投資資金の70%を債券にすべし!株価急騰でバンガードが警告
インデックスファンドの草分けとも言われるバンガードが、投資の70%を債券に投資すべきというニュースが話題となっています。
この発表は多くの投資家にとって驚きを持って受け止められており、その背景と日本の個人投資家への影響について詳しく解説します。
スタート(0:00)
バンガードはアメリカの資産運用会社として、世界的に信頼性の高い低コストのインデックスファンドやETFを提供している企業です。同社が2025年8月5日付で発表したレポートでは、債券を70%にシフトすべきだという推奨が示されました。
このレポートは複数のメディアで取り上げられ、投資家の間で大きな関心を呼んでいます。
バンガードのレポート内容(1:00)

出典:Business Insider Japan
バンガードは従来、株式60%、債券40%という伝統的な「60/40ポートフォリオ」を推奨してきました。しかし今回のレポートでは、これをベンチマークとして、株式を60%から30%に減らし、その分の30%を債券に加えて70%にすることを提案しています。
この大胆な配分変更の提案は複数メディアで詳細に報じられ、投資業界に大きな波紋を広げています。従来の常識を覆すような提案だけに、その理由と背景について詳しく検討する必要があります。
バンガードが「債券70%」を推奨するワケ(3:00)
この推奨の背景には、近年のアメリカ株式市場の状況があります。過去10年から15年にわたって米国株は好調な推移を見せており、特に直近3年間は強気相場が続いていました。しかし、複数の指標が長期パフォーマンスにおける米国株式の割高感に警戒信号を発している状況となっています。
バンガードの分析では、今後10年間にわたってアメリカ株式の成長率は鈍化すると予測されています。これは企業の収益率自体はそれほど変わらないものの、株式が非常に高い水準にあるため、リスクプレミアムという観点で株式投資の運用利回りが下がっていくという警告です。
具体的には、リスクプレミアムが現状から今後10年間にわたって大体3.3%から5.3%程度まで落ち込むと予想されており、これは過去10年間と比較すると約3分の1から半分程度まで下がることを意味しています。
一方、債券については大体4%から5%程度で推移するのではないかという予測が立てられています。現状では米国債の10年利回りが約4.2%となっており、株式の方が不確定要素が高く価格変動も激しい中で、将来利益が出るかどうか分からない状況に対し、債券に関しては米国が4.2%の利回りを保証し、10年後には元本が返ってくるというリスクの少なさがあります。
さらに、バンク・オブ・アメリカが公表した2025年8月の機関投資家に対する調査によると、米国株式が割高であると見ている投資家の割合は91%に上り、これは過去最高の水準となっています。S&P500の上位株式に関しては、PER(株価収益率)が22.5倍という水準で推移しており、2000年以降の平均16.8倍と比較してもかなり高い水準にあることが分かります。
日本の個人投資家はどのように考えるのか(5:49)
ここまでの分析はアメリカの状況についてのものです。バンガードはアメリカの会社であり、この発信は米国内の個人投資家もしくは機関投資家、少なくとも米ドル建てで運用している投資家に向けたものです。
これに対して日本人投資家は日本円建てで運用しているため、米ドルでどれだけ利益が出たとしても、日本円で目減りしてしまっては意味がありません。今後株価が下がっていくシナリオを考えると、アメリカの短期金利は徐々に下がっていくだろうと予測されています。
実際にFRB(連邦準備制度理事会)もそのような方向性を示しており、トランプ大統領も短期金利を下げるよう様々な手を使っている状況があります。短期金利が下がれば、当然長期金利も下がっていくと予想されます。
一方で日本では金利が上がっていくという状況にあり、この逆転現象が起きると、今まで日本円安に向かっていたものが日本円高に向かっていく可能性があります。日本円高になれば、海外資産は目減りしてしまうことになります。どの程度目減りするかは予測が困難ですが、少なくとも2割程度の円高は想定の範囲に入れておいた方が良いと考えられます。
アメリカの株式とアメリカの債券に日本人がシフトしてしまうと、当然これらは全て為替の影響を受けることになるため、為替リスクを負うことになります。そのため、バンガードの提案をそのまま適用することはできない状況にあります。
ただし、債券の方にシフトした方が良いという考え方や、バンガードが常日頃から提唱している60/40ポートフォリオで4割は債券で運用しようという趣旨から見ると、個人投資家の現在のポートフォリオと比べてどうなのかという観点で判断することが重要です。
債券投資の割合を考える(9:23)
これまで株式だけで運用されてきた投資家の多くは、おそらく長期投資を志向してS&P500のファンドを購入したり、オール・カントリー(オルカン)に投資して、それ1本で投資している方も少なくないと思われます。これらの中にはアメリカの株式がかなり含まれており、S&P500はほぼ100%がアメリカ株式です。
