住宅購入、「地域」より「人口」が重要!終の棲家に最適な街の見つけ方

終の棲家を考える際、地域災害なども踏まえてどのような場所を選ぶべきかという疑問は多くの人が抱くものです。

賃貸のリスクについて政府の資料を参考にしながら、皆さんが思っているほど深刻ではない可能性もあることを含めて、情報を整理して考えていきましょう。

賃貸のリスク(1:07)

老後の住まい方におけるリスクとして、「高齢者は賃貸物件を貸してもらえない」という話をよく耳にします。メディアが煽る部分もありますが、実際のところはどうなのでしょうか。

内閣府が令和5年度に実施した「高齢者の住宅と生活環境に関する調査結果」によると、実際にはほぼ断られることはないという結果が出ています。65歳になってから今までに入居を断られたことがある人はわずか1.5%で、ない人が81.3%、分からないが17.3%となっています。

この1.5%の人が断られた理由を見ると、61.5%が「高齢のため」、28.2%が「万一の時の身元引受人がいない」、20.5%が「家賃の連帯保証人がいない」となっています。身元引受人の問題は相続などが絡むと大変で、万一の際に放置されてしまうリスクがあります。連帯保証人については、最近は保証人不要の物件も多く、保証会社を利用すれば解決できます。

最大の問題は孤独死への懸念で、これが断られる理由の約90%を占めます。ただし、大手住宅メーカーが運営するような物件では、65歳以上でも条件を明示して貸してくれるところが多く、例えば1年更新でといった対応をとっています。

今後も高齢者人口は増加するため、この傾向は改善していくと予想されます。皆さんが思っている以上に心配する必要はないでしょう。

終の棲家として持ち家もアリ(3:45)

終の棲家として持ち家を選ぶという選択肢も十分にありです。老後に入る際に一軒家を購入することも可能ですが、前提として老後資産設計がしっかりとできている必要があります。

75歳から投資をやめて現金取り崩しに移行すると仮定した場合、生活費の3分の1が住居費に相当します。収入の25%を貯蓄投資に回すという計算方法で算出すると、一人でも2500万円程度、夫婦なら4000万円近くの資金が用意できているはずです。年金受給分も含めた金額ですが、このような状況であれば購入しても問題ありません。

老後資産設計の見通しが立つのは大体50代前半頃で、65歳時点である程度資金が貯まっていても、全額を住宅購入に使ってはいけません。住宅には維持費が必ずかかるため、住居費として用意した分の3分の2から半分程度で中古マンションや中古一戸建てを購入するのが現実的でしょう。

中古物件市場の動向(5:16)

現在、中古物件市場は増加傾向にあります。中古戸建てと中古マンションの成約総額は伸びていますが、成約戸数はほぼ横ばいです。つまり、1戸あたりの価格が上昇していることを意味します。

特に首都圏の価格上昇は顕著で、その中でも東京は異常な値上がりを見せています。しかし、本当に首都圏が良いのかという疑問もあります。首都直下型地震のリスクもあり、地震も多い地域です。そうなると帰宅困難者になる可能性もあり、様々なリスクが考えられます。

こうした状況を考えると、UターンやJターンのような地方移住も選択肢として検討する価値があります。金沢は雪が難点ですが、それ以外は住みやすい環境です。福岡や北九州といった九州北部も魅力的な選択肢です。一方、沖縄や北海道は物流の関係で送料が高くなるため、Amazon利用者には不便さがあります。

政府機関も首都圏に集中していますが、そろそろ副都心を作らないと厳しい状況になっているのかもしれません。

老後は医療や介護が心配(8:37)

出典:国土交通省

老後を考える際、やはり医療と介護は重要な要素です。国土交通省の資料によると、2040年の医療介護余力を予測した地図があります。黄色が医療が厳しい地域、赤が介護が厳しい地域、黒が医療も介護も厳しい地域を示しています。

興味深いことに、地価が高騰している地域ほど医療介護が厳しい状況になっています。人が住みにくい高層タワーマンションなどでは、足腰が立たなくなった時に100階から降りるのは非常に困難です。

一方、金沢や福岡などの地方都市では医療も介護も余裕があるという予測になっています。土地の違いもありますし、特定の土地にこだわりがある方の生き方は尊重しますが、住みにくいところにいるのは毒の沼にいるようにヒットポイントが減っている状態と言えるかもしれません。

経済的、医療的、介護的な問題があるなら、移住を選択することも考えてよいのではないでしょうか。方言が通じないということもそれほどありませんし、地元ではないところに住んできた経験から言えば、馴染めないという気持ちはあっても生きづらさは感じません。

地域選びの基準に「人口」も(11:21)

終の棲家を購入する際の地域選びでは、人口という要素も重要です。人口がある程度ないと社会サービスが維持できなくなってしまうからです。

出典:国土交通省

国土交通省の資料によると、サービス施設が立地する確率が50%および80%となる自治体の人口規模が示されています。3大都市圏を除いた地方都市で考えると、30万人を超えると様々な施設が揃ってきます。スターバックスなども含まれますが、特に注目すべきは救命救急センターです。

救命救急センターがある地域では、万一の際にすぐに搬送できます。しかし、それ以下の人口規模では救命救急センターがないため、遠くまで搬送しなければならず、1時間程度かかることもあります。これは致命的な状況につながる可能性もあります。

金沢市の人口は約45万人で、隣接する野々市市が約6万人、白山市が約10万人なので、都市圏として約60万人の規模があります。このように都市圏で考えることが重要で、60万人いれば十分な社会サービスを維持できます。

現在の基準では30万人が最低ラインとされていますが、今後人口が減少することを考えると、現時点で45万人程度は欲しいところです。国が定義する中核市は20万人ですが、これでは不十分でしょう。

人口が今後50%程度減少する地方都市も多いため、現在45万人以上の都市圏を選ぶのが安全です。限界都市や消滅都市と言われるような地域では、30年という長期間住み続けることを考えると、社会インフラの維持が困難になる可能性があります。

東京にこだわる必要はなく、福岡のような都市でも十分に都会的な生活ができます。コンパクトシティとして設計されているため、行政サービスも行き届きやすく、移動も楽で、バスなども充実しています。車を手放しても生活しやすい環境が整っています。新幹線も通っているため、東京へのアクセスも良好です。

まとめ(17:21)

終の棲家は、老後に入る前に購入しても問題ありません。ただし、老後資産設計がしっかりとできて、老後資金を適切に運用できる人が対象となります。

75歳時点で相当な金額が貯まっているという前提で、そのお金を使ってしまうと運用益が上がってこないため、できればローンが組める方が良いでしょう。ローンが組める年齢は50代が中心となるため、その時期に15年から20年程度のローンを組み、金利を抑えながら支払いを続け、その間も運用を継続することで、最終的にはお金を使わずに済む状態を作ることができます。

その後は年金プラスアルファで、少し足りない分を取り崩していくだけで、ずっとそこに住み続けることが可能です。もちろん、賃貸で住み続けることも選択肢の一つです。65歳以上で断られるケースは1.5%程度なので、それほど心配する必要はないでしょう。

またこちらの動画「【老後資金いくら積み立てればいい?】《年齢別》新NISA月◯万円で老後3000万!積立投資で老後の不安を解消」では、老後資産のために毎月いくら投資すればよいかを解説していますのでぜひご覧ください。