【オルカン+現金】インフレに負ける現金、どこで運用する?
オルカンと現金を組み合わせて運用している方は多く見られます。ただ、現金のままではインフレに負けてしまうため、この部分もきちんと運用に回したいという声をよく耳にします。そこで今回は、現金をどこで運用すればよいのか、その候補について解説していきます。
オルカン一本で保有している方も一定数いらっしゃいますし、人気のあるファンドであることも事実です。株式運用としての合理性も十分にあると考えていますが、値動きの大きさを踏まえると、現金もあわせて保有しておくことを勧める経済評論家や個人投資家向けの発信者も少なくありません。実際に、ある程度の比率で現金を持っている方は多いですし、そうあってほしいとも感じています。
現金を含まない運用スタイルはあまり勧められませんが、オルカンに現金を組み合わせているのであれば、最低限のアセットアロケーション運用はできていると言えます。もちろんリバランスは欠かせず、最低でも年に一度は実施していただきたいところです。それができていれば、安定した運用と呼べる水準に達しています。
とはいえ、現金として保有している資金についても、金利は上がってきたとはいえまだインフレには勝てておらず、もう少し利回りを上げたいと考える方も多いはずです。そこで、その現金部分にどのような選択肢があるのかを見ていきます。前提として、この現金部分も含め、投資に回すお金は10年以上使わない資金に限定してお願いしています。
10年以上使わないお金を運用する(2:03)
長期投資は10年を目安に考えていただきたいところです。それ以上長く保有する分には問題ありませんが、10年は見ておいてほしいという理由は、元本割れの可能性があるからです。元本割れした状態で使わなければならない場面が来ると、必要なときに必要なお金が用意できなくなってしまいます。 投資はいずれ使うために行うものであり、想定していた利回りに届いていないタイミングで資金化せざるを得なくなることは避けたい事態です。
そのため、まず生活防衛資金を確保することが前提になります。目安は生活費の6か月分で、最低でも3か月分は用意しておきたいところです。金額としてはおおよそ100万円、最低でも50万円程度をイメージしていただければと思います。このお金は運用資金ではありません。
大切なことなので繰り返しますが、運用資金には含めず、オルカンと現金の現金部分にもカウントしないでください。置き場所としては、24時間以内に引き出せる状態にしておく必要があります。普通預金でも構いませんし、自動継続の定期預金にしておけば、普通預金より高い金利を得ながら同様の役割を果たせます。
また、10年以内に使うことが決まっているお金についても投資には回さないようにしてください。車の購入費用や住宅購入の頭金などがこれにあたります。こうした資金は貯蓄でまかない、元本保証のある商品で管理することが望ましく、代表的なものとしては定期預金や個人向け国債が挙げられます。使う時期がはっきり決まっているなら期間の合う定期預金、時期に幅がある場合は個人向け国債の変動10年を選ぶとよいでしょう。
一方で、10年以上先に使う予定のお金については投資に向いています。子どもの教育資金や老後資金などがその代表例で、こうした資金は預金で守るべき部分を除いた残りを運用に回し、インフレを乗り越えていくことになります。投資に回した資金のうち、一定割合を現金として持ち、残りをオルカンに充てるという構成を考えたとき、現金には利息がつかないため、利息のある置き場所を選ぶ必要が出てきます。
現金の置き場所はどこがいい?(4:36)
候補として大きく3つが挙げられます。ひとつは定期預金、もうひとつは個人向け国債の変動10年、そして最後にMRFです。まず定期預金についてですが、元本保証があり、預金保険機構の対象にもなります。ただし保護される金額には1000万円までという上限があるため、現金比率が仮に40%だとすると、総額2500万円までであれば一つの銀行でまかなえる計算になります。心配であれば複数の銀行に分けて預けるとよいでしょう。金利の変動はなく、途中解約による換金も可能ですが、その場合は金利がやや下がってしまう可能性があるため、期間の短いものを選んでこまめに継続していく形が現実的です。
利回りについては2026年8月時点で、半年もので1%を超えるものも出てきており、1年もので条件が合えば1.5%程度つく商品もあります。 管理の手間は自動継続にしておけばほとんどかからず、リバランスも満期のタイミングに合わせて行えば十分です。
続いて個人向け国債の変動10年です。こちらは国による利払いが保証されており、元本割れもありません。評価額の変動についても、解約すれば額面が戻ってくるため実質的に影響を受けません。ただし換金には制約があり、購入から1年間は換金できず、その後はいつでも換金可能になるものの、直近2回分の利子相当額を差し引かれてしまいます。元本は減らないものの、利子の一部を返す必要がある点はデメリットといえます。
利回りは2026年8月募集分で年1.87%です。管理の手間については、変動10年をそのまま保有する分には手間はかかりませんが、期間の異なる国債を組み合わせる場合は多少の管理が必要になります。リバランスは1年に1回が基本ですが、1年もの国債が存在しないため、現金部分を一部残しながら2年ものや3年ものを組み合わせるなど、工夫が求められます。結果として、途中換金のデメリットを受けやすい商品でもあります。
最後にMRFです。採用している証券会社はまだ多くありませんが、楽天証券をはじめ今後増えていく可能性があります。元本保証はないものの分別管理がなされており、ごく短期の債券で運用されるため、過去に元本割れした実績はほとんどありません。仮に元本割れが発生した場合でも、損失補填が認められているため実質的に元本割れは起きにくい仕組みですが、制度上あり得るという点は理解しておく必要があります。評価額の変動は極めて小さく、換金性は非常に高く、当日入金して当日引き出すことも可能です。
