「悩める50代」見えてきたリタイアの課題といますぐすべき、たった一つのこと
今回は、野村アセットマネジメントが行った「インベスターインサイト2025年リタイアメント版」というアンケート調査を取り上げます。2026年4月に公開されたばかりの資料で、無料で読める読み応えのある内容になっています。
この調査は50歳以上を対象にしており、60歳を過ぎても働いている方や、まだ年金を受け取っていない方も多く含まれています。老後が近づくにつれて悩みが増えていくのは当然ですが、今回の調査では特に50代の方に悩みが顕著に表れていることが見えてきました。
まずはその実態を共有し、原因を探ったうえで、後半では解決の方向性についても触れていきます。
50代の幸福度が他の層と比べて低い(1:52)
調査は野村アセットマネジメント資産運用研究所によるもので、対象者は1万人を超える規模の大掛かりなものです。50歳以降の年齢層ごとにセグメントを分け、リタイアメントに関するさまざまな課題や幸福度を調べており、読み取れる情報がたくさん詰まっています。

出典:野村アセットマネジメント資産運用研究所
まず注目したいのが、50代の幸福度が他の年代と比べて低いという結果です。全体平均は6.4点ですが、50歳から59歳だけが唯一6点を割り込み、5.9点という数字になっています。内訳を見ても、8点を超える高い幸福度をつける人は非常に稀で、7点までのあたりに回答が集中しています。
このアンケートは、最も幸福を10点、最も不幸を0点として、自分自身が今どのくらい幸福を感じているかを答えてもらう単純な形式です。50代に入ると幸福度が下がり、その後は年齢が上がるにつれて徐々に回復していきます。75歳から79歳でわずかに下がる場面もありますが、ほぼピーク時と同水準と見てよい程度です。
どの世代でも回答は5点から7点の範囲に集中し、真ん中を5.5点とすれば7点までをつける人が半数以上を占めます。5点未満をつける人は全体としては少ないものの、50代だけは2割近くに達しており、他の世代より明らかに多くなっています。
この背景には、50代がいわゆる就職氷河期世代と重なる時期にあり、その上の世代がバブル期を経験していることも関係しているのではないかという指摘があります。もちろん幸福度が高いか低いかは、その時々に受けてきた社会的な不利益や負荷とも関わるため、単純に世代だけで語れるものではありません。それでも60代以降、とくに70代以上の世代と比べて50代の水準がやや低く出るのは、ある程度仕方のない面もあります。
幸福というものは本来すでにそこにあるもので、それに気づけるかどうかが大きいのですが、リタイアを迎える前の50代には、さまざまな不安がまだ形を変えずに残っているからこそ、こうした結果に表れているのかもしれません。
幸福度が低い理由(5:10)

出典:野村アセットマネジメント資産運用研究所
続いて、なぜ幸福度が低いのかを探るために、将来への不安の内容を尋ねた調査を見ていきます。グラフは全体、準リタイア層である50代、そしてリタイア層である60歳以降の3つに分かれています。
中でもはっきりと差が出ているのが、生活のための収入に関する不安です。この項目は50代が突出して高くなっています。次に住まいに関する不安も、わずかながら50代で高めに出ています。
一方で、どの世代でも共通して高いのが健康や病気、寝たきりや介護が必要になることへの不安で、これは全世代の半数以上が感じている普遍的な項目といえます。つまり健康面の不安はどの年代にも共通してある一方で、生活資金と住まいという2つの不安は50代に特有に強く出ていることが分かります。
とくに生活のための収入への不安は大きく、準リタイア層である50代の45%が不安であると回答しています。この割合は年齢が上がるにつれて徐々に、そして64歳あたりまでの間にはっきりと下がっていきます。これは資産の取り崩し計画が立ちやすくなることや、自分自身の余命が見えてくることで不確定要素が減っていくことが背景にあると考えられますが、それでも生活資金への不安が大きな割合を占めているという事実は変わりません。
働く理由との相関(7:36)
出典:野村アセットマネジメント資産運用研究所
働く理由が生活のためなのか、それとも生きがいのためなのかを尋ねた調査もあります。生きがいのために働いていると答える割合は、年齢が上がるにつれて大きくなっていきます。これは、生活資金を確保できた人からリタイアしていくため、相対的に生きがいで働く人の割合が増えていくと考えれば自然な結果です。
ここで興味深いのは、生きがいのために働いている人と、生活資金のために働いている人とで、不安の大きさに明確な差が出ている点です。生きがいのために働いている人は、準リタイア層でもリタイア層でも、基本的に不安をあまり感じていません。
一方、生活資金のために働いていると答えた50代のうち、生きがい派で不安を感じている人はおよそ32%にとどまるのに対し、生活資金派ではおよそ半数が不安を抱えているという結果になっています。つまり、生活のために働いている割合が高い人ほど、幸福を感じにくくなる傾向がはっきりと見て取れます。
言われてみれば納得できる話ですが、実際の数字としてここまで相関が出ているのは興味深いところです。
金融資産額と幸福度の相関(9:42)

