資産額が少ないうちは、分散してリターンを下げるより、株式100%でリターンを狙ったほうがいい 

投資においてリスクを減らすために資産分散をしましょうという話をこのチャンネルでは繰り返し伝えてきました。投資家にとってリスクを減らすことこそが唯一の仕事だとも言えるほど重要なテーマです。

この話をするたびに、決まってつくコメントがあります。それは、資産に余裕がある人がリスク分散を考えるのであって、金融資産が1000万円に満たない人はひたすらオルカンを積み立てていればよいという内容で、多くの共感を集めているコメントです。

こうした意見が正しいかどうかは、その人自身の考え方であり、自己責任のもとで判断することなので、一概に否定するつもりはありません。ただ、率直に感じるのは、少しピントがずれているのではないかということです。

投資においては、実は資産額そのものはあまり重要ではありません。よく入金力の大切さが語られますが、それ以上に大切なのは期間、つまりそのお金を使うまでにどれくらいの時間があるかという点です。

たしかに、資産に余裕がある人ほどリスクを下げたいと考える傾向はあります。一生使い切れないほどの資産があるなら、リターンを多少犠牲にしてでも安定運用を目指し、インフレ率を上回る4パーセント程度のリターンが得られれば十分と考えるのは自然なことです。

100万円、1000万円、1億円、10億円と資産が増えていくにつれて、多くの人はリターンを減らしてでもリスクを減らしたいと感じるようになります。これ自体は間違いではありません。

しかし本質は、資産額が多いからリスクを減らすべきというより、その資産をどんな目的で使うお金なのかによって、取れるリスクが変わるという点にあります。したがって、先ほどのコメントは半分正解で半分不正解というのが率直な感想です。

大事なのは「資産額」ではなく「いつ使うお金か」(3:17)

何より重要なのは資産額ではなく、そのお金をいつ使う予定なのか、つまり使うまでの期間です。極端な例で考えるとわかりやすくなります。

たとえば1億円の資産を持っていて、それを1年後に使う予定だとしたら、この1億円は運用できるでしょうか。答えはノーです。オルカンであっても、分散されたインデックス投資であっても、1年という短い期間では元本割れの可能性がある以上、運用には向きません。

株式100パーセントはもちろん、全世界株式への投資も、個人向け国債でさえも1年後に使うのであれば意味がありません。行き着く先は預金か、MRFのような元本保全性の高い商品になります。1億円という金額があっても、使う時期が近ければ運用対象にはならないということです。

逆に、資産額を100万円や10万円といった少額に置き換えて考えてみます。もしそのお金を一生使う予定がないのであれば、余剰資金として置いておく必要はなく、株式100パーセントで運用しても、オルカン一本で運用しても問題はありません。使わないお金だからこそ、リスクを取れるのです。

一方で、同じ100万円や10万円であっても、来年使う予定があるのなら話は別です。オルカンでの運用には向きませんし、元本割れの可能性を考えれば避けるべきです。

つまり「1000万円以下ならオルカンでよい」という考え方には、期間という視点が抜けています。金額の大小ではなく、そのお金をいつ使うのかこそが判断基準になるということです。

もし本当に一生使う予定がないお金であれば、分散投資を考える必要すらありません。ビットコインでも、話題のスタートアップでも、未上場の有望企業への投資でも、自分が信じるものに全額投じてしまってもかまわないとさえ言えます。株式であれば、企業が退場させられない限り長期的には資産が増えていく傾向があるというデータもありますし、一つの銘柄を30年保有し続けて資産が増えているケースも存在します。

ただし、多くの人が資産形成を行う目的は、そうした「絶対に使わないお金」を前提にしたものではないはずです

老後のためのお金として考える(6:08)

「DIE WITH ZERO」という書籍がベストセラーになったように、多くの人は最終的に自分自身のためにお金を使いたいと考えています。日本人とアメリカ人ではこの点で文化的な違いがあり、日本では寄付をする文化があまり根付いておらず、子どもがいたとしても積極的に資産を相続として残したいと考える人は少ない傾向にあります。基本的には、自分で稼いだお金は自分のために使いたいと考える人が大半です。

だからこそ問われるべきは、そのお金をいつ使うのかという点です。1年後なのか、10年後なのか、20年後なのか、その期間によって取れるリスクの大きさは変わってきます。

リスクの度合いで整理すると、まずリスクがほぼゼロの預金があり、その上に全世界投資があり、さらにリスクを取った先にオルカンがあり、その先にS&P500や個別株式があるという順番になります。リスクが大きくなるほど、期待されるリターンも大きくなっていく構造です。