このような状況を考えると、今回のバンガードの警告はある程度重く受け止めても良いのではないでしょうか。債券を取り入れることの重要性については、これまでも何度も言及してきましたが、過去10年間の運用実績として株式だけで運用されていた方はかなり良いパフォーマンスを上げていたことは事実です。
しかし、今後に関しては様々なメディアでも警告的な論調が多くなってきている状況があります。資産運用の考え方として債券を取り入れた方が良い理由は、資産運用においてリスクを抑える必要があるからです。将来に向かってお金を使うためには、ファイナンシャルプランを実現するために投資や資産運用の力を借りて資産形成をしていく必要があります。
株式だけだと価格変動が激しく、実際にどの程度下がるのかが分からない以上、やはりリスクを抑えるような形で運用した方が良いでしょう。そのためには債券という手段が絶対に必要になります。

出典:GPIF
債券を加える際に参考になるのは、GPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)の運用方法です。GPIFは国民の年金のうち積立金として管理運用している政府系の基金で、市場運用開始時は約100兆円でしたが、現在は約250兆円まで増え、年金に対しての取り崩しまでしているという好調な運用を続けています。期間全体で表すと大体4.2%程度の運用利回りを実現しています。
GPIFの投資戦略は均等に4分割となっており、国内債券が25%、国内株式が25%、海外債券が25%、海外株式が25%という配分になっています。今までの米国株式の運用利回りから見れば見劣りするようなリターンかもしれませんが、今後10年間でアメリカ株式の運用利回りが3%程度になってしまうと、20年間の平均で考えるとそれほど差がない状況になります。
バンガードが言っている60/40ポートフォリオと比較して、それぞれ5%ずつ株式にシフトして国内株式が30%、海外株式が30%、国内債券が20%、海外債券が20%というような割合も選択肢の一つかもしれません。そうすると、もちろんリスクが上がるものの、もう少しリターンが上がってくる可能性があります。
マネーセンスカレッジ流「債券の役割3つ」(13:59)
アセットアロケーション運用に基づいて債券を取り入れるべきだという考え方において、債券を取り入れる役割は大きく3つに分けられます。
まず第一に、債券を取り入れることによって価格変動リスクが抑えられる、いわゆるリスクを下げることができるという効果があります。当然、リスクを下げると同時にリターンも下がってしまいますが、アセットアロケーション運用を取り入れることによって、できるだけリターンを下げずにリスクを下げることができるという方法になります。
なぜリスクを下げたのにリターンがそれほど下がらないのかというと、それぞれの資産が異なる動きをするからです。例えばアメリカの株式が下がった時、債券があることによって債券と株式のバランスが崩れます。株式が大きく下がるので、割合が下がってしまうわけです。そうすると債券のお金の一部を使って株式を購入するという動きになります。これがリバランスと呼ばれるものです。
債券も値上がり益などがありますが、株式と比べるとそれほど運用利回りが上がりません。そこで貯められたお金を株式の追加購入資金として使うことによって、株式がその後上がってくる時に上がりやすく、また回復しやすくなるという効果があります。
株式が上がった時には今度株式の比率が上がるので、そのバランスを整えようとすると株式を売って債券を買うという動きになります。これもリバランスです。そうすると、株式で得た利益の一部を保存して、将来株式が下がった時の購入資金として置いておくという機能になります。
これを能動的にできる人であれば問題ありませんが、個人投資家は能動的にできない場合が多いのです。儲かっている時はそのまま持ち続けてしまうことになります。下がり始めたら売れば良いと思う方もいるかもしれませんが、それで売れた人の例はほとんど見たことがありません。
これを能動的に自分自身の判断で行っていこうというのは非常に難しいため、アセットバランスを最初に決めておいて、そのバランスに従って機械的にリバランスを整えるということが重要になります。これは今まで100%で運用されている方が、今から債券の割合を何パーセントにするかを決めるだけで導入することが可能です。
例えばS&P500を100%保有している場合、その100%を60/40ポートフォリオにするとして、40%の部分を債券にするという風に決めるだけで良いのです。そうすると今バランスが崩れているため、40%分を売って日本債券なり海外債券にする必要があります。
まとめ(19:23)
バンガードの債券70%という提案は万人向けではありません。これはアメリカ人向け、より正確には米ドル建てで運用している人向けのものであるため、そのまま取り入れることは難しいでしょう。
だからといって株式100%というのはリスクが高すぎて、今後この動きが顕在化した時には資産が大きく目減りしてしまうリスクにさらされることになります。そうであれば、債券を一部取り入れることによって資産の安全性を高くすることができます。
日本人、日本円で運用している人間から見ると、米国債を購入することももちろん選択肢の一つですし、米国債券を含む債券ファンドを購入するという考え方も取り得る形です。しかし、そこのアセットバランスを考えてみると、もう少しバランス良く保有されるのが良いのではないでしょうか。