出典:野村アセットマネジメント資産運用研究所
次に気になるのが、金融資産額と幸福度に相関はあるのかという点です。まず明確な境目として見えるのが300万円未満と300万円以上のラインです。300万円未満では幸福度の平均が5.2点にとどまるのに対し、300万円以上になると一気に6.5点まで上がり、その後はしばらく6.5点前後で推移していきます。
もう一つの境目は1000万円のあたりで、こちらは6.5点から6.8点への上昇となり、平均値としては比較的緩やかな変化に見えます。ただし内訳を見ると、1000万円以上になったとたん8点をつける人の割合が大きく増えていることが分かります。
300万円以上1000万円未満の層では8点をつける人はおよそ2割程度で、7点をつける人の割合もどの層でもほぼ同じ水準です。ところが1000万円を超えると8点以上の割合が一気に伸び、これが平均値全体を押し上げる形になっています。
つまり金融資産額が1000万円を超えると、幸福度が大きく高まる人が増えるという傾向がはっきり表れているといえます。
世代別の金融資産総額(11:46)

出典:野村アセットマネジメント資産運用研究所
この結果を踏まえて、50代から59歳の金融資産額の分布を見てみます。金融資産が「ない」と回答した人が8%、300万円未満の人が15%で、合わせると4人に1人にあたる23%が300万円未満という結果になっています。
先ほど見たとおり、300万円未満は幸福度に大きく影響する境目であるため、この割合の高さは50代の幸福度の低さと無関係ではなさそうです。一方で1000万円を超えると幸福度が上がりやすくなることを踏まえると、世帯人数や働き方の違いはあるにせよ、資産額が少なければ生活のために働かざるを得なくなる傾向も自然な流れといえます。
ここまでの結果から、金融資産額は幸福度にかなりの割合で影響を与えており、しかも1000万円を超えたあとも幸福度はさらに上がり続けることが分かります。海外で行われた幸福とお金の関係に関する行動経済学の調査でも同様の結果が出ており、ある金額を超えると幸福度が頭打ちになるという通説は必ずしも正しくないことが示されています。
ただし資産額が増えるほど相関の強さそのものは小さくなっていくため、重要なのは幸福を感じる力があるかどうかという指摘もあります。とくに日本人にとって仕事は幸福感に大きく関わる要素であり、生きがいで働いているかどうかという視点も、資産額と並んで幸福度を左右する大きなポイントだといえそうです。
この感じ方の差は認知の問題でもあり、物事を前向きに捉える力が高い人ほど、幸福度が上がりやすい傾向が海外の調査からもうかがえます。
金融資産の内訳(投資家・非投資家別)(14:18)

