国内MMF、9年ぶり復活へ。銀行預金よりお得ってホント?誰も言わない進化と真価についても解説します。

国内MMFが9年ぶりに復活するというニュースが報じられています。MMFとは何なのか、本当に銀行預金よりお得なのか、そして今回の復活にはどのような意味があるのかを解説していきます。

国内のMMFは、ゼロ金利政策やマイナス金利政策により事実上運用できない状況が続いていたため、これまで商品として存在していませんでした。しかし最近では、MRFの復活や個人向け国債の人気上昇など、お金を比較的安全に運用できる商品へのニーズが高まってきています。その選択肢の一つとして、2026年にMMFの復活が予定されています。

今回のMMF復活は、単なる過去の商品の再開ではありません。キーワードとなるのは「ブロックチェーン」です。これは大きな転換点となる動きであり、詳しく解説していきます。

MMFとは何か?(1:39)

日本経済新聞によると、主要な金融機関は早ければ2026年前半にMMFの販売を再開する予定です。これまでMMFがなかった理由は、日本のゼロ金利政策により事実上運用できず、手数料だけがかかってマイナス金利になってしまうためでした。

しかし現在はインフレが起き、金利のある世界に進んできています。日本経済も正常化してきており、比較的安全性の高い商品でありながら、ある程度の利回りも期待できるMMFが、さまざまな資金ニーズをカバーする商品として復活することになりました

日本のMMFはマネーマーケットファンドと呼ばれるもので、外貨MMFのマネーマネジメントファンドとは作りが異なります。ただし、実際に利用する方にとってはその違いをあまり意識する必要はないでしょう。

過去のMMFとの違い(3:42)

今回のMMF復活が2026年になっている理由は、単に過去のMMFを復活させるだけではなく、ブロックチェーン上で取引できるようにするためです。ブロックチェーンは分散型台帳と呼ばれる技術で、このオンチェーン上で取引できるトークン化MMFを復活させようとしています。

これには法整備が必要で、法改正を進めながら届け出などの手続きを経て、2026年の復活を目指しています。過去の動画でも解説したステーブルコインやトークン化預金といった流れの中で、MMFも重要な位置を占めています。特に米国ではこの流れが主流になってきており、日本でも法整備を進めて対応していこうという動きです。

従来のMMFやMRFも、オンチェーン上で取引することで企業間取引がスムーズになったり、プログラムで自動化できたり、24時間取引が可能になったりと、技術革新が同時に進んでいきます。

長期金利について(6:02)

長期金利は2015年から2025年にかけて上昇を続けており、現在の長期金利(10年国債)は1.7%弱で推移しています政策金利も上がってきており、日銀は12月か1月頃に利上げを検討している状況です。

米国も利下げを進めており、国内では岸田政権のもとでインフレや経済成長を見ながら金利が上がっていく段階にあります。この動きは今後も加速していくと考えられ、長期金利が上がれば運用のリターンも取れるようになります。そのため、ゼロ金利政策や異次元緩和によって作れなかった金融商品が復活してくることになります。

MMFとMRFとの違い(7:11)

通常、投資を開始している方にとって、投資資金をプールしておく場所は銀行預金になります。以前はMRFやMMFと呼ばれる投資資金をプールしておく商品がありましたが、事実上運用できなくなったため、銀行預金に代わっていました。

投資をする際、全額を投資するわけではなく、一部を残しておいて良い銘柄があれば購入するというスタイルの方も多いでしょう。そうしたプール資金に少しでも金利をつけるため、証券会社は提携銀行に預けると自動的に買付余力に反映される仕組みを作ってきました。

例えばSBI証券では、住信SBIネット銀行のハイブリッド預金や、SBI新生銀行のハイパー預金に預けておくと金利がつき、SBI証券で買い注文を出すと自動的に資金移動されて購入できる仕組みがあります。ただし、この仕組みには無理やり感があります。

以前は証券会社に入金すると自動的にMRFが購入され、わずかでも金利がついて、買い注文を出すと自動的に売却されるというシンプルな仕組みでした。金利のある世界に戻れば、基本的にはこの形に戻っていくと考えられます。