全世界投資とオルカンは、中央値で見れば似たようなリターンに収れんしていく一方で、値動きのばらつきの大きさが異なります。実際、2025年についてはオルカンよりも全世界投資のほうがリターンで上回っていますが、これはどちらが優れているかを競う話ではなく、値動きの安定性という観点から比較しているものです。

さらにリスクを取る方向に進むと、S&P500や日経平均、あるいは注目の個別企業への投資という選択肢も出てきます。こうした資産はリスクもリターンも大きくなりますが、企業が存続し続ける限り、30年という長期で見れば資産が増えているというデータもあります。問題は、その運用方法に耐えられるだけの期間があるかどうかということです

リスクの取り方を決めるのは資産額ではなく期間(8:35)

積み立てているお金の多くには、最終的に使う理由があるはずです。多くの場合、それは老後の資金であり、仕事を続けられなくなったときのための備えでもあります。

有給休暇は労働者の権利であり、残っている日数をきちんと消化することも一つの選択肢です。もっとも、すべてを使い切る必要はなく、まとまった休みと合わせて年に1週間から2週間程度の休暇を2回取れれば十分だと感じる人も多いでしょう。そうした形で仕事を続けられるなら継続すればよいですし、難しければ老後にゆっくりお金を使うという選択肢も出てきます。いずれにせよ、いつお金を使うのかは、ある程度自分の中で決まっているはずです。

もし本当に使う予定のないお金であれば、オルカンでも個別株式でも何でもかまいません。ここで伝えている全世界投資やアセットアロケーション運用の考え方は、いずれ使う予定があり、しかも使う時期がある程度決まっているお金に対してリスクを抑えるための方法です。もちろんサテライトとして別の運用を組み合わせても良いですし、オルカン一本に絞っても問題はありません。ここで扱っているのは、あくまで資産設計、つまりいずれ使うお金についての考え方です。

使う時期が近づけば近づくほど、当然ながら取れるリスクは小さくなっていきます。10年後だと思っていても、5年経てば残りは5年後になります。そうしてリスクの考え方を年々調整していく必要があるからこそ、この期間という視点が重要になるのです。

投資の方法を知っているだけでは不十分で、運用してきたお金をどのように取り崩していくのかという出口戦略まで理解していなければ、資産運用は完結しません。1億円あっても1年後に使うお金であれば投資はできませんし、100万円しかなくても一生使う予定がなければ個別株式でもオルカンでも自由に選べます。大切なのは、いくら必要で、それがいつ必要になるのかを把握したうえで資産運用を行うことです

ウォーレン・バフェット氏が資産の90パーセントをS&P500に投資すべきだと語っていることも、この考え方に沿っています。恐らく今の市場環境でもその方針は変わらないでしょう。バフェット氏個人の資産は日本円にして数兆円規模ともいわれ、到底使い切れる金額ではありません。

株式をすべて売却するという報道もありますが、いずれにしても資産規模が大きすぎて、本人だけでなく家族も含めて使い切れないという前提があるからこそ、資産の90パーセントを米国株式に投資するという判断ができるのです。残りの10パーセントを短期国債に振り分けていますが、それでも1兆円を超える規模になるとみられます。

つまり資産1000万円以上でリスク分散を考える必要がないという発想には、そもそも至っていないということです。理由は単純で、使い切れないお金だからです。使い切れないなら運用に回した方が合理的というだけの話であり、資産額そのものが基準になっているわけではありません。

「1000万円」や「2000万円」といった具体的な金額を基準にすると、その基準は人によって変わってしまい、そもそも曖昧なものになります。一方で期間を基準にすると、10年以内に使うお金なのか、それを超えるお金なのかという線引きができます。10年という期間を目安にしている理由は、長期運用においてちょうど良い節目になるからです。10年が経過すると元本割れの確率は低くなり、年率換算でのリターンもある程度安定してきます。金額そのものは上下しますが、おおむね想定の範囲内での運用が可能になる期間だといえます。

まとめ(13:23)

資産額の大小でリスクが取れるかどうかを語る意見は、半分正解で半分不正解です。長期的に使う予定のないお金であれば株式100パーセントで運用してもよいという部分は正解ですが、その基準を資産額に置いている点はピントがずれています。大切なのは資産額ではなく、いつ使うお金なのかという点です。

若い世代がリスクを取れるのは資産が少ないからではなく、使うまでの期間が長く、当面使う予定がないからです。逆に、資産が何兆円という規模であっても、それが使う予定のないお金であれば、資産の90パーセントを株式に投じることも十分に可能です。資産額ではなく期間という視点を持つことが、資産運用を考えるうえでの本質だといえます。

またこちらの動画「S&P500・オルカン1本で安心してない?“リターンしか見ない人”が損する理由」では、リターンより先にリスクを見るべき理由を解説していますのでぜひご覧ください。

動画アイコン 動画目次 [目次箇所から再生]