出典:野村アセットマネジメント資産運用研究所
金融資産を増やしたいと考える方に向けて、投資家と非投資家で資産額の内訳を比べた図も見ておきます。両者の平均資産額には実に3倍もの差があります。
資産の内訳としては国内株式が2割、投資信託が13%程度である一方、預貯金の割合も43%とそれなりに高く、これは一般的な家計調査の数字ともほぼ一致しており、特別に偏った結果ではありません。老後が近づくにつれて現金比率が高くなるのは自然な流れで、実際にリタイアを迎えた方であっても、一定額を投資から外して現金のバッファーとして持っておく考え方は、ファイナンシャルプランの実務でも取り入れられている手法です。
それでも投資をしている人としていない人とでは、資産総額に約3倍もの開きが生まれるという事実は非常に大きな意味を持ちます。これは20代や30代であっても同じで、投資や資産運用をしているかどうかで将来的に3倍の差がつく可能性があるということです。今後、日本国内でもインフレが進み、投資が資産形成の主流になっていくとすれば、この差はさらに広がっていく可能性もあります。
仮に非投資家が300万円を貯めている間に、投資家は900万円から1000万円近くにまで到達しているとすれば、その差はまさに幸福度を左右するラインをまたぐかどうかの分かれ目になってしまいます。
「自分の現在地を知らないこと」が老後のお金の不安の正体の1つ(16:22)
ここまで見てきたように、50代が抱える悩みの多くは、生活資金をどう確保するかという点に集中しています。リタイアを迎えたあとも、生活のための収入をどう賄うかは変わらず大きな不安材料であり、これがはっきりしないほど幸福度は下がっていく傾向にあります。
すでに生きがいを感じながら働いている方は、そのまま続けることが幸福につながる一つの道だといえます。まだ生活のために働かざるを得ない50代の方であれば、今の仕事に対する捉え方を変えられないか、あるいは転職によって生きがいを感じられる仕事に移れないか、考えてみる価値があります。若い世代であればなおさら、生きがいを感じられる仕事に就くこと自体が幸福度を大きく押し上げる要因になります。
金融資産についても、300万円未満では幸福を感じにくく、1000万円を超えると感じやすくなるという結果が出ていますので、300万円から1000万円のあいだでも幸福度の水準自体は決して低くありませんが、8点以上の高い幸福度をより多く得たいのであれば、1000万円という数字が一つの目安になりそうです。
60代以降も働く場合には、生活のためというより生きがいのために働ける仕事を選べるかどうかが大切で、定年後の延長雇用のなかにやりがいを見出すことも、後進を育てるといった役割を担うことも、幸福につながる選択肢になり得ます。長年サラリーマンとして働いてきた人がいきなり独立するのは簡単ではありませんが、延長雇用のなかでも自分なりの役割を見つけられれば、それは十分に喜ばしいことだといえます。
まとめ(18:45)
繰り返し伝えている家計管理、資産設計、投資戦略という3つの柱は、老後の資産計画にもそのまま当てはまります。老後も結局は収入と支出のバランスをどう計画するかが基本であり、そのためにはある程度の資産額が前提になります。貯蓄だけに頼らず、運用という方法を取り入れることで、資産形成の効率は先ほど見たとおり3倍近くにまで変わってくる可能性があります。
今回の調査で見過ごせないのが、50代のうち半数以上が自分自身の金融資産を正確に把握できていないという事実です。これは老後の不安が消えない大きな要因の一つだといえます。以前の動画でも取り上げましたが、退職金についても83%以上の人が受け取る1年前の時点でもその金額を知らないという結果が出ており、ほぼ受け取る直前までわからないというのが実情です。
こうした背景を踏まえると、資産を把握できていない人が多いこと自体は、むしろ想定の範囲内ともいえます。だからこそ今日からできることとして、まずは自分がいくら貯蓄し、いくら投資しているのかを一度すべてリスト化し、年に1回は更新することがおすすめです。
資産があちこちに散らばっていて分からないという方も多いと思いますが、まずは預貯金から、通帳を見てもアプリを見てもかまいませんので、その時点の残高を確認すれば十分です。NISAやつみたてNISAは証券口座を見れば一目で分かりますし、企業型DCについても支給されているIDとパスワードで確認できます。
退職金の見込み額が分からない場合は、人事や総務に相談するか、就業規則の退職金規定を確認して自分で計算してみるのも一つの方法です。個人年金保険や企業年金、自営業であれば小規模企業共済やiDeCoの積立額なども、調べれば把握できるはずです。事業用の余剰資金があればそれも加え、ローンなどの負債があれば差し引くことで、自分自身の資産総額がおおよそ見えてきます。
貯蓄だけでは資産は目減りしていく一方ですが、今のような金利のある世界では運用によって資産を増やしていくことができます。60歳・65歳時点でいくらになっているかをシミュレーションすること自体はそれほど難しくなく、想定利回りをかけて計算すればおおよその見込みが立ちます。全世界投資であれば7%程度を想定することもありますが、控えめに見て5%程度で計算してみるのも一つの目安になります。それすら分からないまま運用を続けているとすれば、それは基本的にギャンブルに近い状態だといえます。
まずはその計算をしたうえで、1000万円を超えるかどうかを確認してみることがおすすめです。実際に老後資金の計画を立ててみて1000万円では心もとないと感じるのであれば、3000万円や5000万円といった具体的な目標額を定めるのも良い方法です。介護や医療が必要になる場面を経験すると、お金の余裕が安心材料になることを強く実感しますので、その気持ちはよく分かります。だからこそ、できるところから今日にでも始めてみることがおすすめです。
相談を受けていると、本当に幸せになりたいのだろうかと感じてしまうほど、何も行動を起こさない方がまれにいらっしゃいます。幸せというのは自分自身で感じ取るものである以上、行動を起こさなければ気持ちはどんどん沈んでいってしまいます。逆に一歩でも行動を起こしてみると、それだけで気持ちが前向きになり、自己肯定感にもつながっていきます。まずは一番取り組みやすいところ、たとえば預貯金の把握から始めてみると、そこから徐々に幸せの階段を上っていけるはずです。
細かい数字にこだわる必要はなく、1万円単位の端数は無視してかまいませんし、使途不明金についても資産全体の1割程度であれば十分に許容範囲です。1000万円が900万円から1100万円のあいだで多少ぶれていても、それは誤差の範囲として捉えれば問題ありません。
実際に資産を洗い出してみたら、これ以上投資をしなくても十分に足りていたという方も少なくありません。その場合はリスクを取る必要もなくなりますが、それでもインフレへの備えとして投資を学びたいという方が多いのも事実です。
今回取り上げた野村アセットマネジメントのアンケート調査は、フルカラーの要約版としてPDFでも無料でダウンロードできますので、興味のある方はぜひ概要欄などから確認してみてください。
またこちらの動画「【8割の人が調べない】これ知らないと老後破綻!?今すぐ確認すべき3つのポイント」では、退職金の平均額と制度確認の要点を解説していますのでぜひご覧ください。