MRFとMMFは元本保証ではありませんが、MRFは元本割れしたことがなく、MMFも非常に安全に運用されています。銀行預金と比べると、わずかながら金利が高い傾向にあります。もちろん逆転することもありますし、銀行預金は1000万円まで元本保証されているため、商品そのものが異なります。

MRFやMMFは1000万円を超えても投資者保護基金があり、さらにMRFは唯一、金融商品の中で損失補填が認められている商品です。証券会社や運用会社は、元本割れするくらいなら補填してくるだろうと考えられるほど、非常に短期的な金融商品です。

短期国債や社債などを購入して金利収入を得つつ、安全性は絶対に犠牲にしないという運用がなされています。MMFはMRFよりもさらにわずかにリターンが高い商品です。

楽天のマネーブリッジファンド(MRF)は現在0.453%程度の金利で、他社のMRFは0.23%や0.3%程度です。MMFが復活した場合は0.5%付近になると予想されます。

MRFは自動売買ですが、MMFは自分で買い付けや解約を行います流動性については、今回復活するMMFは毎日解約可能で、毎日配当も検討されています。以前のMMFは毎日配当を月末にまとめて再投資していましたが、新しいMMFは毎日配当する仕組みに変わりそうです。

元本保証はありませんが、投資信託として分別保管されているため、証券会社や運用会社、信託銀行が破綻しても資金は保全されます。1億円でも2億円でも、安全にプールできる先として使えます。

現在、SBI証券のハイパー預金は0.42%の金利がついており、楽天のMRFとほぼ同水準です。どちらも0.数%という水準なので、使い勝手を考えるとMRFが最も便利だと言えます。安全に運用されていて金利も高く、自動売買にも対応しているからです。

楽天のマネーブリッジファンドは、まだ自動売買に対応していませんが、いずれ対応すれば完全版MRFとなります。SBI証券を使っている方であれば、ハイパー預金が一つの選択肢になるでしょう。今後、金利水準が上がっていけば、これらの商品の金利も上昇していくと考えられます。

個人向け国債変動10年(18:36)

これらに対抗する商品として、個人向け国債変動10年があります。今は金利が上がっていく状況なので、変動金利の方が有利です。この商品はほとんど民間では作れないようなチート級の商品で、10年国債の利回りの0.66倍相当となっています。

10月6日から募集が始まる回では、ついに1%を超えてきました10年間の商品ですが、1年を超えればいつでも解約可能です。ただし、解約時には過去2回分(1年分)の金利相当額を返還する必要があります。1年目で解約すると利回りはゼロになり、2年目で解約すると実質0.5%程度になります。

そのため、ハイパー預金の0.42%と比較すると、実質的には2年以上使わないお金として預ける先として適しています。こうした商品を使い分けるには、お金の使用時期がある程度確定している必要があり、プランニングが大切になります。

漠然と貯蓄していて「いつか使うお金」という状態では、ずっと低い金利のままになってしまいます。かといって、プランニングできていない状態で高金利の個人向け国債を選んでしまうと、すぐに解約が必要になった場合に不利になります。1年以内の解約は原則できないため、資金流動性が低下してしまいます。個人投資家としては、できるだけ避けたい状況です。計画的に使っていくことで、より高い利回りを得ることができます。

銀行預金とMMFの違い(21:02)

MMFやMRFは銀行預金とは税制が異なります。これらは投資信託なので、株式の譲渡益などと損益通算が可能です。銀行預金は利子所得で損益通算ができないため、この点は大きな違いです。金融課税の一体改革が長年言われていますが、いまだに実現していません。

リスクとしては、元本保証がない点が挙げられます。ただし、投資信託の仕組みによって保管されているため、証券会社が破綻してもお金は証券会社にありません。運用会社が破綻しても、指示を出す会社がなくなるだけで資金は保全されています。信託銀行が破綻した場合でも、法令上厳しい条件で分別保管されているため、基本的に資金は保全されます。

