S&P500に「金」を足すとどうなる?リスクを下げてリターンを狙う「分散」投資術

S&P500の投資信託は現在も高い人気を維持している一方で、金も大きな上昇を見せています。そうした中、S&P500に金を加えるとリスクが下がり、リターンが増えるという主張が注目を集めています。果たしてこれは本当なのか、データを基に検証していきます。

金は現在上昇トレンドにあり、S&P500に対するカウンター資産として位置づけられています。S&P500が下落する局面では金が上昇するという期待から、バランスを取るために金を組み入れる動きが見られます。この考え方はコロナ禍の頃から言われ続けており、米国株と金を半々にするといった提案も存在します。

S&P500に金を入れるポートフォリオ(1:27)

出典:トウシル

楽天証券のトウシルで公開されている表には、興味深いデータが示されています。S&P500単体ではリターンが約8%、リスクが15.22%となっています。ここに金の割合を10%、20%、30%と増やしていくと、リスクは低下しリターンは上昇するという結果が示されており、ドローダウンも改善されています。

このデータは2000年8月から2025年8月末までのブルームバーグのデータを使用しています。ただし、ドルベースでの計算であるため、円建てで考えるとリスクは3%から5%程度上昇する点に注意が必要です。トータルリターンについてはほぼそのままか、やや下がる程度と考えられます。

このデータを見ると、確かにパフォーマンスが滑らかになっていきます。2020年や2022年頃からこうした主張は続いており、金が大幅に上昇し、米国株との比率が変化してきた状況を受けて、ポートフォリオの分散投資先として金が推奨されてきました。

S&P500と金の値動き2000年〜現代(3:30)

出典:Trading View

しかし、ドルベースで2000年から現在までの金と米国株の両方をチャートで確認すると、興味深い事実が見えてきます。この期間で金は1394%の上昇、S&P500は345%の上昇となっており、確かに金の方がリターンは高くなっています。株価との連動性はほとんどなく、相関係数も低いため、組み合わせれば株式のリスクを下げることができます。

ただし、これは後付けの結果です。2000年から投資を始めていたらという前提ですが、実際にはその当時、金はほとんど動いていませんでした。チャートを見ても長期間横ばいの時期があり、米国株も下落していた時期があります。リーマンショックの時には金融不安時に買われる安全資産として金が注目されましたが、これは結果論としての見方に過ぎません。

S&P500と金の値動き1990年〜現代(5:03)

出典:Trading View

期間をずらして検証してみます。1990年のITベンチャーバブルの時期も含めて見てみると、この間に金はプラス905%となっています。金は1990年から2000年初頭まで下落していましたが、その時期に米国株は大きく上昇していました。1990年から現在までで見ると、S&P500はプラス1956%の上昇となり、完全に逆転してしまいます。

このように、資産の評価は切り取る期間によって印象が大きく変わります。以前、TOPIXとS&P500の比較が話題になった際も、TOPIXは全く勝てないという意見が多く見られましたが、最古のデータで比較すると、TOPIXはまだ抜かれていないのです。1970年代などの古いデータも含めると、日本のバブルがいかに大きなものだったかがわかります。

S&P500と金の値動き1980年〜現代(6:23)

出典:Trading View

さらに期間を広げて1980年から現在までで見てみると、金は508%のプラス、S&P500は5777%という圧倒的な数字になっています。やはり株式がどの時代も長期投資において主役となっています。

1980年からのチャートを見ると、金はほとんど横ばいの状態が続いています。直近だけを切り取ると少し上昇しているように見えますが、株式と比べると全く異なります。切り取る時期によって見える景色は完全に変わってしまうのです

こうした記事を見る際は、印象操作がなされている可能性を認識すべきです。1980年代から持ってきて比較するということは、半世紀前までのデータを使用しているということであり、長期投資の視点が外れていると言えます。

1990年のデータを見ても、米国株は100から400まで上昇し300%の上昇を見せていますが、その後マイクロソフトが訴訟で敗訴し横ばいになりました。15年間ほどずっとドローダウンが続き、その時期の底がリーマンショックでした。おそらく15年間S&P500を保有し続けることは困難だったでしょう。リーマンショックは非常に厳しく、多くの投資家が市場から退出しました。

カーブフィッティングの罠(9:08)

これをカーブフィッティングと呼びます印象操作が非常に行われているため、注意が必要です。ただし、ここで金がダメでS&P500や株式の方が良いと主張しているわけではありません。

基本的には全ての資産クラスに投資するというのが最もベターな選択肢です。S&P500に限らず、オルカン100%投資も、直近10年に対してのカーブフィッティングと言えます。もちろん、それに乗って実際に運用が成功している投資家は多く存在します。その間にNISAが導入され、新NISA制度も開始されました。株式が主役であることは間違いありませんし、世界経済の牽引役は米国株だというのも事実です。

問題は今後です。過去の成功にしがみつくのではなく、継続的に学習していくことが重要です。資産分散や時間分散は長期投資的な考え方の王道ですから、それは理解しておくべきでしょう。

どの時代も主役は株式だということは事実です。ただ、資産分散を取り入れると、さらにリスクを抑えることができます。金の上昇も適切に取り入れ、定期的に見直しを行うことで、資産分散やアセットアロケーションの考え方を実践することができます。

大御所たちの意見(12:33)

ポートフォリオについて言及している著名な投資家について触れておきます。レイ・ダリオ氏はオールウェザーポートフォリオで知られており、ポートフォリオの15%を金で保有することを推奨しています。

一方、ウォーレン・バフェット氏は異なる見解を示しています。「17万トンの金は重さも変わらず、何かを生み出すことはできない。その積み上げられた金の立方体を撫でることはできるが、それが何か答えてくれるものではない」と述べています。

バフェット氏は価値を生み出すものを好む投資家として知られており、ビットコインも否定的です。金も同様の理由で評価していませんが、金の価格上昇そのものを否定しているわけではありません。ただし金はお金を生み出さず、保有するには維持費がかかります。効率的な保険などを利用すれば、現在は0.5%や0.2%程度に抑えられています。

また、現物を保有せずに先物で保有している場合、大きな価格変動時には金価格から乖離してしまうこともあります。現物を継続保有していないファンドも存在するため、そういった点にも注意が必要です。

まとめ(14:16)

金をポートフォリオに組み入れることには賛成です。安定性が増すためです。ただし、金の組み入れ比率を増やせば増やすほどパフォーマンスも向上するという主張には反対です。金を半分保有するというのは極端すぎます。

切り取る期間によって結果は全く異なります。今回は3つの期間を示しましたが、過去の一部分だけ切り取れば印象は大きく変わります。その時代ごとに良い時期もあれば悪い時期もあったのです。

投資において重要なのは、株式だけでもなく金だけでもなく、債券もREITもその他の地域も含めた全世界に満遍なく投資するという資産分散、地域分散の考え方を取り入れることです。確かに多少リターンは減少するかもしれませんが、リスクが低下するため、最終的に中央値はほとんど同じになります。むしろ向上する可能性もあります。平均リターンではなく中央値という視点も、一つの考え方として有効です。

過去のデータを参考にしつつも、それに囚われず、長期的な視点でバランスの取れた分散投資を進めていくことが求められます。

またこちらの動画「【金価格高騰中!】今からでも遅くない?金価格の背景とゴールド投資の考え方を解説」では、金高騰の背景と今からの金投資の考え方を解説していますのでぜひご覧ください。

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