方、こちらの全世界投資で実際に起きた下落は38%にとどまりました。それでも十分大きな下落ですが、100万円が62万円になったとして、それを100万円に戻すために必要なリターンは61%で済みます。下落率で見ると60%と38%で20ポイントほどの差にしか見えないかもしれませんが、回復に必要なリターンで比べると桁違いの差になり、当然回復にかかる時間も短くて済みます。
この違いは、運用しているお金を実際に使いたい場面が来たときに大きな意味を持ちます。回復までに7年も12年も待てるかといえば、そう簡単な話ではありません。貯蓄や投資はそもそも将来使うために行うものであり、必要なときに大きく目減りしたままでは困ってしまいます。だからこそ、できるだけ安定した運用を目指す意味があるということです。
リスクを低減させるメリット②元本割れ確率が下がる(19:35)
もう1つのメリットが、元本割れ確率が下がるという点です。オールカントリーのリスクを18%、リターンを8%として計算すると、全世界投資ではリスクが11%まで下がります。これはアセットアロケーション運用を採用しているためで、その分リターンは7%程度に下がります。
リスクの数値については、ドル建てで配当込みの全期間で計算すると16%程度になるという見方もありますが、株式だけで構成される商品であれば18%前後を見ておくのが妥当だと考えています。将来的な変動を見込めば20%程度になってもおかしくないという指摘もあるため、地域分散をしているオールカントリーであれば多少低めの18%を採用しています。リターンについても日本円建てで9%と見る向きもありますが、1〜2%程度の差であれば結論が大きく変わることはありません。

過去の動画で行ったモンテカルロシミュレーションの結果を見ると、30年間運用した場合の分布にはかなりのばらつきがあります。一般的によく紹介される平均値は、実際の分布の中では最も多い結果を示している場所とは限りません。むしろ最頻値の方が分布のピークに近く、平均値と最頻値の間に位置するのが中央値です。オールカントリーの場合、最頻値はおよそ6300万円で平均値よりも2400万円ほど低くなり、1万回のシミュレーションのうち2.8%で元本割れが発生するという結果になりました。

同じシミュレーションを全世界投資で行うと、最頻値は4300万円とオールカントリーよりおよそ2000万円高くなり、中央値はほぼ同じ水準に収まります。平均値と最頻値が中央値に寄っていく、つまり大負けもしないけれど大勝ちもせず、狙った結果に近づきやすくなるということです。もちろん30年という長期であればぶれは避けられませんが、現時点で提供できる安定運用としてはこれが一つの到達点だと考えています。
期待リターンとしてはおおむね7%程度が必要になってくると考えていますが、より確実性を求めるのであれば預金など元本保証のある方法を組み合わせることも選択肢になります。ちなみに全世界投資の元本割れ確率は数学的に計算すると0.073%、シミュレーション上もおよそ0.1%という結果になっており、リスクを取っている以上ゼロにはなりませんが、比較的低い水準に抑えられていると考えています。

参考までに預金でリターン8%を得られた場合を試算すると、リスクがゼロであるため分布は1本の線に集約され、1000万円が30年間で必ず1億円になるという結果になります。オールカントリーの平均値も1億円程度でしたが、これはリスクについて触れていない数字であり、預金の結果に近いイメージだと捉えた方が実態に近いといえます。リスクとリターンは必ず同時に見る必要があり、どちらか一方だけを取り上げて結論を出すのは避けるべきだと繰り返し伝えています。
ここまで述べてきた内容は、アセットアロケーション運用こそが全世界の投資における主流かつ王道の方法論であり、300兆円規模の資金でも通用する考え方だということです。それを2000円という少額から始められるようにしたのが全世界投資であり、GPIFと同等かそれ以上の運用利回りを、より抑えられたリスクで実現できていると考えています。
GPIFが10年で元本割れがなくなる計算になるのに対し、こちらのアセットバランスでは7年で元本割れがなくなるという過去のデータもあります。10種類のアセットクラスにまんべんなく投資することが重要ですが、まんべんなくといっても均等に配分するのではなく、それぞれにウェイトをかけて配分を決める必要があります。
この計算は誰でも行うことはできますが、その結果が本当に機能するかどうかを検証するのは容易ではなく、実際に試算するたびに違う結果が出てくるものです。日本人特有のリスクや日本円建てで生活する前提を踏まえながら最適化した結果が、全世界投資と呼んでいる方法論だといえます。
まとめ(26:37)
オルカンをはじめとする全世界株式は、リターンが期待できる優れた商品だと考えています。歴史的に見ても投資の主流な商品は一貫して株式であり、その位置づけは今も変わっていません。株式投資そのものは資産形成に欠かせないものです。ただしオルカンだけを保有していると、暴落時の下落幅が大きくなり心理的に耐えられなくなるだけでなく、構造的な問題も生じてしまいます。その結果、30年後にこれくらい貯まっているだろうという想定から大きくぶれた結果になりやすく、これはリスクの高さに起因しています。
多少リターンを削ってでも安定性を高めるために、債券を含めた全世界のアセットクラスにまんべんなく投資する。それがアセットアロケーションであり、日本人向けに最適化した形で提唱しているのが全世界投資という方法論です。リターンはオルカンよりもやや低くなりますが、その分リスクが抑えられるため下落に強く、元本割れ確率も大幅に下げることができます。
同じ期間で比較した場合、2003年のサービス開始当初に選べた投資信託は今から見ると手数料が高かったにもかかわらず、それでもこれだけの利回りが出ているという点は安心材料の一つになるはずです。投資が怖いと感じる方がいるのは自然なことですが、その不安に対して一定の答えを提示できているのではないかと考えています。
またこちらの動画「年金GPIFの運用益41兆円、「元本割れリスク」を抑える仕組み」では、資産分散で元本割れリスクを抑える仕組みを紹介していますのでぜひご覧ください。