利回りについては、動画撮影時点の野村MRFの過去7日平均で0.79%程度となっており、定期預金よりはやや低めの水準です。とはいえ毎日引き出せる利便性を踏まえれば妥当な水準ともいえます。管理の手間はほとんどなく、自動買付に対応している証券会社であれば入金するだけでそのままMRFに回るため非常に楽で、リバランスもしやすい商品です。
これらを踏まえると、個人向け国債はできても現金部分の半分程度、安全に考えるなら3分の1程度にとどめておくのが無難です。残りについては換金のしやすさを重視するならMRF、手間の少なさを重視する場合もMRFが向いているといえます。
現金比率を上げるほど予想(期待)利回りは下がる(10:03)
現金の利回りを0と仮定し、オルカンの予想利回りを8%とした場合、現金比率を上げるほど全体の予想利回りは加重平均で下がっていきます。 オルカン100%であれば予想利回りは8%ですが、現金比率を10%加えると7.2%、20%で6.4%、30%で5.6%、40%で4.8%、50%になると約半分の4%まで下がる計算になります。
ただしこれはリスクを考慮していない数字です。リスクの観点から見ると、全世界投資と同程度のリスク水準に抑えるには、30%から40%程度の現金比率を持つことが目安になります。仮に現金比率を少なめの30%とした場合、無利息の現金であれば5.6%ですが、定期預金で1%の利回りが得られるなら5.9%、MRFなら5.84%、個人向け国債なら6.14%となります。全世界投資単体の7%と比べるとやはり下がってしまいますが、これは伝えておくべきポイントです。
まさにここにアセットアロケーションが生まれた理由があります。もともと株式投資は200年以上前から資産運用の中心にありましたが、大暴落によって株式を持ち続けることが難しいという課題がありました。そこで投資家は経験則として、暴落時に買い増しできるよう、また不安を和らげるために現金を一定割合持つようになりました。その比率は投資家によって2割から5割までさまざまで、時々の状況に応じて調整されてきました。バフェット氏も現金比率をおおよそ20%程度に保つよう売買を繰り返しているといわれています。
このように現金を持つ運用を続けていれば、現金比率30%程度でも定期預金なら6%弱の利回りが見込めるため、それで十分だという考え方もありました。しかし、現金の代わりに債券や海外資産を組み合わせることでリスクを現金保有時と同程度に抑えながら、より高い運用益を確保できないかという研究が進められ、その結果として生まれたのがアセットアロケーション運用です。債券や海外資産を組み合わせることで、リスクは現金で持つのと同程度に抑えつつ、リターンをそこまで落とさずに済むようになりました。実際にこうした資産配分を活用することで、想定利回り7%を確保できる計算になります。
オルカンと現金の比率を保つ運用は、いわばアセットアロケーションの入り口に立っている状態といえます。株式一本で保有し続けることは過去200年の歴史から見ても難しく、投資家の実感としても証明されてきました。だからこそ現金比率を持つという工夫が経験則として積み重ねられ、そこからリスクの観点で最適な比率を計算する考え方へとつながっていきました。全世界投資というアセットアロケーション運用のリスク水準に合わせると利回りは下がってしまいますが、その現金部分の利回りを少しでも育てていくことで、下がり幅を抑えることができます。個人向け国債であれば6.14%まで戻ってくることからも分かるように、このバランスを考えることこそがアセットアロケーションの本質です。
オルカン警察 実質利回り課パトロールお疲れ様です(15:51)
オルカンの期待利回りについては8%程度を設定していますが、低すぎるのではないかという指摘をいただくことがあります。もちろんきちんと計算した上で提示している数字ですが、説明してもなかなか納得いただけない部分もあるため、第三者の試算も参考として紹介しておきます。
野村アセットマネジメントはローリングリターンで計算し、約7%という数値を示しています。大手の運用会社がこの水準を見ているという点は参考になります。また、年金を運用するGPIFはビルディングブロック方式で期待リターンを算出しており、その結果はおよそ4.6%から8.1%という幅になっています。最も高い高成長実現ケースでも8.1%となっており、これはかなり強気な前提に基づいた数字です。ベースケースとしては30年国債利回りを基準に考えるとおよそ5.4%程度で、そこまで低くならないとも見ています。こうして比較すると、8%という設定は決して低すぎる数字ではないことが分かります。
指摘の多くは配当込みではなく配当なしのリターンと比較しているケースが目立ちます。改めて確認すると、野村にしてもGPIFのビルディングブロック方式にしても、配当を含めない前提で計算されているものが多く、その水準と並べて見ると、8%という数字がそれほど小さくないことが理解できます。
もっと想定利回りを引き上げられないかという点は、研究対象として十分に価値のあるテーマです。仮に期待リターンを引き上げられるのであれば、リスクを上げずに株式比率を高められる可能性があり、その分リターンの改善にもつながります。
アセットアロケーションはまだ発展途上の研究分野であり、今の設定が完成形というわけではありません。評価が低めに出てしまう理由のひとつはリスクの高さにありますが、時代とともに前提が変わりつつあるとも言えますし、今後10年の間に暴落が起きる可能性も当然考えられるため、慎重に見ておく必要があります。
まとめ(18:30)
アセットアロケーションは現在も研究が続けられている分野であり、これが完成された唯一の正解というわけではありません。株式の恩恵をまったく受けられていないわけではなく、オルカン一本に比べれば利回りは多少下がるものの、過去の投資家たちが積み重ねてきた経験、つまり現金という資産をどう働かせるかを考え続けてきた結果として、今のアセットアロケーション運用があります。現金比率とその置き場所を見直すことは、まさにこの運用の入り口に立つことにほかなりません。
またこちらの動画「《投資を始める前に必ずやること》いまさら聞けない!生活防衛資金【2024年アップデート版】」では、投資前に必要な生活防衛資金の考え方や金額目安を解説していますのでぜひご覧ください。