運用によって損失が出る可能性はありますが、それ以外の理由で資金が失われることはありません。非常に安全に運用されているため、安全資産として扱われます。さらに投資者保護基金により1000万円まで保証があり、銀行と比べると手厚いと言えます。金利が高い分、わずかに元本割れのリスクを負っていますが、MRFは過去に一度も元本割れしたことがなく、新しくできるMMFも同様の運用になると考えられます。

元本保証ではないため、投資家によるチェックは必要ですが、そうした点を逐次チェックしていけば、安全に利用できる商品です。

ブロックチェーン技術を使ったMMFとは(23:47)

今回のMMF復活は、単なる過去の商品の復活ではありません。オンチェーン上で取引できるように整備していく中で、MMFは非常に重要な位置を占めています。2026年に、ブロックチェーン技術を使ったMMFを復活させようとしています

ただし、これには課題があります。MMFは投資信託ですが、投資信託は法令上、受益証券の発行が前提となっているため、法令を変えない限りトークン化できません。債券は券面不発行が可能で、株式も株券を見ることはほとんどありませんが、投資信託については券面発行が基本となっているため、法整備が進んでいなかったのです。

ステーブルコインやトークン化預金といった動きは、事業者が求めているもので、今後主流になっていくと考えられます。事業者向けに使われるようになり、その土台ができてから、投資家や消費者に降りてきます。そして最終的には中央銀行デジタル通貨へとつながり、本当の意味で現金がいらない時代になっていきます。新しい1万円札や5千円札が最後の券面発行になるという話も、実際に近づいてきています。

これによるメリットは多くあります。プログラムを組むことができたり、即時決済が可能になったりします。例えば、事業者がクレジットカードで売上を上げた場合、現在は2ヶ月後に入金されます。その2ヶ月間のために資金を借りる必要があり、これが運転資金として銀行融資を必要とする理由です。しかし即時決済されて即座にお金が入ってくれば、この問題は解消されます。お金を借りることでレバレッジ効果が効き、経済がより発展していくことにもつながります。また、追跡が可能になるなどのメリットもあります。

こうした事業者のニーズがある中で、MMFはプール資金として使われるハブとしての機能を持ちます。トークン化預金も出てきますが、投資に向かう場合、トークン化MMFを経由することでオンチェーン上で取引ができるようになります。

例えば、ビットコインやイーサリアムといった暗号通貨で投資している方が、そのお金を直接投資したい場合、現在は一度売却してから投資する必要があります。しかし、すべてをオンチェーンで行えるようになれば、24時間取引が可能になり、追跡もできます。購入目的を明確にすることもでき、スマートフォンのアプリで視覚的に表示することも可能です。即時決済もできるようになります。

具体的には、銀行口座からではなく、法定通貨の現金でもなく、ステーブルコインなどで購入できるようになります。銀行を経由せずに購入できて、しかも適切に追跡できるため、マネーロンダリングではなく正当な取引であることが分かります。24時間取引ができて即座に換金でき、銀行を経由しないため振り込みも即座に反映され、すぐに購入することもできます。

現在、投資信託を購入している方なら分かるでしょうが、お金を振り込んで売買注文を出してから、数日後にお金が入ってくるという時間差があります。これは地味に面倒です。しかし、株式や債券、投資信託をトークン化することで即時決済ができ、24時間取引が可能になれば、非常に便利になります。投資信託の即時決済は特に便利だと言えるでしょう。

こうした新しい仕組みの土台を整備していこうというのが、今回の動きです。日本経済新聞でも分かりやすく説明されていますが、多くの人にとってはまだピンとこないかもしれません。しかし、三大メガバンクが出資したProgmat(プログマ)の関係者が、noteなどで非常に詳しく解説しているので、興味があればそちらも参考にすると良いでしょう。日銀が作成している論文にもつながり、現時点での最先端のトークン化について学ぶことができます。

これまでは不動産のセキュリティトークンなどしかありませんでしたが、今後は金融商品の中でもどんどん増えていきます。時代の流れについていけないということにならないよう、この記事で解説した内容だけでも理解しておくと良いでしょう。

またこちらの動画「【もう現金は必要なくなる!?】ステーブルコインとトークン化預金の違いを解説」では、ステーブルコインとトークン化預金について仕組みや社会への影響をわかりやすく解説していますのでぜひご覧ください。